ナタリー PowerPush - DJ Fumiya
1stソロアルバムに込めた歴史と手癖
RIP SLYMEのメンバーとして、プロデューサーとして、いちDJとして、オリジナリティあふれるサウンドで確固たるキャリアを築いてきたDJ Fumiya。彼が初のオリジナルソロアルバム「Beats for Daddy」を発表する。今作には鎮座DOPENESS、Trippple Nippples、バクバクドキン、ナガシマトモコ(orange pekoe)、RHYMESTER、黒沢かずこ(森三中)、RYO-Z(RIP SLYME)、奇妙礼太郎、Diplo(※リミックス)といった個性豊かな面々が参加。それぞれの声がDJ Fumiyaのトラックと絡み合い、まるで音と遊んでいるような高揚感を聴く者にもたらしてくれる。
今回のインタビューは、Fumiyaにとって現在のDJ活動の拠点とも言える東京・三宿Webにて実施。慣れ親しんだクラブのカウンターで、自身の活動とそのサウンドの特徴を振り返ってもらった。
取材・文 / 鳴田麻未 撮影 / 上山陽介 撮影協力 / 三宿Web
ずっとソロで作品を出したかった
──DJ Fumiyaのオリジナルソロアルバムを長年待っていた人も多いと思います。なぜこのタイミングで個人としてのアルバムを出すことになったんですか?
リップを始めてすぐ、20代前半の頃からソロでアルバム出したいなっていう気持ちはあったんだけど、ほかのプロデュース仕事もあったから本当に暇がなくて。30までには絶対出したいなと思ってたけど、いつの間にか超えてて、それも間に合わなかった。まあ「DJ FUMIYA IN THE MIX」っていうミックスCDは出したんだけど、それからも2年くらい空いちゃって……多分このタイミングしかないなっていう。
──リップでもプロデュースワークでもなくオリジナル盤を出したいという気持ちがあったんですね。
本当にずっとあった。最初はメジャーからでもインディーズからでもいいから、リップ用に作って気に入ってるけど発表してない曲をまとめて出す、くらいの軽い気持ちでいたんだけど、結局全部アルバム用にオリジナルで作らせてもらって。楽しかったですね。
──制作のおおまかな流れを教えていただけますか?
基本的にはオケを先に作って、このオケだったらボーカルはこの人かなっていうのを決めて、オファーしてみて。その後はラッパーかシンガーかによって細かい音が変わってくるんで、歌の人だったらメロディを作ったり。あ、でも黒沢さんだけは最初に頼んじゃって、黒沢さん用に曲を作りました。
──総制作期間はどのくらい?
5、6カ月かなあ。オケ自体はすぐできたんだけど、フィーチャリング相手のスケジュールもあったから、それで時間がかかりましたね。みんな忙しい人たちだから。
──それぞれFumiyaさんの自宅のスタジオに呼んで録ったんですか?
そう。自分ちのスタジオでマイク立てて歌ってもらって、エンジニアリングも全部自分で。だからちゃんと満足いく出来にはなってます。
“Fumiya汁”出てる
──完成品を聴いて、DJ Fumiyaのアーティスト性がストレートに表れた素晴らしいアルバムだなと思いました。音楽に詳しい人はそのクオリティの高さを感じ取ってくれるでしょうし、全く詳しくない人でも楽しめると思います。
そうなってもらえたら非常にうれしいです。自分がDJ始めてから今日までがギュッと詰まったような感じがするし、“Fumiya汁”出てるなと思いますね。
──確かに出てますね、Fumiya汁(笑)。カオスであり、コアであり、ポップ。
うん。今回はジャンルとかテイストに本当にこだわってない。例えばリップだともうちょっと生っぽくしようとか、鉄っぽくしようとか、そういう狙いもあったりするけど今回は一切ない。作りたいの作りました。
──母体のRIP SLYMEや、HALCALI、バクバクドキンなどでのプロデュースワークを聴いてきた人間にとっては、Fumiyaさんの好きな音が詰め込まれてるなという印象です。
なんか手癖で作ったっていう感じが強いかもしれない。あんまり「新しいことしてやるぜ」っていう感じじゃなく、慣れた感じで作っていきましたね。
──「手癖で作った」って聞きようによってはあまり良い言葉ではないですが、今回はそれでいいと?
そう。それでいい。だから程良い疲れがありますね(笑)。曲作ること自体はあまり悩まなくて、陶芸みたいに一度ぶっ壊して初めから作り直すみたいなことはなかったです。
──Fumiyaさんは、楽曲制作の感想をしばしば「疲れ」という言葉で表現している気がします。それほど神経を使う作業なのだと思いますが、疲れの度合いと出来映えって密接なものなんでしょうか?
曲作りをいろいろ経験してくると、気になったところはがんばれば直せるというか、気にならなくなるやり方を覚えたので、やればできると思ってがんばっちゃうと、疲れる。ただそれがカッコよく変わってるかどうかは全然わからないんですよ。でもここまでやってきてなんとなく思うのは、すっごい悩んでこねくり回したのより、ノリでパッとできた曲のほうが後々いっぱい聴いてるかなって。あーでもないこーでもないってやってやると、もう1カ月くらいは聴きたくなくなるんですよ。かと言って疲れない曲がいい作品かっていうと……難しいんですけどね。
CD収録曲
- Voice for Daddy
- JYANAI? feat. 鎮座DOPENESS
- BUMBRITY feat. Trippple Nippples
- HOTCAKE SAMBA feat. BAKUBAKU DOKIN & Tomoko Nagashima from orange pekoe
- ENERGY FORCE
- Continue? feat. RHYMESTER
- LOVE 地獄 feat. RYO-Z & 黒沢かずこ from 森三中
- FANTASTIQUE!
- TOKYO LOVE STORY feat. 奇妙礼太郎
- Here We Go feat Dynamite MC(Diplo Remix)
DJ Fumiya(でぃーじぇいふみや)
RIP SLYMEのDJ。14歳でDJを始め、クラブで開催されたDJバトル優勝を機に、数々のアーティストのツアーやレコーディングに参加する。18歳でRIP SLYMEに加入し、2001年にメジャーデビュー。これまでに「One」「楽園ベイベー」「熱帯夜」など多くのヒット曲を放っている。また他のアーティストのプロデュース、楽曲提供、リミックス制作も多く、これまでにbird、AYUSE KOZUE、LITTLE、HALCALI、KOHEI JAPAN、真心ブラザーズ、YO-KING、Fantastic Plastic Machine、Mr.Children、布袋寅泰などの作品に参加。現在はクラブイベントなどで積極的にDJ活動を行っており、主にエレクトロハウス、バイレファンキ、ドラムンベースなどをスピンしている。2010年には初のミックスCD「DJ FUMIYA IN THE MIX」を、2012年には待望のオリジナルアルバム「Beats for Daddy」をリリース。