志磨遼平、小峠英二とついに対面!音楽愛から活動のこだわりまで語り合う初対談

ドレスコーズは2017年発表の「平凡」以降、各アルバムごとに異なるテーマや音楽コンセプトを掲げ、そのたびにサウンドを大きく変化させてきた。そんな中、2022年10月にリリースされたニューアルバム「戀愛大全」では“恋愛”がテーマとなった。本作は毛皮のマリーズ時代を彷彿とさせるロックンロールサウンドを基調に、これまでの作品では用いられることが少なかったシンセサイザーのサウンドをふんだんに盛り込んだ、ストレートかつ軽快な作品に仕上がっている。

「戀愛大全」発売前にはファンのみならず、数多くの著名人がドレスコーズや毛皮のマリーズのラブソングの名フレーズを紹介する企画「#ラブソング志磨しか勝たんパンチライン」が行われていた。音楽ナタリーではその企画の参加者の中から、小峠英二(バイきんぐ)をゲストに迎えた対談を実施。直接会うのは今回が初めてだという志磨遼平と小峠にお互いを知ったきっかけ、ミュージシャン / お笑い芸人を志した経緯、好きな音楽の話題などたっぷりと語り合ってもらった。

取材・文 / 高橋拓也撮影 / 山崎玲士

小峠さんの部屋にマリーズのポスターがあったよ

志磨遼平(ドレスコーズ) わー! 小峠さん! お忙しいところありがとうございます。

小峠英二(バイきんぐ) いえいえ、とんでもないです! 今日はよろしくお願いします。

挨拶を交わす志磨遼平(左)と小峠英二(右)。2人はこのときが初対面だった。

挨拶を交わす志磨遼平(左)と小峠英二(右)。2人はこのときが初対面だった。

志磨 直接お会いするのは今回が初めてですよね。

小峠 そうですね。志磨さんを初めて知ったのは、毛皮のマリーズの「ビューティフル」のミュージックビデオで。当時配達のバイトをしてたんですけど、昼休みは弁当を食いながら、YouTubeでいろんなミュージシャンのライブ映像を探していたんです。それで偶然「ビューティフル」のMVがオススメに出てきたんだったかな? 試しに観てみたら「めちゃくちゃいいな」と思って。演出はしゃれてますし、曲も詞もいい。さらに毛皮のマリーズっていうバンド名もカッコいいでしょ。「もうすごいな、この人たち」ってビックリしました。

志磨 僕がバイきんぐを知ったのは「キングオブコント2012」で優勝された頃だと思うんですけど、僕はずっと家にテレビがなかったので、最初にお見かけしたのがなんだったかはっきりと思い出せなくて……。でも、その頃に何かのバラエティ番組で、当時小峠さんが住まれていたお家に潜入する企画を観た友達が「壁に毛皮のマリーズのポスターが貼ってあったよ」と教えてくれて、「えっ!? 本当!?」って喜んだのは覚えてて。

小峠 そうだそうだ! 当時貼ってましたね。

志磨 その話が本当だったのか、お会いしたら聞いてみたかったんです。

小峠 タワーレコードの特典でもらったポスターだったはず。懐かしいな。

志磨 あと、2年くらい前だったかな? 別の番組の恋愛相談に答える企画で「スーパー、スーパーサッド」の歌詞を紹介してくださって。

小峠 「ロンドンハーツ」(テレビ朝日系)ですね。あの曲、ホントいいんですよ。

志磨 その放送のあと、また友達から「小峠さんが『スーパー、スーパーサッド』を勧めてる」という連絡がびっくりするくらいたくさん来まして。そのお礼も伝えたかったので、直接お会いできてうれしいです。

小峠 こちらこそ、こんなふうに対談できてうれしいです。実は毛皮のマリーズのライブも何度か観に行っているんですよ。

志磨 ホントですか! 次からはぜひご招待させてください。

14年ぐらい前、高円寺に志磨遼平がいた

志磨 小峠さんはパンクがすごいお好きですよね。くっきー!さんのYouTube番組(「くっきー!の心を込めて」)に出演されたときもThe Swankys(福岡のパンクバンド)のこととかお話されてましたね。

小峠 The Swankys、大好きですよ。ところで志磨さんが音楽に興味を持ったきっかけは?

志磨 子供の頃から親がよくThe Beatlesを聴いていたので、きっかけはそれですね。パンクでいうと、中学生の頃にTHE BLUE HEARTSに夢中になったりはしたんですけど、当時の和歌山ではヒロトやマーシーが聴いているような古いパンクバンドのCDはなかなか買えなくて。ほぼ唯一の中古レコードショップに行っても今みたいにジャンル別で分けてくれたりしてないから、この店にあるCDのどれがパンクなのかまったくわからない。とにかく毎日探してたら、1枚だけ帯に「パンク」と書いてあるCDを見つけて、それがジョニー・サンダースのライブ盤だったんです。演奏もめちゃくちゃだし歌もへにゃへにゃだし、最初に聴いたときはずっこけちゃったんですけど、「これがパンクなんだ」と信じて、何度も何度も聴いてました。

左から志磨遼平、小峠英二。

左から志磨遼平、小峠英二。

小峠 ジョニーは詞や曲調が独特だし、今聴くとめちゃくちゃパンクって感じじゃないですからね。でも姿勢だったり、にじみ出るものがパンクだし、だからこそ心をえぐられる部分があって。

志磨 そうですよね。でも、僕の周りはジャパコア(ジャパニーズハードコア)が好きな生粋のパンクスが多くて。だけど僕はなんでも好きな雑食だったから、自分からパンク好きを名乗るなんておこがましくて言えなくて。自分でも「こんなミーハーな聴き方してていいのかな」と思っていたし、そこは今でもコンプレックスです。どこにも属せないというか。

小峠 でも、1発目にジョニー・サンダースを選んだのは渋いですよね。一番影響を受けたのはどのバンドですか?

志磨 初期パンクも好きだし、ガレージパンクも好きだからなあ……選ぶの難しいですね。でも、僕がバンドを始めた頃ってSex PistolsやThe Clashみたいな短髪のパンクバンドは日本にもいっぱいいましたけど、New York DollsやThe Stoogesみたいなアメリカのパンクに影響を受けた髪の毛の長いパンクバンドってほとんどいなくて。「これは僕がやるしかないな」と思って、始めたバンドが毛皮のマリーズなんです。

志磨遼平

志磨遼平

小峠 そういうことだったんだ。確かにあのスタイルでやっている人って、当時あんまりいなかった。志磨さん的にはイギー・ポップ(The Stoogesのボーカリスト)とNew York Dollsがスッと入ってきたと。

志磨 そうです。なんかこう、見た目がギラギラしているグラムっぽい人たちですね。小峠さんは福岡出身ですよね?

小峠 そうそう。だからThe Swankysが好きなんです。僕も最初は似たような感じで、高校生のときに初期パンクから聴き始めましたね。当時メロコアブームだったけど、正直そのシーンのバンドはあんまり聴いてなくて。Green DayとかNOFX、Rancidぐらいかな。日本のバンドではBLANKEY JET CITYがずっと好き。

志磨 今でもCDとかレコードは買われますか?

小峠 もちろん。最近はThee Headcoateesをよく聴いてる。

志磨 あっ、Thee Headcoatsのガールフレンドがやっているバンドですね。ビリー・チャイルディッシュがプロデュースしてて、演奏もThee Headcoatsがやってるんじゃないですかね、たしか。

小峠 えっ、そうなんだ! こないだ音楽バーに行ったらオーナーがいろいろかけてくれて、その中の1つがThee Headcoateesで。すぐCDを買ったんだけど、なんで今まで知らなかったんだろう。

小峠英二

小峠英二

志磨 絶対好きなのになぜか聴いてない音楽って、いっぱいありますよね。

小峠 あと、The Interruptersとかわかりますか? スカパンクっぽさもあるバンドで、志磨さんも気に入ると思いますよ。

志磨 へー! 知りませんでした! 帰ってすぐ調べますね。小峠さんは今でもライブはよく観に行かれます?

小峠 今年は「SUMMER SONIC」と「FUJI ROCK FESTIVAL」に行ってきて。最近もライブハウスにはよく足を運んでますね。

志磨 「ライブハウスに小峠さんがいた」って、いろんな人から聞きますよ。

小峠 バレてるのか(笑)。僕、一度高円寺で志磨さんを見かけたことがあるんですよね。14年ぐらい前だったかな? 後輩と一緒に買い物してたら志磨さんがフラッと出てきて、後輩もマリーズ好きだったから「志磨だ!」ってびっくりしてて。さすがにお声がけすることはできなかったですけど。

志磨 そんな昔に小峠さんとすれ違っていたんですね! 不思議だなあ。