Dizzy Sunfist×「マイホームヒーロー」監督・亀井隆インタビュー|家族愛を描くアニメに寄り添うED曲 (2/2)

日本語詞に挑戦できたことが楽しかった

──ちなみに、書き下ろした曲は「Decided」1曲ですか? それとも候補がいくつかあったのか。

moAi この1曲だけですね。イメージしたものをそのまま「こうだ!」と出した感じで。

──それって珍しいパターンみたいです。たいてい2、3曲を用意して、選んでもらうのが当たり前だとか。

亀井 何も文句がなかったんですよね、最初に音源をもらったとき。一発でこの曲を出してくれたこともそうだけど、歌詞の内容に関しても、メロディに関しても、すぐにエンディングの映像がイメージできたので。神山くんはどうなの?

神山 そうですね。もう、エンディングはこの曲しかないと思いました。歌詞の内容が本当に「マイホームヒーロー」の物語を表しているようで。

あやぺたメイ子 ありがとうございまーす!

メイ子(B, Cho)(Photo by NAOTO IWABUCHI)

メイ子(B, Cho)(Photo by NAOTO IWABUCHI)

──主人公は47歳のおじさんですけど、あやぺたさん、親としての気持ちは一緒だと思います?

あやぺた 一緒やと思ってます。負けないっすよ。何にも替えられない、本当に大切なものを守る気持ちは。もちろん「Decided」は「マイホームヒーロー」のエンディングテーマとして書き下ろした曲ですけど、歌詞では自分の娘への思いも落とし込めた気もしてるんで、自分の気持ちと作品の内容をリンクさせることができたのはラッキーでしたね。

──特に自分の思いを込めた言葉はありますか?

あやぺた やっぱり最初の「誰よりも強くなると決めた」というところ。私も子供が生まれたときに、強く生きないとあかんなと思ったし。自分の命より大切な娘ができたこと、自分のすべてを犠牲にしてでも守りたい人という思いを込めてます。

──まさに主人公の心境だった。

あやぺた まさに、ですね。

──あと、Dizzy Sunfistが英語詞で歌うバンドであることは、アニメ制作側にとって問題ではなかったですか。

亀井 そうですね。もともとDizzy Sunfistさんを紹介されたときから「英語詞で活動されているバンド」という説明を受けていて。制作サイドで「メンバー3人が『マイホームヒーロー』に寄り添って作ってくれるなら」という話になり、歌詞が英語であることは障壁にはならなかったです。

──ただ、エンディングテーマは6月11日の放送回から「Decided」の日本語バージョンに切り替わるそうですね。

あやぺた 普通に曲を作っていたら、日本語バージョンも英語バージョンもできちゃったんです。どっちもスラスラ書けて、自分でもどちらのバージョンがいいのか選べなくなっちゃって。それで「日本語詞のほうが曲に込めたメッセージ性が視聴者に伝わるんじゃないか」とアニメの制作サイドの方に相談したうえでどっちも提出して、選んでもらおうと思ったんです。

亀井 音源をいただいて、プロデューサーやスタッフも交えて話をする中で、普段英語詞でやっているバンドなら、両方のバージョンを使うこともいいのではないかという結論になって。その時点で使い方は見えてなかったんですけど、「エンディングで両方使う」という話は、かなり早い段階からしていましたね。2つのバージョンを使えるのを楽しみにしてました。曲は同じなんだけど、途中で歌詞が英語から日本語に変わるって、ちょっと面白いかなと思って。

──Dizzy Sunfistはずっと英語で歌ってきましたし、そこにこだわりもあるんだろうと勝手に思っていたんですが。実際はどうですか?

あやぺた いや……こだわりというよりも、単純に今まで日本語詞をうまく書けなかったんですよ。でも今回「もしかしたら日本語のほうが合うんじゃね?」という感じでトライしてみて。

──難しくなかったですか?

あやぺた めっちゃ難しかった! 日本語だと聴いてくれる人に思いがよりダイレクトに伝わる感じがするから。あと日本語詞でも歌いやすいように韻を踏みたいという気持ちもあって、そういう部分を踏まえて考えていくと「日本語、むっずー!」となりました(笑)。でも挑戦できたことが楽しかったし、自分の視野も広がった感じがしてます。

moAi 日本語詞に抵抗があるわけではないし、過去にも英詞の曲を日本語詞にしてみようとトライしたことがあるんですよ。そのときにできた歌詞のクオリティも悪くはなくて。ただ、当時は無理して作ってる感じが若干あったのかな。「発表するのは今じゃないな」とずっと考えてたんです。でも今回はスラスラっとできて。ちょうどいいタイミング、きっかけになったのがこの「Decided」だと思います。

moAi(Dr, Cho)(Photo by NAOTO IWABUCHI)

moAi(Dr, Cho)(Photo by NAOTO IWABUCHI)

お互いの歩み寄りが大切

──ミニアルバム「PUNK ROCK PRINCESS」には、初めて日本語詞に挑んだ「そばにいてよ」が収録されています。これは「Decided」がきっかけとなって生まれた曲ですか?

あやぺた はい。先に「Decided」ができて、そのあとに「そばにいてよ」ができました。

──これをきっかけに、日本語詞の曲が増えていく可能性も?

あやぺた 大いにあります。「マイホームヒーロー」には、自分たちの可能性を広げてもらってありがとうございますって感じです。

──アニメ主題歌を提供するということは、新しい扉を開くきっかけになると。監督の立場からすると、アニメが主題歌に求めるものってどういうものでしょうか?

亀井 うーん……こちらから条件を出すことはほぼないですけれど、ただ、特にエンディングってすごく大事なんですよ。もちろんオープニングも大事ですけどね。曲については、こちらから何かを要求するというよりは、お互いに歩み寄っていったほうが絶対いいものになると思うんですよね。今回で言うと、「Decided」の「ダーン!」と勢いのある歌い出しを聴いて、そこに寄せていった形です。歩み寄った結果、哲雄が涙するシーンで始まる引きの画が完成しました。

──互いに寄り添うことで、自然と流れができていく。

亀井 もちろんケースバイケースですけどね。今回のエンディングテーマはアニメの内容に添ってもらってますけど、それでも普遍的な話、家族のことや子供の話が歌詞になっているから。それを受けてあのエンディングの内容になったところもありますね。

──そのほか「マイホームヒーロー」のアニメ化にあたり、心がけていたことはありますか。

亀井 冒頭でもDizzy Sunfistの皆さんがおっしゃってましたが、ストーリーの流れは怖いじゃないですか。

moAi はい(笑)。

亀井 アニメ化にあたって「怖くしよう」と思ってたんですけど……自分でも思ってたより怖くなっちゃって。

moAiメイ子 ふふふふふふふ。

亀井 アニメって残酷な表現に関していろいろな制約があるので、なるべく隠す方向でやっていったら逆に怖くなっちゃいました。あと原作マンガで印象的だったのが、鳥栖家のお母さん。すごく魅力的な人物だし、男性にはちょっとわからないというか、男性とは明らかに違う、子供に対しての肚の据わり方がある。そこはうまく描けるようにしましたね。

──母親が強いというのは、あやぺたさん、共感できます?

あやぺた ……ここで「わかります」って言ったら……ちょっとマズいですかね?

亀井 ふふふふ。

あやぺた でも女のほうが強いって思ってます! すみません!

──(笑)。このアニメ、今後はどうなっていくんでしょう。監督から何かヒントはありますか?

亀井 いや……楽しんでくださいとしか言いようがないです(笑)。でも普通の物語と違って「果たして主人公に感情移入していいのか?」と思ってもらえればいいなと。善悪を断定する作品にはしたくないと思ってましたから。そのあたりを考えつつ、引き続き楽しんで観ていただけたらと思います。

──期待しています。エンディングテーマが日本語詞に切り替わる頃には、もう話は結末に近付いてるんですか?

亀井 もうラストです。ラスト2回。原作マンガで言うと第1部が終わるところですね。その区切りとして、主人公が物語の発端となった出来事とどう決着をつけるのかというところが描かれます。そのラスト2話のエンディングテーマを日本語詞バージョンに変えたらより視聴者の気持ちが盛り上がるんじゃないかと思ったんですよね。

──Dizzy Sunfistの曲がここまで効果的に響くのも意外でした。Dizzy Sunfistはこういうタイアップの曲作り、今後もやっていきたいですか?

あやぺた はい。今回も日本語詞を書くという新しい扉を開くことができたし。自分の曲ではあるけど、「マイホームヒーロー」という作品に思いを重ねて歌詞が書けたことは大きな経験になりました。

moAi アニメでもマンガでも、何かをテーマにして楽曲を作ることって今まであんまりなかったので。これをきっかけに今後も新しいことにどんどんチャレンジできたらと思います。

亀井 うん。どんどん、こういうタイアップの曲もやっていくといいと思いますよ。僕も楽しみにしています。

テレビアニメ「マイホームヒーロー」エンディング映像より。©山川直輝・朝基まさし・講談社/「マイホームヒーロー」製作委員会

テレビアニメ「マイホームヒーロー」エンディング映像より。©山川直輝・朝基まさし・講談社/「マイホームヒーロー」製作委員会

ツアー情報

Dizzy Sunfist "PUNK ROCK PRINCESS" TOUR 2023-24(※全公演ゲストあり)

  • 2023年6月18日(日)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
    <出演者>
    Dizzy Sunfist
    ゲスト:STOMPIN' BIRD / locofrank
  • 2023年6月21日(水)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
    <出演者>
    Dizzy Sunfist
    ゲスト:ENTH / Suspended 4th
  • 2023年6月23日(金)大阪府 BIGCAT
    <出演者>
    Dizzy Sunfist
    ゲスト:GOOD4NOTHING / ヤバイTシャツ屋さん
  • 2023年7月13日(木)千葉県 千葉LOOK
  • 2023年7月17日(月・祝)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
  • 2023年7月18日(火)石川県 vanvanV4
  • 2023年8月5日(土)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2023年8月24日(木)宮城県 仙台MACANA
  • 2023年8月25日(金)秋田県 Club SWINDLE
  • 2023年9月22日(金)北海道 BESSIE HALL
  • 2023年9月27日(水)富山県 Soul Power
  • 2023年9月28日(木)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
  • 2023年10月11日(水)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
  • 2023年10月13日(金)香川県 DIME
  • 2023年10月14日(土)島根県 WStudioRED
  • 2023年11月7日(火)広島県 ALMIGHTY
  • 2023年11月18日(土)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA
  • 2023年12月10日(日)京都府 KYOTO MUSE
  • 2023年12月19日(火)鹿児島 SR HALL
  • 2023年12月20日(水)熊本県 Majolica Django
  • 2023年12月22日(金)福岡県 BEAT STATION
  • and more

プロフィール

Dizzy Sunfist(ディジーサンフィスト)

2009年に大阪で結成されたロックバンド。メンバーチェンジを経て、2022年4月よりあやぺた(Vo, G)、moAi(Dr, Cho)、メイ子(B, Cho)の3人で活動している。2013年にCAFFEINE BOMB RECORDSより1stミニアルバム「FIST BUMP」を発表。2014年に「京都大作戦2014 ~束になってかかってきな祭!~」に出演し、飛躍的に知名度を上げた。2019年にあやぺたが入籍と妊娠を発表。2020年7月にバンドの"第2章"の開幕を告げる作品として1st EP「EPISODE II」、2021年10月に3rdフルアルバム「DIZZYLAND -To Infinity & Beyond-」をリリースした。2022年4月には、2021年10月よりサポートメンバーを務めていたメイ子が正式加入した。2023年5月にミニアルバム「PUNK ROCK PRINCESS」をリリース。同年6月からはツアー「Dizzy Sunfist "PUNK ROCK PRINCESS" TOUR 2023-24」を行う。

亀井隆(カメイタカシ)

土田プロダクション、防災設備会社での勤務を経て、現在はダイゾウプロ、ポリゴンピクチュアズで主にCG制作を行っている。主な監督作は2020年7月にNetflixで配信されたアニメ「トランスフォーマー:ウォー・フォー・サイバトロン・トリロジー」、現在TOKYO MXほかで放送中のテレビアニメ「マイホームヒーロー」など。