EGG BRAINが5thアルバム「AIN'T SEEN NOTHING YET」をリリースした。
2015年5月から約3年半の活動休止期間を経て、2019年1月にタワーレコード限定シングル「Start From Scratch」で復活を果たしたEGG BRAIN。再始動後初のアルバムとなる「AIN'T SEEN NOTHING YET」には、「Brighter Than Ever」や「Dear My Friends, Thanks For A Miracle」といった新曲のほか、「MUZIC」「METEOR」などの休止前の楽曲も収録されている。
音楽ナタリーでは、EGG BRAINの3人にアルバムの制作秘話や活動再開の経緯についてインタビュー。復活のキーパーソンでもある今は亡き事務所社長・松原裕氏への思いも語ってもらった。
取材・文 / 真貝聡 撮影 / 竹中圭樹(ARTIST PHOTO STUDIO)
休止中、一度きりのライブ
──今回は5thアルバム「AIN'T SEEN NOTHING YET」の話はもちろんですが、その前に2015年1月に突然の活動休止を発表して、2019年1月に活動再開をするまでにいったい何があったのかを聞ければと思います。
JOEY(Vo, G) 活動休止したことについては、3人の目指すベクトルにズレが生じたというか。「今、このまま続けないほうがいいんじゃないか」ということになりお休みをしました。
──休止を決断するまでに、話し合いは重ねていたんですよね。
Uchie(Dr) 何回かしましたね。でもこれ以上バンドを続けたら、ほんまに喧嘩になって終わってしまう。それぐらい各々の目標がズレてしまってて。やっぱり車でどこかへ行くにしても行きたい場所が違えば、目的地にはたどり着けないじゃないですか。だから「完全にEGG BRAINが壊れてしまう前に(活動を)止めないと」っていう意識があったと思います。
──どのタイミングでズレを感じるようになったんですか。
Uchie どのくらいやろ? 2014年の「MUZICツアー」(「START OFF WITH MUZIC TOUR 2014」)終わりくらいかな。
JOEY 具体的な話し合いになったのは、あのあたりやな。
──活動休止中、皆さんはどのように過ごしていたんですか。
JOEY それぞれの人生を歩んでいたというか。僕は就職して会社員になり、普通に働いてました。それまでバンドしか知らなかったから、見たことのない世界がいっぱいあって。その経験は、今のEGG BRAINにすごく生かされてると思います。会社に入ってみたら、みんな“やらされている感”がすごくしたんですよ。それを見て「もったいないな、一生懸命にやってほしいな」という気持ちが芽生えました。もちろん一般の会社員の方もがんばっているんですけど、バンドマンのほうが死に物狂いでやっているなと思って。
KUN(B, Vo) 僕はEGG BRAINしか音楽活動をしてこなかったので、休んでいる間は、いろんな音楽の勉強をしてましたね。例えば他人に音楽を教えたり、ちょこっとほかのバンドのサポートをさせてもらったりとか。なので音楽から離れていたわけではなくて、EGG BRAINでやってこなかったことに時間を充てました。そういう意味では、広い視野で音楽を見つめ直すための大事な期間やったかなと思います。普段接してなかった人と話す機会が増えて、いろんな考えを知ることができた。そこでインプットしたことが、音楽への向き合い方に反映されていると思いますね。
Uchie 僕は休止するタイミングで、バンド以外にもいろんなことをしたいと思って大阪から東京へ出ました。そこで4年間生活をしながら、バンドのサポートやアイドルのバックで演奏をしてて。それでいつしか「サポートじゃなくて、ちゃんとバンドをやりたい」という気持ちが強くなってきたんですよね。だけど巡り合わせがなくて、途中で「こいつとやりたい」と思えたバンドもいたんですけど、やっぱりEGG BRAINと比べてしまう部分があって。「ああ、EGG BRAINってメンバーもそうやし、スタッフにも恵まれていたんやな」と年々実感してましたね。
──休止中、新たにバンドを組むことはなかったんですね。
Uchie ご縁はあったんですよ。ただ、やりたいと思っていたタイミングで、サポートしていたバンドのメンバーが病気でお休みすることになって。「ああ、またなくなったわ」と。そんなときにウチの会社(パインフィールズ)が主催している「COMIN'KOBE」というイベントに出演する機会があったんです。活動休止中だったから、僕はほかのバンドメンバーとして出ていたんですけど、会場でKUNちゃんとひさしぶりに会って。あれは何年ぶりかな?
KUN 2年ぶりちゃうかな。
Uchie で、活動休止中は2回集まったんやったっけ?
KUN そうやね。活動休止中に1度だけライブをしたことがあって。それはウチの社長(松原裕)の事情で出させてもらったんですけど。
──そのライブというのは「COMIN'KOBE16」ですよね。
JOEY 松原さんから、メンバーそれぞれに連絡があって。「病気になっちゃった。いつどうなるかわからんから、その前にEGG BRAINのライブが観たい。だから『COMIN'KOBE16』に出てくれへんか?」というオファーをもらって。
KUN そう言われて、断る理由はなかったですね。
Uchie あのときは、松原裕のためにライブをしたんよね。そもそも末期ガンなんて、そんな重たい話をあっけらかんとしゃべるんですよ。「俺、実は末期ガンになったやんかあ!」って、そんな感じだったから僕も「は、はあ……」って呆然としましたね。まあ去年、亡くなっちゃいましたけど。
──ご存命のときにライブができたのは恩返しになりましたよね。2016年のステージは、どんな感触だったんですか。
JOEY ほんま「松原さんのため、松原さんに観てほしい」という思いが強かったかな。
KUN 普段、ライブをするときは楽しい気持ちが強いんですけど、それだけじゃない感情やったと思います。
──それだけ松原社長は、EGG BRAINには欠かせない大きな人で。
Uchie まあ……いないと復活も、もうちょい遅かったかもしれんな。
JOEY そうかもしれんな。
KUN そもそも松原さんと出会ってなければ、EGG BRAINがここまで大きくなってなかった。ここまで来られたのも松原さんのおかげやったんで、本当に成長させてもらいました。それに、僕らがまた戻れるようになったのも松原さんがいたからやと思いますね。
Uchie しんみりしちゃうね。
もう1回やれそうやな
──その後、もう一度3人で集まるんですよね?
Uchie 2016年に一度だけライブをしたとはいえ、4年間ちゃんと集まってなかったから、「友達として1回近況報告も兼ねて集まろうよ」みたいな感じで、JOEYから連絡が来てうれしかったですね。急きょ、3人で集まることになったんです。休止中は「バンド大事やな」とか「EGGって楽しかったんやな」という思いが募っていたんです。当たり前やったありがたみが、当たり前やなかったんやなって。なんか親みたいな感じですよね。
JOEY Uchieに連絡したのは僕ですけど、その前にKUNちゃんとひさしぶりに飲みに行く機会があって。もともとは高校の同級生なので「EGG BRAIN関係なしに飲み行こう」と。で、その席で「曲を作ってるんよ」と言ったら「じゃあ、聴かせてよ」って。
KUN 僕からしたら意外でしたね。「え! 曲を作ってんの?」って。
JOEY それがきっかけで「3人で飲まへん?」という話になって、僕からUchieに連絡をしたんです。当時、Uchieは東京にいたので大阪に来てもらって、3人で飲んで「もう1回やれそうやな」とそれぞれが思ったので再始動することになりました。2018年7月くらいですね。
──そこから、どう動いたんですか。
Uchie みんなで活動方針を話し合ったんです。「新曲を出すことで、ちゃんと1歩前へ進む意志を示そう」と全員の意見が一致して。
JOEY そうやね。今までのEGG BRAINじゃなくて、新しい僕らを見せようと思いました。3人で飲んだときに今が一番いいなと思ったんですよね。「今の俺たちが最強や」っていう。そしてゼロからスタートするつもりで「Start From Scratch」(2019年1月発売)というタイトルの曲を作って。そんで普段僕しか歌詞を書かないんですけど、Cメロはみんなで考えたいと思って意見をもらいました。
Uchie 「今の意気込みをくれ」と言われて、僕は「何度諦めかけても 音楽は降り止まなかった よっしゃ夢を見に行こう つかみ取るんだ 置いてきたあの夢を」と書きました。これは活動休止中に思ったことで、やっぱり志半ばで終わった気がしていたので、その気持ちをJOEYに送って。(KUNを見ながら)書きました?
KUN 書きましたよ。「oh」と「yeah」のとこですね。
JOEY・Uchie あはははは!(笑)
KUN そこに僕の思いを込めてるから。
JOEY 「Start From Scratch」をリリースしてから、お披露目ツアーを5月までさせてもらって。あとは呼んでもらったフェスとか友達のライブに出つつ、アルバムをレコーディングした2019年でしたね。
──1月にmusic zoo KOBE 太陽と虎の10周年記念イベント「around 10th Anniversary MUSIC ZOO WORLD」で復活1発目のライブをしたときは、多くのバンドマンが袖に集まって観てたっていう。
Uchie めちゃめちゃいましたよ。HEY-SMITHなんてトリやのに、朝一から観に来て「午前中の出番は早いわ!」って言われた(笑)。
JOEY まさかバンドマンの友達からそんなに祝福されると思ってなかったし、ファンの子らもそんなに待っててくれてると想像してなかった。特にあの日のライブは、帰ってきてよかったなと思いましたね。
KUN 4年半休むということは、音楽シーンは何周もしてる。お客さんも入れ替わってるし、そもそも若手バンドもたくさんいるから、EGG BRAINの存在は忘れられてるだろうって。だからゼロからバンドを始めるつもりでステージに立ちました。そしたら待ってくれてた子が多くて、ほんまに感謝やなって。
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最後のピースは「Brighter Than Ever」