ナタリー PowerPush - 怒髪天

みんなで歌おうぜ! 最新アルバム全曲解説

09. 雪割り桜

──続く「雪割り桜」もまたグッとくる内容で。

増子 これはもう、怒髪天の新しい代表曲を作るつもりで作ったからね。俺の中では「昴」に代わる曲になると思ってるんだ。

一同 アハハハハ(笑)。

増子 今年の年末は、後ろにタキシードのコーラス隊を連れてNHKホールで合唱してる。そんな状況になり得る曲だと思うんだよね(笑)。だから、これはホントに日本のスタンダードになり得る曲を目指したの。

──なるほど。

インタビュー風景

増子 雪割り桜は四国あたりでまだ雪が残ってる時期に咲く花なんだけどさ……これって生命力にあふれる先駆けの花としては美しいけど、要するに空気読めてない花なわけじゃない? 咲いた本人もびっくりしてると思うんだ。「アレ!?」って。この先走った感がまたイイよね。バカっぽくってさ。今は日本も世界も冬の時代だけど、咲いた花なら咲き誇っていくべき。どうせ咲いた花なんだから、肩に積もる雪を払って、咲き誇ろうぜと。今は震災の後で非常に不安な冬の時代だけど、そもそも人間の歴史の中で、人間が生きやすかった時代なんてきっとないんだよ。恐竜に襲われたり、刀振り回されたり、爆弾落とされたりさ。震災だってみんなで乗り越えていけばいい。最初に言ったけど、この曲はみんなで歌いたい、みんなの歌として作ったんだよね。

──ええ、ええ。この曲も思い切りシンガロングしたくなります。

増子 自己表現的に最後の1行だけ歌詞を変えたりとか、そういうのもやめた。みんなが歌いやすいようにサビは全部おんなじ。歌詞ってのは言葉を文面で伝えたいんじゃなくて、歌と気持ちを伝えるもんなのよ。

──このアルバムの軸になる曲だと思うんですけど、同時に今後の怒髪天にとっても大きな軸になるんじゃないかと思います。

上原子 曲自体を作ったのは3~4年前なのかな。このでっかいリズムに乗って、シンガロングできるサビがあって……というところまではできてたけど、ずっと形にならなくて、自分の中で1回ナシにしてメンバーにも聴かせてなかったんですよ。ところが、今回のアルバムの完成形がある程度見えた頃、みんなで「何か足りない」って話をしてたときに突然この曲のことを思い出して。次の日メンバーに話そうとしたら、シミが「こういうリズムでやりたいんだよね」って、まさにこの4つ打ちのリズムを考えてて。

増子 どんだけシンクロしてんだよっていう。

上原子 そこからは今まで形にならなかった曲のイメージが一気に固まって。鳥肌立ちましたね。これなら増子ちゃんが絶対にいい歌詞を付けて、でっかいスケールのいい曲になるに違いないって。

清水 レコーディングの最後の最後にね。

増子 おかげでほかに用意してた曲、まるまるストックになっちゃったからね(笑)。

10. YO・SHI・I・KU・ZO・!

──そして最後は「YO・SHI・I・KU・ZO・!」。ラストを締めくくるのが「これから行く」曲というのがいいですね。この曲はRCサクセションにおける「ドカドカうるさいR&Rバンド」や「よォーこそ」のような曲として定番化しそうな気がします。バンドそのものを歌った歌。

増子 そう。まさにそういう曲として作ったからね。ライブの最後は「セバ・ナ・セバーナ」(アルバム「プロレタリアン・ラリアット」収録)があるけど、ウェルカムソングがなかったから。

──「これは愛じゃねえか」というのが、またグッとくるんですよ。

増子 ライブは人に会いに行くものだって去年のツアーでよくわかったから。昔は「愛」ってフレーズは絶対使いたくなかったの。でも考えてみたらさ、俺たちはあふれる思いを抱えていろんな街を回ってるわけじゃない。これはなんなんだろうって考えたら……愛以外ねえんじゃねえかと。訊いちゃってるからね。「愛じゃねえか」って(笑)。

上原子 ライブでやるのが楽しみだね。ホントにライブのことだけを思って作った曲なので、オッケー、ツツツパーン! のところでタオル投げてほしいよね。

一同 アハハハハハ(笑)。

清水 確かに、そういう会場の一体感は欲しいよね。

上原子 勝手にそれ妄想して作ってるんだけど(笑)。この曲をアルバムの最後に入れると、エンドロールっぽいっていうか。「雪割り桜」で1回終わって「次はライブで会おうぜ」って。

坂詰 いい映画ってのは、続編が出ますから。「こりゃ続編が出るな」って期待感もある。

増子 うん。いいアルバムが作れたなってホントに思うよね。

ステージがバーンと開いて直接温泉にザッパーン

──これはツアーがホントに楽しみですね。今回は怒髪天史上最長のワンマンツアーになるとか。

増子 うん。俺もう46だよ。ムチャさせんなあ。

上原子 年齢と逆行してる(笑)。

増子 まあスポーツ選手じゃないから、ライブ1本で20回ジャンプしなきゃいけないって規定演技もないからね。体力的には、そのときできる精一杯をやればいいんじゃねえかな。なにしろ俺たちはうまい演奏を聴かせに行ってるわけじゃなくて、気持ちを伝えに行くわけだから。そこに失敗なんかあるわけない。

上原子 単純に楽しみだよね。それだけ多くの街に行ってライブがやれるってことだから。

増子 まあでも、疲れるよ。最近は打ち上げ行くのも疲れるもんな(笑)。待っててくれる地元の人たちがいるから行くけど、俺たちとしてはライブ終わったらステージがバーンと開いて直接温泉にザッパーンと飛び込むみたいなのがいいんだけど。そういう機械はまだ開発されないのかね。

──アハハハ(笑)。しかも今回のツアーは、ライブハウスとホールが混在してるんですよね。それぞれで見せ方も変わってくるのでは?

増子 それがね、今回は両方とも温度差変わんない感じでやってやろうと思ってる。六畳一間に住んでても3LDKに住んでても、家族の距離感は変わんないじゃない。それとおんなじようなもんじゃないかと。楽しみにしててほしいよ。まずは俺らが楽しみだもんね。

インタビュー風景

ニューアルバム「Tabbey Road」 / 2012年4月18日発売 / 2800円(税込) / IMPERIAL RECORDS / TECI-1326

  • Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. 押忍讃歌
  2. もっと…
  3. 歩きつづけるかぎり
  4. ホトトギス
  5. ナンバーワン・カレー
  6. 夢と知らずに
  7. 愚堕落
  8. そのともしびをてがかりに
  9. 雪割り桜
  10. YO・SHI・I・KU・ZO・!

※OK! Let's Go TOUR 2012 ”夢追道中” 7/16(月・祝)Zepp DiverCity公演、購入者先行チケット特別予約チラシ封入

OK! Let's Go TOUR 2012 ”夢追道中”

5月6日(日)大阪城野外音楽堂を皮切りに、ファイナル7月16日(月・祝)Zepp DiverCityまでライブハウスとホールで開催する全国27公演!

特設サイト「OK!Let's Go 怒髪天スプリングキャンペーン」公開中

怒髪天(どはつてん)

怒髪天

1984年に札幌にて結成。1988年には増子直純(Vo)、上原子友康(G)、清水泰次(B)、坂詰克彦(Dr)という抜群のキャラクターを誇る現在のメンバーが揃い、「JAPANESE R&E(ジャパニーズ アール アンド イー)」を旗印に掲げた独自のスタイルで幅広い支持を集めている。2012年1月15日には、中野サンプラザ新春公演「謹賀新年 新春ドラゴン・ツイスト“俺達の琵琶ビリーナイト”」を開催。4月18日には最新アルバム「Tabbey Road」をリリースし、5月からは全国ツアー「OK! Let's Go TOUR 2012 ”夢追道中”」を行う。