ナタリー PowerPush - Do As Infinity
9thアルバム「TIME MACHINE」をメンバー2人が全曲解説
Do As Infinityの通算9枚目となるニューアルバム「TIME MACHINE」が完成した。この作品には「誓い」「アリアドネの糸」「黄昏」というシングル曲や、3月3日から九州先行公開される映画「私の叔父さん」の主題歌として書き下ろした「恋歌」を含む全12曲が収録される。12年のキャリアに裏打ちされた“Do Asらしさ”をベースとしつつ、これまでにない新たな表情もたっぷりと詰め込んだその内容は、ロックバンドとしての全うな進化を強く感じさせる仕上がりとなっている。
今回、ナタリーでは伴都美子(Vo)と大渡亮(G)の2人にインタビューを実施。アルバム制作にまつわるエピソードに加え、収録される全ての曲について解説をしてもらった。
取材・文 / もりひでゆき
<Do As Infinityインタビュー>
やっぱり私は歌うことが好きだと改めて実感
──昨年はアルバム1枚とシングル3枚のリリースに加え、全国ツアーと12周年記念ライブを行うという、非常に精力的な活動を展開されていました。その中で次のアルバムに照準を合わせたのはどのタイミングだったんでしょう?
伴都美子(Vo) シングルを作ってるときから、次のアルバムを視野に入れていましたね。
大渡亮(G) そうだね。去年の3月か4月くらいの段階で、だいたいこの時期にレコーディング作業をして、ここらへんでリリースしようみたいな話はしてました。だから最初はものすごくスムーズに進行してたんです。でも後半、特に12月が結構バタバタだったので、無事にでき上がって良かったなあっていう感じですね(笑)。
──9枚目のアルバムを制作するにあたって、どんな気持ちで臨みましたか?
大渡 僕の場合、ライブのリハーサルの合間にオケのレコーディングをすることが多かったので、頭を切り替えることに集中してました。
──やはりライブとはモードが違うものですか?
大渡 ギターを弾くという意味では一緒だけど、サウンドを構築したり、未知なものを表現するっていう部分ではやはり違うところもあるんですよ。ライブの場合は時間軸が一定というか、ギターを弾くとともに曲が進行していきますけど、レコーディングはプレイの良い部分というか上澄みをすくい取るような作業でもあるので、その違いに翻弄されないように意識しますね。
──なるほど。伴さんは?
伴 ライブのリハーサルをしながらのレコーディングっていうこともあって、特に昨年の12月は毎日歌ってるような状況だったんですよね。正直キツかったけど、やっぱり私は歌うことが好きなんだなって改めて実感できたところもあって。そういう気持ちで作業に取り組めた1枚かなって思います。
──亮さんのようにライブとレコーディングの違いは感じましたか?
伴 そうですね。ライブはエネルギーを外に向かって発信することですけど、レコーディングはちっちゃい部屋で自分と向き合っていく作業ですからね。それぞれ違う集中力を使いますね。
──アルバムが完成した今、その仕上がりはどう感じていますか?
伴 今回は、今までにありそうでなかった楽曲が何曲かあり、同時に私たちらしい曲もちゃんとできたなあっていう印象がありますね。
タイムマシンは音楽と似てる
──アルバムには、過去を振り返ってみたり、未来に思いを馳せてみたりしながらも「大切なことは今をしっかりと生きることなんだ」というメッセージに着地している楽曲が数多く収録されています。それらが「TIME MACHINE」というタイトルで見事に包括されているような気がしました。
大渡 そうですね、うん。
伴 例によって、アルバムタイトルは前作のタイトルの最後の文字からつながっているんですけどね。
──前作「EIGHT」からの流れでしりとりになってるんですね。
大渡 しりとりにすることに対しては「もうよくね?」っていうムードもちょっとあったんですけど(笑)、「T」から始まるワードを集めてみた中で、この「TIME MACHINE」は良さそうだなって思えたんですよ。
──どんな部分に惹かれたんでしょう?
大渡 タイトルを考えたときは、もうレコーディングに向けた曲選びをしてる段階だったんですけど、さまざまなテイストの楽曲が入りそうだったんですね。で、それぞれ普遍的なものや変わっていくものを歌っているけど、そのバラバラなメッセージが「TIME MACHINE」という言葉でつながっているような見せ方ができるかもしれない、と思ったんです。
伴 タイムマシンって実際には存在しないものだけど、私たちの頭の中には存在しているっていうか。それって、形として目には見えないけどしっかりと存在している音楽と似てるかもなって思うんです。
──音楽って軽々と時を超えるものでもありますしね。それこそタイムマシンのように。
伴 そうそう。実際、音楽を聴いていると「あの頃あんなことをしてたな」「あの人のことが好きだったな」とか、昔のことを鮮明に思い出させてくれますもんね。
大渡 で、タイトルを決めたあと、その方向に寄せて作った曲もいくつかありましたね。曲や歌詞を提供してくれた作家さんも「TIME MACHINE」というタイトルを意識したところがあったでしょうし。「TIME MACHINE」が強いコンセプトになっているわけではないんだけど、それを意識した曲も確かにあります。
Do Asは何気にロックバンドだよ
──さまざまなタイプの楽曲が収録されていますが、その曲順が絶妙ですね。ライブを観たかのような高揚感と心地良さがありました。
大渡 アルバムの選曲自体が、ライブのセットリストを考えるのと同じ感覚なんですよ。ステージ上で展開する起承転結をCDというパッケージで表すっていう気持ちが強いので、1曲目は疾走感の強い曲でいこうとか、熱量の高いものと涼しげなものを上手に配していこうとか。だから選曲からレコーディングまで、全ての行程でライブは意識していると思いますね。逆に言うと、曲順を決める基準ってそれ以外にあるの?っていう気もするんですけど(笑)。
──アハハハ(笑)。バンドのスタイルによってそこはいろんな方法論がありそうですけど、Do As Infinityにとってはそれが一番合っているということなんでしょうね。
大渡 そうでしょうね。ライブでもCDでも、曲のつながりにはほんとにこだわるんですよ。前の曲のキーと次の曲のキーとかね。そこが合ってないとどうしても違和感があるので、スーッと流れるように聴けるようにものすごく考えますね。
──3月31日からは全国ツアーもスタートします。ライブ感の詰まった本作がどう再現されていくかが楽しみです。
大渡 ライブに合う、いいアルバムができたんで、それを引っさげて2012年版のロックンロールが表現できたらいいなって思います。Do Asは何気にロックバンドだよっていうことを1人でも多くの方に伝えたいです。
伴 香川とか、かなり久々に行く場所もあるので楽しみですね。新旧の曲を織り交ぜつつ、来て良かったなって思ってもらえるような内容にしたいと思います。
CD収録曲
- TIME MACHINE
- アリアドネの糸
- Why?
- PRIDE
- 黄昏
- 誓い
- 御伽話
- 恋歌
- Sun Shower
- もう一人の僕へ
- 君の為に今できること
- Go Ahead!
DVD収録内容
- Do As Infinity 12th Anniversary ~FREE SOUL! FREE SPIRITS! ~Vol.3 LIVE(2011.10.2 at 日比谷野外大音楽堂)
- 誓い-Music Clip-
- アリアドネの糸-Music Clip-
- 黄昏-Music Clip-
Do As Infinity(どぅあずいんふぃにてぃ)
1999年に結成されたロックバンド。デビュー前より渋谷ハチ公前などで精力的なストリートライブを行い、注目を集める。同年9月にシングル「Tangerine Dream」でメジャーデビュー。2000年より現在の伴都美子(Vo)、大渡亮(G)の編成となる。2002年リリースのベストアルバム「Do The Best」がミリオンセラーを達成するなど、幅広い層から高い人気を得るが、2005年9月に解散した。そして2008年8月に開催されたイベント「a-nation'08」にサプライズ出演し、再結成を発表。2009年には結成10周年を迎え、横浜赤レンガ倉庫でのフリーライブや日本武道館での10周年ライブなどを行った。2012年2月に9枚目のフルアルバム「TIME MACHINE」をリリース。