音楽ナタリー Power Push - DREAMS COME TRUE「私だけのドリカム」特集

中村正人(DREAMS COME TRUE)×水樹奈々

夢あふれるステージにかける思い

初回の対談相手は学生時代ドリカムに衝撃を受けたと話す水樹奈々。水樹はドリカムのトリビュートアルバム「私とドリカム -DREAMS COME TRUE 25th ANNIVERSARY BEST COVERS-」にも参加するなど、ドリカムメンバーとの縁も深い。楽曲のみならずライブの演出も魅力の1つとなっている2組は、今回の対談でライブにかける思いをたっぷりと語ってくれた。

取材・文 / 大山卓也 撮影 / 中野敬久

“水樹節”がバチッと入った「笑顔の行方」

──お二人は以前から面識はあるんですか?

水樹奈々 ちゃんとお話させていただくのは今日が初めてです。だからとってもドキドキしていて。

左から中村正人、水樹奈々。

左から中村正人、水樹奈々。

中村正人 以前「笑顔の行方」をカバーしていただいたんですよね。あれすごく評判よかったんです。水樹さんのファンの方が「オリジナル曲みたいだ」って言ってくださったりもして。あのときはありがとうございました。

水樹 こちらこそ声をかけていただけてびっくりしました。光栄です。

中村 ちゃんと自分の持ち歌みたいに歌ってくれて、“水樹節”がバチッと入ってたのがすごくよかった。

水樹 うれしいです。自分の中に吉田美和さんのボーカルが染み付いてるので、逆にそれをなぞってしまわないように、自分がこの曲を新曲としていただいたらどういうふうに歌うか。そこを意識して歌わせていただきました。

初めて聴いた印象は「不思議な曲だな」

──水樹さんが最初にドリカムを好きになったきっかけは?

水樹 私、実はすごく遅くて、ちゃんと聴いたのは高校に入ってからなんです。ずっと子供の頃から演歌を歌っていて、自分で聴くのはアニソンくらいだったので。

中村 演歌とアニソンってすごい組み合わせですね。

水樹 そうなんです。それで本格的にプロを目指すために上京して、こちらの高校に通い始めて。その頃カラオケボックスがすごく流行ってたんですけど、友達とみんなでカラオケに行くと、周りの女の子たちがいつもドリカムさんの楽曲を歌うんです。そこで初めて聴いて、「何これ? カッコいい! こんな素敵なアーティストがいるんだ!」って思ったのがドリカムさんとの出会い。だから私が初めて聴いたドリカムさんは吉田さんじゃなく、友達が歌っているバージョンなんです(笑)。

中村 一番いい入り方ですね(笑)。

水樹 それで、最初に好きになった曲が「笑顔の行方」なんですよ。すごくさわやかで明るい曲調なのに、なぜか泣ける。笑っているのに涙が見えるところがすごく好きで。それにあの曲は構成がすごく面白くて、普通にAメロBメロサビじゃなくて、Dメロが来て、これEメロなのかな?みたいなメロディがあって。「不思議な曲だな」ってグッと引き込まれました。あの曲はどんなふうに生まれたんでしょうか?

中村 あの曲は、中山美穂ちゃん主演の「卒業」っていうドラマの主題歌だったんですよね。当時はユーロビートが本格的に流行る前だったから、ドナ・サマーとか70年代の音楽をベースにして、そういうサウンドを日本でも同時発生させようと思って書いた曲だったんです。でも曲を聴かせたら事務所の偉い人から「こんな曲はダメだ」「何がなんだかわからない」って言われてしまって。

水樹 えっ? そんな!

中村 「どこから始まってどこで終わるのかもわからないし、サビがどこなのかもわからない。これが主題歌になるわけがないじゃないか」って(笑)。だからシングルバージョンはちょっとわかりやすく変えたんです。アルバムバージョンはオリジナルの形のままになってるんですけどね。

水樹 そうだったんですね。

中村 僕が作曲したシングルで初めてオリコンベスト10に入ったのがあの曲なんで、僕にとっても非常に思い出深い曲ですね。それが高校生の水樹さんにちゃんと伝わってたっていうのはすごくうれしい。

水樹 不思議な曲だなって思ったときにはもうクセになっていてハマっちゃったんです。枠にとらわれない、これまでにない新しい曲だって感じていました。

中村 でもやっぱりあの曲がヒットしたのは吉田の詞の力ですよ。「卒業アルバムの~」って詞が乗った瞬間「勝ったな」って思いましたからね。

水樹 言葉とメロディとのマッチングが素晴らしいですよね。しかも大人になってからの恋を描いているから、高校時代に聴いた印象と、自分が大人になってから聴いたときで印象が違うんです。あの歌詞はほんとにすごいなって思います。ドリカムさんの曲には、言葉ではうまく説明できないけど無意識に惹き付けられる何かが入っていて、大人になっていろんな音楽に触れてから改めて聴くとすごく奥深いなって思うことばかりで。

水樹さんは自分の場所を自分で作った人

──中村さんから見た水樹さんの印象はいかがですか?

中村正人

中村正人

中村 水樹さんのことは最初からすごいなと思ってますよ。エンタテインメントビジネスの世界って、誰かがいる場所にまた別の誰かが入るっていう、そういう仕組みで回ってるんだけど、水樹さんはそうじゃなくて、自分の場所を自分で作った人なんですよね。最初から水樹奈々として始まって、その点がそのまま大きく広がっていって今がある。水樹奈々というポジションをみんながずっと狙ってるのに、全然どかないのがすごいなと思ってて(笑)。

水樹 ありがとうございます(笑)。

中村 しかもその場所に、スタッフや演奏メンバーも含めて超一流の人たちが集まってるでしょ。今は打ち込みやカラオケが主流になって、そういう一流のミュージシャンが活躍する場所が少なくなってる。そんな状況だからこそ、俺は水樹さんがやってることは日本の音楽産業にとって偉大な仕事だと思ってます。一流の職人たちがのびのびと演奏して、水樹サウンドっていうものを作り上げている。

水樹 時代に逆行しているかもしれないのですが、私はやっぱり生音へのこだわりを大事にしていきたくて。もちろんデジタルサウンドや同期も取り入れながらですけど、でもできるだけ人が奏でる音を使いたいんです。なのでライブではツインドラムで演奏したりとか。

中村 素晴らしいね。

水樹 ときにステージ上にギターが4人もいたりして(笑)。やりすぎだって言われるかもしれないけど、やっぱり人の手からじゃないと生まれないグルーヴや、ライブだからこそ出てくるフレーズっていうのがあると思うので。

中村 それは最初からそう思ってたの?

水樹 最初は右も左もわからなかったのですが、周りのスタッフの方々が「一流を目指すには一流の音に触れなきゃいけない」って言ってくださって、デビューしたときから私のプロデューサーがお声掛けした超一流のミュージシャンの皆さんにサポートしていただけたんです。それが今考えてもすごく幸せなことで。レコーディングのときも、ブラスや弦も含めて生で録音することが多いのですが、ミュージシャンの皆さんも「今こんなふうにレコーディングできる環境がないからうれしいよ」ってノリノリで演奏してくださるんです。

中村 貴重な現場ですよね。

水樹 私もそれが本当にうれしくて。そして小さな頃から演歌を歌っていたので、演歌や歌謡曲のフレーズをロックテイストな曲に取り入れてみたりもして。先輩方の築いた匠の技と新しい今の音を融合させていった結果、“水樹節”というものができたんだと思います。いろんなものを融合させて新しいものを見つけるという姿勢を、私は「笑顔の行方」から学んだんだと思います。あの曲との出会いが今の自分のベーシックなところに生きています。

DREAMS COME TRUE ライブDVD / Blu-ray「史上最強の移動遊園地 DREAMSCOME TRUE WONDERLAND 2015 ワンダーランド王国と3つの団」2016年7月7日発売 / UNIVERSAL SIGMA
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MBS Presents 私だけのドリカム THE LIVE in 万博公園

2016年7月10日(日)
大阪府 万博記念公園 東の広場
OPEN 11:00 / START 13:00 / END 19:00(予定)

出演者
DREAMS COME TRUE / 華原朋美 / Little Glee Monster / 水樹奈々 / NICO Touches the Walls / WINNER
スペシャルメドレー:K / 近藤夏子 / MACO / Ms.OOJA
総合司会:河田直也(MBSアナウンサー)
ちちんぷいぷいドリカムファン代表スペシャルサポーター:廣田遥 / くっすん
うれしたのし大好き 2016 ~真夏のドリカムフェス~

2016年7月16日(土)
東京都 明治神宮外苑野外特設ステージ
OPEN 13:00 / START 14:30 / END 20:00(予定)

出演者
DREAMS COME TRUE / 陣内孝則 / [Alexandros] / Suchmos / でんぱ組.inc / レキシ / 渡辺直美 / and more
DREAMS COME TRUE(ドリームズカムトゥルー)
DREAMS COME TRUE

吉田美和(Vo)と中村正人(B, Arrangement, Programming)による2人組バンド。1989年にメジャーデビューし、1992年発売の5thアルバム「The Swinging Star」は当時の日本記録となる300万枚以上のセールスを記録する。その後もシングル、アルバムともにミリオンヒットを連発し、ソウル / R&Bを基軸にしたサウンドが老若男女問わず幅広い層から支持されている。2014年にはデビュー25周年を迎え、同年8月に通算17枚目のオリジナルアルバム「ATTACK25」をリリース。なお1991年より4年に1度のペースで「史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND」と題したイベントを実施しており、2015年11月より7回目となるドリカムワンダーランドを開催。また同年7月7日には“ファンが聴きたい曲”全50曲を収録したコンプリートベストアルバム「DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム」をリリースした。2016年7月7日に“裏ベスト”「DREAMS COME TRUE THE ウラBEST! 私だけのドリカム」を発表したあと、10日には大阪・万博記念公園 東の広場にてライブイベント「MBS Presents 私だけのドリカム THE LIVE in 万博公園」を開催する。

水樹奈々(ミズキナナ)
水樹奈々

愛媛県出身の声優アーティスト。1997年に声優としてデビューし、「魔法少女リリカルなのは」「ハートキャッチプリキュア!」「NARUTO -ナルト-」といったアニメ作品で人気を集める。2000年にはシングル「想い」で歌手デビュー。2009年6月にリリースされたアルバム「ULTIMATE DIAMOND」で、声優アーティストとして初のオリコン週間ランキング1位を獲得した。同年12月には「NHK紅白歌合戦」に初出場。2011年12月には声優アーティスト初の東京ドームコンサートを2日間にわたって開催し、大成功に収める。また2013年には台湾にて初の海外公演を行うなど、活動の場をさらに広げた。2014年にはライブの功績が評価され、平成25年度(第64回)芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。2016年4月に再び東京ドームで単独コンサートを2日間にわたって開催した。7月には34枚目のシングル「STARTING NOW!」を発表。9月には兵庫・阪神甲子園球場での単独公演「NANA MIZUKI LIVE PARK 2016」を控えている。

水樹奈々
「STARTING NOW!」
「STARTING NOW!」
2016年7月13日発売
1200円 / キングレコードKICM-1690
Amazon.co.jp
NANA MIZUKI LIVE PARK 2016

2016年9月22日(木・祝)
兵庫県 阪神甲子園球場

衣装協力(中村正人)
MACKINTOSH PHILOSOPHY / Fobs classic


2016年7月14日更新