“やさぐれ感”がなくなった

──幅広い客層にアプローチしたいと思うようになって、制作に対する姿勢って何か変わったりしましたか？

中野　うーん……インディーズの頃は自分のモヤモヤみたいなものを吐き出すために音楽をやってた部分が強かったんです。でもメジャーデビューして協力してくれる人が増えてきて、たくさんの人に聴いてもらえる可能性が増したことで、この立場にいる以上はリスナーに届きやすいものをやる責任があるなと勝手に思って。

──なるほど。

中野　でもそういう責任みたいなものも重荷に思わず、楽しんで制作活動をしてますけどね。

──歌詞も「DAWN SIGNALS」の収録曲、例えば「荒野のビート」の「しあわせがほしい / いつもそう思うだけ」みたいな“吐き出す”という感じから、「コール・ミー」では最後に「すぐに見つけるわ / 抱きしめにゆくわ」っていうフレーズがあったりと人に“与える”感じになったなと思いました。

中野　そうですね。今までは「くだらない」の一言で終わらせてしまったり、ひとりよがりだった部分もあったと思うんです。その頃よりも少しだけですけど、リスナーに言葉を与えてあげられる側に自分を押し上げたっていう感覚はありますね。

荒谷　インディーズの最初の頃は中野を筆頭にやさぐれ感みたいなものがバンド全体にあったんですよ（笑）。それはそれで悪くなかったんですけど、今の状態はバンドとしてすごくいいと思ってます。

ロックンロールなままで市民権を得たい

──たくさんの人に広めたいという思いを込めたこのアルバムが完成して、このあとDrop'sはどういうバンドになっていきたいですか？

中野　そのときそのときでやりたいこととか、好きなことをできるバンドでいたいですね。なんか○○っぽいからDrop'sが好きとかではなくて、いつでも新鮮な目で見ていてほしいです。そのためにはやっぱり幅広く、だけど自分たちが思うカッコよさは絶対に曲げないで芯の通ったものをやっていきたいなと思います。

──そこの芯の部分ってつまりどういうことなんでしょうか。

中野　うーん……形はないかもしれないですけど、5人で音を鳴らしてる感じですかね。やっぱり気持ちはロックンロールがいいです。妥協しないで突き進んでいく感じというか。

──やっぱりロックンロールは外せないと。

中野　そうですね。王道感を持ったロックンロールで市民権を得たい……！

荒谷　（笑）。私たちの音楽ってどんどんポップな感じに変化していってますけど、これからもそのときそのときの正しいと思ったものをやっていきたいですね。バンドサウンドは変わらずにロックンロールでありたいと思っています。

2人の趣味の話

──ところで中野さんは喫茶店巡りが趣味なんですよね？ いつ頃からの趣味なんですか？

中野　高校生ぐらいですかね。最近もいろいろツアー先で新しい喫茶店を探したりしてます。純喫茶がやっぱり好きですね。

──きっかけは何かあったんですか？

中野　最初はおしゃれなカフェとかが好きだったんですけど……。でもなんか純喫茶って、いいじゃないですか。その古い空間の一部分になる感じっていうか。あと店内にいるお客さんを観察するのも好きです。

──なるほど。地元でお気に入りの純喫茶があれば教えてほしいです。

中野　お気に入りのお店はいっぱいありますよ。よく行くお店は札幌のすすきのの一番大きな交差点のところの地下にある「サンローゼ」です。あそこはすごく好きですね。

──荒谷さんも一緒に行ったりするんですか？

荒谷　何回か行ったことあります。

中野　それは打ち合わせででしょ？ 喫茶店巡りは1人でするのが好きです（笑）。

──東京でもいいお店見つけました？

中野　吉祥寺の「ゆりあぺむぺる」っていうところが好きですね。井の頭公園の裏手のバスが通ってる狭い道の近くにあって、何度も足を運んでます。

──そうなんですね。あと荒谷さんはマンガがすごく好きだと聞きました。

荒谷　家に1500冊くらいはありますね。

──すごいですね。今ハマってる作品はありますか？

荒谷　この間、今さらなんですけど、「新世紀エヴァンゲリオン」を読みまして。なんかあれは男の子が好きなマンガっていうイメージがあったんですけど、ちょっと読んでみようかなと思って読んでみたらすごく面白かったので、映画も観なきゃと思いました。でもまだ完結してないっていうことにびっくりで（笑）。

──荒谷さんはいわゆるサブカル寄りのものからメジャーなものまで全部読むんですか？

荒谷　青年マンガとかはあんまり読まないですけど、メジャーなものはだいたい通ってる気がします。

──好きな作家さんはいますか？

荒谷　篠原千絵さんが好きですね。少女マンガ描いてる方で、「天は赤い河のほとり」という作品が好きです。

──そうなんですね。逆にあまり読まないジャンルってありますか？

荒谷　アングラ的なのってすぐ人が死ぬからあんまり得意じゃないです（笑）。基本的に現実的なストーリーの作品はあまり読まなくって。例えば学園モノとかを読んでると「いや、そんなことは現実じゃありえない」って思うんですよ（笑）。それだったらいっそのことどこか違う国の話とかがいいですね。

──「新世紀エヴァンゲリオン」くらい非現実的だと学園モノでもイケると。

荒谷　学校でこんなことは起こらないよ！みたいな感じだから好きですね（笑）。