ナタリー PowerPush - DOPING PANDA
バンドの新たな境地を切り開くいびつな最高傑作が完成
ライブは内省的なものを見せつける場所じゃない
——今回のアルバムはサウンド的に非常に洗練された印象が強いんですが、それも研磨の成果なんでしょうか。
いや、どうだろう。それは普通にスキルアップもあるんじゃないかな。スケールは純粋に上がってますからね。あと、この過渡期にしか出せなかった情念とか、コマーシャルなものまで一緒にパッケージしたそのグロさとか。そういう変なパワーがあるとは思いますけど。
——そのいびつさと美しさみたいなものが両立しているのが面白いですよね。
美しくしたいな、とは思いましたね。いわゆるコード進行的な美しさもあるし、テクニカルな部分の美しさもあるんだけど。でもなんか、もっと本質的な美しさみたいなものが入ったらいいなって。
——ただひとつ心配なのは、ドーパンのライブに行って何も考えずに踊りたいと思ってるファンにとっては、このアルバムは繊細すぎるというか、ちょっとディープすぎる気がするんですよね。
かもしれないけど、踊らせたかったらライブ用にアレンジ変えちゃえばいいし。それでも無理ならそういう曲はやらなきゃいいんじゃないかな。
——あ、そうですか(笑)。
ライブってそういう場所じゃないし。僕の人間性とか哲学をむりやり見せつける場所じゃないんで。やっぱりライブでは一瞬にして反応してほしいし、特に僕らのファンはそれを楽しみに来ているから。もし内省的なものを見せてその哲学で圧倒したいんだったら、それは違うフォーマットでやるべきですよね。内省的なものをやりたいなら、誰もいない森の中でやるべきだし、グッズを売るべきじゃないし。そこは徹底しなきゃダメだと思う。
——そうですね。
まあ、そういうバンドもいますけど(笑)。でも僕はエンタテインメントをやってるっていう自覚があるし、見に来てくれている人たちはもちろんそこを期待しているし。だから僕らには“無限大ダンスタイム”ってツールがあるしね。
——そこを捨ててしまうわけじゃないんですね。
あー、絶対に捨てないです。そこを捨てたら俺ひとりぼっちになっちゃいますよね(笑)。
——でもこのアルバムを聴く限りでは、ドーパンは“次”に行こうとしていますよね。とにかくライブで盛り上がる、ギターロックだったりダンスロックって言われるようなところから、次のステージに行こうとしているんじゃないかと思うんです。この状況で、“今までのドーパン”を好きなファンのことを、今のFurukawaさんはどうするつもりなんですか?
置いていかないですよ! 置いていかないし、置いていっちゃいけないと思うし。感謝しなきゃいけないことが多すぎるというか。こんな尖った音楽を作ってきた僕みたいなのを、知ってか知らずか、支えてきてくれたんです ね。たとえ全部はわからなくても。これは僕の勘なんだけど。すごく楽観的な勘で、希望的な勘なんだけど、僕らのファンって、例えば「Dopamaniacs」もそうだったけど、わからなくてもわかるまで聴いてくれようとしたと思うし。結果、わからなくてもライブには来てくれたと思うし。これから先もそうやって信じてくれると思うし。なんか結構僕もそういう人間なんだけど。例えば好きな映画監督とかいたりして、その監督の作品でわからないものがあったら、自分がそこに届いてないんだって思うん ですね。それは間違ってるかもしれないですよ。でも、そういう僕が作っているものを支持してくれるっていうことは、そういう感覚に近いファンがいっぱいいるのかな、と。これはホントに希望的、楽観的な勘ですけど(笑)。
——いや、それを聞いて安心しました(笑)。
ファンには本気で感謝してるんです。だからライブでは本当に期待に応えなきゃいけないと思ってます。そこは音を作るときの哲学とは違う哲学でやってますからね。音に関しては死ぬまで発信していくから絶対に聴いてほしいし、もしわからなくても「すげえんだな」って思ってほしい。「わからないけど、これはきっとすごいんだろうな」っていうことだけは信じてほしいんです。
ライブに来てくれる人を100%楽しませたい
——いよいよ6月6日からは全43公演というバンド史上最長のツアーも始まりますね。
うん、ツアーの間にまた見えてくるものもあると思うし、いろいろ楽しみですよ。でもね、さっき言ったようにライブの哲学は別に持っておきたいんで、そこでなんか、自分の内省的な今のモードに引っ張られて、ライブがおかしくなるのだけは絶対に避けたいと思ってます。来てくれる人を100%楽しませたいと思ってるんで。
——やっぱりライブでお客さんと直接接するというのは大きいですか?
そうですそうです。そこはでかいですよね。でもだからこそ、逆にやりすぎちゃって、お客さんに媚びないようにしたいなっていうのもあるけど。うん。そこを間違うと偽物になっちゃうんで。
——じゃあライブ楽しみにしています。
うん、ぜひ期待しててください!
CD収録曲
- introduction
- decadence
- majestic trancer feat. VERBAL(m-flo)
- beautiful survivor
- Lost & Found feat. TORU HIDAKA(BEAT CRUSADERS)
- crazy one more time
- the idiot
- the edge of outside
- beat addiction
- gaze at me
- standin' in the rain
- I was just watchin' you
DVD収録内容
- Hi-Fi
- The Fire
- MIRACLE
- Blind Falcon
- Can't Stop Me
- The fast soul got all(reason)
- I'll be there
- Crazy
- nothin'
- beautiful survivor
- majestic trancer
- beat addiction
DOPING PANDA(どーぴんぐぱんだ)
YUTAKA FURUKAWA(Vo,G)、TARO HOUJOU(Ba,Cho)、HAYATO(Dr,Cho)から成る3ピースバンド。1997年の結成当初は主にパンク/メロコアシーン界隈で活動していたが、生来のダンスミュージック好きが独自の発展を見せ、後にエレクトロとロックのハイブリッドな融合を担う存在に。インディーズでのブレイクを受けて2005年にミニアルバム「High Fidelity」でメジャーデビュー。時代の空気を反映させたサウンドとエンタテインメント性抜群のライブパフォーマンスで、幅広いリスナーからの支持を獲得した。全国各地でツアーやライブ出演を精力的に展開し、ロックフェスティバルでは入場規制を頻発させている。2008年にはイギリスで初の海外公演を開催。ワールドワイドな活動にも注目が集まっている。