DREAMS COME TRUEのミックスCD「DREAM CATCHER」シリーズの第4弾「DREAM CATCHER 4 -ドリカムディスコ MIX CD-」がECサイトのDCTgarden SHOPPING MALL、UNIVERSAL MUSIC STOREで明日3月21日にリリースされる。
2022年8月から9月にかけて全国各地で行われた中村正人(B, Arrangement, Programming / DREAMS COME TRUE)がホストを務めるディスコイベント「ドリカムディスコ2022 -Road to DWL2023-」。「DREAM CATCHER 4」はこのイベントの各公演で披露されたスペシャルミックスをCD化するもので、多くのドリカムの名曲を公演ごとのテーマに合わせて選曲、ミックスした6トラックが収録される。「よしだみワード編」「うなるベース編」といった各トラックのタイトルは中村が自ら命名した。
音楽ナタリーでは、本作のミックスを手がけたDJ Mass MAD Izm*、選曲を担当した構成作家でラジオパーソナリティのミラッキ大村(大村綾人)にインタビュー。「DREAM CATCHER 4 -ドリカムディスコ MIX CD-」の制作、ドリカムの魅力について語り合ってもらった。
取材・文 / 森朋之撮影 / 佐々木康太
R&BやソウルをJ-POPに昇華したパイオニア
──まずはお二人とDREAMS COME TRUEの出会いから教えていただけますか?
ミラッキ大村 僕は小学校6年生のときからドリカムが好きで、いちリスナーとしてずっと聴いていました。2001年に放送作家になり、2020年にbayfmで「9の音粋」という番組を始めて。選曲としゃべりをやらせてもらってるんですけど、ちょくちょくドリカムの曲をかけてたんですよ。それがファンの方に伝わって、ある時期から、中村正人さんも番組を聴いてくださっていたみたいで。交流のきっかけは、2021年3月のドリカムの歌詞を交えたTwitterのつぶやきですね。「琥珀の月」に、「一年前にふたりで見た 映画のチケット 半分に折れて ポケットから出てきた」というフレーズがあるんですが、「自分のコートのポケットから出てきたのは『とろけるスライスチーズの、はがしたやつ』」とツイートしたら、そのことをマサさんがブログに書いてくださって(参照:DREAMS COME TRUE 中村正人 - 俺実はミラッキの。 - Powered by LINE)。その後、「9の音粋」の特番にお呼びしてからのお付き合いですね。
DJ Mass MAD Izm* 僕はドリカムとの出会いは偶然でした。最初にハマったジャンルがヒップホップだったんですが、その頃のヒップホップ好きの間では、「J-POPはダサい」みたいな風潮があって、自分も日本のポップスはあまり聴いてなかったんです。でも、あるとき流れてきた曲がR&Bテイストですごくカッコよくて、それがドリカムだったんですよ。コアな洋楽好き、R&Bやヒップホップのマニアックなリスナーが聴いてもカッコいいと感じるJ-POPと言いますか。
ミラッキ大村 そうですよね。小学生の頃は、ドリカムの歌詞の世界観をまったくわかってなくて(笑)、サウンド、メロディ、そして吉田美和さんの歌が、自分にとって超が付くエンタテインメントだったんです。男子の友達と一緒に「短い髪 シャンとした後ろ姿」(「眼鏡越しの空」)と歌ったり(笑)。マサさんが手がけた「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」の音楽も好きで。人生で最初に聴いた音楽がゲーム音楽という人間でもあるので、子供の頃からマサさんの音に反応していたんだと思います。
DJ Mass MAD Izm* ドリカムのサウンドの軸は、マサさんのトラックメイクと重厚な生演奏の絶妙なバランスだと思っていて。ドリカムのダンスミュージックの要素、打ち込みの色を強めたのが「DOSCO prime」(2020年10月に発売されたアルバム。ディスコ仕様に生まれ変わったドリカムの楽曲を収録)だと思うんですよね。
──「DOSCO prime」は2020年に行われたオンラインイベント「DREAMS COME TRUE WINTER FANTASIA 2020 - DOSCO prime ニコ生 PARTY !!! -」の一環としてリリースされた作品ですね。“ディスコ仕様に変換されたドリカムのベストアルバム”ですが、この作品にMassさんも参加されたそうで。
DJ Mass MAD Izm* そのときにマサさんからも評価していただき、ツアー(「DREAMS COME TRUE ACOUSTIC風味LIVE 総仕上げの夕べ 2021/2022 ~仕上がりがよろしいようで~」)にも参加させてもらいました。ドリカムに関わった発端は「DOSCO prime」だったんですが、ダンスとドリカムのつながりだったり、ドリカムのダンサブルなサウンドを多くの人に知ってもらえたと同時に、再評価にもつながったのかな、と。
──ダンスミュージックとしてのドリカムですね。
DJ Mass MAD Izm* そうですね。吉田美和さんの歌声のイメージが強いと思うんですが、それを引き立てるマサさんのトラックメイク、プロデュースワークが素晴らしくて。「DOSCO prime」には僕もトラックメイカーとして参加しているんですが、そのよさを引き出しただけなんですよ。原曲を大事にしたかったし、実際、手を加えるようなことはほとんどなくて。シンセの音色やリズムの打ち込み方をアップデートさせただけで、ほぼ変わってないんです。とにかくドリカムの楽曲のよさを消したくなかったし、大リスペクトしているマサさんのサウンドを際立たせて、今のシーンに合ったものにすることだけを考えていましたね。
ミラッキ大村 ドリカムのお二人がもともと好きだった音楽やルーツも感じられますよね。大人になって、ラジオ業界に入ってから海外の音楽に触れる機会が増えた時期に、「これってドリカムみたいだな」と思うことがあって。ドリカムのバックボーンにある音楽もだんだんわかってきたんですけど、「“もと”を超えてる」と思うんですよね。だからこそ今のリスナーを楽しませたり、踊らせられるんだろうなと。
DJ Mass MAD Izm* ルーツや影響を受けた音楽に関しては、インタビューなどでも話してらっしゃいますよね。マサさんとお会いするとトラックメイカー同士の会話になるんですよ。サウンドの構成や音作りのことを話せるのがうれしいし、そのおかげで仲よくなれたところもあって。さっきも言いましたけど、R&B、ソウル、ファンクなどをJ-POPに昇華したパイオニアですからね。
ミラッキ大村 J-POPという言葉はJ-WAVEが“洋楽と一緒に流しても遜色ない邦楽”という意味で作ったとされていて。1989年にデビューしたドリカムの歴史は、J-POPの歴史そのものだと思います。それまでの歌謡曲とは違うポップスを生み出して、平成、令和と続いているんですよね。
ミラッキのムチャぶりにMassが対応
──ドリカム×ディスコのプロジェクト「ドリカムディスコ」、通称「ドスコ」が始まったのは、ドリカムが4年に一度開催している大規模ライブイベント「史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND」が行われた2019年です(参照:ドリカム曲で踊れるイベント「ドリカムディスコ」が全国拡散、SPゲストに中村正人)。昨年行われた「ドリカムディスコ2022 -Road to DWL2023-」は今年7月にスタートする「WONDERLAND」のキックオフイベントとして行われましたが、「ドリカム楽曲で踊る」という従来のテーマに加え、「架空のラジオ番組」という新たなコンセプトが加わりました。
ミラッキ大村 ラジオの要素が加わったことで僕もイベントに参加できて、とても貴重な経験をさせていただきました。中学生の頃からマサさんのラジオもずっと聴いていたし、おしゃべりもすごく面白いんですよ。そこで「アンドレ中村とオホーツク・ボーイズ」(中村正人のソロプロジェクト)の曲も知り、「こんな面白い曲もあるんだな」と思って、28年後に自分のラジオ番組(「9の音粋」)でかけて。マサさんはラジオをすごく大事にしてくれているし、「ラジオでいろんな音楽に出会ってきた。今もそうでしょ?」と思ってくれてるんじゃないかなと。「ドスコ」ももちろん大好きです。これだけダンスが浸透している時代なので、踊ることに特化したイベントやCDもすごくいいなと。かなり振り切っているようにも思えますけど、ミックスされた音源を聴くと、残してほしい要素はちゃんと残ってるんですよ。例えば「決戦は金曜日」の“DOSCO prime Version”では、原曲の冒頭にしか出てこないフレーズが繰り返されていたり。「このフレーズが『決戦は金曜日』の高揚感につながってたのかも」と思ったし、いろんな発見があるんですよね。
──では、「DREAM CATCHER 4 -ドリカムディスコ MIX CD-」について伺います。各公演のトラックのテーマ設定と選曲をミラッキさんが決め、ミックスをMassさんが担当しています。まずミラッキさんに聞きたいのですが、すごく個性的な選曲ですよね。
ミラッキ大村 そうですね。まさに自分のラジオ番組でもやっている企画なんですけど、何も言わないで5曲くらいかけて、「どんな共通点があるでしょう?」という(笑)。それはドリカムの曲でもやれると思ったし、楽しいだろうなというのが始まりですね。
DJ Mass MAD Izm* ドリカムの曲はとにかくバリエーションが豊富だし、共通のテーマがあったとは言え、どれもけっこう曲調がバラバラだったんですよ。「さて、これをどうやってDJミックスしようか」と悩みました(笑)。
ミラッキ大村 そうですよね(笑)。BPMが近かったり、音色が似ているほうがつなぎやすいのはわかっているんですけど、そこはあえて意識せず選ばせてもらって。ほとんどムチャぶりというか(笑)、Massさんは大変だったと思います。おかげさまで各公演のお客さんもすごく満足してくれて、大成功でしたね。「CD化してほしい」という声がたくさんあったからこそ、このアルバムがリリースされるわけで。ムチャぶりに応えていただき、ありがとうございました(笑)。
DJ Mass MAD Izm* いえいえ(笑)。
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歌詞の「ナビゲーター」実際はなんと歌っている?