ナタリー PowerPush - Do As Infinity
2人のリアルな姿が見える直球ロックアルバム「EIGHT」
Do As Infinityの8枚目となるアルバム「EIGHT」。この笑っちゃうくらいストレートなタイトルが、彼らの今の勢いそのものといえる。とにかく一聴して感じたのは、Do As Infinityは伴都美子と大渡亮でできているというその必然性が、前面に出てきたなということ。すごくクリアに2人のリアルな顔が見えてくる。そこが今までの作品との最大の違いであり、最大の魅力。実にキレ味のいい、爽快感満点のアルバムだ。
取材・文/藤井美保 インタビュー撮影/平沼久奈
今回はもうただのロックバンドになった(笑)
──前回の「ETERNAL FLAME」とはまったく異なる色合いの作品になりましたね。
大渡亮(G,Vo) 「ETERNAL FLAME」は再結成後最初のアルバムだったので、伴ちゃんも僕も「Do Asってどうだったっけ?」みたいなところから手探りで始まった。いささかDo As感を意識しすぎたのか、シリアスな曲が多くなってしまったんですね。その結果、あれを引っ提げてのツアーでは、アッパーチューンを旧作に頼らざるを得なかった。ということもあって、昨年「∞2」を作っている頃から「次のアルバムは明るい作品にしたいね」と、スタッフを含めて言ってたんです。
──「∞2」のタイミングでお会いしたとき亮さんが口にしていた「Do Asの2ndシーズン」という言葉は、そういった方向性を指すものだっんですね?
大渡 そうですね。結果、今回はもうただのロックバンドになった(笑)。Do As感を意識するというところから解き放たれた感じがありましたね。
──伴ちゃんはどうですか?
伴都美子(Vo) 音楽を純粋に楽しみながら回れた昨年のツアーがあって、その流れでこのアルバムも作れた気がします。
──今まで、憂いのある声と言われることが多かったと思うんですが、今回はそうじゃない、もっと明るくて優しい声もたくさん聴けますよね。
伴 大きなきっかけがあってそうなったわけじゃないんですけど、今回は楽曲の振り幅の大きさにも、なんの先入観もなく入っていけたし、単純に楽しんで歌えたんです。それが声に表われてるのかもしれませんね。
「僕が曲を書かなくてもいいのかもな」というスタンスだった
──「EIGHT」はお2人の存在感がグッと前に出た作品と感じましたが、その象徴となるのが、亮さん作曲で、2人で共同作詞している「ワンダフルライフ」。亮さんが作曲されたのは、Do Asでは初ですか?
大渡 みたいなもんですね。今まではDo As Infinityに曲提供するなんておこがましいという思いが僕の中にあったんです。もちろん、作詞などでは積極的にやってきたつもりなんですけど、こと曲に関しては、たくさんあるし僕が書かなくてもいいのかもなというスタンスだった。ところが2010年のツアーを回り始めた頃かな、Do Asを初期からやっている担当ディレクターが、「ツアードキュメントを作りたいから、それに合うような曲を書いて」と軽く言ってきまして、僕も「やります」とライトに返してしまったんですね。それから毎夜ホテルであれこれ考えてはみたものの、Do Asに求められるような壮大なバラードは全然イメージできなくて。
──イメージできたのがあのなごみ系の「ワンダフルライフ」だったんですね。
大渡 はい。ツアー中に伴ちゃんがアコギを弾くシーンがあって、それを眺めているときに「伴ちゃんがストロークして歌えるようなフォーキーなナンバーがあってもいいな」と思ったんです。でも、たぶんそれはみんなの考えとは違うだろうから、僕としては「使ってくれなくてもけっこう」というつもりで提出したんです。そしたら、思いのほかみんなが気に入ってくれて、ディレクターも「『スタンド・バイ・ミー』みたいな風景が見える歌詞がいいな」なんて言い出すくらいノリノリになったんですね。ちょうどツアー中で、電車に乗ってファンが待つ街に行ってた時期だったし、常日頃からそういう旅ができるって素晴らしいなと感じてたので、その気持ちをそのまんま歌にしてみました。
伴 歌詞は、亮くんが書いてきたものを受けて2コーラス目を書いて、「もうちょっとこうなんだよね」なんて意見を聞いて、また書くみたいなやりとりで仕上げていきました。私としては、亮くんの頭の中にある完成図にどう寄り添えるかというのがいちばんの課題。結果的に明るく温かい曲になって、ホント、良かったなと思います。
──カラッとした音に日本の風景が不思議と溶け合うロードムービー風な曲ですよね。亮さんが珍しくスライドギターを弾いてるのも新鮮です。
大渡 ああ、そうかもしれないですね。楽器構成がすごくシンプルなんです。実はこれ、ギターはかなり重ねているんですよ。
──伴ちゃんの「ウーアー」のコーラスも新鮮に響きました。
伴 そうですね。やってみたいことをいろいろと提案させてもらいました。「これ新しいよね」と、スタジオでみんなが盛り上がった曲ですね。
亀田さんの現場は暗くなることがない
──お馴染みの亀田(誠治)さんをはじめ、ミュージシャンの方たちとの関係はどうでしたか?
大渡 基本もうずっと同じメンツなので、和気あいあいのムードは変わらずです。ひとつ変わったことがあるとすれば、ツアーを一緒に回ったドラムのカースケ(河村“カースケ”智康)さんと全曲一緒に録音できたこと。以前は、スーパードラマーってことに対するビビリがあったけど(笑)、今回は「昨日はライブお疲れさまでした」というノリのまま、気負いなくレコーディングに入っていけました。
伴 亀田さんの現場は暗くなることがないですね。それはホント、毎度変わらずです。
──こうやりたい、こうやったらいいというのがもうお互いわかって、自然なやりとりができているんでしょうね。具体的な音としては、ギターソロがたっぷりある曲が増えたなという印象でしたが。
大渡 ああ、そうですね。特に僕からそういうリクエストを出したわけじゃないんですけど、再始動後、より2人の個性を出していくという方向を、亀田さんは意識してるのかもしれませんね。
CD収録曲
- Baby!Baby!Baby!
- Special
- 1/100
- Hand in Hand
- ワンダフルライフ
- 僕が描いてた僕
- JIDAISHIN
- Everything will be all right
- Fly to the Freedom
- Dear memories
- 1176時間
- 君がいない未来
DVD収録内容
- 1/100 (MUSIC VIDEO)
- Hand in Hand (MUSIC VIDEO)
- 君がいない未来 (Music Clip)
- 映像特典「Do As Infinity LIVE 2010 -Documentary-」
Do As Infinity(どぅあずいんふぃにてぃ)
1999年に結成されたロックバンド。デビュー前より渋谷ハチ公前などで精力的なストリートライブを行い、注目を集める。同年9月にシングル「Tangerine Dream」でメジャーデビュー。2000年より現在の伴都美子(Vo)、大渡亮(G,Vo)の編成となる。2002年リリースのベストアルバム「Do The Best」がミリオンセラーを達成するなど、幅広い層から高い人気を得るが、2005年9月に解散した。そして2008年8月に開催されたイベント「a-nation'08」にサプライズ出演し、再結成を発表。同年9月より本格的に活動を再開し、リリースや全国ツアーを展開している。