音楽ナタリー Power Push - @djtomoko n Ucca-Laugh
“カメの歩み”の中で見つけた本当の音と言葉
“ともゆか”という愛称で親しまれ、三浦大知やZeebra、AIとも交流のあるR&Bユニット、@djtomoko n Ucca-Laughがニューアルバム「Turtle Steps」を完成させた。持ち味であるアラサー女子の恋愛事情をつづった楽曲群は、年を重ねてよりリアルに変化。加えて、自分たちの歩みを正直に描いたナンバーも収録され、好きなことをやり続けている中での苦悩も垣間見える1枚になっている。これまででもっとも内省的な雰囲気を漂わせ、またこれまでシンボルカラーにしてきた赤と青をジャケットに配色していないのも気になるところ。結成から5年、2人は今回、どんな「ともゆか」を目指したのか。そこから浮かび上がってきた、2人のあまり知られていないキャラクターとは?
取材・文 / 猪又孝 撮影 / 小坂茂雄
“がんばらず”に原点回帰する1枚
──今回はどんなアルバムを目指していたんですか?
Ucca-Laugh 最初はテーマとか決めず、いろんな曲調や内容の曲を作っていったときに、2人で活動を始めた頃の感覚が甦ってきて。それでできたのが「キスをして」なんです。2015年の音楽の流行りっていうものもあるけど、そもそも自分たちの音楽ってなんだっけ?みたいな。それを大事にしていったところはありますね。
──サウンド的にもそう?
@djtomoko そうですね。超ざっくり、大きくまとめると、1stアルバム感(2011年の「1 MPD n a MIC」)。流行りのビートも採り入れようかと思ったんだけど、それで個性が消されちゃうんだったらやめようと。「これを作ったのはtomokoじゃない?」って言われるくらい、1stに近いようなビートをもう1回作ってみようかなって。
──作詞面ではどんなことを念頭に置いていましたか?
Ucca 今のともゆか、みたいな。なんていうのかな……がんばらない、みたいな(笑)。
──がんばらないってどういうこと?
Ucca ちょっと頑張った時期があったんですよ。女の子に聴いてもらいたい!とか。それもそれでいいとは思うんですけど、次はもう一回ナチュラルな感じでやってみよう、みたいな感じでした。
ナチュラルにそのまんま出したら、悩みも出てきたぞ
──ナチュラルと言えば、今回のジャケットやアーティスト写真もそういう雰囲気ですよね。これまでは@djtomoko=赤、Ucca-Laugh=青と、それぞれ赤色・青色の洋服を着たりして、赤青をグループのシンボルカラーにしてたけど、今回は“脱・赤青”になってる。
tomoko 今回は(フリーマガジンの)「FLJ」の大野(俊也)さんにアートワークをプロデュースしてもらったんだけど、撮影するときに、ナチュラルな感じを撮りたいって絵コンテをいくつか見せてもらって。
──じゃあ、やっぱりナチュラルがキーワードになっていたんですか?
tomoko 「FLJ」と話す前に事務所の人たちと話したときも、みんなナチュラルがいいって言ってて。1個前のアー写みたいに化粧を濃くしてキメて、っていう方向じゃなくて、普段着でどう?みたいな。
Ucca そういうのがともゆからしくていいみたいっていう。そういう方向を周りのみんなは求めてたのかなって、今回の制作期間に気付いたんですよね。
──ナチュラルという言葉につながっていくかどうかはわからないけど、今回のアルバムを聴いて、これまででもっともダークかもと思ったんです。ダークというか内省的というか。
tomoko 落ち着いてるってこと?
──というより、悩んでる感じ、モヤモヤしてる感じがあるなって。例えば「Turtle Steps」とか、「ALIVE」「Let me do me」もそう。ざっくり言うとマイペースでがんばっていきましょうという歌詞で、基本は前向きな歌なんだけど、「とはいえマイペース過ぎるのかな?」とか「思うようにいかないな」みたいな気持ちが透けて見えたんですよね。
tomoko ナチュラルにそのまんま出したら、悩みも出てきたぞっていう(笑)。
──ナチュラルだから本心も出ちゃったのかなと思って。真の本音っていう。
tomoko 曲を聴いてもらいたい女子たちの本音じゃなくて、私たちの本音っていう。でも、それはあるかもね。今、考えたら、ナチュラルってところとリンクしてると思う。
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収録曲
- Turtle Steps
- キスをして
- Ray
- To do list
- ウケる
- 銭問題
- 付き合ってだけ言えなくて
- ありきたり
- Let me do me
- ALIVE
- かくれんぼ
- 大好きダーリン
@djtomoko n Ucca-Laugh
(アットディージェイトモコアンドユッカラフ)
シンセサイザーやサンプラーなどの電子楽器の音色をパッドを叩いて制御するMPC(MIDIパッドコントローラー)を駆使するビートメーカー@djtomokoと、ラップもするシンガーUcca-Laughによる1MPC1MC編成のR&Bグループ。2010年のグループ結成直後から、2人の自宅から即興ビートメイキング番組をUstream配信。累計視聴者数4万人を獲得し、さらには米国ヒップホップシーンを代表するトラックメーカー・DJプレミアと共演を果たすなど、瞬く間に注目を集める存在となる。2011年11月に1stアルバム「1 MPD n a MIC」を、2013年3月には配信限定3部作をリリースし、iTunesStoreチャートで最高1位を獲得。1年後となる2014年3月には3部作の1つとなるミニアルバム「これ本音」の収録曲など、既発曲を改めてパッケージしたアルバム「GIRLS BE LIKE -Compiled Album-」をリリース。そして2015年8月、オリジナルフルアルバム「Turtle Steps」を発表した。