音に気を使う人間じゃないと思われているのが悲しい

──自由に使えるスタジオを手に入れたことで、ファンにとってもこれから相当楽しみな展開がありそうですね。いろんなタイプのアーティストがいると思うんですが、Furukawaさんは特にアレンジや、それこそ音像とかエンジニアリング的なところまで含めて楽曲の全体像を描くタイプの人だという印象があるので。

まあ本人が一番ワクワクしてますよね。ライブの音響に関しても、今まで「ライブではCDより音が聴こえづらくなるよね」っていうのがみんなの常識としてあったと思うんだけど、そんな話もずっと意味がわかんなくて。鳴らしてるギターが聴こえないとか、それじゃライブやる意味あんまりないよな、とか思ってたし。

──それが今は改善されてる？

うん、ライブのエンジニアさんともちゃんと話しながらやってて、今はすっげえ音良くなってますよ。ほんとに変わりましたね。セットリストはツアー前半と変えてないですけど、イベンターさんとかが「すごい変わったね！」って言うんですよ。「セットリストがギュッとタイトになった」って言うから「変わってねーよ！」って感じなんですけど（笑）。

──やっぱりこのバンドにとって、音像というものがすごく大きな要素だったということですよね。例えば音響系の人なんかは、そういう部分にすごく気を使うんでしょうけど、ドーパンみたいなタイプのバンドがそこをそんなに気にしてるとは思ってなかったので。

だからそこが悲しいですよね。俺がそういう人間じゃないと思われてるってことですよね、今まで出した音源によって。ドーン！ ワー！ っていう人だと思われてるっていう。

──そうかもしれません（笑）。

それはすげえ悲しいですよ。俺が作ってきた曲はそういう曲じゃないですもん。今まで1曲もそんな派手なだけの曲はないですから。

過去の楽曲もライブで聴けばわかってもらえる

──今回こうやって音が変わったことによって、今後はメロディや曲の作り方も変化していくんでしょうか？

変わるかもしれないですね。この作品ではあんまり変えてないですけど、これからは今まで我慢してたアレンジも残せるし、時間もかけられるし、あとはスタジオで大きな音でシンセの音を作れるとか、いいことしかたぶんないと思いますよ。それによってみんなが望んでる方向に進むかどうかはわかんないですけどね。

──そうですね。Furukawaさんが本当にやりたいことをやるということが、今までのドーパンを好きなファンが望んでる方向とイコールなのかっていうのは、難しいところかもしれない。

難しいとは思います。Led Zeppelinみたいなものを今の僕らのファンが聴くかっていったらたぶん聴かないでしょうから。ずっと3分間もハーモニーとリズムだけのインスト部分が続いて歌があってっていう音楽はやっぱ聴かないでしょう。でもこういう制作環境を手に入れたからには、僕はそういう音楽も作ってみたい欲求に駆られるだろうし。

──Furukawaさんは前作「decadance」のときのインタビューで「ライブと音源はそれぞれ別のものとして考えていく」というような話もしていましたけど、もしかしたら音の作り方が変わることによって、過去の曲もうまくライブで表現できるようになるかもしれないですね。

うん、ライブ来てみてくださいよ。全然違いますから。例えば「beautiful survivor」とか今ライブで聴いてもらったら「あっ、本当はこういう曲だったんだ」ってわかってもらえると思います。

──個人的にはライブと音源が別ものとしてどんどんかけ離れていってしまうとしたら、それはバンドとしてあまり健康的じゃないなと思っていたんです。でも今後はそうじゃない形で、ライブならではの見せ方が確立できそうな予感があるということですよね。

あるかもしれないですね。僕は「anthem」に関してはちょっと期待してるんですよ。セットリストでの位置にもよると思うんですけど、ライブの中の焦点になり得るなと思ってる。この曲が盛り上がりにくいとはちっとも思わないし、勝算があるんですよね。だからライブと音源は、もともとあんまり離れてなかったのかもしれないです。

──じゃあとりあえずツアー後半戦でバンドの新たなモードを見せてもらって、その後はまたスタジオにこもる感じでしょうかね。

そうですね。今も、もっといいギターの録り方を発見したんで、早くそれを試したいと思ってます（笑）。