DURDN特集|Spotify注目の気鋭ユニットが目指す、ワールドワイドな視点を持ったメインストリームの音楽 (3/4)

インタビュー後編

韓国をルーツに持つシンガーソングライターのBaku、プロデュースデュオ・tee teaとしても活躍するトラックメイカー・SHINTA、トップライナーのyaccoからなるプロジェクト・DURDN。音楽ナタリーでは、メンバーにグループ結成の経緯や、それぞれの音楽的ルーツなどについて聞いた特集記事を前後編にわたって掲載している。後編では念願だったというSpotify「Early Noise」に選出された心境や、tee teaの活動が生む相乗効果、グループの強みついて掘り下げる。

DURDNとtee tea、両軸の活動で生まれる相乗効果

──そもそもtee teaという1つの軸があるのに、なぜDURDNを結成することになったのでしょうか?

SHINTA tee teaとしてコンペに楽曲をガンガン出している時期があって。1年に100曲くらいのペースで作っていたんですけど、なかなか厳しい状況だったんですよ。

──というのは?

SHINTA 採用された楽曲もあるにはあったのですが、打率はかなり低かったし、いいところまで進んだコンペも「実績がない」という理由で落とされることが何十回もあって。自分たちとしては、ものすごくいい曲を書いている自信があっただけに「なんでこれがボツになって聴かれないままになってしまうんだ!」というフラストレーションが溜まっていたんです。だったら自分たちで表現の場を作って、そこでの活動が実績になればコンペも通りやすくなるんじゃないかと思って。

SHINTA

SHINTA

──戦略的な動機もあったわけですね。

SHINTA そうですね。それで最初に結成したのが、stellafiaのボーカリスト花森りえさんと結成したユニット・ひみつのネリネでした。今思えばDURDNの前身みたいなプロジェクトだったなと。その後、Bakuちゃんと出会ってDURDNを結成したとき、彼の声はtee teaでやりたかったことをより具現化できるなと思ったんです。自分たちのアーティスト性を追求するという意味で、真剣に取り組めるユニットになる予感があった。「ここで実績が作れるくらいまでいきたいよね」というのが、そもそもの狙いでした。なのでtee teaとしての作家活動も並行して続けることは最初から決めていたし、どちらにもいい相乗効果が生まれるのではないかと思っています。

楽曲だけで勝負できるのが一番強いと思う

──2021年の結成後すぐに12カ月連続で配信リリースしたのも、実績を作りたいという思いが強かった?

SHINTA そうですね。これはyaccoとよく話すことなんですけど、「いい曲をこんなに作っているのにどうしてみんな認めてくれないんだ?」というフラストレーションが根底にあるんですよ(笑)。だから連続リリース企画を始めるときも「月1どころか、月2のペースでリリースしてもいいんじゃないか?」という声が上がるくらいモチベーションは高かったです。

──実際、この企画を通してDURDNの知名度も徐々に上がってきましたよね。

yacco そこは想定外でした(笑)。Bakuに声をかけたときも、「すぐには数字として結果は出ないと思うけど、数年後には状況が変わるからそれまで信じて付いてきてほしい」という話をしていたくらいで。こんなにすぐ皆さんの耳に届くとは思っていなかったので、本当にうれしかったです。

DURDN

DURDN

──逆に、「もっとこうしよう」みたいな課題点も見えてきていますか?

SHINTA 細かいところで言うと、やっぱりDURDNの音楽を聴いてくれているのはSpotifyユーザーが多いんですよ。もちろん大変光栄なことですが、いろんな人たちからグローバルに支持されるようになるまで、まだまだ乗り越えなければならないハードルはたくさんあるなと思っています。プロモーション活動もライブ活動も、もっと積極的にやっていきたいし、やらなければいけないなと思っていますね。

──ここ最近はAdoやずっと真夜中でいいのに。、yamaなど、顔出ししない覆面シンガーが増えてきています。DURDNのビジュアルの打ち出し方も匿名性を大切にしていると思うのですが、何か理由はあるんですか?

yacco 自分たちの顔を出す以外に武器があれば、出さない選択肢があってもいいのかなと思っています。DURDNで言えば、Bakuの持っている声は唯一無二のものだし、顔を出さなくても楽曲だけで十分勝負できるんじゃないかなって。もちろん「あの人、カッコいいから聴いてみよう」「かわいいから好き」みたいなことも、きっかけの1つだとは思うんですよ。ただ、楽曲だけで勝負できるのがやっぱり一番強いと思う。だから今のところ顔をバンッと出したりは考えていないです。

Baku

Baku

念願のSpotify「Early Noise」選出

──皆さんにとって、Spotifyの「RADAR: Early Noise 2023」に選出されたことも今年の大きなトピックの1つですよね。

SHINTA めちゃくちゃうれしかったです。ただ本音を言えば「去年選ばれていればな」と最初は思いました(笑)。

yacco (笑)。私たちは去年から「Early Noise」は狙っていて。若手アーティストの登竜門というか、私たちにとって結成後最初の目標でもあったんです。それだけに去年選ばれなかったことに、実はこっそり落ち込んでいて。「なんで選ばれないんだよ」「何をしてるんだ」くらいの気持ち……悲しみと怒りでいっぱいでした(笑)。

yacco

yacco

SHINTA でも今は、去年ではなく今年選んでもらえてよかったなと思っています。一昨年の12カ月連続リリースが一段落して、昨年は活動が少し落ち着いてしまっていた時期でもあったし、DURDNとしての芯の部分を固めなければいけない期間でもあったので、そのタイミングで「Early Noise」に選んでいただいても、自分たちの活動をうまく噛み合わせることができなかったもしれないなと。

──なるほど。

SHINTA 今年はアニメのタイアップからスタートして、勢いに乗っているところで選んでいただくという、非常にありがたいタイミングでした。さっきも話したように、僕たちの音楽を聴いてくださっている人はSpotifyユーザーがとても多いと思うので、「選んでくれてありがとうございます」という気持ちと同時に「来ると思っていましたよ」とも言いたいです(笑)。

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DURDNの武器とは

2023年4月7日更新