ナタリー PowerPush - 怒髪天

歩きつづけるかぎり夢は終わらない

<増子直純単独インタビュー>

おっさん世代のほうが決断が早いんだよ

──2011年はアーティストの皆さんにとっても、考えることの多い1年だったと思うのですが。

インタビュー写真

そうだね。日本中、世界中、みんないろいろ考えたと思うし、音楽をやってる奴は人に何かしら発信している立場だから、余計に考えざるを得ないじゃない? そこで自分が正しい選択をできるのかできないのかっていうことはさ、今後のあらゆることにかかわってくるからね。ジャンル問わず。

──東日本大震災の直後も、怒髪天は積極的にライブを行ったりと、すぐにアクションを起こしましたよね。怒髪天をはじめとする何組かのアーティストや芸能人の活動を見ていて、日本には今「頼りになるおじさん」が必要だ、と切に思いました。

おっさん世代のほうが決断が早いんだよ。若いと恐怖心もあるだろうし、不安もあるだろうけど、おっさんはまあ「とにかくやるしかねえ」と思うからね(笑)。本当に。おっさんがやらなきゃどうにもならないんだなってわかったよ。

──怒髪天として、あの時期はどういうふうに考えていましたか?

震災の後、すぐ「バンドどうするよ?」って話になって。いろいろ意見が分かれてさ。俺らは怒髪天のメンバーでもあるけど、それぞれは一個人だからね。そんな中、3月20日に広島で急遽ライブをやることになって。そんな全員がバラバラな状態でライブをやるなんて今までなかったから、どうなるかわかんなかったんだけど、音を鳴らした瞬間に鳥肌が立った。バンドしかねえんだなって、俺たちには。本気でそう思った最初の瞬間だったかな。

──その「バンドしかねえ」の決意が反映されたのが、5月に無料配信された怒髪天ならではの応援歌「ニッポン ラブ ファイターズ」ですね。

俺らは「俺らがやるぞ!」としか言えない。「がんばれ」なんて言えないからね。みんながんばってるから。避難所にいる仙台の友達に「すぐ手伝い行くぞ! 何かやることあるか?」って言ったら、「来なくていいよ。手伝ってくれるプロの人たちいっぱい来てるから。増子くん来たって役に立たないよ。力もないんだし」だって(笑)。「じゃあほかにやることあるか」って訊いたら「自分たちががんばって、また普通にライブ行けるようになったとき、怒髪天のライブ行きたいなと思えるようにバンド続けて」って言われたんだよ。「それが自分たちが復興したっていう証になるから、バンド続けてくれ」って。「どうせそれしかできないでしょ」って言われて、本当そうだなと(笑)。みんなさんざんがんばってんだから、俺らはどうするのかってことを歌にしようと思ったの。CD買いに行くのも大変だろうし、募金は自分でやればいいから、無料配信で曲を出してとにかく聴いてもらおうと。俺らなりの「やるぞ!」って意思表明が「ニッポン ラブ ファイターズ」だったんだよね。

思ったことをずっとやってきて、それが形になった

──「ニッポン ラブ ファイターズ」発表後は全国ツアー「怒髪天 LIVE LIFE LINE TOUR」が行われました。このツアーの最終公演を収めたDVD+ライブCD「D-LIVE IN JAPAN 2011」が近日リリースされますが、このツアーはドラマチックでしたね。

お客さんと俺らの関係ってすごい特殊な関係でさ、お互い顔知ってんのよ。心も通じてるの。だけど名前も連絡先も知らないの。だから行かないと会えない。なにしろ行って会わなきゃって。元気であってくれって、無事であってくれって気持ちでツアーに行って……知った顔があったときの気持ちたるや。多分お互いそうだと思うけど、本当「よしよく来た! よしわかった!」と。バンドやってきた意味が、本当にこの2011年のためにあったんじゃないかと思えるぐらいの年だったね。歌う曲の内容はさ、震災後にプラスされた部分っていうのはあるかもしれないけど、ま、ほとんど変わらないよね。方向転換する必要もないし、思ったことをずっとやってきて、それが形になったっていうか。

──「ただのバカ騒ぎがこんなに楽しいんだ」っていう雰囲気が、なんとも言えないんですよ。

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お祭りって、ひとりじゃできないじゃん。人と人との間に生まれるものなんだってことがよくわかったね。俺らにとって何のためにライブがあるのかってこともよくわかった。悲しいこと辛いことを音楽で消すことはできない。だけど、楽しい思い出を1個プラスすることができる。そのためにライブがあるんだなって。

──秋にはさらに、ゲストプレイヤーを迎えた大編成「怒髪天&THE JOE-NETS」によるホールツアーもありました。

ホールツアーはね、何しろエンタテインメント性の高いものをやりたいなと思ったの。THE JOE-NETSのメンバーもタイミングがちょうど合ってさ。で、さらに俺らの曲の持ち味を大好きな仲間とわかりやすく音楽的な側面で表現してみたかった。あの人数で、交通費だのスタッフの確保だのってやってたら、いろいろ大変だったんだけど(笑)、でもやりたかった。この編成って、RC世代の俺らにとっては夢だったし、お客さんに見せたかったんだよね(笑)。

──大所帯で1本のツアーを回ってみて、改めて4人に立ち返ったときの変化はありますか?

あったねえ。リズム隊だね。とくにドラム。要は、これまでライブの「熱」を勘違いしてた。曲を表現するにあたって、言葉が一番伝わるであろうアレンジで作ってるのに、ライブで極端に走ったりするとそれが伝わりにくくなる部分が沢山あったんだなと。自信をもって俺ら4人の人間力で再現すれば、あとは楽曲様がちゃんと機能してちゃんと伝わるんだなって。11月のホールツアーのときは、普段はリズム隊の上に俺と友康(上原子友康 / G)しか乗ってないけど、ここに9人乗るわけだから、乗せるお皿がガッチリしてなきゃいけない。「心は熱く、頭クールに」ってよく言うけど、ツアーの何本目かでやっとできるようになった。だから、あの後のライブもレコーディングした曲も、今までと全然違う。20数年やってきてやっとわかった(笑)。

両A面シングル「歩きつづけるかぎり / DO RORO DERODERO ON DO RORO」/ 2012年3月14日発売 / 1000円(税込) / IMPERIAL RECORDS / TECI-259

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ライブDVD+2CD「D-LIVE IN JAPAN 2011」/ 2012年3月14日発売 4800円(税込)/ IMPERIAL RECORDS / TEBI-48024 / Amazon.co.jpへ

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収録内容

バンド至上最高峰ライブのDVDと、怒髪天至上最豪華特別編成でのライブCDを完全コンプリート。2011年怒髪天の進化の軌跡を見逃すな。

2011年7月10日に行われた「LIVE LIFE LINE TOUR」FINAL公演・Zepp Tokyoでのライブ 映像(DVD)と、怒髪天&THE JOE-NETS「LIVE ALIVE TOUR 2011 “GOLDEN MUSIC HOUR”」東京・NHKホール公演のライブ音源(2枚組CD)を1パッケージに!

ニューアルバム「Tabbey Road」/ 2012年4月18日発売 / 2800円(税込)/ IMPERIAL RECORDS / TECI-1326 / Amazon.co.jpへ

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OK!Let's Go TOUR 2012“夢追道中”

5月6日(日)大阪城野外音楽堂を皮切りに、ファイナル7月16日(月・祝)ZEPP DiverCity TOKYOまでライブハウスとホールで開催する全国27公演!

怒髪天(どはつてん)

1984年に札幌にて結成。1988年には増子直純(Vo)、上原子友康(G)、清水泰而(B)、坂詰克彦(Dr)という抜群のキャラクターを誇る現在のメンバーが揃い、「JAPANESE R&E(ジャパニーズ アール アンド イー)」を旗印に掲げた独自のスタイルで幅広い支持を集めている。2012年1月15日には、中野サンプラザ新春公演「謹賀新年 新春ドラゴン・ツイスト“俺達の琵琶ビリーナイト”」を開催。5月には最新アルバム「Tabbey Road」を携え全国ツアーを行う。