イヤホンズ|バラバラだからこそ寄り添えた3人、活動5年目に向ける思い

イヤホンズが6枚目のシングル「チュラタ チュラハ」を7月3日にリリースした。アニメ「斗え!スペースアテンダントアオイ」の主題歌に選ばれた表題曲は全編ウイスパーボイスで歌われるスウィンギンなナンバーであり、脳が心地よいと感じる反応・感覚を指す「ASMR」の要素を味わえる作品となっている。

今回のインタビューではメンバーの高橋李依、高野麻里佳、長久友紀のほか、取材当日に居合わせたエンドウ.(月蝕會議)にも同席してもらい、「チュラタ チュラハ」のコンセプトや結成4周年ライブ「CULTURE CLUB」、そして活動5年目に向けての思いを語ってもらった。

取材・文 / 須藤輝 インタビュー写真撮影 / 臼杵成晃

1クールで解散すると思ってた

──デビュー4周年おめでとうございます。

高野麻里佳高橋李依長久友紀 ありがとうございます!

高橋李依

──ぶっちゃけた話、4年続くと思っていました?

高橋 いや(即答)。

高野長久 ええー(笑)。

高橋 今は、5周年まであるなとは思うんですよ。あるよね?

高野長久 うん。

高橋 でも結成したときのことを考えると、正直、3カ月で終わっちゃうのかなって。

──1クールで。

高橋 はい。アニメ「それが声優!」発のユニットだったので、アニメの放送期間中のみの活動なのかな、という印象でした。

長久 3周年のときも「終わっちゃうのかな」とちょっと思ったかも。「3」はキリのいい数字な気がしてたから。でもそのときに、続けたいかどうかをレーベルの方に聞かれたんだよね。1人ずつ個別に呼び出されて、個人面談みたいな感じで。

高野 ああー、そうだ。

長久 各々がどう答えるのかわからないまま、自分の思いを答えて。

──そこで誰かが裏切っていたら……。

長久 ねえ、ドキドキですよね。でも、こうして4周年を迎えられたということは、3人とも同じ気持ちだったんだなって。

──むしろイヤホンズは「それが声優!」から独立して以降、年々タガが外れていったと言ったら言葉が悪いかもしれませんが、リリースのたびに「そう来ましたか」みたいな驚きがあります。

高野麻里佳

高野 私たちは楽曲に合わせて毎回なんらかのキャラクターを演じているので、そのキャラクターの振り幅がそのまま私たちの表現の振り幅になっていったところはあるかもしれません。と同時に、イヤホンズは言葉を大切にしているユニットでもあって、そういう気持ちは昔から変わらず持ち続けていますね。

高橋 うんうん。

──以前のインタビューで長久さんは「“イヤホンズらしさ”を定着させて、それプラス、いい意味で皆さんを裏切っていきたい」とおっしゃっていましたが、その通りになっていると思います(参照:イヤホンズ「予め失われた僕らのバラッド」特集 イヤホンズ×エンドウ.(GEEKS))。

高野 いいこと言ってるね、がっきゅ(長久)。

長久 私、そんないいこと言いました? でも、私たちも裏切られているというか、次はどんな曲を歌うのか想像できないし、いつも想像を超えたものが来るんですよ。だから挑戦の連続だし、きっとプロデューサーさんやイヤホンズに関わってくださるクリエーターさんにも「このままでいい」みたいな発想がないんですよね。みんなで山を登り続けようっていう意思がちゃんとあって、それがなくなったときが、たぶんイヤホンズが終わるときなんだと思います。

高野高橋 うんうん。

イヤホンズ、流行りに乗っかる

──2ndアルバム「Some Dreams」(2018年3月発売)は多様な楽曲群の中で声優としてのスキルが存分に発揮された作品でした(参照:イヤホンズ「Some Dreams」インタビュー)。その次に出す新曲はどんなものになるんだろうと思っていたところ、やはり裏切られました。

高橋 「Some Dreams」ではプロデューサーさんや作家さんたちが声優ならではの声による表現を突き詰めてくださったんですけど、その次が声質そのものを突き詰める楽曲になるとは、私も予想していませんでしたね。でも、そういう試みを提示してもらえたこと自体がうれしいというか、私たちが一番大事にしている武器を丁寧に丁寧に扱おうとしてくださっているのが伝わってきました。

長久友紀

長久 「チュラタ チュラハ」はもともと私たち3人が出演するアニメ「斗え!スペースアテンダントアオイ」の主題歌として作っていただいたんです。このアニメは宇宙が舞台なので、なんとなく「銀河鉄道999」みたいな歌をイメージしたんですけど、今りえりー(高橋)が言ったように、究極の癒しボイスが宇宙を漂っているような曲で。かつ、ふわふわしてる中でポップな音もちりばめられていて、聴けば聴くほど「これは寝ちゃうな」って。

──寝ちゃうんですか?

長久 心地よすぎて(笑)。

高野 私は「今までダサかわいかったイヤホンズが、流行りに乗るんだ?」と思いました(笑)。

長久 ASMR(※聴覚や視覚への刺激によって、脳が心地よいと感じる反応・感覚)だ。

高野 そう。私はこの「チュラタ チュラハ」を歌うことになって、初めてASMRというものが世の中で流行っているのを知ったんです。しかもそれをイヤホンズの曲に取り入れるということにまず驚いて。イヤホンズは我が道を行くユニットだと思っていたので。

高橋 確かに。

高野 でも、流行りに乗ることは今の時代を捉えるということでもあるので、そのうえで「じゃあ次はどこに進もうか」みたいな、旅の支度を整えるような曲かなあっていうイメージもありました。

──今日はたまたま「チュラタ チュラハ」の作詞・作曲・編曲を手がけられた月蝕會議のエンドウ.さんがいらしているので、楽曲制作についてお話を伺ってもいいですか?

エンドウ. はい、お邪魔します。まず、さっきがっきゅも言っていた通りこの曲は「スペースアテンダントアオイ」の主題歌になることが決まっていたんですね。なので作品のイメージを監督にお聞きしたところ、ちょっとレトロな宇宙モノで、バトルもあり、なおかつお仕事モノであると。じゃあどんなのがいいだろうと思ったときに、最初に渋谷系のサウンドが頭に浮かんだんですよ。例えばカヒミ・カリィさんみたいな。

──今「渋谷系」というワードにイヤホンズの3人がキョトンとされてましたけど、当然リアルタイムでそういった楽曲を聴いた世代ではないわけですよね。参考資料みたいなものをお渡ししたりは?

イヤホンズ

エンドウ. 作り手側としてはサウンドの裏テーマをなんとなく設定していたんですけど、それをマネしたいわけではなかったので、3人にはざっくりしたイメージを伝える程度だったと思います。で、サウンドはその方向で行くとして、歌はどうするかってなったとき、イヤホンズは「声優ならではのことをやりたい」といっつも言ってるので「じゃあ今回はささやき声とか吐息にフォーカスしてみる?」「ASMRってあるよね? 脳がゾワゾワするってやつ。それで両耳から攻めてもらう?」みたいな感じで。そうすることで声優としての魅力もかなり発揮できるんじゃないかって。

──全編ウイスパーボイスで歌われているのも、「そう来ましたか」と思った要因の1つでした。

エンドウ. 実は、当初は部分的にウイスパーで歌ってもらうことを想定してたんですよ。でも、やっぱりイヤホンズは大胆なので「全部ウイスパーで行っちゃおうか!」っていう。結果的にうまいこと成り立っていて、僕もびっくりしました。