ボカロPのseeeeecunと歌い手の宮下遊が新ユニット・Doctrine Doctrineを結成。6月20日に1stフルアルバム「Darlington」をリリースした。今作にはseeeeecunがVocaloid楽曲として投稿してきた楽曲の“宮下遊歌唱バージョン”や、ユニットとして初のオリジナル楽曲など計15曲が収録されている。
中毒性のあるメロディとシニカルな歌詞で独特の世界観を描いてきたseeeeecun、そして持ち前のさまざまな声色で楽曲を表現してきた遊。この2人が出会ったことで、どのような化学反応が生まれたのか? 音楽ナタリーではユニット結成の経緯やアルバムについて、話を聞いた。
取材・文 / 中川麻梨花
彼の曲を歌いこなせるのは僕だけでしょ!
──まず、Doctrine Doctrine結成の経緯から聞かせてください。ユニット結成前から、遊さんはseeeeecunさんのVocaloid曲の“歌ってみた”動画を投稿されていましたね。
宮下遊 はい。去年僕が彼の曲をカバーして、動画をアップしたのが始まりですね。最初に「脳内雑居」、次に「ローファイ・タイムズ」という曲を投稿しました。
──その頃すでに2人の間で交流はあったんですか?
遊 Twitterでちょこちょこリプライを送っていたくらいでしたね。そのあと、秋にseeeeecunさんが出展していた「ボーマス」(「THE VOC@LOiD M@STER」)というイベントに僕がふらっと遊びに行ったんですよ。そのときにせっかくだし1回くらい挨拶しておこうかなと。僕はスッと名刺だけ渡して帰ろうと思っていたんですけど、ブースに行って名刺を渡した瞬間、彼が第一声で「宮下遊さん!」とでかい声で(笑)。
seeeeecun そうそう(笑)。びっくりしたんですよ。
遊 すごい食い気味で来たので「うわー!」と思ったんですけど、意外と普通に世間話できそうな感じだったのでその場でちょっと話して。そのときにホントに軽い気持ちで「今度一緒に作りましょうよ」みたいなことを言いましたね。そこからだいぶ放置していたんですけど(笑)。
seeeeecun 彼が1カ月くらいTwitterに現れなくて……。
遊 その時期は引っ越ししてた(笑)。「あの話どうする?」と改めて話をしたのは、今年の1月でしたね。seeeeecunさんは最初「どのイベントでCD出す?」と言っていたんですけど、僕は「イベントで出すんじゃなくて、がんばって全国流通で出そうよ」と言って。「じゃあいろんなところに協力してもらえないか話を聞いてみよう」という話になって、あれよあれよとCDのリリースが決まりました。それで、ユニット名を考えたのが2月だったかな。
seeeeecun けっこうタイトなスケジュールだったよね。
──seeeeecunさんは遊さんのカバー動画を聴いて、どういう印象を持っていたんですか?
seeeeecun 僕は遊さんが自分の曲をカバーしてくれる前から、彼が別の人の曲を歌っている動画を聴いていたんですよ。「この人が自分の曲を歌ったらどうなるのかな?」と思いながら。で、実際に遊さんがカバーした「脳内雑居」を聴いたら、自分のイメージとは全然違うもので、「なんじゃこりゃ! すげえ!」と。完全に曲を遊さんのものにされたと思って、「この人やべえな」という印象でしたね。
──遊さんが「脳内雑居」をカバーしてみようと思ったきっかけは?
遊 僕は「脳内雑居」の前から彼の楽曲を聴いていて、Twitterもフォローしていたんです。「追っかけてみようかな」と思って。いわゆるキープ(笑)。
seeeeecun ははは!(笑)
──「この人の曲、歌いたいかも」ということですか?
遊 そう。「歌いたいかもなー」と追ってみて、「あ、いいな」という曲がきたら手を出します(笑)。「脳内雑居」でそう思ったきっかけは……あの頃から彼が作る楽曲の方向性が微妙に変わってきたんですよ。暗い感じや哀愁のあるメロディが「なんか自分好みになってきたな、いい感じに育ってきたな」と(笑)。
seeeeecun 丸々と育ったね(笑)。
遊 そのあとも「ローファイ・タイムズ」とかめちゃくちゃいい曲を出してきたので、「わー! こいつはヤバい!」と思いました。
──実際に「ボーマス」で対面してみて、お互いの印象は変わりました?
seeeeecun 実は僕、その前に遊さんを見たことがあるんだよね。
遊 ええ!?
seeeeecun 2016年に遊さんが「ボーマス」に出展していたときですね。だから、僕のところに遊びに来てくれたときも「あのときの人や!」という感じでした。
遊 僕も彼のツイキャスとか、こっそり聴いていて(笑)。
seeeeecun そうだったんだ!(笑)
遊 実際彼に会っても、ツイキャスのテンションそのままでしたね。
──周りにボカロPさんや歌い手さんがたくさんいらっしゃる中で、このお二人でユニットを組もうと思ったポイントは?
seeeeecun 僕は遊さんのカバー動画を聴いて「この人ヤバいな、合うな」と思っていたので、即決でしたね。「向こうから話がきたらありがたいな」というくらいだったんですけど、まさか本当にくるとは思わなかった。
遊 僕は単純に「彼の曲を歌いこなせるのは僕だけでしょ!」と思って(笑)。あと、彼はこれからくるボカロPだなとも思っていたので、「ほかの人に取られる前に!」と思って声をかけたところはちょっとあります!
seeeeecun ははは!(笑)
「いいものを出してきてくれるだろうな」という信頼
──1stアルバム「Darlington」には新曲のほか昨年遊さんがカバーした「脳内雑居」「ローファイ・タイムズ」「雲散霧消」、そしてseeeeecunさんが過去にニコニコ動画に投稿したナンバー「ギルティダンスは眠らない」「ヘレシー・クエスチョン」「ホワイトダウト」「シニヨンの兵隊」が収録されています。seeeeecunさんの過去曲の中から、この4曲を新たにセレクトしたのはどういう流れで?
遊 選曲に関しては、単純に歌いたいなと思った曲をチョイスしていきましたね。そのときはまだアルバムのタイトルやコンセプトも決まっていなかったので。
seeeeecun 僕もそんなに曲を持っているわけではなかったので、自然に「こうなるだろうな」というラインナップにはなりましたね。
遊 「ホワイトダウト」と「ギルティダンスは眠らない」を僕が「入れたい!」と言ったのは覚えています。
seeeeecun 「ホワイトダウト」は意外だった!
遊 そこはアルバム全体のバランスを考えたんです。seeeeecunさんの曲ってノリノリなロックミュージックが多いんですけど、「ホワイトダウト」とか「シニヨンの兵隊」みたいな、ローテンポで聴かせるような曲もアルバムにほしいなと思って。
──その2曲が入っていることで、アルバム全体の振り幅が広がっていますよね。
遊 僕が曲を選ぶときに意識したのはそれくらいです。まあ、単純に彼の曲はほとんど好きなので、何を歌ってもよかったんだけど。
──今回新たに遊さんが歌った曲について、事前にseeeeecunさんから「こういう歌い方はどう?」という提案はされました?
seeeeecun いやー、全然ないです!
遊 そういう相談は一切受けてないですね。
seeeeecun 歌やイラストにはあまり口を出さないですね。自分の領域以外はその人に任せたい。自分が口を出されたくないタイプだというのもあるんですけど。あと、「遊さんならめっちゃいいものを出してきてくれるだろうな」と信頼していたので、何も言うことはなかったです。
──では100%遊さんの解釈で歌われているんですね。
遊 そうですね。もう思うがままにいろいろと詰め込んで、メロディもいじりました(笑)。「ホワイトダウト」とか、サビの後半のメロディは全部違うし。「ヘレシー・クエスチョン」もけっこうメロディをいじりましたね。
seeeeecun 「ヘレシー・クエスチョン」が一番衝撃的だった! 全然自分の引き出しになかったメロディだったな。
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歌詞の主人公に気持ちを伝えてもらおう
- Doctrine Doctrine「Darlington」
- 2018年6月20日発売 / ルサンチマン・レコード
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初回限定盤 [CD+グッズ]
3240円 / SE-7261106947 -
通常盤 [CD]
2700円 / SE-7261106948
- 収録曲
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- In Darlington
- 雲散霧消
- ヌギレヌ
- ギルティダンスは眠らない
- ルサンチマン・クラブ
- モディファイ
- Bells
- 脳内雑居
- ヘレシー・クエスチョン
- ローファイ・タイムズ
- Barbarian
- バーバリアン・シネマズ
- ホワイトダウト
- シニヨンの兵隊
- テイクアウト・スーサイド
- Doctrine Doctrine「あのプリズムによろしく」
- 2018年5月9日発売 / ルサンチマン・レコード
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[CD]
540円 / SE-7261106949
- 収録曲
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- あのプリズムによろしく
- ライブ情報
Doctrine Doctrine 1st Full Album「Darlington」発売記念ライブ「Conference @SHIBUYA WWW X」 -
- 2018年7月21日(土) 東京都 WWW X
- Doctrine Doctrine(ドクトリンドクトリン)
- ボカロPのseeeeecunと歌い手の宮下遊によるユニット。2018年4月にユニット結成を発表し、seeeeecunのVocaloid曲「ルサンチマン・クラブ」のカバー動画をニコニコ動画およびYouTubeに投稿する。その後5月にタワーレコード限定でシングル「あのプリズムによろしく」を発表した。6月にVocaloid曲のカバーのほか新曲を収録した1stフルアルバム「Darlington」をリリース。アルバムの発売を記念して、7月21日に東京・WWWで初ライブ「Conference @SHIBUYA WWW X」を開催する。