音楽ナタリー Power Push - Ryo(Crystal Lake)×DJ BAKU×KOJI(SWANKY DANK)
異ジャンルコラボから生まれる、新しい東京のレイブスタイル
「みんな仲よくしようよ」って思いを込めた「THE 12JAPS」
──BAKUさんが今、水曜日のカンパネラの名前を挙げていましたけど、ヒップホップシーンの真ん中にいる人から水カンがどういう印象を持たれてるのか、僕はちょっと興味があったんですよね。
DJ BAKU いや、俺はヒップホップシーンの真ん中にいないんですよ(笑)。真ん中ってたぶん、クラブで言うと渋谷のHARLEMとかだと思うんですけど、俺あそこで1回もDJやったことないし、初めて行ったのも最近ですもん。
──ええ! それは意外!
DJ BAKU だから俺、いわゆるヒップホップじゃないんですよ。俺が自分で「ルーツはヒップホップです」って言ってるからみんなそう思ってくれてるだけで。同業者で一番尊敬しているのはDJ KRUSHさんなんですけど、KRUSHさんもヒップホップの王道かと言えばちょっと違うじゃないですか。
──僕はBAKUさんのことを知ったきっかけがMSCとかとのコラボだったので、近年の活動は「ヒップホップの人が徐々にロックに寄ってきてる」というイメージで見てました。
DJ BAKU もともとは思いっきりヒップホップなことをやってきたんだけど、なんかしっくりこなかったんですよ。そんなときに「ちょっと違うことをやる」みたいな表現というか、ムーブメントがあったんですよね。例えばテクノでスクラッチ入れるのが流行ったり。どっちかっていうと俺はそっち側の人だったんです。そんな感じだったから、一時期はラッパーやMCとは話が合わなくて。仲悪い時期もありましたよ正直。今はホントにみんな仲よくなった。ホントよかった。俺、6年くらい前にラップのアルバム(「THE 12JAPS」)を出したんですけど、あれって「みんな仲よくしようよ」って思いを込めて出したのもあるんですよ。
──そうだったんですか!
DJ BAKU なんか距離があるなっていうのはすごい感じてたんですよ。ピリピリした、いつ殴り合いが起きてもおかしくないなっていう雰囲気が何年か前はヒップホップシーンにあったはず。さまざまなタイプの、勢いがある血の気の多い人たちが東京の各地にいるっていうか。8、9年前に感じてたのは、例えば新宿にMSCがいて、三軒茶屋だったら妄走族だったり渋谷にNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDだったり、みたいな感じで、みんな近いところにいるんだけど「会ったら何か起きるんじゃないか」て感じてた。一緒にクラブにいて乾杯してたとは、まず思えない。そのうちその全部のグループの人たちが一度ステージ上で同じ舞台に立ってて、MC漢がマイクを取ったり大ゲンカが始まりそうになって、湘南乃風の人たちが仲裁に入るような?こととかが起きて。それは見たことがありますよ。
──そんな状況だったんですね。
DJ BAKU B.I.G JOEさんっていう人がいるんだけど、麻薬の密輸で逮捕されてオーストラリアで6年服役して、その間に刑務所でレコーディングしてアルバムを3枚出したんですよ。
Ryo 獄中でラッパーやってるって、すごいっすね。
DJ BAKU JOEさん、もともとはTHA BLUE HERBのBOSS(tha BOSS)くんと同じクルーだったんですが、刑務所にいる間にうまくコミュニケーションが取れなくて、一時期、お互いが険悪な空気になっていたんです。その頃の話は本人たちもしていますよね。でも俺、2人に仲よくしてほしいから同じアルバムに入れたんです。というか、それはあとから出てきた要素でもあるんで、どちみちオファーはしてましたけど。
KOJI 面白い話!
DJ BAKU だから当時、リリパは軽く気まずく感じたな、正直(笑)。集まってくれたみんな、「俺ら仲いいよね!」なんていう、ぬるい雰囲気ではまずなかったから。当時はShing02とBOSSくんだってほとんどしゃべったことなかったはずだし。だから俺がとにかくアルバム内で1つにしたかった。強引かもですけど。ジャンル、人種の垣根を越えて仲よくするっていうのが平和主義の俺のテーマなんで。あのアルバムで「そんなことやってる場合じゃない」みたいに、俺はみんな思ってくれてると信じてます。
KOJI それを考えると今回のBAKUさんのアルバムはすごく平和ですね(笑)。バンドだと、そこまでDisり合いみたいなことないもんなあ。
Ryo 殴り合いみたいなのもないよね(笑)。
きっとヒップホップの人は2人のことを気に入ると思います
KOJI BAKUさんは、俺らとやってみてどうでした? 俺、ちゃんとできたのかなっていうのがすげー気になります。
Ryo 俺も気になります。
DJ BAKU 俺はもう、台湾や韓国で2人と一緒にステージに立ってる絵が見えてます。
Ryo おーっ!
KOJI それはもう合格と捉えていいんですか?
DJ BAKU もちろん(笑)。来年からそういう動きをしたいって具体的に考え始めてるんだけど、とりあえず今回のアルバムを引っさげてアジアに行きたいとは思ってるので。
KOJI うれしいっすね。でも俺、DJのステージで歌ったことないんですけど(笑)。
DJ BAKU そっか。じゃあ12月にやるリリパで、ちょっと1曲ずつ歌ってもらおうかな。そのときにDJと一緒にやるステージを体験してもらおう。
Ryo めちゃめちゃ楽しみです!
KOJI 楽しみだけど、普段のライブとは全然違うんだろうな。だって楽器もなしってことですよね?
DJ BAKU うん、ボーカリストとしての……。
KOJI 再デビューってことですね! 全然大丈夫です!(笑)
Ryo レコーディングする前としたあとで、ボーカリストとしての俺らの印象に違いはありましたか?
DJ BAKU RYOくんはデスボイスが多いイメージだったけど、優しく歌ってる声もカッコよかった。そういう歌声はLinkin Parkとかを思い出しました。KOJIくんは「確実に決めてくる人だな」って。ロックの人ってみんな仕事が速いですよね。
──そうなんですか。むしろラッパーのほうが、フリースタイルとかをやってるイメージでレコーディングが速そうなイメージがありますけど。
DJ BAKU いやー、すごいよ。1バース録音するのに100テイクとかやる人もいるし(笑)。
──今度は逆に、お2人がヒップホップの人たちを迎え入れて曲を作るのも面白いかもしれないですね。
KOJI あー、面白い! っていうか、Crystal Lakeはすぐにでもできそうだね。
Ryo うん、BAKUさんにCrystal Lakeに参加してもらって一緒にやりたい。どうなるか試してみたいです。
DJ BAKU 俺もぜひやりたいですね。きっとヒップホップの人は2人のことを気に入ると思いますよ。しっかりしてるから(笑)。
- DJ BAKU ニューアルバム「NΣO TOKYO RΛVΣ STYLΣ」 / 2015年11月25日発売 / 2700円 / KAIKOO / KAIKOO-001
- 「NΣO TOKYO RΛVΣ STYLΣ」
収録曲
- NEO KHAOS feat. Ryo(Crystal Lake)
- BURY DEM feat. RAGGA TWINS, HABANERO POSSE
- SCREAM THE LIFE feat. KYONO
- CHAMPION ROUTINE for Yohei Uchino
- SKIT∴ 6 140 EXPERIMENTAL BEATBOX feat. Sh0h
- WE DON'T WANT NO WAR feat. Benji Webbe(Skindred)
- I'LL BE IN THE SKIES feat. Chelsea Reject, mabanua
- OH MY GIRL feat. Koji(SWANKY DANK)
<ボーナストラック>
- 命燃やして!(SODA!) - DJ BAKU REMIX
- MIXXCHA feat. Shing02 - DJ BAKU+NAVE REMIX
- SKANKRUSH feat. 夙川boys - DJ BAKU+NAVE REMIX
DJ BAKU(ディージェーバク)
1978年生まれのDJ / トラックメーカー / ターンテーブリスト。16歳でDJを始め、1990年代後半にYOSHI(現・般若)やRUMIとともにヒップホップグループ・般若として活動する。1999年から自身のレーベル・DIS-DEFENSE DISCよりミックステープを販売し、2000年には3組のアーティストとのコラボ音源を収録した「DJ BAKU 対 GOTH-TRAD,SAIDRUM,Bleeder」をリリースした。2003年にMSCのTAVを迎えた「VANDALISM」、2004年にMSCの漢とPRIMAL、RUMIを迎えた12inchアナログ「KANNIBALISM / 畜殺」を発表してそれぞれ話題に。2006年には初のオリジナルアルバム「SPINHEDDZ」をリリースした。また2005年にドキュメンタリーDVD「KAIKOO / 邂逅」を監修し、当時のストリートカルチャーを映像化。同年より自身が発起人となった音楽イベント「KAIKOO POPWAVE FESTIVAL」がスタートし、2010年に晴海埠頭で行われた「KAIKOO POPWAVE FESTIVAL '10」は1万人以上の集客を記録する大イベントとなった。2008年にアルバム「DHARMA DANCE」を発表して以降、ロック的なサウンドへのアプローチが顕著になり、自身も6人組バンド・DJ BAKU HYBRID DHARMA BANDや、KYONO(WAGDUG FUTURISTIC UNITY、ex. THE MAD CAPSULE MARKETS)とのユニット・!!!KYONO+DJBAKU!!!を結成。ヒップホップを基盤にしてさまざまなジャンルとの融合を試み、新しいダンスミュージックを提案し続けている。2015年11月には自主レーベル・KAIKOOを設立し、ニューアルバム「NΣO TOKYO RΛVΣ STYLΣ」をリリースする。
Crystal Lake(クリスタルレイク)
2002年に結成されたバンド。幾度かのメンバーの脱加入を経て現在はShinya(G)、Ryo(Vo)、Yudai(G)、Teru(B)、Gaku(Dr)の5人で活動している。2006年に1stアルバム「DIMENSION」、2010年に2ndアルバム「INTO THE GREAT BEYOND」をリリース。2014年8月にリリースした7曲入りCD「Cubes」ではCrossfaithのKenta Koie(Vo)やNUMBのSENTA(Vo)とコラボし話題を集めた。同年12月、タワーレコード限定発売のスプリットアルバム「REDLINE RIOT!!」に参加。2015年10月には3rdアルバム「THE SIGN」を全国47カ国でリリースした。ハードコアやメタルコアの要素を軸にした重厚なサウンドと、迫力あるライブパフォーマンスを武器に、国内外で人気を博している。
SWANKY DANK(スワンキーダンク)
2007年にYUICHI(Vo, G)とKOJI(Vo, B)の兄弟を中心に結成したロックバンド。2009年3月に1stフルアルバム「SWANKY DANK」をリリースし、同年7月に発売したシングル「FOR YOU」が映画「MW」の挿入歌となる。その後2012年8月にSHUNが正式ドラマーとして加入しさらに精力的な活動を行う。2013年11月に、AIR SWELL、BLUE ENCONT、MY FIRST STORYと共にスプリットアルバム「BONEDS」をリリース。4バンドで回った全国ツアーを大成功に収める。2014年2月にKO-TA(G)が正式加入し、同年6月にミニアルバム「Circles」を発表した。2015年にはアルバム「Magna Carta」、シングル「One of a Kind」をリリースしたほか、韓国や台湾でのライブイベントに出演するなど活動の幅を広げている。