DUSTCELL|解消されることのない焦燥感を音楽に 感情を吐き出した2ndアルバム「自白」完成

無意識に滲む宇多田ヒカルからの影響

──「TOUBOU」はエキゾチックな雰囲気の楽曲です。テーマは“逃亡”ですよね。

EMA そうですね。タイトル通り、人生から逃げてる人の歌です。トラックのイメージに引っ張られてるところもありますけど、自分自身「逃げたい」と思うことがあるので。

Misumi それは前からだよね(笑)。

EMA (笑)。サビのドロップがすごくよかったので、そのままドロップを生かしたメロディにしたいと思いました

Misumi 「DERO」と同じようなニュアンスですね。

──K-POP的なアプローチですね。このあと、ドラムンベース的なインスト「白雨」を挟んで、アルバムの雰囲気がかなり変わります。

Misumi そうですね。「albino」からメロディアスな曲が続くので、場面を切り替えたくて。「albino」は、歌がドーンと前に出る曲にしたかったんです。歌詞には儚さ、弱さが滲んでますね。

EMA 前奏がなくて、最初から歌がドンと出ていて。こういう曲は好きだし、DUSTCELLにとって新鮮な曲だなと思いました。メロディもすごく強いし、もともとバラードも好きだから、楽しく録れました。

──続く「bibouroku」は憂いのあるメロディが印象的でした。備忘録をテーマにしたのはどうしてですか?

EMA 作詞するときに自分がつけている日記を読み返すことがあるんです。「bibouroku」の歌詞もそうやって書いたもので。自分の昔の日記って、すごく面白いんですよね。書いたときの感情を完全に思い出すことはないけど、「そういえば、こういうシーンあったな」とよみがえってきたり。

Misumi いい歌詞ですよね。ちょっと怖さや危うさもあって。

──そして「ORIGINAL」はリズムの起伏とEMAさんの歌声のハマり具合が気持ちよくて。かなりポップですよね。

Misumi キャッチーですよね。意識していたわけではないんですけど、僕らのマネージャーから「宇多田ヒカルさんの『traveling』を思い出した」と言われて。

EMA あー、確かに。

Misumi 宇多田ヒカルさんはずっと好きなアーティストなので、自然と影響が出てるのかもしれないですね。この曲のコード進行も、2000年代前半の懐かしい雰囲気がちょっとあって。作詞はEMAなんですが、怒りを込めてるんだよね?

EMA そうですね……。

Misumi あ、言わないほうがいい?

EMA いえ(笑)。なんだろう、最近、個性の潰し合いが多い気がしていて。あまり尖ったことは言えないですけど、似たり寄ったりの世の中だなと思うことがあるので、その気持ちを歌詞に込めました。

希望を感じられるラストにしたかった

──「命の行方」は、音楽的にすごく多彩な楽曲だなと。

Misumi ありがとうございます。この曲に関しては……自分はボカロPとして活動して、そのあと、DUSTCELLを結成して今に至るんですが、曲を作っていく中で学んだことを詰め込みまくってるんです。サビのドラムンベース的なパートはボカロPのときによくやっていたし、そのあとのドロップサビは「DERO」のニュアンスが入っていたり。最初から意識していたわけではなくて、できあがってみたらそうなったんですけどね。

──「音楽が唯一の救いだった」というフレーズも印象的でした。

Misumi タイアップ先(専門学校HAL)がクリエイターを目指す人たちが通う学校だったので、創作者を応援できるような歌詞になればという思いは最初からありましたね。

EMA この曲と最後の「独白」には本当に衝撃を受けました。何かを作ろうとしている人にはすごく刺さると思うし、背中を押せる曲になるんじゃないかなと思います。

──最後の「独白」も、このアルバムを象徴する楽曲だと思います。超ディープなトラックと解放感のあるメロディのコントラストがすごく鮮やかで。

EMA このアルバムの中で一番好きな曲かもしれないです。サビメロもいいし、歌詞も自分に刺さる部分がたくさんあって。

Misumi 行き場のない感情みたいなもの?

EMA はい。自分の人生の中で、そういうことを感じることが多々あるので。

Misumi アルバムの最後は少し明るさが見えるようにしたくて。MVも花火が上がる場面で終わるんですけど、すべてを闇の中で表現するのではなくて、希望を感じられるようにしたかったんです。

憧れていたZepp Tokyoのステージに

──11月11日には東京・Zepp Tokyoでのワンマンライブが控えています。3度目のワンマン、どんなライブにしたいですか?

EMA 楽しみたいですね。1年ぶりのライブだし、前回よりもたくさんのお客さんに会えるのもうれしくて。

DUSTCELL

──EMAさん、ライブに対してすごく積極的ですね。

EMA 「積極的になった」が正しいですね。最初はマジで嫌だったので……。

Misumi そうだったね(笑)。

EMA やってみて、楽しさがわかったんです。やってみないとわからないことってあるなと思います。

Misumi Zepp Tokyoは昔からよく足を運んでいたライブハウスなんです。今年いっぱいでなくなっちゃうから、自分たちにとっては最初で最後のZepp Tokyoでのライブだし、あのステージに立てることが本当にうれしくて。これまで以上に楽しみたいですね。みんなでもみくちゃになって、声を出すのが自分にとってのライブの原点なので、何年先になるかわからないけど、大きい会場でそういう光景を見たいです。

公演情報

DUSTCELL 3rd ONE-MAN LIVE「自白」
  • 2021年11月11日(木)東京都 Zepp Tokyo
DUSTCELL(ダストセル)
2019年10月に始動した、ボーカルのEMAとコンポーザーのMisumiによる2人組音楽ユニット。それぞれ歌い手とボカロPというキャリアを積んできた2人によって結成され、YouTubeに投稿された初の音源「CULT」が公開から3週間で100万回再生を突破するなど、大きな注目を浴びる。2020年5月に1stアルバム「SUMMIT」をリリースし、同年7月に初のワンマンライブを東京・WWWにて開催。その後も「DERO」「PAIN」「Mad Hatter」や、専門学校HALのCMソングとして使用された「命の行方」など、立て続けに楽曲をリリースし、2021年10月には2ndアルバム「自白」を発表した。