音楽ナタリー Power Push - ドレスコーズ
ピエール中野と語る 理想形見出した「オーディション」
バンドマンとしての理想形
──でもクラスの中でイケてなかった子が、曲を書くことでイケてるグループにいる子を巻き込んで作品を作ったっていうのは、今回の「オーディション」という作品の本質を言い得ているような気がします。
志磨 OKAMOTO'Sと一緒にライブをやったときなんて、気が付くと自分もOKAMOTO'Sのメンバーのようなしゃべり方になってますからね(笑)。
中野 (笑)。
志磨 だから今、ようやく自分自身から解放されたような気がしているんですよ。“ロックミュージシャンはこうあるべき”みたいな考えがずっとあって、それを自分がどこかで演じていることにずっと違和感があったんですけど、一緒にやる人によって変わってもいいんだって。
中野 なるほどね。
志磨 1人になった今でも、ドレスコーズはやっぱりバンドで。自分の中では、出会った人の数だけメンバーが無限に増えているような感覚なんです。ライブのためにバンドを組んでは、「またね!」って別れて、レコーディングのためにまたバンドを組んでは、「またね!」と別れていく。そういうスタイルをようやく確立したんですよ!
中野 いいんじゃない。そこから、どこにでも行けるわけだから。
志磨 そうそう。
──ある意味で、ピエールさんはそれをずっと体現してきたミュージシャンですよね。ももクロ(ももいろクローバーZ)から、大森靖子から、アニソンから、ボカロ曲から。
中野 まあ「求められれば」ってことですよね。求められなくなったらそれはそれまでですけど、今は求められているので、その都度、自分がそこでどう対応していくかを考えるだけで。
志磨 その「求められなくなったらそれまで」っていう、その温度に憧れますね(笑)。自分にとって、求められなくなるほど怖いものはないから。
中野 いや怖いですよ。怖いから自分のスキルを磨いていかなくちゃいけない。あと、自分のバンドがあるからっていうのも大きいですけど。そこをしっかりやってさえいればあとはどうにでもなるし、どこにでもいける。
──志磨さんは、長期的には、またいつか固定のメンバーでバンドを組みたいという気持ちはないんですか?
志磨 今はないですね。ライブとレコーディングのために、この半年でバンドの結成と解散を5回くらいやっているという感覚ですから。これはバンドマンとしての1つの理想形だと思うんですよね。もしかしたら今日本で一番バンドを楽しんでいるのは自分なんじゃないかって。
──でも、それこそピエールさんの存在もそうだったと思うんですけど、「これしかない!」って思ったときに、そのバンドを現実的に続けることができないのはつらくないですか?
志磨 いや、もうそういうバンドマンの道徳観みたいなものが完全に崩壊していて。メッチャ悪い、バンドマンとしての修羅の道に足を踏み入れているんですよ。これまでバンドに対してものすごい憧れを持っていたからこそ、2つのバンドをダメにしてしまった。だから今は、もう新しいバンドを組みまくるというこのサイクルを加速させていくしかないという。やっぱりバンドって、組んだばっかりのときが一番楽しいし。
中野 鮮度があるからね。
志磨 そう。それで、一番気持ちが盛り上がるライブは解散ライブだし。
中野 (笑)。
志磨 それを繰り返していったら一体どうなるんだろうっていう、そういう人体実験の真っ最中なんですよ、今は。
中野 でも、また固定のメンバーでやりたくなるときが来るような気がするけどね(笑)。なので、これからドレスコーズがどうなっていくのか見守っていきたいし、その過程で自分が関われるものがあったら、またぜひ声をかけてほしいですね。
志磨 本当にありがたいことです。
- ドレスコーズ ニューアルバム「オーディション」 / 2015年10月21日発売 / EVIL LINE RECORDS
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3780円 / KICS-93310
- 通常盤 [CD] 3240円 / KICS-3310
- 2015年12月23日発売(HMV、ツアー会場限定)アナログ盤[アナログ2枚組] 4000円 / NAS-2025~6
CD収録曲
- 嵐の季節(はじめに)
- jiji
- スローガン
- 愛さなくなるまでは愛してる(発売は水曜日)
- メロウゴールド
- We Hate The Sun
- もあ
- しんせい
- オーディション
- みなさん、さようなら
- 贅沢とユーモア
- おわりに
初回限定盤DVD収録内容
- 「スローガン」AUDITION VIDEO
- 「贅沢とユーモア」STUDIO LIVE VIDEO
- 「志磨遼平のオーディション THE MOVIE」
Tour 2015 "Don't Trust Ryohei Shima" JAPAN TOUR
- 2015年11月29日(日)
福岡県 BEAT STATION - 2015年12月1日(火)
大阪府 BIGCAT - 2015年12月4日(金)
宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX - 2015年12月6日(日)
北海道 cube garden - 2015年12月10日(木)
愛知県 名古屋CLUB QUATTRO - 2015年12月19日(土)
東京都 Zepp DiverCity TOKYO
ドレスコーズ
2012年1月1日に志磨遼平(Vo)、丸山康太(G)、菅大智(Dr)の3名で初ライブを実施し、同年2月に山中治雄(B)が加入する。6月には大阪、名古屋、横須賀で「Before The Beginning」と題したツアーを突如開催。7月に1stシングル「Trash」をリリースし、タイトル曲は映画「苦役列車」主題歌に採用され話題を集めた。12月に1stフルアルバム「the dresscodes」、2013年11月にフジテレビ系アニメ「トリコ」のエンディングテーマ「トートロジー」を含む2ndフルアルバム「バンド・デシネ」を発売。2014年9月にキングレコード内レーベル・EVIL LINE RECORDSへの移籍第1弾作品として5曲入りCD「Hippies E.P.」をリリースし、同時に丸山、菅、山中の脱退を発表した。ドレスコーズは志磨の単独体制となり、同年12月にフルアルバム「1」をリリース。2015年10月、ピエール中野(凛として時雨)、會田茂一、沙田瑞紀(ねごと)ら多数のゲストプレイヤーを迎えて制作した4thアルバム「オーディション」を発売する。
ピエール中野(ピエールナカノ)
凛として時雨のドラマー。2014年8月にはORIGAや20名のドラマーが参加したドラムオーケストラ「Animus」、Perfume「チョコレイト・ディスコ」のカバーなどを収録した「Chaotic Vibes Orchestra」を発表。完全即興ユニットのカオティック・スピードキングや、自身がMCクールJ名義で参加している下ネタ満載ヒップホップユニット・玉筋クールJ太郎でも活動している。近年では大森靖子、GLAY、ドレスコーズ、星野源、ももいろクローバーZといったアーティストの楽曲にドラマーとして参加したほか、全国の音楽フェスティバルやライブイベントでDJとしても活躍している。