ナタリー PowerPush - DJ Fumiya

1stソロアルバムに込めた歴史と手癖

ヒップホップDJとしての部分をもっと掘り返さないと

──トラックメイキングの話を中心に聞いてきましたが、そもそもFumiyaさんがDJを始めたきっかけはスクラッチがしたかったからだとか。

そうです。中学生のときに。

──それから今日までの自分の成長を振り返ってみていかがですか?

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なんかこのアルバムを作って、スクラッチが少ないなとか、擦るの下手になっちゃったからもっと練習しなきゃいけないなとか、自分のヒップホップDJとしての部分をもっと掘り返さないとダメだなって感じましたね。最近はずっと、自分でギター弾いたり、ドラム叩いたり、そっちの方向に走ってたんで。

──ミュージシャン方向に。

はい。リップの活動とともに、こういうふうに曲作ってみたいっていう興味とか、自分でやっちゃったほうが早い部分も出てくるし。でももっと素の元々あった感覚っていうか、そっちに戻りたいなって思わせてくれたアルバムでもあるかなあ。

──自分はヒップホップDJだっていう自覚があるんですか?

あります。ていうかミュージシャンじゃないし、歌手でもないし、DJだっていう。まあタイトルに「Beats」って付けたのもそういうことだし、本当にビートが基本だよなって思う。

「STEPPER'S DELIGHT」はヒップホップの初期衝動

──たくさんの曲を作ってきたFumiyaさんが、DJとしてターニングポイントだったと思える楽曲ってなんですか?

なんだろうなあ。「STEPPER'S DELIGHT」とかメジャーデビューした当初の曲ですかね。あのへんはすごい爆発力があったと思う。とにかく作りたいだけで作ってるから、難しいことなんにもなくて。ヒップホップのオケじゃないかもしれないし、ただ新しいことやりたいっていうわけでもなかったし……当時20歳くらいでしたけど、今聴いても新鮮なんですよね。

──例えば「STEPPER'S DELIGHT」や「楽園ベイベー」って、奇をてらって作ったわけではないんですよね?

全然ないんですよ。今はああいうの作ったら奇をてらってる感出ちゃうと思うけど、そのときは全然なかった。初期衝動のみ、みたいな。

──当時Fumiyaさんが初期衝動で表現した音楽はとても鮮烈で、他のヒップホップグループのそれとは少し違うように見えました。

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でも自分としては本当に、そのとき知ってるヒップホップに対する初期衝動だったんですよね。だからあれを作って「ヒップホップじゃねえよ」とか言われる怖さは全くなかった。でもどんどん曲作って、ある程度売れて、周りからいろんなふうに言われて、俺は何やってんだろうみたいな時期もありました。別にやりたいことやればいいんだってどっかで思ってはいるけど「これヒップホップじゃないよね」みたいな格闘も自分の心の中であったと思います。

──一部のリスナーから「RIP SLYMEはヒップホップじゃない」と言われることに対してはどう思っていましたか?

「いや、ヒップホップだよ」って思ってました(笑)。別にこれをこうやってやったらハイヒップホップですっていう決まりとか免許みたいものはないじゃないですか。だから「ヒップホップが好きな俺が作る音は全部ヒップホップだ」って勝手に思ってやってました、最初の頃は。でも今はそういうことも思わなくなってきてるというか、好きな音楽のひとつっていう感じですね。

──なるほど。

ヒップホップのDJ。元がそれで始まってるから、排除のしようがないっていうか、それを違うふうには考えられないし、ヒップホップはないと絶対にダメっていうもの。

CD収録曲
  1. Voice for Daddy
  2. JYANAI? feat. 鎮座DOPENESS
  3. BUMBRITY feat. Trippple Nippples
  4. HOTCAKE SAMBA feat. BAKUBAKU DOKIN & Tomoko Nagashima from orange pekoe
  5. ENERGY FORCE
  6. Continue? feat. RHYMESTER
  7. LOVE 地獄 feat. RYO-Z & 黒沢かずこ from 森三中
  8. FANTASTIQUE!
  9. TOKYO LOVE STORY feat. 奇妙礼太郎
  10. Here We Go feat Dynamite MC(Diplo Remix)
DJ Fumiya(でぃーじぇいふみや)

プロフィール画像

RIP SLYMEのDJ。14歳でDJを始め、クラブで開催されたDJバトル優勝を機に、数々のアーティストのツアーやレコーディングに参加する。18歳でRIP SLYMEに加入し、2001年にメジャーデビュー。これまでに「One」「楽園ベイベー」「熱帯夜」など多くのヒット曲を放っている。また他のアーティストのプロデュース、楽曲提供、リミックス制作も多く、これまでにbird、AYUSE KOZUE、LITTLE、HALCALI、KOHEI JAPAN、真心ブラザーズ、YO-KING、Fantastic Plastic Machine、Mr.Children、布袋寅泰などの作品に参加。現在はクラブイベントなどで積極的にDJ活動を行っており、主にエレクトロハウス、バイレファンキ、ドラムンベースなどをスピンしている。2010年には初のミックスCD「DJ FUMIYA IN THE MIX」を、2012年には待望のオリジナルアルバム「Beats for Daddy」をリリース。