ナタリー PowerPush - 道玄坂下り隊
謎のエアカバーアーティストがBunta(TOTALFAT)とパンク対談
女性4人組カバープロジェクト「道玄坂下り隊」のニューアルバム「STREET GIRLS STYLE!!」のリリースを記念して、ナタリーではボーカルを担当するNattyと、TOTALFATのBunta(Dr)による対談を企画。謎の多い道玄坂下り隊の魅力に迫りつつ、お互いのパンクロック愛を語り合ってもらった。
道玄坂下り隊は1stアルバム「SK8ER GIRLS STYLE!!」でTOTALFATの「Good Fight & Promise You」をカバー。Nattyは自身がカバーしたアーティストと対面するとあって、最初こそ緊張した面持ちだったが、Buntaの朗らかなトークによって次第にリラックスしていき、終盤には笑いの絶えない対談となった。
取材・文 / 西廣智一 撮影 / 小坂茂雄
聴く前は「これどうやってカバーすんの?」って思った
──1stアルバム「SK8ER GIRLS STYLE!!」や今回の「STREET GIRLS STYLE!!」の収録曲は、どうやって選曲していったんですか?
Natty 私やスタッフさんで好きな曲をバーッと挙げていって、その中から選んでいきました。だから本当に大好きな曲の集まりというか。
──ここでカバーされてるアーティストは、Buntaくんもほぼリアルタイムで聴いてきたアーティストばかりですよね?
Bunta そうっすね。Good CharlotteとかSum 41とかオフスプ(The Offspring)とか、完全にど真ん中ですし。正直アルバムを聴く前は「これどうやってカバーすんの? 歌えんの?」って思いましたけど(笑)、すごいよかったですよ。
Natty うれしいです。
──Green DayやThe Offspringのような1990年代から活躍するバンドから、ZebraheadやBlink-182、Fall Out Boy、Simple Planみたいな2000年代を代表するバンドまで、それこそ過去20年くらいのパンクロックの歴史を追体験できる選曲ですね。
Bunta 俺は高校から大学の頃、このへんがど真ん中の世代なんです。
Natty 私も高校生ぐらいでしたね。
Bunta 高校生ぐらいかあ。その頃に聴いた音楽って、やっぱり一生残るもんじゃないですか。このアルバムの選曲を見てると洋楽も邦楽もど真ん中すぎる選曲なのに、そこに俺らの名前も連ねてもらえたのはすげえうれしい。
──それこそ高校生の頃に作った自分の好きな曲だけを集めたカセットテープやMDとか、DJをするときのプレイリストとかの印象もありますし。
Bunta ありますよね。ぶっちゃけ、1作目と2作目だけを使ってDJできんじゃないの?(笑)
Natty 本当に好きな曲バーッて並べただけなので。よかったです、そう言ってもらえて。
カバーって曲本来のよさにも改めて気付かされる
──1stアルバム「SK8ER GIRLS STYLE!!」ではTOTALFATの「Good Fight & Promise You」がカバーされています。自分たちの曲がカバーされたものを聴いて、どう思いました?
Bunta 例えば普通のバンドにカバーされるのと、「2.5次元のガールズエアカバープロジェクト」ですか? こういう感じでカバーされるのって、また違いますよね。サウンドにしてもちょっと打ち込みっぽい要素も入ってるし。バンドともアイドルとも違う、そういうグレーな存在の人たちにカバーしてもらえて、すごく新鮮でした。カバーされること自体、俺はすごいうれしいし。「こういう感じのアレンジもいいな」って思いましたよ。
Natty うれしいです。さっきから、それしか出てこないですけど(笑)。
Bunta 実在するバンドにカバーしてもらうのとまた違うじゃないですか。その場合、演奏しているところをライブで観たり映像で観たりしてるから、いろいろイメージできるけど、道玄坂下り隊はそこがイメージできないから(笑)。曲がフラットに入ってくるんですよ。「ああ、TOTALFATっていい曲書いてるな」って(笑)。
──今回TOTALFATも12月11日にリリースされたベストアルバム「THE BEST FAT COLLECTION」で、この曲をセルフカバーしてるんですよね。
Bunta そうなんですよね。すごい偶然で……実は昨日、Shun(Vo, B)と一緒に道玄坂下り隊のアルバムを聴き返してたんだけど、TOTALFATのカバーだけじゃなくてほかの曲もめっちゃいいんだよなあ。カバー曲ってカバーしたアーティストの個性がプレイやアレンジに色濃く出るだけじゃなくて、曲本来のよさにも改めて気付かされるんですよね。
自分の思い入れをどう崩してカバーするかが難しい
──Nattyさんの歌についてはどうですか?
Bunta 個性的で耳に残るし、いいと思う。前作でも「Fat Lip」(Sum 41のカバー)のラップパートはどうするのかなと思ってたら、なんかカワイイ感じのラップでさ。「あ、こういう感じになるんだ!」って。めっちゃよかったなあ。
Natty あそこは正直、レコーディングで苦戦しました。
Bunta 今回もZebraheadの「Playmate Of The Year」をカバーしてるけど、あの曲もラップパートがあるよね?
Natty ありますね、2番に。
Bunta 2作目だし、ラップもちょっと板に付いてきたんじゃない?
Natty あはは(笑)。ちょっとずつ慣れてきたかな? でも最初は口が回らなくて。
Bunta ああ。ラップって難しいよね。しかもパンクの速いテンポで、英語だし。
Natty そう! イングリッシュ、難しいです (笑)。
──ラップパート以外にもレコーディングで苦労したことってありましたか?
Natty やっぱりどれも好きな曲なので、その曲に対して自分の思い入れとか自分なりに好きな部分とかあるじゃないですか。そこをどう自分なりに崩してカバーするかが難しかったですね。ここの歌い回しが好き、ここのアレンジが好きだからそのまま残したいけど、それを残しちゃうとオリジナルのまんまになっちゃうから。けっこう試行錯誤しました。
Bunta 確かに。Blink-182の「FEELING THIS」なんて、女性的に言うとキーが意外と低いから難しいんじゃない?
Natty そうですね。だから曲によってはキーを変えてるんです。
Bunta ああ、それもあるのかもなあ。キーがちょっと違うだけでも、聞こえ方が全然違うし。
Natty たぶん1音とか1音半とか変えてますね。
Bunta 曲によっては歌いやすいほうに上下してるってことか。なるほど。だからかな、原曲よりもすげえ抜けがいいなと思ってたんすよね、この曲のサビ、こんなに抜けがよかったっけ?みたいに。
収録曲
- 風の日(ELLEGARDEN)
- Second Limit(MY FIRST STORY)
- Playmate Of The Year(Zebrahead)
- PMA(Positive Mental Attitude)(KEMURI)
- FEELING THIS(Blink-182)
- Sugar, We're Goin Down(Fall Out Boy)
- Out of Control(Nothing's Carved In Stone)
- I'd Do Anything(Simple Plan)
- STICK WITH YOURSELF(GOOD4NOTHING)
- OVERRIDE GENERATION(Sobut)
- Dance Like No Tomorrow(SECRET 7 LINE)
- STAY YOUTH FOREVER(Northern19)
(カッコ内はオリジナルアーティスト)
収録曲
- DA NA NA
- Good Fight & Promise You
- PARTY PARTY
- Show Me Your Courage
- Summer Frequence
- Place to Try
- World of Glory with JOE INOUE
- Dear My Empire
- Generations Ever Last
- The Naked Journey
- Room45
- Starting New Life
- X-stream
- Life Like Movies
- Nothing But
- Good bye, Good Luck
- Overdrive
- Highway The Legacy
- Stable Heart
- Teenage dream
道玄坂下り隊(どうげんざかくだりたい)
Natty、mi-ya*、LOVE、Katooからなる、「リアルとアンリアルの狭間、『2.5次元』に生まれた」という設定によるガールズエアカバープロジェクト。国内外のパンク / メロコアの名曲を本格的なサウンドでカバーしたアルバム「SK8ER GIRLS STYLE!!」が2013年5月に発売され、大きな反響を呼ぶ。同年12月には早くも2ndアルバム「STREET GIRLS STYLE!!」をリリースした。
TOTALFAT(とーたるふぁっと)
2000年、同じ高校のメンバーにより八王子で結成。海外のメロコアバンドを意識した英語詞、疾走感あふれるパンクサウンド、親しみやすいメロディを武器に着実に知名度を高めていく。2004年にShun(Vo, B)、Jose(Vo, G)、Bunta(Dr)、Kuboty(G)という現在の布陣が揃う。2008年以降は「PUNKSPRING」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「SUMMER SONIC」などの大型フェスに出演。またGood CharlotteやThe Offspringの来日公演ではオープニングアクトを務めた。 2010年6月にKi/oon Records(現Ki/oon Music)からメジャー1stアルバム「OVER DRIVE」を発表。翌2011年5月には井上ジョーをフィーチャーした日本語詞のシングル「World of Glory with JOE INOUE」を発売し、話題を集めた。2013年12月、インディーズ時代のセルフカバーを含む初のベストアルバム「THE BEST FAT COLLECTION」をリリース。