音楽ナタリー Power Push - Ryo(Crystal Lake)×DJ BAKU×KOJI(SWANKY DANK)
異ジャンルコラボから生まれる、新しい東京のレイブスタイル
DJ BAKUがニューアルバム「NΣO TOKYO RΛVΣ STYLΣ」をリリースする。今回のアルバムは自主レーベル・KAIKOOを設立した彼が、そこからの第1弾作品として制作したもの。Skrillexの「Ragga Bomb」に参加したことで知られるRagga Twinsや、イギリスのミクスチャーバンド・Skindredのベンジー・ウェッブ、!!!KYONO+DJBAKU!!!名義で過去にもDJ BAKUとコラボレートしているWAGDUG FUTURISTIC UNITYのKYONOなど、国境やジャンルを超えたさまざまなゲストが参加している。
音楽ナタリーでは今回、参加ゲストの中からCrystal LakeのRyoとSWANKY DANKのKOJIを迎えて、DJ BAKUとの鼎談を実施。ロックとダンスミュージックという異なるシーンでそれぞれ活躍する彼らが、どのように共同制作を進めたのか話を聞いた。
取材・文 / 橋本尚平 撮影 / 小坂茂雄
「KOJIくんはR&Bをやるとハマりそうだな」ってずっと思ってた
──DJ BAKUさんの作品への参加をお願いされたとき、RyoさんとKOJIさんはどう思いました?
Ryo KYONOさんとのコラボ(!!!KYONO+DJBAKU!!!)でDJ BAKUさんの名前はずっと知ってたんですが、最初に話をもらったときは信じられなくてビックリしましたね。DJの人たちとか、スタイルの違うミュージシャンと知り合うことが今まで全然なかったので。でも結果、すごく面白かったし、かなりやりやすかったです。
──どちらの持ち味も発揮されていて、相性がバッチリだなと思いました。
Ryo BAKUさんの曲は、ベースはヒップホップだけどロックやハードコアの要素がすごく強いので、もらった曲もすごくしっくりきました。ビートに歌を乗せるのは初めてだったので大変だったんですけど、やってるうちにだんだんフィットしていく感じがして、もっとこういう曲をやってみたいなっていう気持ちになりましたね。
KOJI 俺も初めて話が来たときはびっくりしました。「あ、俺なんだ」って(笑)。ヒップホップ系のレコーディングは初めての体験だったし、R&Bを歌うこと自体が初挑戦だったから、最初に送られてきたデモ音源を聴いたときは「これがどうなるんだろう」って思ってましたけど、自分の幅が広がるのを感じて、すげえ面白かったです。
──初めて「OH MY GIRL feat. Koji(SWANKY DANK)」を聴いたとき、「この歌がうまいR&Bシンガーは誰だろう?」と思っていたら、曲名にKOJIさんの名前があってビックリしました。
KOJI パンクバンドの人ですからね(笑)。
DJ BAKU 俺は「この人の声はたぶん、R&Bをやるとハマりそうだな」ってずっと思ってたんですよ。「きれいな声してる人だなー」って。あと、「すげー般若に似てるな」と思ってました(笑)。
KOJI ははは(笑)。
──あー、似てますね(笑)。
DJ BAKU 昔一緒にやっていたラッパーなんだけど、ルックスがそっくりなの。あの人、体がムキムキなんだけど、聞いたらKOJIくんも最近鍛えてるらしくて、ますます似てきてる(笑)。
──BAKUさんは、2人と一緒にレコーディングしてどんな印象を持ちましたか?
DJ BAKU 海外だとドラムンベースとハードコアのコラボはけっこうあるので、Ryoくんと作る曲は自分の中でなんとなくイメージできてたし、安心して作業してました。Ryoくんには当日に急に頼んだことが多かったんですよ。「デスボイスだけじゃなくて優しい歌声もください」とか「この言葉を言ってもらえる?」とか。そのときに録って使わなかったテイクを4曲目(「CHAMPION ROUTINE for Yohei Uchino」)で使ったりしたんですけど。
──声を素材として使う感覚ですね。
DJ BAKU そうそう、リミックスしてるみたいな感じなんですよね。ピンときたフレーズを繰り返したりして。俺があとから変えちゃうんで、最初に渡したデモとは全然違うものになってます。声を乗せてみたら意外とキックの抜けが悪くなったから、最新のソフトの音に差し替えたりとか。あと曲名もそうですね。「OH MY GIRL」はもともと別のタイトルに決めてたんだけど、KOJIくんが歌うと「GIRL」って言葉がはっきり聞こえるから、これをタイトルにしようって思って変更したんですよ。そういうことを締め切りギリギリまでやってるんで、けっこうスタッフには迷惑かけちゃってるんです。4曲目にRyoくんの声を使おうって思ったのも締め切り1週間前だったし。
──曲が完成するまでの流れは、バンドとはだいぶ違いますよね。
KOJI そうですね。バンドのほうが関わる人が多いですし、メンバーそれぞれパートが違うから、全部の音を自分で出してるわけじゃないし。
DJ BAKU 逆に俺あんまりそっちを知らないから、どういうものか見てみたいですね。「バンドはどうやって作ってんのかなあ」って。
──でもBAKUさんも以前、HYBRID DHARMA BANDというロックバンドをやっていましたよね。
DJ BAKU あれはあらかじめ作りこんで演奏してたから、スタジオでセッションするようなバンドとはまたちょっと違うんですよ。Daft PunkとかSkrillexとかって、もともとバンドをやってて楽器での音楽の作り方をわかってて、そこからサンプリングや打ち込みの音楽を始めて大成したんですよね。ああいう人たちってサンプリングのやり方がうまいなって思うんだけど、俺は全然楽器ができないから。DJに反映させるためにも、ちょっと楽器のことを勉強したいんですよ。
ロックの人のほうが人間的にしっかりしてますよ
──お2人は完成したアルバムを聴いて、どうでしたか?
KOJI 1曲目から最後のボーナストラックまで、バラエティに富んでて楽しかったですね。
Ryo うん、いろんなタイプの曲があって全然飽きない。バンドだとタイプが違う曲を入れていくと散漫な感じになっちゃうんですけど、違和感も全然なく最後まで聴けますし。
KOJI しかも、RyoならRyo、俺なら俺っていう1人ひとりの持ち味をちゃんと全員引き出してるのがすごいな。その人のイメージを引き出すのがすごく上手なんでしょうね。
DJ BAKU そう言ってもらうのはプロデューサー冥利に尽きますね。もちろん、ちゃんと付き合わないとその人の奥深くまではわからないですけど、やっぱり歌声には人間性が出るじゃないですか。「ちょっと闇があるな」とか、そういうイメージを膨らませながら、ズレがないようにはめていくことは意識してますね。
Ryo 俺、Ragga TwinsとHABANERO POSSEが参加してる曲(「BURY DEM feat. RAGGA TWINS, HABANERO POSSE」)が好きだな。最近のトレンドも押さえつつ、って感じで。
KOJI 俺はボイパのやつ(「SKIT∴ 6 140 EXPERIMENTAL BEATBOX feat. Sh0h」)を聴いて「これは新しいなー」って感じました。この曲は全部生っすよね?
DJ BAKU うん、加工してない。後半のスネアっぽい音とか、機械みたいな音も全部口から出てる。
KOJI 人間離れした曲だなってビックリしました。ヘッドフォンで聴いたら耳元でボイパされてる感じで。
──今回のアルバムはRyoさんやKOJIさんのようなゲストが参加していますし、ロックのリスナーからもかなり注目されそうですね。HYBRID DHARMA BANDや!!!KYONO+DJBAKU!!!での活動もあり、BAKUさんの活動は数年前からロックやパンクに接近している印象があるんですが、そこは意識しているんですか?
DJ BAKU それはKYONOさんと一緒にやったのが大きかったのかもしれないです。この2年ぐらいKYONOさんとよく遊んでて、ロックの人が集まる飲み屋に一緒に行ったりしてるんですけど、KYONOさんはいろんな人を紹介してくれるんですよ。俺、あんまりヒップホップの人と遊ばないんです。飲みに行くのはロックの人とのほうが多いんです。
Ryo へえー、意外ですね。
DJ BAKU ロックの人のほうが人間的にしっかりしてますよ(笑)。
KOJI あははは(笑)。そうなんですか?
DJ BAKU 挨拶とかがちゃんとしてるし、時間も守るし。もちろんレゲエとかヒップホップの人にもちゃんとしてる人はいるんでしょうけど、言葉通りの“ルードボーイ”が多いから。
Ryo そうなんですね。俺はそういう音楽は好きで聴きますけど、やってる人と直接関わる機会ってなかなかなくて。クラブもあんまり行かないですし。
DJ BAKU クラブとかで踊ってるの想像できないもん(笑)。
KOJI あはは(笑)。Ryoに踊ってほしいな。俺ら、クラブの楽しみ方がわかんないのかもしれないです。
DJ BAKU タイミングが合ったら一緒に渋谷のクラブとか行こうよ。俺は2人ともラッパーと相性がよさそうだなと思うんだよね。たとえばANARCHYくんとかはロックぽい勢いがあるし、最近だとKOHHくんとか。逆に彼らはロックバンドの種類はあんまり知らないんじゃないかなーとか思う。そういうMCって、けっこういると思うんです。
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- DJ BAKU ニューアルバム「NΣO TOKYO RΛVΣ STYLΣ」 / 2015年11月25日発売 / 2700円 / KAIKOO / KAIKOO-001
- 「NΣO TOKYO RΛVΣ STYLΣ」
収録曲
- NEO KHAOS feat. Ryo(Crystal Lake)
- BURY DEM feat. RAGGA TWINS, HABANERO POSSE
- SCREAM THE LIFE feat. KYONO
- CHAMPION ROUTINE for Yohei Uchino
- SKIT∴ 6 140 EXPERIMENTAL BEATBOX feat. Sh0h
- WE DON'T WANT NO WAR feat. Benji Webbe(Skindred)
- I'LL BE IN THE SKIES feat. Chelsea Reject, mabanua
- OH MY GIRL feat. Koji(SWANKY DANK)
<ボーナストラック>
- 命燃やして!(SODA!) - DJ BAKU REMIX
- MIXXCHA feat. Shing02 - DJ BAKU+NAVE REMIX
- SKANKRUSH feat. 夙川boys - DJ BAKU+NAVE REMIX
DJ BAKU(ディージェーバク)
1978年生まれのDJ / トラックメーカー / ターンテーブリスト。16歳でDJを始め、1990年代後半にYOSHI(現・般若)やRUMIとともにヒップホップグループ・般若として活動する。1999年から自身のレーベル・DIS-DEFENSE DISCよりミックステープを販売し、2000年には3組のアーティストとのコラボ音源を収録した「DJ BAKU 対 GOTH-TRAD,SAIDRUM,Bleeder」をリリースした。2003年にMSCのTAVを迎えた「VANDALISM」、2004年にMSCの漢とPRIMAL、RUMIを迎えた12inchアナログ「KANNIBALISM / 畜殺」を発表してそれぞれ話題に。2006年には初のオリジナルアルバム「SPINHEDDZ」をリリースした。また2005年にドキュメンタリーDVD「KAIKOO / 邂逅」を監修し、当時のストリートカルチャーを映像化。同年より自身が発起人となった音楽イベント「KAIKOO POPWAVE FESTIVAL」がスタートし、2010年に晴海埠頭で行われた「KAIKOO POPWAVE FESTIVAL '10」は1万人以上の集客を記録する大イベントとなった。2008年にアルバム「DHARMA DANCE」を発表して以降、ロック的なサウンドへのアプローチが顕著になり、自身も6人組バンド・DJ BAKU HYBRID DHARMA BANDや、KYONO(WAGDUG FUTURISTIC UNITY、ex. THE MAD CAPSULE MARKETS)とのユニット・!!!KYONO+DJBAKU!!!を結成。ヒップホップを基盤にしてさまざまなジャンルとの融合を試み、新しいダンスミュージックを提案し続けている。2015年11月には自主レーベル・KAIKOOを設立し、ニューアルバム「NΣO TOKYO RΛVΣ STYLΣ」をリリースする。
Crystal Lake(クリスタルレイク)
2002年に結成されたバンド。幾度かのメンバーの脱加入を経て現在はShinya(G)、Ryo(Vo)、Yudai(G)、Teru(B)、Gaku(Dr)の5人で活動している。2006年に1stアルバム「DIMENSION」、2010年に2ndアルバム「INTO THE GREAT BEYOND」をリリース。2014年8月にリリースした7曲入りCD「Cubes」ではCrossfaithのKenta Koie(Vo)やNUMBのSENTA(Vo)とコラボし話題を集めた。同年12月、タワーレコード限定発売のスプリットアルバム「REDLINE RIOT!!」に参加。2015年10月には3rdアルバム「THE SIGN」を全国47カ国でリリースした。ハードコアやメタルコアの要素を軸にした重厚なサウンドと、迫力あるライブパフォーマンスを武器に、国内外で人気を博している。
SWANKY DANK(スワンキーダンク)
2007年にYUICHI(Vo, G)とKOJI(Vo, B)の兄弟を中心に結成したロックバンド。2009年3月に1stフルアルバム「SWANKY DANK」をリリースし、同年7月に発売したシングル「FOR YOU」が映画「MW」の挿入歌となる。その後2012年8月にSHUNが正式ドラマーとして加入しさらに精力的な活動を行う。2013年11月に、AIR SWELL、BLUE ENCONT、MY FIRST STORYと共にスプリットアルバム「BONEDS」をリリース。4バンドで回った全国ツアーを大成功に収める。2014年2月にKO-TA(G)が正式加入し、同年6月にミニアルバム「Circles」を発表した。2015年にはアルバム「Magna Carta」、シングル「One of a Kind」をリリースしたほか、韓国や台湾でのライブイベントに出演するなど活動の幅を広げている。