音楽ナタリー PowerPush - DREAMS COME TRUE
祝・デビュー25周年「ATTACK25」特集
中村正人×亀田誠治対談
中村正人による対談企画第3弾には、音楽プロデューサーの亀田誠治が登場。ともにヒットメーカーとして時代を見つめ続ける2人の対話は、ヒット曲の作り方から音楽産業のあり方まで多岐に及んだ。
日本の音楽の轍を作った人
──お2人はいつ頃からお知り合いなんですか?
亀田誠治 僕はドリカムのファン歴は長いんですけどね。実際お会いしたのは4年くらい前?
中村正人 そうですね。僕も亀ちゃんの仕事はすごく面白いなと思って見ていて、最初はファジコン(FUZZY CONTROL)のプロデュースをお願いしたんだよね。
亀田 それからは年イチくらいかな? ごはん連れてってくださって。
──普段はどんな話をするんですか?
亀田 僕はいつもマサさんに聞きたいことがいっぱいあるんですよ。日本の音楽の轍を作った方ですからね。本当に素敵な兄貴分っていうか、歳も離れすぎず、同じ時代を共有している。いつもすごく大事なことを教わります。それにマサさんは、なんか一匹狼っていうか、ずっとドリカム1本でやり抜いているところがすごいなって。
中村 選択肢がなかったんですよ。もともとベースをやり始めたのも、地元の音楽サークルの中で一番ギターがヘタだったからだし。大学のサークルにも入ったけど、そこにはサザンオールスターズやピチカート・ファイヴの連中もいたし、原田真二さんもいた。それで劣等感をすごく感じて、だから1人でやるしかなかったんですよね。
──中村さんが亀田さんの存在を意識したのはいつ頃なんですか?
中村 やっぱりあれかな、(椎名)林檎ちゃんの仕事で。それにプロデュースワークはもちろんですけど、表に出てくる部分でもラジオのパーソナリティとして卓越したものを持ってたり。あとベテラン組を再生させる能力がすごい。例えばエレファントカシマシみたいな、とてつもなく個性の強いバンドが亀ちゃんを呼んで、亀ちゃんはちゃんと新しい魅力を引き出していく。これはすごいなあって。
亀田 エレカシの「桜の花、舞い上がる道を」は、僕が初めて彼らとタッグを組んだ曲だったんですけど、マサさんがご自分のブログで褒めてくださったのを覚えてます。
中村 ドリカムはエレカシの1年後にデビューしてるんだけど、僕はその頃から宮本(浩次)くんの大ファンだったの。当時2組ともエピックで、どっちも売れてなかったんだけど、信濃町のソニーに練習スタジオがあって、そこでいつも練習してるのはドリカムとエレカシだけだったんだよね(笑)。
亀田 いい話!
中村 で、エレカシがブレイクして、そのあといっぺん静かになって、それで亀ちゃんとやってもう一度バーンときたでしょ? ああ上手だなあと思って。今の亀ちゃんのスカパラの仕事も、まさかアジカンと!って思ったし。すごいよね。
「ドリカム印」のハンコ
──亀田さんのドリカムとの出会いは?
亀田 ドリカムが出てきたのは僕がプロになりかけの頃で、まだミリオンいく前だったけど「うれしい!たのしい!大好き!」とか街でガンガン鳴ってて。そのパワーと勢いにやられましたね。今までにない新しい風が吹き始めたというか。で、そのパワーは今も同じなんです。新譜聴かせていただいたんですけど……。
中村 え! 聴いたの!?
亀田 そりゃあ聴きましたよ!
中村 恥ずかしい! やめてよー!(笑)
亀田 いやいや(笑)、新譜を聴いて感じたのはその風味、フレーバーが変わらないっていうことで。90年代のフレーバーって今もいろんな人がリバイバルしてるんです。例えばファレル・ウィリアムスとかもそう。でもドリカムはリバイバルじゃなくて、ぶれない軸として鮮度を保ちながらやり続けてる。やっぱり確固たる音楽ポリシーが、マサさんの中にあるんだと思うんですよね。徹底した品質管理。工場入るときに白い帽子かぶってマスクして……。
中村 あはは!(笑)
亀田 そうやって作ってるんじゃないかってくらいの品質管理がなされてる気がする。それで最後に「ドリカム印」のハンコを押す。中途半端なミュージシャンにやらせるくらいなら、自分で全部打ち込みしてコントロールするっていう。そこにアントニオ猪木さんみたいな闘魂、気迫を感じるんです。
中村 恥ずかしいなー。
亀田 だから進化してるのに風味が変わらない。やっぱり美和さんの歌の力もありますし。ものすごく稀有な形のアーティストだと思います。
中村 でも確かに、うまいミュージシャンに生で演奏してもらっても、なんだか面白くないなってことがあるんですね。そういうときは弾いてもらったデータを全部バラして自分で打ち込むんです。“面白さ”を考えると最終的に自分でやらないと気が済まない。だからほかのミュージシャンにやってもらうときは、うまい演奏よりショッキングな演奏を求めるところがある。
亀田 僕もわりとショッキングな演奏をしちゃうほうなんでわかります(笑)。
中村 なんていうか、高校生がGarageBandで作った音楽のほうがショッキングだったりするじゃない? 機材の制約が発想の豊かさを生んでる。だから僕も今回のアルバム、音源は3台しか使わなかったんです。自分にリミットをかけて、その中で全部やろうって思った。ドリカムのサウンドって、やっぱり不器用で泥臭いものだと思うから。それが僕の人生そのものなんです(笑)。
亀田 深いなあ。僕がドリカムをすごいと思うのは、その不器用さから生まれるスペースが全部美和さんの歌にフォーカスしてるところなんです。音が埋まってない。
中村 ああ、今回は特にそうかもね。
亀田 すっきりしてるんですよ。自戒の意味も含めて言いますけど、今のJ-POPはやっぱり音が多いんです。でもドリカムは音数がコントロールされてる上に、打ち込みの曲はプレイヤーによるブレがなくて、そのぶん音と音の間にたくさんスペースが空いている。機械の音の中に、唯一ヒューマンな美和さんの歌が入ってくることによって、みんな「やっぱり吉田さんの歌いいわー」ってなってる気がする。マサさんはそれをわかってやってるんですよね。
5年後のヒットにつながる判断
──今、中村さんが音を徹底的にコントロールしてるというお話がありましたが、そのあたり詳しく聞かせてもらっていいですか?
中村 いや、そこは僕というよりは、やっぱり吉田との共同プロデュースなんですよ。今回のアルバムもミックスは吉田がリードしてやってますし。
亀田 えっ、ミックスも2人で?
中村 うん、うちは全部自分たちでやるんです。エンジニアがベーシックのコンプとEQを作ったあとは、僕と吉田がPro Toolsで、ボーカルも楽器も、全部の音量を決めてく。
亀田 すごい! 俺、そこは触らないですよ。
中村 だって亀ちゃんはプロデュースしてる数が違うもん! こっちはドリカムだけやってればいいからね。だからミックスも1曲に2日かけてやるんです。
──お2人の間で意見がぶつかることはないんですか?
中村 ありますけど、ここ4~5年は吉田の判断のほうが正しいですね。だから前回のアルバムは全部吉田にまかせました。でも面白いんですよ。吉田が「前回は私のやりたいことやりすぎてヒットしなかったから、今回はマサさんね」って。
亀田 あはは(笑)。
中村 じゃあ僕がやればヒットするのかっていうと、そういうことでもないんだけど。吉田がやったものは5年後ヒットしたりするの。例えば「何度でも」を作ったとき、僕はもちろんヒットを目指してやってるわけですよ。だけど吉田の歌詞とか、最後のまくし立てるところとか、これはウケないんじゃないかってちょっと思ったりする。それで結果ヒットしなくて、俺は心のどっかで「ほらやっぱり」って思うわけです。ところが5年後、それが大ヒット曲になってるの。いつのまにかみんなが知ってる曲になってる。吉田にはそういうところがあって、すごいなって思うわけです。だからミックスも今は吉田の判断にまかせるところが多いですね。僕がやると、ヒットを狙いすぎてコンサバになるところがあるので(笑)。
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- 中村正人×百田夏菜子(ももいろクローバーZ)対談
- 中村正人×ハマ・オカモト(OKAMOTO'S)対談
- 中村正人×亀田誠治対談
- 著名人アンケート「私の好きなドリカム」
- 中村正人インタビュー
- ニューアルバム「ATTACK25」 2014年8月20日発売 / UNIVERSAL SIGMA
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 4104円 / UMCK-9725
- 通常盤 [CD] / 3240円 / UMCK-1525
CD収録曲
- THE CHANCE TO ATTACK WITH MUSIC
- ONE LAST DANCE, STILL IN A TRANCE
- あなたにサラダ以外も
- I WAS BORN READY!!
- MONKEY GIRL - 懺鉄拳 - (懺鉄拳の懺は懺悔の懺)
- 軌跡と奇跡
- FALL FALLS
- MORE LIKE LAUGHABLE
- さぁ鐘を鳴らせ
- 愛して笑ってうれしくて涙して
- 想像を超える明日へ - Album Version -
- MADE OF GOLD ―featuring DABADA―
- この街で
- MY TIME TO SHINE
- 愛がたどりつく場所
- AGAIN - Album Version -
初回限定盤DVD収録内容
撮り下ろし&レア映像満載の豪華85分。25周年を記念したスーパーでスペシャルな架空テレビ番組「THE CHANCE TO ATTACK WITH MUSIC」。なんと!あの日本テレビ系列の人気音楽番組「LIVE MONSTER」の制作チームが全面協力!アタックマン、チャンスウーマンの2人が登場し、さまざまなレアコンテンツを紹介!
DREAMS COME TRUE(ドリームズカムトゥルー)
吉田美和(Vo)と中村正人(B, Arrangement , Programming)による2人組バンド。1989年にメジャーデビューし、1992年発売の5thアルバム「The Swinging Star」は当時の日本記録となる300万枚以上のセールスを記録する。その後もシングル、アルバムともにミリオンヒットを連発し、ソウル / R&Bを基軸にしたサウンドが老若男女問わず幅広い層から支持されている。2014年にはデビュー25周年を迎え、同年8月20日に通算17枚目のオリジナルアルバム「ATTACK25」をリリース。8月23日からは全国13都市32公演におよぶ全国アリーナツアーをスタートさせる。なお1991年より4年に1回のペースで「史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND」と題したイベントを実施しており、エンタテインメント性を追求した内容で多くのファンを魅了し続けている。
亀田誠治(カメダセイジ)
1964年アメリカ・ニューヨーク生まれ。1989年に音楽プロデューサーおよびベーシストとしての活動を始める。これまでに椎名林檎、平井堅、スピッツ、いきものがかり、GLAY、アンジェラ・アキ、JUJU、秦基博、エレファントカシマシ、MIYAVI、赤い公園、東京スカパラダイスオーケストラなど数多くのアーティストのプロデュース、アレンジを手がける。2004年に椎名林檎らと東京事変を結成し、2012年閏日に惜しまれつつ解散。2013年には2回目となる自身の主催ライブイベント「亀の恩返し」を日本武道館にて開催し、映画「カノジョは嘘を愛しすぎてる」の音楽プロデュースを担当するなど、さまざまな形で音楽作品を届けている。
2014年8月19日更新