音楽ナタリー PowerPush - 私とドリカム2-ドリカムワンダーランド2015 開催記念 BEST COVERS-
中村正人(DREAMS COME TRUE)×大森靖子
ポップス職人の見る景色
ライブのときに解放される
中村 大森さんのアルバム(2014年12月リリース「洗脳」)も聴かせていただいたんですけど、すごいよね。曲を書いてコンセプト考えて歌も歌う。セルフプロデュースって簡単に言うけど、なかなかできるもんじゃないですよ。
大森 私、つんく♂さんと小室哲哉さんが好きなんですよ。あの2人が書く女性目線の歌詞の距離感がすごく好きで、自分もそういうふうに書きたいなっていう意識はあります。
中村 じゃあ客観的に書いてるんだ。
大森 そうですね。でもファンの人のツイートとか女子高生のブログとかからけっこう引用してる(笑)。
中村 取材癖がある?
大森 はい、あとはメロディも引用したり。アルバムの中にも、ユーミンと松田聖子さんと中島みゆきさんの3曲のメロディを並び替えて作った曲とかあるし。
中村 賢いなあ(笑)。
大森 だってメロディってそんなに音階ないじゃないですか。しょうがないから。
中村 11ステップしかないもんね。
大森 でもどうやったらパクリって言われてどうやったらパクリじゃなくなるのか、その境界線みたいなものも調べればあるんですよ。
中村 素晴らしいね。僕が20年かかってやったことをもうやってる。広告代理店のクリエイティブに大森さんがいたらすごいよ。
大森 そういうのばっかりです。そういうのしかないです。ライブのときにそこから解放される感じで。
中村 ライブのときは削ぎ落として大森靖子自身になってるんだ。
大森 そうですね。
変態なコードやリズムを埋め込みたい
中村 俺、大森さんのアルバム聴いてすっごい驚いたわけ。1960年代とか70年代に作られたアルバムのように、始まりから終わりまで本当によくできてる。
大森 あ、うれしい。
中村 と思わない? 自分で。
大森 だといいなと思って作ってはいますけど。
中村 俺みたいに自分が職人だって思ってる人間を唸らせるクオリティなんだよね。これはもう歴史に残るアルバムですよ、冗談抜きで。詞もメロディもサウンドプロダクションもすごい。つんく♂さんや小室さんもそうなんだよね。例えば小室さんのメロディを初めて聴いたとき、みんな新しいって感じたわけ。
大森 そうですね。
中村 それはいわゆる主旋律じゃないからなのよ。小室さんは打ち込み屋だから対旋律が好きで、例えばストリングスのメロディがたぶん好きなんだと思うんですよ。
大森 うんうん。
中村 俺らの世代が聴いてきた音楽って、ストリングスやギターのメロディに秀逸なものが多かった。小室さんはそれを主旋律に持ってくることで新しい音楽を作ったんだよね。
大森 わかります。コードもおかしいですもんね。
中村 うん、我々はフュージョンの時代を通ってきてるから変なコード大好きなの。で、今まではマジョリティを得るためには、そういうものは隠し味として入れるしかなかった。ドリカムもそうだけど、変態なコードやリズムをこっそり入れて、知らない人のDNAに埋め込もうと思ってたわけ。
大森 わかります。「決戦は金曜日」のBメロとか意味がわからないですもん(笑)。
中村 でも例えばバート・バカラックなんて、大ヒットメーカーだけど変態でしょ。Abbaも変態ですよ。そういうものがヒットすると、音楽ってもっと楽しくなるはずなのよ。
大森 はい。
中村 で、大森さんの音楽にはそういうものが全開で詰まってるんだよね。ピアノソロにしてもテンポチェンジにしても、1つひとつ本当によくできてると思う。
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- V.A.「私とドリカム2-ドリカムワンダーランド2015 開催記念 BEST COVERS-」2015年4月1日発売 / 3146円 / EPICレコードジャパン / ESCL-4394
- 「私とドリカム2-ドリカムワンダーランド2015 開催記念 BEST COVERS-」
収録曲
- 何度でも / May J.
- うれしはずかし朝帰り / 西内まりや
- 未来予想図 II / 三浦大知
- 晴れたらいいね / LiSA
- The signs of LOVE / JUNHO(From 2PM)
- 眼鏡越しの空 / 片平里菜
- うれしい!たのしい!大好き! / クリス・ハート
- 決戦は金曜日 / NICO Touches the Walls
- サンキュ. / 大森靖子
- 朝がまた来る / Little Glee Monster
- やさしいキスをして / 川畑要
- 雪のクリスマス / JUJU
- a little waltz / MONGOL800
- LOVE LOVE LOVE / 徳永英明
DREAMS COME TRUE(ドリームズカムトゥルー)
吉田美和(Vo)と中村正人(B, Arrangement, Programming)による2人組バンド。1989年にメジャーデビューし、1992年発売の5thアルバム「The Swinging Star」は当時の日本記録となる300万枚以上のセールスを記録する。その後もシングル、アルバムともにミリオンヒットを連発し、ソウル / R&Bを基軸にしたサウンドが老若男女問わず幅広い層から支持されている。2014年にはデビュー25周年を迎え、同年8月に通算17枚目のオリジナルアルバム「ATTACK25」をリリース。なお1991年より4年に1回のペースで「史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND」と題したイベントを実施しており、今冬7回目となるドリカムワンダーランドを開催。7月7日には“ファンが聴きたい曲”全50曲を収録したコンプリートベストアルバム「DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム」をリリースする。
大森靖子(オオモリセイコ)
愛媛生まれのシンガーソングライター。弾き語りスタイルでの激情的な歌が耳の早い音楽ファンの間で話題を集め、2013年3月に1stフルアルバム「魔法が使えないなら死にたい」発表後、5月に東京・渋谷CLUB QUATTROでワンマンライブを実施。レーベルや事務所に所属しないままチケットをソールドアウトさせ大成功に収める。その後同年12月に2ndフルアルバム「絶対少女」をリリース。このツアーでもファイナルの東京・LIQUIDROOM公演のチケットは売り切れ。2014年9月にエイベックスからメジャーデビューし、12月にメジャー1stアルバム「洗脳」をリリース。現在、「♥爆裂!ナナちゃんとイくラブラブ洗脳ツアー♥」と題した全国ツアーを実施しており、追加公演の広島・広島CLUB QUATTRO、沖縄・沖縄Output以外の公演はすべてソールドアウトしている。