バラードを作るとき、自分の気持ちはほとんど入れてない
──話を戻して、「飴か夢」という楽曲も聴き手によっていろいろな解釈ができるような作りですが、VALSHEさんはこの曲にどのようなイメージを持たれていましたか?
VALSHE 「飴か夢」を初めて聴いたとき、自分はまだdorikoと面識はなかったんですけど、「この曲を作った人は病んでるのかな?」と思ったんですよ(笑)。
doriko (笑)。実際に会ってどうだった?
VALSHE 全然そんなことはなかったんだけど(笑)。まあ、本当に病んでるというよりかは、この人はきっと感情をいろんなものに包んで曲に投げつけてるという感じがして。その印象が強くて、この曲をバラード3部作と呼ばれるもの(「歌に形はないけれど」「夕日坂」「letter song」)を作った人と同じ人が作ってるとは思えなかったんです。
doriko 僕はバラードを作るとき、自分の気持ちはほとんど入れてないから。例えば初期のバラード3曲はもう10年ぐらい前に作ったんですけど、それは曲の世界観に沿ってストーリーや物語を付けるという感じで、歌詞に自分の気持ちは入ってないんです。でも、「飴か夢」はある人にも「この曲は珍しく感情だけで書いてるよね」と言われたことがあって、ミクちゃんの曲でもごく稀に感情だけで書いたりすることがあるんです。そういう曲に関しては正直あまり突っ込まれたくないんですが(笑)。
VALSHE dorikoがミクちゃんに歌わせてるときは、そのままの表現じゃなくて、言葉や舞台を変えてることが多いもんね。だから「飴か夢」も「この人大丈夫かな?」みたいに思ったと言うよりかは、そうやって1つの楽曲を多角的に捉えられる曲作りをする人っていう印象があったんです。
doriko これまで10年活動してきた中で自分の作る歌詞が好きと言ってくださる方も多いんですけど、あるとき「この曲の歌詞はこういうことなんですよね?」って、その人なりの解釈をメールで送ってくれた人がいたんです。でも、それが僕の思っていたものとまったく違った内容だったんですよ(笑)。だけど、どんな理由であれその人が好きになってくれたのであればそれでいいじゃんと思って、それから7、8年ぐらい歌詞の内容については一切話さなかったんです。最近は考え方を変えて、歌詞のことを説明するようにもなったんですけど。
ボカロ曲を自分なりに歌うのは、一次創作とは別の楽しさやよろこびがある
──VALSHEさんはひさびさにボカロ曲を“歌ってみた”わけですが、ボカロ曲を歌うときに特別な感覚はありますか?
VALSHE Vocaloidのオリジナル楽曲を歌うのはデビュー前の頃以来なので相当ひさしぶりだったんですけど、そういった曲を歌うときは、たぶん歌う人それぞれで何を優先して歌うかが分かれると思うんですよ。例えば、ちょっと機械っぽい歌い方で初音ミクちゃんの声に寄せる人がいたり、逆にミクちゃんにはないフェイクやコーラスを入れてみる人がいたり。自分はどちらかと言うと、アレンジはそんなにしないでキレイに歌うタイプだったので、今回「飴か夢」を歌ったときも、自分なりの「こういうふうにしたい」というイメージはありつつも、基本はミクちゃんをお手本にしたメロディラインを崩さずシンプルに歌いました。
doriko 確かに原曲の形をあまり気にしない人もけっこういるよね。
VALSHE それはそれで1つの形だと思うけど、自分は昔からもともとの曲が好きで歌うだけだったので、あまり大きく変えるということはなかったですね。
──今回ひさびさにボカロ曲を歌ってみて、“歌ってみた”活動をしていた当時の感覚を思い出したりは?
VALSHE まったくしませんでしたね(笑)。やはり録る環境が“歌ってみた”とはすべて違うので。今回のトリビュートアルバムの曲を収録する際はちゃんとスタジオに入って、ディレクションする人がいて、エンジニアさんがミックスして……その工程のすべてが昔とは何も当てはまらないですから。それにこの「飴か夢」という曲を昔からずっと聴いていたので、改めてミクちゃんの声を聴いて覚える必要がなかったんですよ。もしこれが知らない曲であれば、覚えるところから始めるので当時を思い出したかもしれないですね。
──VALSHEとしてデビューしてからは、意識的にボカロ曲を歌わないようにしてきたのでしょうか?
VALSHE 単純に「デビューしてからはオリジナル曲でやっていこう」という考えだったので、ミクちゃんの曲を歌うか歌わないかという発想すらなかったです。自分で詞を書いて、曲も作れるようになるのが自分の目指すあり方だったので。ただ、リスナーとしてはニコニコ動画などを通じてVocaloidの動画を観たりはしてましたけど。
──そんな中で、歌ってみたいと思う曲に出会ったりは?
VALSHE そうですね……好きな曲はあったりするんですけど、自分が歌いたいと考えることはあまりなかったかも。やはりユーザーとして楽しんでましたね。だから今回のdorikoのミニアルバムもすごく聴いてますし。
doriko 僕の勝手なイメージかもしれないけど、バルちゃんはデビューしてからずっと、曲も作るし詞も作るし、特に最近は世界観すべてを自分でプロデュースしてイチから作るじゃない。だからもう、ボカロ曲みたいにすでにあるものを歌う感じではないと思うんだよね。曲があってそこに乗っかる2次創作ではなくて、1次創作をずっとしてきたわけだから。
VALSHE でも自分は2次創作も好きだと思う。まあどちらかを選べと言われたら1次創作のほうを選ぶけど。Vocaloidというものがあって、それでボカロPと呼ばれる人たちが曲をたくさん作ってきて、それを自分なりに歌ってみるのは、また別の楽しさや喜びがあるから、それはそれですごく好きです。
- doriko feat. 初音ミク「君のいない世界には音も色もない」
- 2017年8月30日発売 / Being
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[CD]
2376円 / JBCZ-9062
- 収録曲
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- 君のいない世界には音も色もない
- オノマペット
- サクコロ
- 箱
- まぢかのみらい
- 青色十色
- V.A.「doriko 10th anniversary tribute」
- 2017年8月30日発売 / Being
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[CD]
3024円 / JBCZ-9061
- 収録曲 / 参加アーティスト
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- ロミオとシンデレラ / 小林幸子
- キャットフード / La PomPon
- 飴か夢 / VALSHE
- あなたの願いをうたうもの / 蓮花
- 歌に形はないけれど / 松岡充
- 文学者の恋文 / みく(アンティック-珈琲店-)
- Birthday / 花たん
- last will / ウォルピスカーター
- letter song / 藤田咲
- 君のいない世界には音も色もない / 前田玲奈
- VALSHE「WONDERFUL CURVE」
- 2017年8月23日発売 / Being
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初回限定盤 [CD+DVD]
4212円 / JBCZ-9057 -
通常盤 [CD]
3240円 / JBCZ-9058 -
Musing盤 [CD+DVD+ブックレット]
4212円 / JBCF-9009
- CD収録曲
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- エビングハウスの忘却
- WONDERFUL CURVE
- ツリーダイアグラム
- shut out
- MONTAGE
- ガランド
- embrace
- DOPE
- Chain Smoke
- Show Me What You Got
- CYCLE×CYCLONE
- a light
- コドモハザード
- GREAT JOURNEY
- 初回限定盤DVD収録内容
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- 「WONDERFUL CURVE」MUSIC VIDEO
- Making of 「WONDERFUL CURVE」
- Musing盤DVD収録内容
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- VALSHEの記憶!徹底解剖バラエティ