音楽ナタリー Power Push - @djtomoko n Ucca-Laugh

“カメの歩み”の中で見つけた本当の音と言葉

なぜかマジメなデモをたくさん選ぶ

──Uccaさんが書いた歌詞をtomokoさんはどういうふうに見てました?

Ucca-Laugh

tomoko 今回は30曲くらいあったデモから12曲を選んだんだけど、そのときに、なぜかそういう曲ばっかり選んでたんですよ。男と女のバカっぽいパーティチューンとか浮気の曲もあったんだけど、なぜか選ぶのはマジメな曲が多かったから。

Ucca そうだね。出ちゃいましたね、なんか、そういうところが(笑)。

──でも2人には奔放なイメージを持ってる人が多いと思うんです。いつも明るくてキャッキャしてる、みたいな。そういう人にしてみれば、今回はナチュラルです、と言われてもピンと来ないかもと思ったりして。

Ucca あー、なるほど。

──2人のシリアスな面ってあまり世間に伝わってないような気もするから。

tomoko 知らないかもね。確かにそうだわ。

──例えば初期を代表する「ラヴ合ちん」(2011年)も、実はとてもシリアスな曲ですよね。セックスはセックスでも愛のあるセックスをしたいと歌ってた。だけど、その曲のキャンペーンでオリジナルコンドームをバラまいてたわけで。

tomoko そういうちょっとおふざけな感じがあったもんね。

──それもそれでマジメなことだけど、どうしても色眼鏡で見られちゃうようなところがあると思うんです。そう考えると、今回のアルバムには今まで出てないともゆかの表情が出てるんじゃないか、そういう部分を感じる人が多いかもと思って。

tomoko だとしたら、逆にそれはそれでうれしいな。

Ucca 根本は変わってないと思うんですけど、以前より考えるようになったと思うんですよ、いろんな面で。そういう部分での苦悩みたいなのが出ちゃった感じはありますね。

tomoko 確かに「話してみたらマジメだね」って言われることが多いもんね。つまり話してない人の多くは、ウチらのことをマジメだと思ってないってことだもん(笑)。

ヘタクソなんですよ、息抜きが

──2人のマジメさが伺えるエピソードを話すと、今回のアルバムを作るにあたり、ライブ活動をストップさせて制作合宿みたいなことをしてましたよね。

@djtomoko

tomoko そう。今年の1月から3月まで。

──そういうことをきちんとするマジメな人たちなんだよっていう。

tomoko でも、それはね、完全にUccaに合わせてます。Uccaはそういう期間を設けないと作れないタイプなの。例えば、こういう取材とかがあって、ライブが月に3~4本とかある中で制作するっていうのを今までもトライしてたんだけど、なかなか歌詞とかが上がってこないの。だから今回はガッツリ3カ月こもったっていう。

──それは「心ここにあらず」みたいになっちゃうってこと?

tomoko なんか集中できないんでしょ?

Ucca そうなんです。マルチタスクが苦手で(笑)。

tomoko CPUがね、ちょっと足りなくて(笑)。

──そうしてカンヅメ状態になったはいいけど、またそこでウーンと考え出しちゃったり?

Ucca そう。「ウーン……」ってなっちゃうの。今日はこの曲のここまで書かないと寝られない、みたいな感じでやるのが日課でしたから、その3カ月は。外に出るのは日用品を買いに行くだけ、みたいな。

tomoko Uccaはマジメだなあと思ったのが、たまには外に出て人にも会わないとオカシくなるでしょう? だから、私から1回だけ、「もうちょっと外に出たほうがいいんじゃない?」「そこまで出ないのはやり過ぎじゃない?」ってメールしたことがあって。そのときも「いや、これを終わらせないと、終わらせないと……」ってズーンってなってて(笑)。

Ucca あはは(笑)。怖い怖い。けどあったね、そんなこと。もうね、マジメっていうかヘタクソなんですよ、そういう息抜きとかが。

tomokoの赤い炎と、Uccaの青い炎

──ちなみに、tomokoさんは逆にマルチタスクに対応できるタイプなんですか?

tomoko 私は全然できる。むしろ、ライブに行ったり、いろんな人と会ったりするほうが「曲、超作りたい!」って思うもん。

Ucca tomokoは人のライブを観て「やべ」ってなったら、その日のうちに作るから。

tomoko もう寝ないでその日にやっちゃうタイプ。

Ucca たぶん「何かを作りたい」って思うときの起爆剤が2人は違うんだなっていうことにも今回気付いたんですよ。2人で一緒にライブに行くことは多いし、私も確かに「やばーい!」ってなるんだけど、私はそれがそんなに曲作りのほうに向かないっていうか。それよりは、本を読んだりとか映画を観たりとか、ライブ以外のものから着想を得ることが多いかなって。

──tomokoさんは瞬間湯沸かし器的にやる気スイッチが入るっていうことですよね。一方、Uccaさんは火種がずーっとくすぶって、徐々に大きな火になっていくタイプっていう。

tomoko じわじわじわーって。いろんなものが蓄積されてから出てくる。

Ucca だから時間がかかるんです(笑)。

──炎の色に例えるなら、それもまさしく過去のアー写と同じく赤と青なんだよね。激しく燃えるtomokoさんが赤で、静かに燃えるUccaさんが青っていう。

Ucca 確かに。人間的にもそうだもんね。tomokoは本当に熱い人間だから(笑)。

ニューアルバム「Turtle Steps」/ 2015年8月5日発売 / 2000円 / tomoucca.com / DQC-1498
「Turtle Steps」
収録曲
  1. Turtle Steps
  2. キスをして
  3. Ray
  4. To do list
  5. ウケる
  6. 銭問題
  7. 付き合ってだけ言えなくて
  8. ありきたり
  9. Let me do me
  10. ALIVE
  11. かくれんぼ
  12. 大好きダーリン
@djtomoko n Ucca-Laugh
(アットディージェイトモコアンドユッカラフ)
 @djtomoko n Ucca-Laugh

シンセサイザーやサンプラーなどの電子楽器の音色をパッドを叩いて制御するMPC(MIDIパッドコントローラー)を駆使するビートメーカー@djtomokoと、ラップもするシンガーUcca-Laughによる1MPC1MC編成のR&Bグループ。2010年のグループ結成直後から、2人の自宅から即興ビートメイキング番組をUstream配信。累計視聴者数4万人を獲得し、さらには米国ヒップホップシーンを代表するトラックメーカー・DJプレミアと共演を果たすなど、瞬く間に注目を集める存在となる。2011年11月に1stアルバム「1 MPD n a MIC」を、2013年3月には配信限定3部作をリリースし、iTunesStoreチャートで最高1位を獲得。1年後となる2014年3月には3部作の1つとなるミニアルバム「これ本音」の収録曲など、既発曲を改めてパッケージしたアルバム「GIRLS BE LIKE -Compiled Album-」をリリース。そして2015年8月、オリジナルフルアルバム「Turtle Steps」を発表した。