日常の感覚がバグると、心に刺さる音楽は作れない
──廣田さん、せっかくだからこの機会にほかに聞いておきたいことはないですか?
廣田 すごいですね。仕事だからなんでも答えてもらえる(笑)。あの、ミセスのライブを観たとき……ホントにすごかったんですよ。ホントに。
大森 どうすごいの(笑)。
廣田 説明するとすごみが下がっちゃうので言えないんですけど……それを言えって話でしょうけど(笑)、とにかくすごくてですね。1週間ぐらい余韻が続いたんですよ。ファンの方も含めてすごくエネルギッシュで。その日は平日だったんですけど、開演ギリギリにラケットとかを抱えて走ってきた女の子が必死で席を探しているのを見ただけで、もう泣いちゃう泣いちゃう。
大森 それはうれしいな。
廣田 私と同世代の子たちがギリギリに走ってきて、文化祭みたいな空気感だったんですよ。私はずっとアイドルをやっていたから、行事はまったく参加できなかったし、学生生活をエンジョイしたとは言えなくて。だからミセスのライブに駆け付けてきた女の子たちの姿が、ドラマみたいに見えたんです。そんなふうに十代の心を惹き付けるエネルギーがミセスの音楽にはあると思うんです。だから、逆に皆さんはどんなところからエネルギーをもらってるのかなって。
大森 エネルギー源ですか? 地元の友達とごはんに行ったりするとエネルギーが溜まりますね。
廣田 リフレッシュ。
大森 うん。でもストレスもすごく溜まるんだよ。よくも悪くも何言ってるか全然わかんないんですよ。僕らとはまったく違う時間軸を過ごしているので。それを実感しに、わざと行くんです。僕らのような仕事って、リアルっぽく見えて全然リアルじゃないんでしょ(笑)。非日常的な生活が僕らにとっての日常なわけで。その感覚が完全にバグっちゃうと、普通の日常を送っている人たちの心に刺さる音楽は作れないと思うんですよ。みんなの価値観を調べに行く、みたいなところがありますね。わざと好きじゃない友達とごはんに行ったりとか。
廣田 えーっ!(笑)
大森 「うわ何コイツ」とか思うんですけど(笑)、そうすると自分が今何をやっているのかよくわかるんです。「あ、やっぱ音楽やりてえや。自分は曲を作ってるのが一番だな」と再認識できるし、逆に非日常ではない日常を生きている人たちをうらやましいとも思う。僕は早いうちに音楽を志したから、部活の経験もあるにはあるけど、部活が終わってからライブに行く感覚はぶっちゃけわかんないんですよ。でもその話を聞いて感動する自分もいて。その感覚が麻痺しないようにジャッジできるよう意識してますね。
廣田 ミセスはすごく技術のある人たちが、完璧な演奏で、完璧な場所で、おふざけをしているような感じがするんですよ。
大森 アハハハ(笑)。
廣田 そこに胸を打たれるのは、非現実と現実の狭間と言うか、その融合がミセスの世界観だなと思っていたので、今のお話を聞いて「そういうことかあ」と納得しました。それはアイドルにも通ずる部分だと思うので、自分もできてたらいいなって思います。
誰かを笑顔にできる人がアイドル
──大森さんから廣田さんに聞きたいことはありますか?
大森 大きな話になりますけど……ぁぃぁぃちゃんにとって“アイドル”とはなんですか?
廣田 あー。
大森 さっきの“優しさ”と同じで、僕らは“アイドル”という4文字を共通ワードとして話せるけど、思っていることや抱えているイメージはそれぞれだと思うんですよ。
廣田 私にとっては、誰かを笑顔にできればそれはアイドルなんですよ。笑顔になった人にとってのアイドルなので。その中での支持率や人気度で変わってくる部分は世間的にあると思うんですけど、私は誰でもアイドルになれると思っているし、誰でもなってると思う。恋をしている女の子にとっては相手の男の人がアイドルだし、という捉え方ですね。
──廣田さんは自身もアイドルでありながら、アイドルヲタでもありますよね。
廣田 そう! そう思うと自分はアイドルなのかなって。最後まで私はなんだったんだろうって(笑)。まあ、だからこそファンの目線はほかのアイドルよりもよくわかると思います。職業としてのアイドルを考えると、ああいうのがいい、こういうのがいいというのはありますけど、今は“アイドル”というものに決まりがなくなっているので、だから「誰かを笑顔にできる人がアイドル」という考え方で間違いないのかなって。
大森 もう見出し決定ですよね。「誰かを笑顔にできる人がアイドル」。僕はアイドルじゃないからアレだけど……。
廣田 いや、アイドルですよ。
大森 まあ今の概念で言うとアイドルだけど(笑)、ぁぃぁぃちゃんはインスタとかでもすごく自分の世界を持っている方だから、ほかのアイドルも彼女に感化される部分はあるんじゃないかなって思うんですよ。日本のアイドルはエンタメとして作り込まれた完成度の高いものを要求されますけど、ぁぃぁぃちゃんはちょっとアーティスト気質と言うのかな。
偽りができちゃう世の中だからこそ、自分に嘘をつかない人が魅力的
廣田 いわゆる“アイドル”って魅力を集める子だと思うんですけど、大森さんが男女問わず「魅力的だな」と感じるのはどんな人ですか?
大森 柔軟な人、ですね。どの環境でもどの年齢でも、柔軟な脳を持っている人が魅力的だなと思います。ある程度「こういうふうにしていれば、こういうふうになる」とか「この出来事はこういうルーティンだ」とか、たかだか21歳の僕でもちょっとずつわかり始めているということは、目上の人はものっすごくわかってると思うんですよ。そこに囚われていない人ってたまにいるんですよね。1つひとつの感情を新しいものとして捉える人。悲しむときは思い切り悲しんで、喜ぶときは飛び上がるように喜んで。そういう人に出会うとカッコいいなと思いますね。
廣田 うんうん。
──質問した廣田さんはどういう人が魅力的だと考えてるんですか?
廣田 やめてくださいよー。
大森 いやいや、おかしいでしょ!(笑)
廣田 私は聞く番じゃないですか。魅力的な人……なんだろうな、簡単に言うと「自分に正直な人」かな。人に言われたからではなく、自分が思うことに正直に生きていけば、絶対いい方向に行けると思うので。偽りができちゃう世の中だからこそ、自分自身に嘘をつかない人が魅力的なのかなと思います。
──廣田さんのエビ中転校後の活動はこれから考えていくかと思うのですが、もし仮にソロで歌う機会があったとして、その曲をもし大森さんが書くとしたら、今日の会話を踏まえてどのような曲になると思いますか?
大森 そうだなあ、いろんなジャンルが入った曲なんじゃないかな。Aメロがアイリッシュっぽいかと思えば、Bメロはクラシカルだったり、サビがヒップホップだったり……全部のジャンルをドッチャドチャに混ぜた遊園地みたいな曲にしたいですね。
廣田 遊園地! 私はホントにただのりんごジャムなので、こうやって今回大森さんにエビ中の曲を書いていただけるなんて思ってもいなくて。エビ中を7年半やってきて、最後のシングルが「シンガロン・シンガソン」でホントによかったな、うれしすぎることだなって実感しています。同世代のミセスファンにもぜひ聴いていただきたいし、老若男女幅広いエビ中ファミリー(エビ中ファンの呼称)にもミセスの魅力が届いたらいいなって思います。
ライブ情報
- 私立恵比寿中学オータムナインツアー2017~エビ中ってなんか説明しづらいけど見とかなきゃ損なグループなんだって!~
-
- 2017年10月7日(土)茨城県 結城市民文化センター アクロス 大ホール
- 2017年10月15日(日)愛知県 アイプラザ豊橋
- 2017年10月21日(土)大阪府 NHK大阪ホール
- 2017年10月22日(日)大阪府 NHK大阪ホール
- 2017年10月27日(金)神奈川県 川崎市スポーツ・文化総合センター
- 2017年11月3日(金・祝)群馬県 桐生市市民文化会館 シルクホール
- 2017年11月19日(日)山形県 やまぎんホール(山形県県民会館)
- 2017年11月24日(金)東京都 チームスマイル・豊洲PIT
- 私立恵比寿中学秋田分校~学芸会は3杯目が一番美味い
-
- 2017年11月11日(土)秋田県 秋田県民会館 大ホール
- 私立恵比寿中学迎春大学芸会 ~forever aiai~
-
- 2018年1月3日(水)東京都 日本武道館
- 私立恵比寿中学新春大学芸会 ~ebichu pride~
-
- 2018年1月4日(木)東京都 日本武道館
- 私立恵比寿中学「シンガロン・シンガソン」
- 2017年11月8日発売 / Sony Music Labels
-
通常盤 [CD]
1500円 / SECL-2234
- 収録曲
-
- シンガロン・シンガソン[作詞・作曲:大森元貴 / 編曲:大森元貴、山下洋介]
- EBINOMICS[作詞・作曲・編曲:栗原暁(Jazzin'park)、久保田真悟(Jazzin'park)、Tasuku Maeda]
- 靴紐とファンファーレ[作詞・作曲・編曲:fu_mou]
- HOT UP!!![作詞・作曲:Jose(TOTALFAT)/ 編曲:Kuboty、Jose(TOTALFAT)]
- シンガロン・シンガソン(Less Vocal ver.)
- EBINOMICS(Less Vocal ver.)
- 靴紐とファンファーレ(Less Vocal ver.)
- HOT UP!!! (Less Vocal ver.)
-
初回限定盤A [CD+Blu-ray]
1800円 / SECL-2230~1
- CD収録曲
-
- シンガロン・シンガソン
- EBINOMICS
- シンガロン・シンガソン(Less Vocal ver.)
- EBINOMICS(Less Vocal ver.)
- Blu-ray収録内容
-
- 「中学生だけのドライヴ映像in 沖縄」
-
初回限定盤B [CD+Blu-ray]
1800円 / SECL-2232~3
- CD収録曲
-
- シンガロン・シンガソン
- 靴紐とファンファーレ
- シンガロン・シンガソン(Less Vocal ver.)
- 靴紐とファンファーレ(Less Vocal ver.)
- Blu-ray収録内容
-
- 「サドンデス」(『IDOL march HALLTOUR 2017~今、君とここにいる~』アウト!集ベストセレクション)
- 私立恵比寿中学(シリツエビスチュウガク)
- スターダストプロモーション芸能3部に所属するアイドルグループ。2009年夏に結成し、2010年2月には初のシングル「朝のチャイムがなりました!」を発表した。2011年4月には事務所の先輩であるももいろクローバー(現・ももいろクローバーZ)の中野サンプラザホール公演にゲスト出演し、前山田健一プロデュース曲「ザ・ティッシュ~とまらない青春~」などを披露。同年10月には東京・Shibuya O-EAST(現TSUTAYA O-EAST)で初のワンマンライブを行った。2012年5月にはDefSTAR RECORDSよりシングル「仮契約のシンデレラ」でメジャーデビュー。2014年4月に行われた東京・日本武道館公演「私立恵比寿中学合同出発式~今、君がここにいる~」を最後に瑞季、杏野なつ、鈴木裕乃の3名が“転校”(脱退)した。以降は真山りか、安本彩花、廣田あいか、星名美怜、松野莉奈、柏木ひなた、小林歌穂、中山莉子の8人で活動し、2015年1月に2ndフルアルバム「金八」、2016年4月に3rdフルアルバム「穴空」(アナーキー)をリリース。11月には初のベストアルバム「中卒」「中辛」を2枚同時に発表した。2017年2月に松野莉奈が18歳の若さで急逝。4月からの全国ツアー「私立恵比寿中学 IDOL march HALLTOUR 2017~今、君とここにいる~」より7人体制で活動を再開させ、5月に通算4枚目のフルアルバム「エビクラシー」を発表した。11月にはメジャー通算11枚目のシングル「シンガロン・シンガソン」をリリース。2018年1月には東京・日本武道館で2DAYSライブを行い、廣田あいかは1日目の「私立恵比寿中学迎春大学芸会 ~forever aiai~」をもって“転校”する。
- 大森元貴(オオモリモトキ)
- 1996年9月14日年生まれ、東京都出身。小学校の卒業式の謝恩会にてバンド編成で演奏したことをきっかけに、12歳で楽曲制作を始める。2013年に自身がボーカルギターを務めるバンドMrs. GREEN APPLEを結成。2015年7月にEMI Recordsよりミニアルバム「Variety」をリリースし、18歳でメジャーデビューを果たした。2016年1月には1stフルアルバム「TWELVE」を発表し、同年3月より初のワンマンツアー「TWELVE TOUR ~春宵一刻とモノテトラ~」で全国14カ所へ。その後も活躍の場を広げ、2017年1月に大森個人の作家活動として夢みるアドレセンスにシングル曲「恋のエフェクトMAGIC」を提供した。同月に2ndフルアルバム「Mrs. GREEN APPLE」をリリースし、3月より全国ツアー「MGA MEET YOU TOUR」を開催。5月に東京・東京国際フォーラム ホールAでツアーファイナルを迎えた。8月にはカンテレ・フジテレビ系ドラマ「僕たちがやりました」のオープニング曲を収めた5thシングル「WanteD! WanteD!」をリリース。ギターロックからEDMまでを扱う幅広い音楽性と深みのある歌詞によって、若いリスナーを中心に人気を集めている。