原点はやっぱり原宿
──きゃりーさんは「PONPONPON」や「チェリーボンボン」を含む1stミニアルバム「もしもし原宿」を2011年8月17日にリリースして、ちょうど10年経ちました。自身のルーツを意識することはありますか?
きゃりーぱみゅぱみゅのルーツは、やっぱり皆さんのイメージ通り「原宿」ですね。それはなぜかというと、私はもともと性格がシャイというか控えめで、人前に立ったり作文を発表したりすることがめちゃくちゃ苦手で、嫌すぎて学校休んじゃうくらいの子だったんです。だけど高校生のときにギャルっぽい友達に連れられて渋谷の109に行った帰りに原宿に寄ったら、すごく楽しかったんです。それまで自分の頭の中になかったファッションがたくさんあって。そこから、シャイなんだけど、お洋服を着たときだけ好きな自分でいられるみたいな感じになって。原宿で出会ったお友達もたくさんいるし、今の事務所も原宿にあるし。完全にきゃりーぱみゅぱみゅの生まれた地は「原宿」です! 本籍は西東京なんですけど(笑)。
──原宿がきゃりーさんと結びついたことで国際的なムーブメントになったと思うんです。ケイティ・ペリーさんが原宿好きなのもきゃりーさんとのコミュニケーションあってこそですし。
すごく不思議なのが、私はケイティの映像に影響を受けて発信してるんですけど、それをケイティが見て「きゃりーに影響を受けた」と言ってくれていて。なにかこう、巡ってる感じなのが不思議だなあと思いました。
──コロナ禍以降、原宿も一時期訪れる人が激減したというニュースを目にして心配です。
そうなんです。For Rent(空き物件)になったお店もたくさん目にしますし、私の通っている美容室でも遠方からのお客さんが来づらくなっちゃったとかいろいろ聞きますね。
──きゃりーさんの力で再び原宿にパワーを取り戻してもらえたらいいですね。
がんばります!
10周年のテーマは「先に進む11年」
──さて、今回のライブパフォーマンスでも披露された新曲「原点回避」がデビュー記念日の8月17日、今年発足した新レーベル・KRK LABから配信リリースされました。今までのイメージとひと味違う、ぐいぐいとベースラインが引っ張っていくカッコいい曲に仕上がりましたね。
自分でもすごく意外でした。まず、こんなごつい漢字4文字タイトルは今までなかったですし(笑)。誰でも口ずさみやすい、不思議な言葉を繰り返す楽曲が多かったんですけれども、この曲はすごくメッセージ性もあるし、歌詞を見ながら聴くと本当に奥深いんですよね。聴く人によって捉え方が変わる面白い楽曲だなって。中田(ヤスタカ)さん的に10周年だけど回帰するんじゃなく“回避”して先に進んでいこうみたいな裏テーマがあるのかもしれないですけれど、私自身、10周年のテーマを「過去を振り返る10年じゃなく、先に進む11年」にしようと考えていたので、そこに合わせた言葉遊びなのかなと思ってます。
──中田さんとの息も変わらずぴったりですが、きゃりーさんの中で特に「この曲を歌ったことが自信につながった」と思えるものはありますか?
ありますね。例えば、今回の「Roots」では歌ってない楽曲ですけど「もんだいガール」(2015年3月リリース)。あれは、急激にメディアに出るようになり、プライベートのことで写真を撮られることが増えて悩んでいた時期の曲なんです。1人でラーメン屋さんに行ってるところを撮られたり。「別に悪いことしてないのに追いかけられるのって変だと思うんです」みたいな話を中田さんにしたんですね。そのときは中田さん、「そうだよね。うんうん」みたいに聞いてくれたんですけど、次にレコーディング行ったら「もんだいガール」ができていて。歌詞を見ると「機械みたいに生きてるわけじゃない」とか、私が相談した内容へのアンサーソングみたいに受け取れたんです。私の愚痴みたいな悩みが中田さんの頭の中に入ると、あんなに素敵な歌詞に変換されるのってすごいなあと思って。
──きゃりーさんの場合、中田さんとした会話がそのまま曲になることが多いと語ってましたね。
「ファッションモンスター」(2012年10月リリース)しかり、私の楽曲って“我が道を行く”タイプのものが多いんですけど、中田さんが私の話したことを汲み取って曲を作ってくれることが多いです。最近こそコロナであまり会えてないですけど、昔は曲作りの前にごはんを食べに行って「最近どうなの?」とか、「何か歌いたいテーマある?」って聞いてくれてました。
──だからこそ血が通った歌になっている印象があります。ちなみに同じく中田さんとレコーディングしているPerfumeのあ〜ちゃんは「Perfumeのレコーディングはいつも座って歌うけど、きゃりーちゃんは立って歌ってると聞いて、いいなあって思いました」と語っていました。
あはははは!(笑)
──立って歌ってらっしゃるんですか?
そうなんです。私は最初から立って歌ってました。同じレコーディングブースなので、Perfumeのあとに入ると椅子が置かれていてマイクの位置が低いんです。それを上げてもらって。あ〜ちゃんはお友達で仲いいんですけど、たまたまレコーディングの話になって「えっ、きゃりー立って歌ってんの?」って言われて、「そうだよ。最初からだよ」って言ったら、「いいなー。私たちも立って歌ってみたい気持ちもあるんだけど、今さら立って歌いたいとか言えないんだよねー」と言っていて。でも、そこの違いは私が思うに、Perfumeって3人ともめちゃくちゃ歌うまいんですよ。お腹から声も出るし。私がレコーディングするときもけっこう中田さんに言われるのが「もっと淡々と歌ってほしい」とか「そんなに歌い上げないでくれ」みたいなオーダーをされることが多いから、Perfumeくらい歌がうまいと、あえて座ることでお腹から声を出さないようにしてるんだろうなと思ってました。
──きゃりーさん自身は10年歌ってこられて、ご自身の歌についてどんな感想を持たれましたか?
なんとなく10年経ったら声も変わっていくんだろうと思っていたんですが、全然子供っぽくてびっくりします。もともと声が高いこともあるんですけど、大人になったらもっとしっとり歌ったりするのかな、声とか歌い方もどんどん変わるんだろうなと思ったのに、何も変わってないという(笑)。
──だからこそ最初にお話しした通り、古びないカッコよさを保ち続けているんだと思います。コロナ禍でなかなかライブができない中、映像配信サービスを使うアーティストも増えていますが、きゃりーさんはそうしたサービスにどんな印象をお持ちですか?
私が今回dTVさんの収録を終えて思ったのは、固定カメラだからこそできるパフォーマンスや表情など、カメラ向けにできることがたくさんあるなということでした。なので普段ライブを観に来てくださっている方は、「こういう表現の仕方もあるんだな」と思っていただけたら。特に「原点回避」のときはハンディカメラで私の周りをぐるぐる回ったり、足元の文字を効果的に撮影したりしていたので私もどういう編集になったのか楽しみですし、見どころの1つだと思います。
皆さんのところへ会いに行ければ
──これからのお話もぜひ伺いたいんですが、新曲「原点回避」のリリースに続いて、9月18日に千葉・ZOZOマリンスタジアムで開催される「SUPER SONIC 2021」にも出演されます(東京公演のみ)。コロナ以降、海外のアーティストを招いての大型イベントとしては最初になりますね。
はい! 日本人アーティストとして「がんばるぞ!」という気持ちもありますし、昨年「にんじゃりばんばん Steve Aoki Remix」でご一緒させていただいたスティーヴ・アオキさんもいらっしゃるので、コラボとかできたらうれしいなと思ってます。
──楽しみですね。それ以外にも今年後半から来年にかけて10周年を記念した企画など、考えていることはございますか?
あります! 10周年のもう1つのテーマとして“感謝を伝えに行きたい”という気持ちがありまして。私はすごくありがたいことに最初の段階、それこそ2ndシングルの「つけまつける」くらいでメディアに露出させていただいたり、フェスに出させていただいて、今考えると下積み時代があまりなかったんですね。その話をアーティスト仲間にすると「めっちゃうらやましい、いいじゃん」って言われるんですけど、逆にその下積みがなかった分、ファンの方と苦楽を共にしたような経験が薄い気もしていて。もちろん最初から熱心に応援してくれているファンの方はたくさんいるんですけど、改めて恵まれていたなあって。なので「11年目でまた下積みを始めたい」という気持ちで、全国の皆さんに会えるように会場を調整しているので、来年全国の皆さんに会えるようにツアーを開催します。行ったところのない地域もまだまだあるので「はじめまして」とか「やっと会えたね」みたいなことを言えたらいいなと思います。
──その際はぜひ土地土地のおいしい食べ物も紹介してください。
アーティストさんに聞くと、今はライブ後はホテルに直帰してお弁当を食べてるそうなので、来年にはまた元に戻るといいなと思いますね。
──最後に、まだまだ残暑厳しい2021年の夏ですが、きゃりーさんならではの暑さを乗り切るための心にいいこと、体にいいことって何かございますか?
もう暑すぎるのであまり出歩かないほうがいいと思います(笑)。こないだ、すごく暑い日に友達と動物園に行ったんですけど、本当に具合悪くなっちゃったんです。頭が回らなくて帰り道とかもちょっとフラフラしちゃってたんで……。なので無理をせず、日中は家の中にいてdTVで音楽ライブや番組を楽しむのが一番。どうしても用がある場合は夕方、涼しくなってから出かけるのはどうでしょうか? くれぐれも無理は絶対ダメですよ!
ツアー情報
- きゃりーぱみゅぱみゅ 10th ANNIVERSARY JAPAN TOUR 2022
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- 2022年1月16日(日)神奈川県 厚木市文化会館 大ホール
- 2022年1月29日(土)群馬県 ベイシア文化ホール
- 2022年2月5日(土)鳥取県 米子コンベンションセンター BiG SHiP
- 2022年2月6日(日)岡山県 岡山市民会館
- 2022年2月11日(金・祝)茨城県 日立市民会館
- 2022年2月23日(水・祝)京都府 宇治市文化センター 大ホール
- 2022年3月5日(土)福岡県 福岡市民会館 大ホール
- 2022年3月6日(日)熊本県 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
- 2022年3月11日(金)広島県 上野学園ホール
- 2022年3月12日(土)島根県 島根県民会館 大ホール
- 2022年3月19日(土)北海道 函館市民会館
- 2022年3月21日(月・祝)北海道 カナモトホール(札幌市民ホール)
- 2022年3月26日(土)石川県 金沢市文化ホール
- 2022年3月27日(日)新潟県 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館
- 2022年4月3日(日)千葉県 千葉県文化会館 大ホール
- 2022年5月7日(土)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
- 2022年5月13日(金)山形県 シェルターなんようホール(南陽市文化会館)
- 2022年5月15日(日)秋田県 湯沢文化会館
- 2022年5月21日(土)栃木県 栃木県総合文化センター メインホール
- 2022年5月28日(土)愛媛県 西条市総合文化会館 大ホール
- 2022年5月29日(日)高知県 高知県立県民文化ホール オレンジホール
- 2022年6月4日(土)大阪府 フェニーチェ堺 大ホール
- 2022年6月5日(日)奈良県 なら100年会館 大ホール
- 2022年6月19日(日)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
- 2022年6月25日(土)宮城県 東京エレクトロンホール宮城
- 2022年6月26日(日)青森県 八戸市公会堂
- 2022年7月16日(土)宮崎県 都城市総合文化ホールMJ 大ホール
- 2022年7月18日(月・祝)長崎県 アルカスSASEBO 大ホール
- きゃりーぱみゅぱみゅ
- 1993年東京都生まれ。高校生のときから原宿系ファッションモデルとして活動し、2011年に中田ヤスタカプロデュースによるミニアルバム「もしもし原宿」でメジャーデビューを果たす。以降もコンスタントに作品を発表し続け、2018年に4thフルアルバム「じゃぱみゅ」をリリース。そのかわいらしい容姿からは想像がつかないほど自由奔放で、オリジナリティあふれる表現でファンを魅了している。また海外ファンからも日本を代表するアーティストおよびファッションアイコンとして支持されており、同じく2018年に4度目のワールドツアーを開催した。2021年にデビュー10周年を迎え、同年1月に新レーベル・KRK LABを設立。8月17日にデジタルシングル「原点回避」を配信リリースした。2022年1月からは過去最大規模の全国ツアー「きゃりーぱみゅぱみゅ 10th ANNIVERSARY JAPAN TOUR 2022」の開催が決定している。