音楽ナタリー PowerPush - 私とドリカム2-ドリカムワンダーランド2015 開催記念 BEST COVERS-
中村正人(DREAMS COME TRUE)×大森靖子
ポップス職人の見る景色
オリジナリティを足して次の世代へ
中村 さっきパクリの話があったけど、俺はデビューしたとき、自分が大好きな洋楽をパクリ倒そうと思ってたの。何千曲とある名曲をやり尽くしたかった。
大森 すごくわかります。
中村 吉田美和っていうキャラは誰にもパクれないのよ。だから僕がパクってあの人に歌わせれば誰にもバレないんじゃないかと思ってた。よくバレてるんだけど(笑)。
大森 私の「洗脳」ってアルバムもそういうコンセプトです。1990年代のJ-POPが好きすぎて、だからそれを大森靖子のキャラで全部食いつくしてやろうと思って。
中村 うん、しかも今の時代になると1960年代も70年代も圧縮されちゃって、誰がオリジナルかわからなくなるときがあるんだよね。だから「決戦は金曜日」も俺はEarth, Wind & Fireの「Let's Groove」とシェリル・リンの「Got to be Real」っていう2曲の曲を合体させて作ったんだけど、今Twitterとか見てると「アースっていうバンドがドリカムをパクってる」っていう人も出てくるわけ(笑)。
大森 あはは(笑)。
中村 でもそうなったときがホントの勝負だと思うんだよね。俺、アースのモーリス・ホワイトを大尊敬してて、自分の曲に参加してもらったときにモーリスに告白したのね。「私はあなたの作った音楽をさんざんパクって日本で今売れちゃってます」って。そしたらモーリスが「それでいいんだ」って。
大森 最高ですね!
中村 「私もジョン・コルトレーンやFunkadelicやKool & the Gangからいろいろ盗んでる。そこにオリジナリティを足して次の世代に受け渡すのがお前たちの仕事だ」って。それ聞いて俺もうめっちゃうれしくって大泣きして(笑)。
大森 かわいい(笑)。
中村 やっと父に許された息子のように、やっと神に許してもらったかのように、ロサンゼルスのスタジオで大泣きしちゃって。でもそこからはあんまりパクらなくなっちゃった。
大森 せっかくOKって言われたのに(笑)。
中村 パクっていいぞってお墨付きが出た瞬間、ここからはオリジナリティを積み重ねないといけないんだって思い始めちゃったんだよね。
女の子とおじさんのブルース
中村 なんかこうやって話してると、年齢とか関係なく、僕らは同じものを見てる気がしますね。
大森 うんうん、そう思いました。私もヒットする曲作りたいし。メジャーデビューして周りの人たちに動いてもらってるから、ちゃんとした仕事をしなきゃっていう状況もあって。
中村 さすがだね。今は女性のほうがずっと大人だから。もう男はダメだね。若い世代だけじゃなく、俺も含めて。
大森 私、おじさんが好きなんですよね。
中村 ダメなおじさんもいっぱいいるよ(笑)。俺もそうだけど。
大森 でもおじさんはわかってるじゃないですか。女の人は、いつか失ってしまうって思ってるからブルースが若いときに来るんですけど、男の人はあとで来るんです。だから私、おじさんと若い女の子が好きなんですよ。
中村 なるほどね。女の子は若いときに刹那があるんだ。
大森 そうなんですよ。で、男の人はおじさんのほうが刹那があるんです。中村さんみたいな人がもっと増えればいいのに。
中村 あはは(笑)。俺なんて叩かれてばっかりだよ。
大森 じゃあ叩かれても負けないようにがんばってください(笑)。
中村 うん。そんなの平気でいられるくらい、心に毛が生えてないとダメなんですよ。
大森 そこ鍛えるのは大事ですよね。でもなんか、ちゃんと傷付きたい自分もいるんです。
中村 わかるなあ。でも叩かれないっていうのは注目されてないってことだから、それもイヤなんだよね(笑)。
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- V.A.「私とドリカム2-ドリカムワンダーランド2015 開催記念 BEST COVERS-」2015年4月1日発売 / 3146円 / EPICレコードジャパン / ESCL-4394
- 「私とドリカム2-ドリカムワンダーランド2015 開催記念 BEST COVERS-」
収録曲
- 何度でも / May J.
- うれしはずかし朝帰り / 西内まりや
- 未来予想図 II / 三浦大知
- 晴れたらいいね / LiSA
- The signs of LOVE / JUNHO(From 2PM)
- 眼鏡越しの空 / 片平里菜
- うれしい!たのしい!大好き! / クリス・ハート
- 決戦は金曜日 / NICO Touches the Walls
- サンキュ. / 大森靖子
- 朝がまた来る / Little Glee Monster
- やさしいキスをして / 川畑要
- 雪のクリスマス / JUJU
- a little waltz / MONGOL800
- LOVE LOVE LOVE / 徳永英明
DREAMS COME TRUE(ドリームズカムトゥルー)
吉田美和(Vo)と中村正人(B, Arrangement, Programming)による2人組バンド。1989年にメジャーデビューし、1992年発売の5thアルバム「The Swinging Star」は当時の日本記録となる300万枚以上のセールスを記録する。その後もシングル、アルバムともにミリオンヒットを連発し、ソウル / R&Bを基軸にしたサウンドが老若男女問わず幅広い層から支持されている。2014年にはデビュー25周年を迎え、同年8月に通算17枚目のオリジナルアルバム「ATTACK25」をリリース。なお1991年より4年に1回のペースで「史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND」と題したイベントを実施しており、今冬7回目となるドリカムワンダーランドを開催。7月7日には“ファンが聴きたい曲”全50曲を収録したコンプリートベストアルバム「DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム」をリリースする。
大森靖子(オオモリセイコ)
愛媛生まれのシンガーソングライター。弾き語りスタイルでの激情的な歌が耳の早い音楽ファンの間で話題を集め、2013年3月に1stフルアルバム「魔法が使えないなら死にたい」発表後、5月に東京・渋谷CLUB QUATTROでワンマンライブを実施。レーベルや事務所に所属しないままチケットをソールドアウトさせ大成功に収める。その後同年12月に2ndフルアルバム「絶対少女」をリリース。このツアーでもファイナルの東京・LIQUIDROOM公演のチケットは売り切れ。2014年9月にエイベックスからメジャーデビューし、12月にメジャー1stアルバム「洗脳」をリリース。現在、「♥爆裂!ナナちゃんとイくラブラブ洗脳ツアー♥」と題した全国ツアーを実施しており、追加公演の広島・広島CLUB QUATTRO、沖縄・沖縄Output以外の公演はすべてソールドアウトしている。