初音ミクが誕生した2007年より活動を続け、今年でデビュー10周年を迎えるVocaloidクリエイターのdorikoが、オリジナルミニアルバム「君のいない世界には音も色もない」を8月30日にリリース。合わせて彼のトリビュートアルバム「doriko 10th anniversary tribute」が同日に発売される。
ミニアルバムには「君のいない世界には音も色もない」をはじめ、初音ミクを使用した楽曲を得意のバラードを中心に全6曲収録。一方のトリビュートアルバムには、初音ミクの声を担当した声優の藤田咲や、小林幸子、松岡充(SOPHIA)、みく(アンティック-珈琲店-)、La PomPon、蓮花といった10組のアーティストが参加。それぞれの個性が光るカバーを提供している。
そこで音楽ナタリーでは今回、dorikoとは旧知の仲であり、トリビュートアルバムにも参加しているVALSHEを迎えて、2人の対談を企画。ボカロ曲の“歌い手”としての活動を経て2010年にアーティストデビューしたVALSHEと、10年間変わらず初音ミクを自身の音楽表現の核としてきたdorikoに、新作の話題を軸にボカロカルチャーへの思いについて語り合ってもらった。
取材・文 / 北野創 撮影 / 草場雄介
- doriko feat. 初音ミク「君のいない世界には音も色もない」
- 2017年8月30日発売 / Being
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[CD]
2376円 / JBCZ-9062
- 収録曲
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- 君のいない世界には音も色もない
- オノマペット
- サクコロ
- 箱
- まぢかのみらい
- 青色十色
- V.A.「doriko 10th anniversary tribute」
- 2017年8月30日発売 / Being
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[CD]
3024円 / JBCZ-9061
- 収録曲 / 参加アーティスト
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- ロミオとシンデレラ / 小林幸子
- キャットフード / La PomPon
- 飴か夢 / VALSHE
- あなたの願いをうたうもの / 蓮花
- 歌に形はないけれど / 松岡充
- 文学者の恋文 / みく(アンティック-珈琲店-)
- Birthday / 花たん
- last will / ウォルピスカーター
- letter song / 藤田咲
- 君のいない世界には音も色もない / 前田玲奈
声をかける前から勝手に頭数に入れてました
──お二人は以前から楽曲提供などで交流を深めていますが、今まで公の場で対談する機会は?
VALSHE 今回が初めてですね。
doriko 2人ではしょっちゅう話してるけどね。
VALSHE 付き合いは自分がデビューする直前からなので、もう7年ぐらいになるんです。今や一緒にごはんを食べに行ったり、プライベートの話ができる、友人のような立ち位置の存在でもありますね。
doriko 僕はずっとVALSHEの曲を書かせてもらってますが、例えばアルバムの中の1曲だったり、それほどべったり関わっている感じではないので、程よい距離感なんでしょうね。でも、バルちゃんは正直なので、ダメと思った曲はすぐ戻してきますから(笑)。今まで採用されなかった曲もたくさんあります。
VALSHE リリースのあるなしに関わらず、いつでも気軽にごはんに誘える貴重な存在です。
──そんな仲ということもあって、今回リリースされたdorikoさんのトリビュートアルバムにはもちろんVALSHEさんが参加していますね。
doriko 今回は10組のアーティストに僕の曲を歌っていただいたんですが、バルちゃんは声をかける前から参加してくれると信じてたので、僕やスタッフの中では最初から勝手に頭数に入れてました(笑)。
VALSHE 自分もレーベルメイトということで、トリビュートアルバムを作ることは共通のスタッフから聞いてたんですけど、「これにバルが入らないわけないよね?」みたいな気持ちで、正式なオファーをもらう前から参加するつもりでしたね(笑)。
僕らは詞を考えるとき、根底にあるものが似てる
──VALSHEさんが今回歌われたのは、dorikoさんが2009年に発表された初音ミク楽曲「飴か夢」になります。
VALSHE 自分がこういうトリビュートに参加するときは「飴か夢」を歌いたいとずっと思ってたんです。トリビュートアルバムへの参加オファーがあったときも、まず「飴か夢」は誰が歌うのかを聞いたぐらいで。この曲はそれこそ動画で投稿されたときから大好きでずっと聴いてたんです。サウンドのテイストが自分のもともと好きなロックというのもあるし、歌詞もとってもいいので。dorikoの曲は歌詞で好きな部分が多いんですよ。
doriko 普段バルちゃんとしゃべっていても、こんなに褒められることはないのに……。
VALSHE いつも褒めてるじゃん!(笑)
doriko 確かに褒めてくれるけども、バルちゃんからはダメ出しを食らうこともたくさんあるから(笑)。ちょっと話はズレますけど、今回VALSHEのニューアルバムで作詞をさせてもらったときに、本人に直接相談する機会があって。それで僕らは詞を考えるとき、根底にあるものがなんとなく似てると思ったんですよ。
──確かにVALSHEさんのニューアルバム「WONDERFUL CURVE」に収録されている「ガランド」はdorikoさんが作曲・編曲を、VALSHEさんが作詞を担当していますが、この詞がdorikoさんの世界観とすごくマッチしてました。
doriko この曲は正直に言うと、最初にバルちゃんから言われた「軽めのバラード」というリクエストを無視して、自分の趣味全開で暗いバラードを作ってしまったんですよ。
VALSHE でも、自分は基本的にdorikoのカラーがとても好きだから、「あまり縛られずに自分がいいと思うものを出してほしい」ということをリクエストの中に含んでいたので、そのまま採用することにしました。dorikoの曲は聴くと絵や色が浮かぶことが多くて、「ガランド」もイメージをつかんだらすぐに歌詞が湧いてきて、結局アルバムの中で最初にできた曲なんです。
──お互いの作詞のタッチは似てると思いますか?
doriko 僕が初音ミクの曲を作るときは、よくも悪くも「初音ミクに歌ってもらうなら、こういう曲を書こう」と言うことを意識してるんですけど、バルちゃんに曲を書くときはほぼ自分の趣味というか、好き放題に書いてOKをもらえるので、気楽ではありますね。
VALSHE 確かにdorikoが初音ミクで作る楽曲はミクちゃんを意識してることがすごく伝わるんだけど、dorikoの歌詞の根底には「これ本当はこういうことなんじゃないかな?」と言うような思考を感じることがよくあるんですよ。自分が作詞するときもダブルミーニングで意味の取れるものを多く作るんですけど、dorikoもその傾向が強いんじゃないかな。
doriko 確かにそうかも。あまりどの曲とは言いたくないんだけど、僕としては表面的に見える部分とは違う気持ちを込めた曲もたくさんあるんですよ。まあ、そんなのは別に誰に読み解いてほしいとも思わないんですけど(笑)。ただ、そこが僕のささやかながらの自己表現と言うか。バルちゃんもそれと似たようなことをやるんだよね。曲の世界観に沿って詞を書きつつも、そういう気持ちをねじ込んであると思ったりするし。
VALSHE そうなんだよね。
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バラードを作るとき、自分の気持ちはほとんど入れてない
- VALSHE「WONDERFUL CURVE」
- 2017年8月23日発売 / Being
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初回限定盤 [CD+DVD]
4212円 / JBCZ-9057 -
通常盤 [CD]
3240円 / JBCZ-9058 -
Musing盤 [CD+DVD+ブックレット]
4212円 / JBCF-9009
- CD収録曲
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- エビングハウスの忘却
- WONDERFUL CURVE
- ツリーダイアグラム
- shut out
- MONTAGE
- ガランド
- embrace
- DOPE
- Chain Smoke
- Show Me What You Got
- CYCLE×CYCLONE
- a light
- コドモハザード
- GREAT JOURNEY
- 初回限定盤DVD収録内容
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- 「WONDERFUL CURVE」MUSIC VIDEO
- Making of 「WONDERFUL CURVE」
- Musing盤DVD収録内容
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- VALSHEの記憶!徹底解剖バラエティ