音楽ナタリー Power Push - 舞台「名なしの侍」特集 堂島孝平×菜月チョビ(劇団鹿殺し)×丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)

最高に痛快な新感覚音楽時代劇

サンシャイン劇場に立って燃えたい

──劇団鹿殺しが時代劇をやるのは2012年上演の「田舎の侍」以来2度目ですよね。今回なぜ時代劇をやろうと思ったんですか?

丸尾 僕らの世代は時代劇って言うと、劇団☆新感線のメタル音楽を取り入れた作品のイメージがすごく強くて。別の劇団が時代劇をやってもどうしても新感線の影響から逃れられない印象があるんですね。でも「田舎の侍」をやったときに、自分たちらしい音楽モノの時代劇ができるっていう手応えがあって。今回、15周年記念公演という大事な作品で、例えば足軽を演じる役者たち自身で管楽器を吹いたり、そういう僕ららしい土臭い時代劇に挑戦したいと思ったんです。

──実際のストーリーとしては?

丸尾丸一郎

丸尾 戦国時代が舞台で、普段は農民なんだけど合戦のときだけ駆り出されるっていう、名のない人たちの物語です。みんなが知ってるような活躍した武将の話ではなくて、言ってみれば当時の社会では底辺にいる人間たちなんですけど、彼らは彼らで必死に生きていて、上昇志向の人もいれば、自分の立場を守るのに必死な人もいる。そういう彼らの生き様っていうのを描きたいなと思ってますね。“生きる”っていうことは今も昔も変わらないので、観終わったあとに強く歩いていこうと思える劇にしたいなと。

菜月 今年は15周年記念と銘打って活動していて、1月は自分たちのホームみたいな下北沢の本多劇場でやったんです。で、夏は挑戦をしようっていうのは決めていて、サンシャイン劇場という今までで一番大きな、それこそ本多劇場の倍のキャパシティの会場を押さえて。去年ひゅーいくんを迎えて、初めて生バンドを取り入れた舞台をやったときに会場が大きくなってもやれるという手応えがあったんですね。劇中に生バンドや管楽器が入ってくるっていう、鹿殺しだからできる音楽劇をより多くの人に観てもらいたくて。

堂島 僕はキャラメルボックスの音楽をずっとやらせてもらってたんで、サンシャイン劇場って聞くとキャラメルボックスを観に行って自分の曲が使われてるのを聴くっていうシチュエーションがすごい思い浮かぶんですよ。だから自分がそこに立つっていうのが……なんて言うか、燃えたいなって思いますね。

菜月 いい言葉ですね、そこ太字でお願いします。堂島さんが「燃えたい」って言いました。

堂島 いや、まあ言いましたけど(笑)。

丸尾 あははは(笑)。

堂島 燃えないといけないですよね。これまでずっと音楽をやってきて、一昨年には映画にも出させていただいて(参照:堂島孝平が映画初主演、演じるのは吉祥寺のカフェ店主)、そのあとには「オモクリ監督 ~O-Creator's TV show~」っていう番組に出てショートムービーの監督もして。音楽にとらわれずいろんなことをこだわりなくやることで、きっとそのうちに何かにつながるだろうとは思っていたんですけど、まさか劇団鹿殺しだったとはね(笑)。

堂島は座長や演出家タイプ

──堂島さんはビッグバンド編成の堂島孝平楽団での活動もされているので、ブラス隊がいる劇団鹿殺しの舞台との相性もよさそうですよね。

左から堂島孝平、菜月チョビ、丸尾丸一郎。

丸尾 堂島さんのライブを観にいったときに、チョビが「全部のパートがしっかり聞こえてすごいよかった」って感動してて、そのあとの打ち合わせで「ここは音がバッティングしてるよ」とか教えてくださいねって言っていて。今回はバンドサウンドとボーカルと管楽器がいかに効果的に入ってくるかっていうのがすごく重要なので、堂島さんと一緒に作ることによって僕らも1つ階段を上がりたい気持ちもあります。

菜月 私の中で堂島さんはシンガーというより、座長や演出家みたいというか。メンバー全員をちゃんと把握して、かつ導いていて、お客さんの反応も俯瞰で見ている感じがしますね。今回唯一不安だったのは、会場が大きくなることでの音作りなんですね。アンプを通して鳴らす楽器とそうでない生の管楽器があって、全部のシーンを理解した上で音作りをしないと、聴かせたい音とは違ってきちゃうので。稽古場でずっと一緒にいてそれがわかる人がいるのはめちゃくちゃ心強いですね。

──堂島さんは普段のライブで全体を見るということを意識しているんですか?

堂島 いや、僕は本能的にやってるだけなんですけど、確かにチョビさんに分析してもらってる感じなんだろうと思いました。昔から「場」で考えるんですよね。誰も損しないようにするっていうか、自分もいいパフォーマンスをするために全体を上げるっていう。ハードルをそこにちゃんと設けることは確かに考えてるなって。

──ソロでありながらさまざまな人と活動している経験が大きい?

堂島 そうだと思いますね。ソロなんだけどバンドというスタイルをとってアルバムを作ったりとか、アイドル(Smalll Boys)をやったりとか。普通とは違うやり方をいろいろ模索してきた結果、いろんな人と組んでも、その場そのメンツでしかできないことを丁寧にできるようになりましたね。自分のライブでも一緒にいるメンバーが出たほうが盛り上がると思ったら出すし、そういうのは考えますね。

劇団鹿殺し「名なしの侍」 / 2016年7月16日(土)~24日(日) 東京都 サンシャイン劇場 2016年7月28日(木)~31日(日) 大阪府 ナレッジシアター
劇団鹿殺し「名なしの侍」
イントロダクション

「最強は誰だ」
時は戦乱の世。幾多の武将が名を馳せる中、月見草のように闇に咲く名も無き侍たちがいた。強さとは何か? 死ぬべき時はいつか? 生きる意味とは? はぐれ雲に問い続ける刃の光。流れた血のあとに、月の涙が零れ落ちる。
合戦の騒乱を生バンドに乗せ、足軽が管楽器を吹く。嘆きのギター、進軍のベース、生きる鼓動がドラムに乗り移る。劇団鹿殺しが挑む「新世代パンク時代劇」参上!

出演者

菜月チョビ / 丸尾丸一郎 / オレノグラフィティ / 橘輝 / 鷺沼恵美子 / 浅野康之 / 近藤茶 / 峰ゆとり / 有田杏子 / 椙山さと美 / メガマスミ / 木村さそり / 玉城裕規 / 鳥越裕貴 / 谷山知宏(花組芝居) / 堂島孝平
piggy(G / ex. pocketlife)、奥泰正(B / THE WELL WELLS)、辰巳裕二郎(Dr / 花団)
池田海人 / 石川湖太朗 / 長田典之 / ちゃこ / 中島ボイル / 前川孟論 / 矢尻真温

チケット

5月14日(土)23:59まで「名なしの侍」特設サイトにて特典付き2次先行販売実施中。
5月15日(日)10:00より前売り券&学生券の一般発売がスタート。

堂島孝平(ドウジマコウヘイ)
堂島孝平

1976年2月22日大阪府生まれのシンガーソングライター。1995年2月にシングル「俺はどこへ行く」でメジャーデビューを果たす。1997年には7thシングル「葛飾ラプソディー」がアニメ「こちら葛飾区亀有公園前派出所」のテーマソングに起用され全国区で注目を集めた。ソングライターとしての評価も高く、KinKi Kids、藤井フミヤ、山下智久、Sexy Zone、太田裕美、THE COLLECTORS、アイドリング!!!、住岡梨奈など数多くのアーティストへ楽曲提供したりサウンドプロデュースしたりしている。また西寺郷太(NONA REEVES)と藤井隆とのアイドルユニット・Smalll Boysとして活動しているほか、佐野元春の「SOMEDAY」再現ライブのバンドメンバーとして参加するなど、多彩なミュージシャンたちとセッションワークを行っている。2014年5月末で閉館となった東京・吉祥寺バウスシアターのクロージング作品の1つとして劇場公開された「さよならケーキとふしぎなランプ」では俳優として主演を務め、フジテレビ系「オモクリ監督~O-Creator's TV show~」では映像監督として出演した。デビュー20周年を迎えた2015年2月には、東京・中野サンプラザホールにて記念公演「堂島孝平 活動20周年記念公演 オールスター大感謝祭!」を、ゆかりのゲストを多数招いて華々しく開催。同年12月には通算17枚目となるオリジナルアルバム「VERY YES」をリリースした。2016年7月、劇団鹿殺しの舞台「名なしの侍」に俳優としてゲスト出演する。

劇団鹿殺し(ゲキダンシカゴロシ)
劇団鹿殺し

2000年、関西学院大学在学中に菜月チョビと丸尾丸一郎によって旗揚げされた劇団。2005年に活動の拠点を大阪から東京に移し、当時7名だった劇団員による2年間の共同生活や年間1000回以上の路上パフォーマンスで話題を呼ぶ。あわせてコンスタントに公演を実施し、2010年発表の「スーパースター」は、第55回岸田國士戯曲賞の最終候補にノミネートされた。2014年1月にはCoccoを主演に迎え、初プロデュース作品として「ジルゼの事情」を手がける。この公演は演劇界のみならず音楽界でも話題を呼び、同年9月に東京・サンシャイン劇場で再演された。2015年6月、石崎ひゅーいを招いた「彼女の起源」では生バンドを取り入れた舞台に挑戦して成功に収める。2016年7月、堂島孝平をゲストに「名なしの侍」を東京・サンシャイン劇場と大阪・ナレッジシアターで上演。