ナタリー PowerPush - Mr.BEATS a.k.a. DJ CELORY
話題のラバーズレゲエMIX 制作意図をDJ CELORYに直撃
ここ数年、爆発的な広がりを見せるラバーズレゲエ系ミックスCDシーン。中でも、2008年からスタートしたMr. BEATS a.k.a. DJ CELORYセレクトの「BON-VOYAGE LOVERS」は、“遊べる本屋”ヴィレッジヴァンガードの店頭や口コミで話題を呼び、次々に新作を重ねるヒットシリーズとなった。
5作目となる最新CD「BON-VOYAGE LOVERS ~Heart of Moment~」にも、洋楽R&B/ヒップホップ/アーバンポップスナンバーのレゲエカバー、ラバーズロックカバーが計34曲収録。まったりと過ごすひとときやバカンスシーンにピッタリの1枚に仕上がっている。
今回は、Mr. BEATS a.k.a. DJ CELORYへ「BON-VOYAGE LOVERS」シリーズについてのインタビューを実施。ヒップホップDJとして90年代から活躍しハードコアシーンにも通じる彼が、どんな思いでこのシリーズを作り続けているのか、気になる質問をぶつけてみた。
取材・文/鳴田麻未
コアな層よりライトユーザーへ向けて
──ナタリーは邦楽中心のニュースサイトなので、こういった洋楽曲のミックスCDについてのインタビュー記事が載るのは珍しいかもしれません。
あっ、ホントですか。がんばって答えたいと思います。
──そんな性質もあって、読者の中にはBON-VOYAGEシリーズを知らない人、またはMr. BEATS a.k.a. DJ CELORYを知らない人もいるかと思うんですが。
おそらく世間的には、シリーズは知ってるけどDJ CELORYは知らないって人が多いと思うなあ。僕もこの「BON-VOYAGE LOVERS」に関しては、コアな層を目がけてというより、一般的な音楽のライトユーザーみたいなところに届けようって視点で作ってますから。このミックスCDで僕のことを知ったという人も結構いるんじゃないかな。
──BON-VOYAGEシリーズの好調ぶりは、直接CELORYさんの耳にも届いていますか?
はい。例えば疎遠になった学生時代の友達や、音楽をそんなに聴かない友達から「お店に行ったらミックスCDが置いてあってちょっとアガったよ」なんて言われることもちらほらあります。ということは、普段積極的に新譜を買ったり毎月CD代にいくらか費やす人以外の層にも浸透してるんだなと。僕はきっとコアなものを作ろうと思えばそれはそれで作れるんですけど、BON-VOYAGEシリーズはもっと幅広い人や場所に対応できるように作ってるので、そういう声はすごくうれしいです。
──こういうミックスCDってリスナー層がなかなか見えづらい気もしますよね。
見えづらいっすね! でも僕のクラブイベントに来るようなお客さんは、たぶん買ってて3分の1程度だと思うんですよね。ほかにTwitterとかブログで「買いました」「いいですね」とか言ってくれる子も、ジャンルがまちまち。B-BOYっぽい子はもちろん、「カフェで働いてて、お店でよく流してます」なんて人も結構いて。僕もそんなにターゲットを絞って作ってるわけじゃないんで、いろんな人に届けば幸いだなと思ってます。
現場が一番の情報源
──今おっしゃったように、CELORYさんはコアなものを作ろうと思えば作れる方ですよね。それにMr. BEATS a.k.a. DJ CELORYという名前に反応する人って、おそらくクラブファンだと思うんです。
そうですね。クラブファンだったり、日本語ラップ好きだったり。
──でも、BON-VOYAGEシリーズのラバーズレゲエというスタイルは、CELORYさんが普段クラブでかける音楽とは方向が少し違いますよね?
そうかもしれないですね。でも日本語ラップばかりかけてるわけではないし、クラブでの活動が逆に生きてるなと思うこともたくさんありますよ。例えば、今回の収録曲は20曲くらい新録音なんですよ。その新録カバーも選曲から発注まで僕がやってるんですが、セレクトしたのはほとんどが去年から今年にかけてフロアでヒットしたヒップホップ/R&Bチューン。それをカバーしてラバーズレゲエに落とし込むっていう。だから普段のクラブでの活動がつながっている気はするんですよね。
──現場で反応があった曲を題材にするんですね。
やっぱりそれが僕にとって一番の情報源だと思う。あとは、最新ヒットナンバーだけではつまらないので、90年代あたりのクラシックソングでラバーズバージョンがあったらいいなと思う曲をいくつか散りばめて。具体的に言うと、13曲目「HARD TO SAY I'M SORRY」(ケリー・B.)から「TENDER LOVE」(ウィンストン・フランシス)の流れとか、33曲目「RETURN OF THE MACK」(マイク・アントニー)、34曲目「HAPPY SONG(TONITE)」(シャイアム・モーゼス)とかね。これをきっかけにオリジナルが聴きたいと思ったらいろんな年代に飛べるっていう楽しさも入れてるつもりです。
最初は自主制作盤
──そもそも、この「BON-VOYAGE」シリーズを最初に制作したきっかけは何だったんですか?
えーと、ぶっちゃけて言うと最初は自主制作盤でした(笑)。当時、ヒップホップDJ的な視点で作るラバーズレゲエのミックスCDって市場にないなぁと思っていて。ヒップホップ/R&Bのカバーで、みんな聴いたことがあって、しかもまったり聴けるような。きっとレゲエのセレクターが作るラバーズのミックスとは違ったアプローチができるだろうし、あればみんな喜んでくれるんじゃないかなと思って、作り出したのがきっかけですね。
──なるほど。
で、ストリートで6枚ぐらい出してわりと好評だったんですけど、それを聴いていた某レーベルのディレクターの方が「うちでリリースしませんか」と声をかけてくれてオフィシャル化という形に。それで5枚目の今回から、ユニバーサルでお世話になるという感じです。
──やはりこういうミックスCDは、自主制作盤のほうが圧倒的に多いんでしょうか?
おそらくそうだと思います。オフィシャルはオフィシャルでいろいろ難しい部分もあるんですけど、やっぱそれ以上にマーケットが大きいし、反響もそれだけある。声をかけてもらったときは良いチャンスだと思ったし、ストリートとは違うフィールドで勝負したかったんです、このシリーズは。
CD収録曲
- JUST THE WAY YOU ARE / SHYAM MOSES
- GOING CRAZY / KADEEN
- SAVE THE BEST FOR LAST / PATSY MOORE
- BABY / TAJH feat. HAKIM
- DO YOU REMEMBER / TAJH feat. YT
- DYNAMITE / LEE FRANCIS
- DJ GOT US FALLING IN LOVE / AHMIR
- OMG / TAJH
- APOLOGIZE / ROGER ROBIN
- I LOVE ME SOME HIM / PAM HALL
- THE LOVE WE HAD STAYS ON MY MIND / BRIAN & TONY GOLD
- MINE / AHMIR
- HARD TO SAY I'M SORRY / KELLY B.
- TENDER LOVE / WINSTON FRANCIS
- I HOPE WE GET TO LOVE IN TIME / DA'VILLE & FIONA
- BURNING FIRE / GLEN WASHINGTON
- DON'T LOOK BACK IN ANGER [Live Drum Mix] / LEE FRANCIS
- YOU'RE BEAUTIFUL / CEZAR
- STICKWITU / ALICIA
- PRETTY GIRL ROCK / STEPH WRIGHT
- WHATCHA SAY / HAKIM
- TAKE A BOW / TORIA
- GO ON GIRL / VOICE MAIL
- TELL ME IT'S REAL / SHYAM MOSES
- GIRL / DAYNEA
- RUDE BOY / STEPH WRIGHT
- LETTING GO (DUTTY LOVE) [Strip Back Version] / HAKIM
- LOVE THE WAY YOU LIE / STEPH WRIGHT & GLAMMA KID
- SAY AHH / ROBERT CAMPBELL
- DON'T LIE / NADINE & ALBOROSIE
- PUT IT IN A LOVE SONG / STEPH WRIGHT
- NOTHING ON YOU / MIKE ANTONY
- RETURN OF THE MACK / MIKE ANTONY
- HAPPY SONG (TONITE) / SHYAM MOSES
CD収録曲
- Tender Love / Kenny Thomas
- Let It Last / Carleen Anderson
- By Your Side / Sade
- Feels Like Right / The Brand New Heavies
- Who Chooses The Seasons / Omar
- There's Nothing Like This - 7" Edit / Omar
- La La (Means I Love You) (U.K. Edit with Guitar) / Swing Out Sister
- People May Come / Gabrielle
- Spiritual Love / Urban Species
- It Ain't Over Til It's Over / Lenny Kravitz
- Still A Friend Of Mine / Incognito
- Peace In The World / Don-e
- I Am The Black Gold Of The Sun (4 Hero Remix)/ Nuyorican Soul
- Virtual Insanity / Jamiroquai
- Keep Together / The Brand New Heavies
- Better All The Time / Galliano
- Price on Peace / Galliano
- Something That You Said / Esperanto
- Without You / Incgnito
- Am I The Same Girl / Swing Out Sister
- Brother Urban Species
- Dream On Dreamer (Morales Mix) / The Brand New Heavies
- Make It Eazy On Me (Club) / Sybil
- Trust Me (CJ's Master Mix) / Guru
- I Wish (Club Mix) / Gabrielle
- You Gotta Be / Des' Ree
- Never Stop / The Brand New Heavies
- Me Oh My / Don-e
- Take Me Now / Tammy Payne
- Keep It Coming / K.Collective
- Loving You (Summer Breeze Mix) / Massivo feat Tracy
- Best Of You (Sunshine Mix) / Kenny Thomas
- Brightest Star / Drizabone
- Call On Me / Workshy
Mr.BEATS a.k.a. DJ CELORY(みすたーびーつえーけいえーでぃーじぇいせろりー)
1993年から活躍するDJ/プロデューサー。1994年にHAB I SCREAM、E.G.G MAN、ALGらとヒップホップユニットSOUL SCREAMを結成し、4枚のアルバムを発表。日本語ラップの黎明期を支えたグループとしてヒップホップファンから熱い支持を受ける。2003年にはソロ名義で初のシングル「BONDS feat. MACCHO & TOKONA-X」を発表。以降現在まで精力的にDJ活動を行っている。また、Zeebra、DJ NOBUと結成した日本語ラップDJプロジェクト「KUROFUNE」のメンバーとしても活躍中。