ナタリー PowerPush - dustbox
疾走するメロディックビート 2年ぶりアルバム「starbow」完成
「Hiding Place」は今までで一番暗くてリアルな曲
──このアルバムにはキラキラした中に、等身大の人間くささや切なさも詰まっていますよね。中でも今回特に印象に残ったのが8曲目「Hiding Place」で、この曲はバラードでも似合いそうな切なさを感じさせる曲だと思うんです。でもあえてテンポをスローにせずパワフルなアレンジに仕上げている。「切なさも力強く」という皆さんの信条があるんでしょうか? この曲はどういう思いから生まれたものですか?
この曲は今回のアルバムの中で一番暗いというか、心の内側を歌ったような曲です。他の曲では希望を歌ってますが、この曲はあえて希望を否定してます。もともと俺はすごいネガティブ思考な人間で、曲を作るようになってから、自分の応援ソングみたいな感じで明るい曲を作ってたんですよね。そしたらいつの間にかこんな人間になってました(笑)。
──曲を作ることによって、明るい人間になれた?
そうですね(笑)。でも今回あえて自分のダークな部分を出してみようと思って、この曲を書いてみたんです。いつもアルバムに1曲は暗い感じの曲があるんですが「Hiding Place」は今までで一番暗くてリアルですね。
──素の自分を出してしまおうと。
そうですね。あえて(笑)。結果、雰囲気がすごく気に入ってます。
──そういう曲があるからこそアルバム全体の表情も増してますよね。勢いだけじゃない切なさや優しさ、そして暗さもあって、何よりdustboxには伸びやかなポップ感を感じます。そこにはSUGAさんの声の存在も大きいと思います。ボーカルに関して意識していることはありますか?
やっぱり自分にしか歌えない曲を作ろうというのは、いつも考えてますね。同時にこの曲をどう歌えばもっと個性が出るかっていうのも常に意識してます。バンドのボーカリストはたとえ世間的にはヘタと言われても、バンドでカッコよければいいわけだから。うまくなろうってことよりも個性を大切にって思います。
──コーラスも映えてますね。特にラスト。コーラスで広がりを見せた後にバシッと終わらせないでフワッと終わるというか、星がスッと消えていくような終わり方が印象的で。切ないと同時に次に続く感じもする。あのエンディングはすぐに浮かんだものですか?
いや、レコーディング前日くらいまでずっと悩んでました。自分のパソコンでプリプロの音源をいじくりながら、終わり方を何通りも作りました。今回の作品は、最後の曲からまた1曲目につながるようにしたかったんです。なので最後に声が残るのがベストでした。この終わり方が決まったときに、俺の中で今回のアルバムの完成図が見えました。
融合させてもっといろいろ変な曲を作りたい
──曲作りで特に意識していることはありますか? 虹や雨のような風景が浮かぶサウンドがいつも印象的だなあと思うんですが。
楽器のアレンジでは、聴いてて映像が浮かぶようにっていうのは心がけてますね。そこに合わせる歌詞の響きも大切にしてます。歌詞は何回変わってるかわかんないですからね。練習してると、たまに昔書いたやつを間違って歌ったりするときがあるんですよ(笑)。
──ところでメロディックパンクはdustboxにとってどういうものですか?
どういう?……好きですが、何か(笑)。
──(笑)。作品を作るときに、メロディックパンクというジャンルを意識する部分もあるんでしょうか? それともそういう枠はもう気にしていない?
特に考えてないですね。自分たちらしくできればなんでもいいと思いながら作りました。結果完成してみたら速い曲が多いんですけど。やっぱり好きなんですね、速いのは(笑)。
──影響を受けた音楽を挙げるとすると、どのあたりになりますか?
やっぱりメロディックで言うなら、LAGWAGONやNO USE FOR A NAMEですかね。あとはうちのメンバーみんな音楽性バラバラですから、そこにANTHRAX、MEW、THE CHEMICAL BROTHERS、さらには日本の歌謡曲も好きで、それらを混ぜた感じというか、もっと融合させて、もっといろいろ変な曲を作りたいなーって思ってます(笑)。
──ではアルバムを作り終えた今の気持ちは?
いいものができたとは思いますが、まだよくわからないですね。まだジャケット付きの製品盤ができてないし。でも今までで一番面白い作品だと思いますよ。自分たちでアルバムの本当の良さがわかるのはツアーが始まってからだと思いますけど。ツアーが始まってからいろいろ感じるんだろうな。曲の印象もライブで変わりますからね。ライブを重ねることによって、曲はどんどん変化していくと思うし。とにかくツアーが楽しみです。
10年間で遠回りしたかもしれないけどそれで良かった
──過去のことになりますが、一度メジャーからリリースし、その後再びインディーズに戻り、そこから今につながる躍進があると思います。インディーズに戻ったときの気持ちの変化はどういうものだったんでしょうか?
インディーズに戻ったときは「好きなこと思いっきりやってやる!」っていう3人の気持ちが燃えてたと思いますよ。だって解散しようかと思ってて、でも話し合ったら「やっぱりこのままじゃ悔しい!!」って言って、またイチからやろうって始めてますからね。
──そのときの思いがバンドとしての自信にもなってるんでしょうね。
それはそうですね。
──現メンバーでの活動開始から10年ですが、振り返って思うことは? そして今後に向けて思うことは?
いろいろありましたけど、決して無駄な経験はなかったですね。つらい思いをしても乗り越えれば強くなると思うし、最高に素晴らしい経験もたくさんできたし。遠回りしたかもしれないけど、それで良かったんです。10年を経て、ここからまたやりたいことを見つけて、ひとつひとつ大事にやっていきたいと思います。
──年末から年明けにはツアーもありますね。dustboxにとってライブとはどういうものですか?
家でCDを聴くのとまったく違いますからね、ライブは。今まで俺もライブを観て好きになったバンドがたくさんいるし、ライブはお客さんと一緒に楽しめますから。今回は特にツアーが楽しみです。というのは、ライブで面白くなりそうな曲が多いから。お客さんと一緒に騒いで、ズッコケたりしたいですね(笑)。
──では最後にツアーへの意気込みを。
今回も約半年という長いツアーですが、最後まで気合入れていきます。お客さんも自分もメンバーだと思って、自分のパートだと思うところを練習してね(笑)。俺も俺のパートを練習します(笑)。みんなで楽しみましょう!
CD収録曲
- New Cosmos
- Break Through
- One & Only
- You'll Never Be All Alone
- Thrill
- Don't Regret, Never Trying
- Runaway Train
- Hiding Place
- Daydream
- Hate Hate Hate
- Never Ending Dream
- Tears Of Joy
dustbox(だすとぼっくす)
1996年に埼玉で結成。1999年以降、SUGA(Vo,G)、REIJI(Dr)、JOJI(B,Cho)の3名で活動を続ける。コンスタントな音源リリースと全国ツアーの実施を重ね、ライブの動員は着実に増加。2010年には東京・新木場STUDIO COASTでのワンマンライブを成功させている。2010年11月に約2年ぶりとなる6thアルバム「starbow」をリリース。