DUSTCELLインタビュー|新たなフィールドへの扉を開いた1stミニアルバム「Hypnotize」 (2/2)

映画「キッズ・リターン」から受けたインスピレーション

──続く「不成者」は、ハードなヒップホップがポップに昇華されているナンバーです。「俺たちは下等生物 / 社会に溢れはみ出して異物」など、強烈なフレーズが並んでいます。

Misumi DUSTCELLの最初の曲「CULT」は、映画「ファイト・クラブ」にインスパイアされて作ったんですが、「不成者」は北野武監督の「キッズ・リターン」がもとになっているんです。ヤンキーの2人組がボクサーを目指す話なんですけど、すごくいい作品で。「不成者」はストーリーをなぞっているわけではないですが、歌詞の中にセリフを引用している部分もあるし、わかる人はわかるんじゃないかなと。

EMA この曲を作っているときに、たまたま「東京卍リベンジャーズ」を読んでいたんですよ。「東リベ」もヤンキーの世界を描いているので、共通する部分を感じていたし、「東リベ」と同じく前向きになれる作品だなと。ヤンキーの人たちを見てると元気になるんですよね。自分の悩みなんて小さいと思える。

Misumi わかる。

──4曲目「どした?」、5曲目「ID」、6曲目「SANDBAG」はダークなテイストの楽曲で、トラップ系のトラックを含めて、これまでのDUSTCELLらしさを感じさせる楽曲だなと。

Misumi DUSTCELLらしさを踏襲しつつ、さらに一歩踏み込んだという感じかな。トラップはずっと作っているし、やっぱり好きなんです。K-POPをずっと聴いているので、その影響もあると思います。

「DUSTCELL TOUR 2022『百鬼夜行』」Zepp Osaka Bayside公演の様子。

「DUSTCELL TOUR 2022『百鬼夜行』」Zepp Osaka Bayside公演の様子。

──「ID」「SANDBAG」の作詞はEMAさんが担当しています。

EMA はい。Misumiさんからトラックをもらって、「自分で書きたいです」と伝えました。

Misumi 「ID」はEMAのリリックが先にあったんですよ。フリーのトラックを使ったデモが送られてきて、僕がトラックをイチから作り直しました。

EMA あ、そうでした(笑)。歌詞に関してはあまり話すことがないというか、作品を言葉で説明するのが苦手なんですよ。その場のノリでバーッと書いちゃうので……。

Misumi 書き出すと早いんですよ、EMAは。数時間で一気に書くこともあって。

EMA 「書ける!」と思ったら、創作の熱量がなくならないうちに書き終えたいんです。ほとんどその日のうちに書いちゃいますね。

──それくらい強い衝動を込めているんでしょうね。「SANDBAG」の歌詞には、SNSでのdisを想起させる言葉もあって。音楽活動をしていると不特定多数の人たちからいろいろな意見が届くでしょうし、ネガティブなことも含まれていると思いますが、EMAさんは他者からの言葉に打たれ強いほうですか?

EMA そうですね……ちょっとずつ打たれ強くなってきていると思います。僕はもともと自分に自信がなくて、自己肯定感が低くて。そういう性格ゆえに、他人から言われたことを真に受けて、ちゃんと傷付いていたんです。でも、年齢を重ねるにつれて緩和できているのかなと。だいぶメンブレしなくなりました。

MVで起こる予想外の出来事

──そして「Void」は、ノスタルジックな旋律とダークファンタジー的な世界観がせめぎ合うミディアムチューンです。

Misumi 「Void」と「漂泊者」は1年くらい前から存在している曲で。すでにライブでも披露しているし、ファンの皆さんは「ようやくリリースされるのか」という感じだと思います。「Void」にも元ネタみたいなものがあって……。

EMA 言ったほうがいいんじゃない?

Misumi そうか(笑)。「地獄楽」というマンガがすごく好きで、そこからインスピレーションを受けているんです。マンガの世界観もそうなんですけど、「Void」の歌詞でも古語というか、古めかしい言葉を使っていて。日本語の美しさを大事にした曲ですね。

EMA 僕も「地獄楽」が大好きなんですよ。「たおやか」という言葉もそうなんですけど、「あの作品が好きな人ならわかるだろうな」という単語がこの曲にはちりばめられていて。曲自体もすごく好きだし、大事に歌いました。

──ミニアルバム最後の曲「漂泊者」は、ドープなトラックと歪んだギター、高揚感あふれるサビが共存するハイブリッドな楽曲ですね。

Misumi もともとは中国のスマホゲームのタイアップ曲として作った曲なんです。「命の行方」のビート感と通じる部分もあるかもしれないですね。歌詞のテーマとしては恋愛の不器用さというか、相手との関係に悩んでいる主人公を描いていて。個人的には2番のサビの終わり、「海沿いを手を取り歩いたこと / 脊髄の奥まで震えたこと」のパートが気に入ってます。

EMA めちゃくちゃヤバい曲です。「傷や穴を星座で塞いで / 区切り分けてしまいたいよ」というフレーズもそうなんですけど、宇宙や天体のイメージもあって。曲全体の世界観もすごく好きだし、ミュージックビデオも素晴らしいんですよ。

──MV制作にはお二人も意見を出しているんですか?

Misumi この曲に限らず、あまり細かく言うことはないですね。いくつかキーワードを挙げさせてもらって、キャラクターのイメージをお伝えするくらいで、あとはお任せしています。そうすることで僕らの考えている以上の映像になるし、予想外のことが起きるので。

EMA MVを依頼しているクリエイターの方々は、皆さん本当に素晴らしい才能の持ち主で。クオリティの面で信用しきっているので、僕らが余計なことを言わないほうがいいんですよ。実際、いつもすごい映像を作っていただいているので、感謝しています。

ライブで受け取る“生きてる”という実感

──11月17日には、東京・TOKYO DOME CITY HALLでワンマン公演「DUSTCELL LIVE 2022『PREPARATION』」が開催されます。これまでのワンマンは主にZeppだったので、過去最大キャパの会場ですね。

Misumi はい。今回は新しいスタイルでやろうと思っていて。今までは僕とEMAだけでステージに立っていたんですが、この公演では大きく変わる予定です。

EMA そのスタイルを定着させていきたいんですよね、この先。

──作品と同様、ライブも新しいフェーズに入るというわけですね。ライブ自体に対するモチベーションも変化していますか?

EMA 最初の頃はライブが嫌いだったんですよ。自分に自信がなくて、EMAとして人前に立つのがイヤで。でも、ライブを重ねる中で、「すごくエネルギーをもらえる場所だな」と思うようになって。今はかなり前向きになっています。

Misumi ライブって、めちゃくちゃ“生きてる”という実感を与えてもらえるんですよ。DUSTCELLの音楽を聴いてくれている人、ファンの皆さんを直接見られる唯一の場所だし、すごく貴重な機会だなと思っています。僕らはずっと日本武道館を目標にしていて。11月のライブで、さらに目標に近付きたいですね。

「DUSTCELL TOUR 2022『百鬼夜行』」Zepp Osaka Bayside公演の様子。

「DUSTCELL TOUR 2022『百鬼夜行』」Zepp Osaka Bayside公演の様子。

公演情報

DUSTCELL LIVE 2022「PREPARATION」

  • 2022年11月17日(木)東京都 TOKYO DOME CITY HALL

プロフィール

DUSTCELL(ダストセル)

2019年10月に始動した、ボーカルのEMAとコンポーザーのMisumiによる2人組音楽ユニット。それぞれ歌い手とボカロPというキャリアを積んできた2人によって結成され、YouTubeに投稿された初の音源「CULT」が公開から3週間で100万回再生を突破するなど、大きな注目を浴びる。2020年5月に1stアルバム「SUMMIT」をリリースし、同年7月に初のワンマンライブを東京・WWWにて開催。その後も「DERO」「PAIN」「Mad Hatter」や、専門学校HALのCMソングとして使用された「命の行方」など、立て続けに楽曲をリリースし、2021年10月には2ndアルバム「自白」を発表した。2022年には、8月に初のミニアルバム「Hypnotize」をリリースし、11月には過去最大キャパとなる東京・TOKYO DOME CITY HALLにてワンマンライブを行う。