「ふわっ ふわっ」「ふわっ ふわっ」
──6曲目の「Fuwa くちゃ Dreamer」は、小坂明子さん作詞作曲の優しいバラードです。
高野 小坂先生は、私たちのボーカルの先生なんですよ。
──へええ。
高野 なので、プライベートでも親しくさせていただいていることもあり、ちょっと特別な気持ちもあって。少女の夢みる気持ちみたいなものがギュッと詰まっている、すごくかわいらしい曲だなって思います。
高橋 手前味噌になってしまいますけど、女性声優ならではの声のかわいらしさや、声本来の魅力を感じてもらえる楽曲になった気がします。「ふわっ ふわっ」っていうコーラスも自分たちの声で入れさせてもらったりして、改めて、3人の声の相性がめちゃめちゃいいんだなっていうのを感じました。
──1番はアカペラですし、コーラスも分厚いですし。
長久 そうなんです。この曲では私が最初にレコーディングしたんですけど、まず今りえりーが言った「ふわっ ふわっ」から録ったんです。でも、宙を漂うような「ふわっ」になかなかならなくて。そしたら小坂先生が「一緒にやろ」って言ってブースに入ってきてくださったんですよ。そんな優しくて情熱的なディレクションのおかげで、とても浮遊感のある歌を録ることができました。で、私の次にりえりーがレコーディングして、それが終わったあとにりえりーのおうちに3人で集まってイヤホンズ女子会をしたんですけど……。
高橋 そっか、そのときか。
長久 その「ふわっ ふわっ」にはものすごい中毒性があって、私とりえりーの2人でずっと「ふわっ ふわっ」「ふわっ ふわっ」って言い合ってたんです。そこへ、まだレコーディングしてないまりんかが遅れてやって来て、呆然と立ち尽くすっていう。
高野 「2人ともどうしちゃったの……?」みたいな(笑)。
高橋 完全に1人だけ置いてけぼり(笑)。私とがっきゅは録ったばっかりだからリアルタイムで「ふわっ ふわっ」してて。でも、アルバムが出て、やっとコマクちゃんたちとも「ふわっ ふわっ」を共有できます。
イヤホンズ、悪魔召喚の呪文を唱える
──その「ふわっ ふわっ」感が、7曲目のイヤホンズ流ロックオペラ「予め失われた僕らのバラッド」でぶった切られると。
長久 確かに(笑)。
──そして、続くJ・A・シーザーさん作詞作曲の「ウィッチクラフト《テオフィルの奇蹟》」は、ダークなロック路線を突き詰めたようなシンフォニックメタル的なナンバーです。
高橋 振っちゃいましたね、そっちに。
高野 「ウィッチクラフト」はすごいですよね。歌い方もほかの曲とは全然違って、コーラスに近いような。
高橋 身を削ってる感じがする。悪魔を呼び出す儀式のために、喉が裂けようとも歌い上げるみたいな。
高野 そう、力強い曲なんだけど、その力強さの方向性が、例えば「予め失われた僕らのバラッド」とは違っていて。外に発散すると言うよりは、内側に溜め込む感じ?
長久 後半の、呪文を唱えるパートとかね。
高野 この呪文、めちゃくちゃ大変でした。「バガビ ラカ バカビ ラマク カヒ アカバベ カルレリオス……」っていう歌詞を最初にいただいたときは、自分にとってはカタカナの羅列でしかなかったので。
高橋 しかも、小節ごとに言葉が振り分けられてはいるんですけど、実際に歌ってみると全然4拍ずつに分かれていなくて。なので、まず歌詞と曲を一致させる作業が大変でしたね。
高野 唱えてるうちにちょっと洗脳されつつあったよね?
長久 ええー!
高野 最初は「わあ、大変だ」っていう気持ちしかなかったのが、だんだんこの曲の宗教的なムードに吸い込まれていくと言うか……。
長久 でも、これも「ミーチャイキュットンティーガプリウテグバンコ」と一緒で、言えるとめっちゃ気持ちいいんだよね。
高橋 うん。だから皆さんも一緒に歌ってほしいです。
イヤホンズ×永井ルイ×ROLLYの“人間賛歌”
──「ウィッチクラフト」のダークな世界観をコミカルな路線で引き継いだ「Yummy Yummy Party」から、アッパーなダンスチューン「サンキトウセン!」、クラシックの名曲の数々をつなげてガールズロックに仕上げた「ヨロコビノウタ」を経て、アルバムの最後を飾る「未来泥棒」へ。こちらは永井ルイさんとROLLYさんの共作によるバラードです。
高橋 永井さんは、1stアルバムの「Magic of love」(永井が作・編曲を手がけた楽曲)のレコーディングでもそうだったんですけど、私たちの一番いい歌を引き出すディレクションしてくださるんですよ。だから、今回もテイクを重ねるたびに自分でもびっくりするくらい、どんどんいいものが生まれているっていう実感があって。
長久 私、りえりーが歌う「導かれ」っていうフレーズを聴いて「うわ!」って思ったの。あそこはこの曲の中でキーになってるよね。
高橋 ホントに? うれしい。あそこは技術的にも今までやったことのない歌い方に挑戦したところなの。
長久 「未来泥棒」は遠い未来の、人類がいなくなった世界で、壊れかけのアンドロイドが何かをしゃべってるっていうイメージなんですよ。
──曲のイントロとアウトロで「認識デキマセン」といった機械的な音声が聞かれますしね。
長久 だから私としてはあまり感情を込めずに、あえて無機質な感じで歌うのがいいのかなって思ってたんです。でも、例えば「ここは歌い上げる」とか、パートごとに変化があっていいんだと思って。それで、私のレコーディングでは永井さんとROLLYさんのお二人にディレクションしていただいたんですけど、ROLLYさんが「もっとダルそうに歌える? こういう感じで」って、自ら歌ってお手本を示してくださったり。
高橋 うわ、ぜいたく!
長久 そうなの。そうやって試行錯誤を繰り返しながら、その場で感情の振れ幅を定めていきました。
高野 最初のほうで曲ごとのテーマの話が出ましたけど、「ヨロコビノウタ」のテーマは“愛”で、「未来泥棒」は“人間賛歌”なんです。でも私は「未来泥棒」も愛を歌っていると思っていて。「ヨロコビノウタ」はどちらかと言うと人間の愛を歌った曲で、一方の「未来泥棒」は、そんな人間を育んだ地球をも包み込むような、生そのものへ愛みたいな、すごくスケールの大きな愛を歌っているんじゃないかなと。だから「ヨロコビノウタ」からの「未来泥棒」という流れに意味を感じるんです。
──「未来泥棒」の歌詞って、非常にSF的ですよね。
高橋 今まりんかが言ったように宇宙的なスケールで、そこでは人間なんてちっぽけな存在と言うか、歌詞の中ではすでにいなくなってしまっているんですけど、そんな人間に対してネガティブじゃないのがいいですよね。曲中に挿まれるアンドロイドの声もやらせてもらったんですけど、そのアンドロイドの気持ちで歌ってみたときに、やっぱり人間をポジティブに捉えていなければ「宝石箱」みたいなワードは出てこないですし。そんな歌をアルバムの最後に歌えたっていうのが、人間としてうれしかったです。
長久 りえりーが人間代表みたいだね(笑)。
一同 ははは(笑)。
長久 そう、大事なことを言い忘れていたんですけど、実はアウトロのアンドロイドのセリフは、すかんちさんの「ロビタ」(1995年11月発売のアルバム「DOUBLE DOUBLE CHOCOLATE」収録曲)の歌詞の一部をそのまま引用させていただいてるんです。
──マジですか? でも、言われてみれば確かに「未来泥棒」は「ロビタ」に通じるものがありますね。
高橋 もう、光栄としか言いようがないよね。
高野 うんうん。
海賊として、各地を荒らして回りたい
──イヤホンズは6月にデビュー3周年を迎えると共に、それにあわせた初の東名阪ツアーも決定していますね。
高橋 今、自分たちが「やりたい」って言ったことをやらせてもらっている状況なんですよ。1月からラジオ(音泉にて配信中の「イヤホンズの三平方の定理」)を始めて、こうしてアルバムを出して、今度はツアーをさせてもらえる。以前から、いろんな地方の方から「ウチのほうにも来て!」と言っていただいていて、今回やっと、まだ東京以外は愛知と大阪のみですけど、皆さんの応援のおかげで行けることになったので、まずはその3公演を大成功で終わらせたいです。
──そのあとのことはツアーが終わってから?
高橋 それから考えるべきかなって。もちろんほかに行きたい場所もやりたいこともあるんですけど、そこにつなげるためのツアーでもあると思うので。
長久 さっきラジオの収録があったんですけど「最近、イヤホンズのファンになりました」っていうお便りもよくいただくんですよ。実は去年の6月の2周年記念ライブ以降、コマクちゃんと交流できるイベントができていなくて。だから、またラジオを通して皆さんから生のメッセージが届いているのがすごくうれしいんですよ。その喜びを活力にしてツアーに臨むと共に、コマクちゃんの思いに応えたいです。
高野 今回のアルバムで、ご覧の通り私たちは海賊になったので、3年目のイヤホンズは、こう、新しい土地を荒らし回るくらいの勢いで。
──なるほど。賊として。
高野 はい。賊なので。
高橋 いいね。
長久 うん。
高野 もちろん、ツアーでは応援してくださっている皆さんへ感謝の気持ちを届けるっていうのが一番大事なんですけど、こうしてチャレンジ精神をもって新しいアルバムを作ることができたので、この「Some Dreams」を背負って各地を賑わせたいです。
イヤホンズ 2ndアルバム「Some Dreams」全曲試聴トレイラー
- イヤホンズ「Some Dreams」
- 2018年3月14日発売 / EVIL LINE RECORDS
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月世界旅行楽団LIVE盤 [CD+Blu-ray]
8640円 / NKZC-20~1 -
初回限定盤 [CD2枚組]
4968円 / KICS-93684 -
通常盤 [CD]
3240円 / KICS-3684
- CD収録曲
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- 新次元航路[作詞:只野菜摘 / 作・編曲:月蝕會議]
- 理想郷物語[作詞・作曲・編曲:山田高弘]
- 一件落着ゴ用心[作詞:只野菜摘 / 作・編曲:横山克]
- ミーチャイキュットンティーガプリウテグバンコ[作詞:こだまさおり / 作曲:山田高弘 / 編曲:齋藤真也]
- あたしのなかのものがたり[作詞・作曲・編曲:三浦康嗣(□□□)]
- Fuwa くちゃ Dreamer[作詞・作曲:小坂明子 / 編曲:小坂明子、富永航大]
- 予め失われた僕らのバラッド[作詞:桑原永江 / 作・編曲:エンドウ.]
- ウィッチクラフト 《テオフィルの奇蹟》[作詞・作曲:J・A・シーザー / 編曲:J・A・シーザー、a_kira]
- Yummy Yummy Party[作詞・作曲:CHI-MEY / 編曲:大久保友裕]
- サンキトウセン![作詞・作曲・編曲:エンドウ.]
- ヨロコビノウタ[作詞:岩里祐穂 / 作曲:フレデリック・フランソワ・ショパン、ヨハン・パッヘルベル、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ、クリスティアン・ペツォールト、ジョルジュ・ビゼー、ジョアキーノ・ロッシーニ、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン / 編曲:エンドウ.]
- 未来泥棒[作詞・作曲・編曲:RUI & ROLLY]
- 月世界旅行楽団LIVE盤 Blu-ray収録内容
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- イヤホンズ2周年記念LIVE「月世界旅行楽団」映像 全編収録
- 初回限定盤 DISC 2「イヤホンズのMUSIC TRIP」CD収録曲
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- 残酷な天使のテーゼ
- 現象のブレイド / 大槻ケンヂとイヤホンズ
- 乙女のポリシー
- パラレルギャロップ / 高橋李依
- UNRULY COASTER / 高野麻里佳
- いーあるさんせっと / 長久友紀
- 応援歌!
- イヤホンズ 3周年記念LIVE Some Dreams Tour 2018 -新次元の未来泥棒ども-
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- 2018年6月17日(日)愛知県 名古屋ReNY limited
- 2018年6月24日(日)大阪府 umeda TRAD
- 2018年7月7日(土) 東京都 チームスマイル・豊洲PIT
- イヤホンズ
- 2015年夏放送のテレビアニメ「それが声優!」で主演を務める声優の高野麻里佳、高橋李依、長久友紀の3人からなるユニット。「それが声優!」作中で新人声優3人が結成するユニット「イヤホンズ」が現実でも活動を開始したというコンセプトのもと、同年6月にシングル「耳の中へ」でデビューを果たした。翌7月にアニメのオープニングテーマである「それが声優!」、9月には同じくアニメの挿入歌「光の先へ」をシングルとして立て続けにリリース。さらに同年11月には1stフルアルバム「MIRACLE MYSTERY TOUR」を発表した。2016年4月に大槻ケンヂとのユニット「大槻ケンヂとイヤホンズ」として配信シングル「現象のブレイド」を、同年10月には4thシングル「予め失われた僕らのバラッド」をリリースした。2017年2月に5枚目のシングル「一件落着ゴ用心」を発表。表題曲はテレビアニメ「AKIBA'S TRIP -THE ANIMATION-」のオープニングテーマに採用された。2018年3月に2ndアルバム「Some Dreams」をリリース。