イヤホンズ|インタビューでも実験!? 普通じゃない5年間の普通じゃない“進化論”

「!!!」リメイクから見えてくる進化

──そしてこのアルバムには「背中のWING!!!」「わがままなアレゴリー!!!」「耳の中へ!!!」と、過去の楽曲に「!!!」を付けてアップデートしたものが3曲収められています。

高野 「背中のWING」は2ndシングルのカップリング曲で、本当に結成したばかりの頃にレコーディングしたんです。そこから思い出が重なって、私たちの中でも「こういうふうに歌いたいよね」という思いがどんどんできあがってきた曲でもあって。「こう歌ったほうが楽しい曲になるんじゃないかな」とか、「このアレンジだったらこの歌い方のほうがより背中を押せる曲になるんじゃないかな」とか、エモさを感じながら歌いました。

高橋 あと、なんか笑えました。いい意味の、笑みという意味で。この曲を歌うときは「成長しなきゃ」とか「誰かが見てくれているからがんばるぞ」みたいな気持ちだったんですけど、5年経つとそこに笑みが生まれるというか。歌いながら笑いたくなったんですよね。自然と口角が上がっていく感覚。

長久 「耳の中へ」と「背中のWING」は最初「それが声優!」のキャラクターとして歌っていたから、ひさびさに歌うと「ああ、もう私いちごじゃねえなー」と自分の声を聴いてて思うんです(笑)。改めて録り直してみて、自分の中に萌咲いちごちゃんは今いないなと感じました。

高橋 がっきゅは特にだよね。キャラクターと本人の差が一番大きいから、1stアルバム(2015年11月発売「MIRACLE MYSTERY TOUR」。参照:イヤホンズ「MIRACLE MYSTERY TOUR」インタビュー)のレコーディングでも「この曲は私といちご、どっちですか?」とか「どの塩梅ですか?」って確認してたもんね。

長久 そうなんですよ。ツインテ感はまったくないなと思って。最初にこの2曲をもう一度レコーディングすると聞いたときは「もうあのフレッシュさは出せないな」というのはあったんですけど、やっぱり変化はしていて、自分の歌い方もわかってきた中で曲と向き合ったので……同じように背中を押してくれる曲ではあるけど、今の3人で表現するとまた違う曲になるんだなと思いました。そして「わがままなアレゴリー!!!」に関しては、私たちの希望が通りました。

高橋 私たちから「ゴスペルがやりたい」と言ったんです。手を叩きたかったんですよ。

高野 そう、クラップソングを作りたかったんです。

高橋 3人で焼肉を食べているときに「次こういうのやりたいね」って話していて出てきたのが、みんなで手を叩く、その場にいるみんなで作っていくような曲がやりたいっていうアイデアが挙がって。

長久 そうそうそう。いいお肉を3人だけで食べてるときに(笑)。

高橋 その意見を汲み取ってもらった結果、「わがままなアレゴリー」がゴスペルバージョンになったんです。レコーディングも楽しかったー。私はマイクの前でめっちゃステップ踏んでました(笑)。

長久 私も。Pentatonix大好きだから、ゴスペルの女王やで!みたいな気持ちで歌いました(笑)。

高野 コーラス録りが多すぎて。私は普段だいたい1曲を2時間ぐらいかけて録ってるんですけど、この曲では全然足りなかったです。

高橋 楽譜もたぶん今までで一番厚いです(笑)。

長久 楽しかったし、完成したものを聴いたときの喜びも大きかった。

高橋 「これホントに私たち3人で歌ったの!?」って思ったもんね。

インタビューの様子。

ゴールが見えなくても怖くなくなりました

──「進化の過程盤」には「忘却」「再生」のほかにも、新曲との対比で楽しめる既発曲やリメイク曲のオリジナルバージョンが収録されるそうで。まさに「Theory of evolution」への“進化の過程”を収めるわけですね。

高橋 ホントだ! 「背中のWING」「わがままなアレゴリー」「耳の中へ」は「!!!」が付いてないバージョンなんですね。

高野 面白ーい。

高橋 セルフWikipediaみたいな感じですね(笑)。

──このコンセプトとギミックでよく1枚のアルバムにまとめたなと驚きましたが、レコーディングは過去2枚のアルバムと比べていかがでしたか? 大変そうではあるけど、経験を重ねたぶん乗り越え方、切り抜け方がうまくなっているところもあるでしょうし。

高橋 ゴールが見えなくても怖くなくなりました。先ほどおっしゃっていた「実験体」という感覚が私にもあって、現場で歌ったら「あとはお願いします!」みたいな。イヤホンズとしてやりたいことは、イヤホンズのメンバー3人だけのものじゃなくて、制作に携わっているみんなが作りたいものがイヤホンズなんです。その中のボーカルパートが私たちという意識で、やれることをやっていきたいなと。

──イヤホンズイズムを皆で共有しているみたいな。

長久 今もこの私たちの声がどうなるのか、私たちにはわからないんですよ。

高橋 三浦さんがうまくやってくれるんじゃない?(笑)

そりゃ3人で飛びますよ

──昨年10月に開催を予定していた4周年ライブは台風で延期になり、今年2月の振替公演も新型コロナウイルスの影響で流れてしまいました。本来ならばアルバムリリースとあればツアーなども予定していたのではないかと思いますが、いろいろ難しくなってしまいましたね。先のことが見えにくい状況ではありますが、5周年という節目を迎えた今、この先の目標をどう捉えていますか?

長久 私はずっと4言ってるんですよ。NHKホールでワンマンライブがやりたいって。それはもう、Aice5さんと一緒に立った夢のような、そして悔しさも残った会場を、自分たちのお客さんだけで埋めたいという思いです。

高野 うーん、なんだろうな。私は今まで巡った場所をもう一度巡りたいかな。今まで巡ってきた場所に、成長した姿でもう一度行きたいです。

高橋 「こういうことがしたい」や「こういうものが作りたい」よりも、どう作ったかが私には重要なんだなって思っているんです。この「Theory of evolution」という完成品ができた今、「Theory of evolution」を聴いてもらうことももちろんすごくうれしいんですけど、作る過程が楽しかったから、私、超満足していて。辞めたいとかではないんですよ? これでおしまいにしたいとかじゃなくて、今後も楽しく作る作業を続けていきたい。進化の過程をずっと楽しんでいきたいです。ゴールを定めるんじゃなくて、毎日毎週毎月、楽しい音楽を作れる仲間と何かをしていきたい。そう感じました。

長久 えー? でも前に言ってたじゃん。「それが声優!」の続きを描きたいです、って。

高橋 あー、それはずっと思ってる(笑)。関わった作品はどれも続いてほしいと思うし、声優としてのお芝居が生かされる場所があればいつでもどこでも駆けつけます。

──ライブの中でやってみたいことはあります? まだライブで挑戦していないこと。

長久 私……空飛んでみたい(笑)。ハーネス付けてみたいです。

──イヤホンズが飛ぶときは何人飛ぶんですかね? 全員?

左から高橋李依、高野麻里佳、長久友紀。

長久 そりゃ3人で飛びますよ。

高橋 みんな飛ぶの!?(笑)

高野 私はなんだろうなー。今までイヤホンズは曲の中で声優を表現してきて、そろそろミュージカルじゃないですけど、曲の中だけじゃなく幕間とかでも私たちの声優としての要素が表現できたらうれしいです。「それが声優!」みたいにキャラクターのコンセプトを決めて、短い劇を入れながら「それでは聴いてもらいましょう」みたいな。終わったあとに「ライブ楽しかったなあ」だけじゃない、1つのアートだったり、物語としての満足感を得られるようなステージを作ってみたいです。

──そういったストーリーやコンセプトを3人それぞれが考えてプロデュースする3DAYSみたいなこともできますよね。

高橋 ほかの2人を好きに動かせる日ってことですか?(笑)

長久 でも私たちそもそも2DAYSとかやったことがないよね。1日2ステージぐらい。やってみたいねー。どうなるんだろう。

──イヤホンズだったらいくらでも無茶なアイデアをぶつけても実践しそうだから考えるのが楽しそうですね(笑)。

長久 そう言われてみたら、このユニットだとなんでも可能性は広がりそうだし、私たちはこれまでも何度も無理難題をやらせていただいたから「できるんじゃない?」みたいな感じもする(笑)。