音楽ナタリー Power Push - @djtomoko n Ucca-Laugh
“カメの歩み”の中で見つけた本当の音と言葉
もう本当、キスだけでOK! それだけで癒される
──リード曲の「キスをして」は、どんなイメージで歌詞を書いたんですか?
Ucca まずはシンプルにかわいい曲を書きたいっていうのがあって。あとは欲望ですね(笑)。自分の欲望もあるし、周りからもこういう話も聞いてたし。
──「キスをして」はスウィートな曲だけど、甘いラブソングとして「ラブ合ちん」の延長線上みたいなイメージはあったんですか?
Ucca いや、あそこまではいかない。「ラヴ合ちん」を書いたときはそれこそ自分もワシャワシャしてたんだけど(笑)、大人になったのか、もう本当、キスだけでOK!みたいになってきて。tomokoもそうだし、もうキスだけで癒されるね、みたいなところがあったから、そのことを書いたんです。
“Turtle Style”な2人の“Turtle Steps”
──表題曲の「Turtle Steps」は自分たちの歩み方を書いた曲で、このビートも初期のともゆかっぽいと思ったんです。
tomoko そう。「キスをして」と同じく、これも今回の制作期間の最初の頃に作った曲なんですけど、Uccaはギターサウンドが好きだから、ディストーションギターを使って何か作ろうと。で、制作してるときにニューヨークに住んでる友達とメールしてたら、その子が「僕は歩みが遅いんだよ。本当Turtle Styleなんだよね」って言ってて。でも、その子は最近ニューヨークにデカいスタジオを建てたんだって。そのときに「ウチらもタートルなんだけどー」って返したら「カメでも1歩ずつ歩んでるんだから。一発屋とは違うからがんばれ」みたいなメッセージをくれて。それをメモってUccaに伝えて作ったんです。
──そこで自分たちもカメだと思った?
tomoko ウサギではないなと。初期はウサギ感があったと思う、自分たちは。でもカメだと思う。
──ウサギの皮を被ったカメだった(笑)。
tomoko あはは。それかも(笑)。
──そうやって自分たちのことを歌いながらも、自分たちのような生き方をしている女性へのメッセージにもなればと思っているわけですよね?
Ucca そうですね。私たちはけっこうフリーな状態で音楽をやってて、相当冒険して生きてるタイプの人間だとは思うんだけど、職種は違ってもそういうタイプの人は周りにいるし、きっとそういう子たちもこの歌と同じようなことを考えてるんじゃないかと思うんですよね。
「夏になったら恋しなきゃ!」って、あれなんだったんだろう?
──リリックビデオを作った「ウケる」は、Uccaさんの口癖の「ウケる」という言葉の使い方や相手に与える印象を自虐的に書いた曲ですよね?
Ucca まさにそうなんですよ! あはは。ウケるー(笑)。
tomoko 知り合いの小学校5年生の子供にこのビデオを見せたら「売れる」って言われました。「ウケる」じゃなくて(笑)。
──7曲目の「付き合ってだけ言えなくて」は、男女の仲良しグループで夏休みのドライブに出かけるシーンを切り取ったサマーソングだけど、どうにも暗いですよね。
Ucca あはは! ウケるー(笑)。そうなの、くすぶってるんですよ、これ。
──「夏だ! 海だ! ステキな恋しよう!」っていう感じじゃないから。
tomoko ウジウジだもんね、「付き合って」と言えてないんだから。これはね、20代前半じゃない。20代前半の「夏だー!」っていう楽しさじゃなく、「付き合って」だけが言えない、頑固になってきた女の人に刺さる曲。
Ucca もう夏だからっていうことで恋なんてしないもんね(笑)。
tomoko なんでだろうね。前は「夏になったら恋しなきゃ!」みたいなのあったよね。あれ、なんだったんだろう。
──恋愛に無関心なわけじゃないけど、かといってイケイケドンドンなテンションじゃなくなってきてると。
Ucca なかなか自分からアクションはしなくなっちゃったっていう。「超好き!」まではならないけど、なんとなく気になる人はいる。だからこそ、待機になっちゃって。
tomoko 「付き合って」以外は言えるんだよね。「かわいいね」とか「かっこいいね」とか。「イケメンだね」とか。
Ucca そうやって待機中だから、そのドライブ中も気になる相手の隣はキープしつつ、(その相手に肩を軽くぶつけるような動きをしながら)「ちょっと来てよ」みたいな(笑)。右肩で誘ってるみたいな曲なんです(笑)。
──ところで、tomokoさんがビートの面で新しいチャレンジをしたという曲は?
tomoko 「To do list」かな。ベースミュージックのプロデューサーをけっこうチェックしてる時期があって、そういうのを作ってみたいと思って。ちょっとお洒落じゃないですか、ウチらからすると。で、さわやかさがあって、でもベースも効いてるようなサウンドを作りたいなと思って作ったんです。
──Uccaさんが自分的に新境地だと思う曲は?
Ucca 「ありきたり」かな。すごい短い歌なんですけど、こういう歌い上げる感じはともゆかではやらないんで、そういう見せ方を初めてした曲ですね。
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収録曲
- Turtle Steps
- キスをして
- Ray
- To do list
- ウケる
- 銭問題
- 付き合ってだけ言えなくて
- ありきたり
- Let me do me
- ALIVE
- かくれんぼ
- 大好きダーリン
@djtomoko n Ucca-Laugh
(アットディージェイトモコアンドユッカラフ)
シンセサイザーやサンプラーなどの電子楽器の音色をパッドを叩いて制御するMPC(MIDIパッドコントローラー)を駆使するビートメーカー@djtomokoと、ラップもするシンガーUcca-Laughによる1MPC1MC編成のR&Bグループ。2010年のグループ結成直後から、2人の自宅から即興ビートメイキング番組をUstream配信。累計視聴者数4万人を獲得し、さらには米国ヒップホップシーンを代表するトラックメーカー・DJプレミアと共演を果たすなど、瞬く間に注目を集める存在となる。2011年11月に1stアルバム「1 MPD n a MIC」を、2013年3月には配信限定3部作をリリースし、iTunesStoreチャートで最高1位を獲得。1年後となる2014年3月には3部作の1つとなるミニアルバム「これ本音」の収録曲など、既発曲を改めてパッケージしたアルバム「GIRLS BE LIKE -Compiled Album-」をリリース。そして2015年8月、オリジナルフルアルバム「Turtle Steps」を発表した。