ソニーミュージックが今年9月に新たなライブ配信コンテンツ「Dive/Connect @ Zepp Online」をスタートさせた。ライブハウス・Zeppで録り下ろしたアーティストのライブ映像と、生配信トークなどで構成される映像企画で、これまでにASIAN KUNG-FU GENERATION、加藤ミリヤ、さユり、BURNOUT SYNDROMES、緑黄色社会、ReoNa、Rude-αといったアーティストが出演している。
この特集では、10月27日(火)に配信されるKANA-BOONの回をピックアップ。すでにライブ収録を終えたKANA-BOONの谷口鮪(Vo, G)と、コンテンツ内に登場するスピーカー型コネクトナビゲーター・ダイスケの声を務める遠山大輔(グランジ)の対談をセッティングし、ライブ収録を終えての心境や、オンラインライブの展望などについて語ってもらった。
取材・文 / 石井佑来 撮影 / 後藤壮太郎
※取材は9月下旬に実施。
反骨精神がよみがえりました
──10月27日の配信に向けて、すでにライブの収録は終えられたとのことですが、感触はいかがでしたか?
谷口鮪(KANA-BOON) 収録のときはまだ配信ライブをあまり経験していないタイミングだったので、緊張感がありましたね。メンバーとステージに立って音を鳴らせるという喜びと緊張が入り混じった感覚でした。
遠山大輔(グランジ) 生配信と収録で感覚は違うものなの?
谷口 テレビ収録みたいな緊張感があって難しいんですよ。自分としては、ライブ収録の「人に届くまでのタイムラグがある」というところに意味を見出したくて、“収録ならこういうやり方をする”という僕なりの答えは出せましたね。初々しさもありつつ、でもその場でしか思い浮かばない言葉もちゃんと届けられたので、納得したパフォーマンスになりました。
遠山 お客さんが目の前にいないことに対するやりづらさは?
谷口 若い頃の反骨精神がよみがえりましたね。フロアにお客さんが全然いなくて、後ろのほうで関係者が腕を組んで観ているみたいな(笑)。でも普段、もっと近くで観たいけどモッシュの中に突入するのは勇気が出ないという人にはすごくいい機会ですよね。「こんな顔してるんだ」とか「こんな弾き方してるんだ」とかいろんな発見があると思います。
自分たちと向き合える時間
──配信当日、アーティストは収録したライブを視聴者と同じタイミングで視聴して、その後、生配信トークを行います。
谷口 自分たちのパフォーマンスの受け手になることはなかなかないので、楽しみですね。ただ、めちゃくちゃ恥ずかしいです。たぶんライブを観ながら笑っちゃうと思います。
遠山 リアルタイムでコメントも来るからね。例えば加藤ミリヤさんのときは「Sakura Melody」という曲のときに、サビで一斉に桜の絵文字がコメント欄に並んで、観ていてウルっと来たもん。絵文字でのコメントもオンラインならではのことだよね。
谷口 僕らだと、チャーハンになっちゃいますね……。
遠山 「ないものねだり」のことか(笑)。コメント欄を見てると、みんなでワーっと盛り上がるときもあれば、投稿がピタっと止まるときもあるんですよ。そういうときはたぶんみんな聴き入ってるんじゃないかな。そういう反応を見れるのも、すごく楽しいと思うよ。
谷口 それは楽しみですね。僕らとしては、ライブをしたのに今はまだ反応が何もない状態なので、ずっと待たされてるみたいな感じなんですよ。あの日MCで言ったことが配信を観ている自分にどう届くのかとか、未来の自分がそのライブを観て「正しいこと言えてるな」と思えるかとかを考えながらやっていたので、いざ自分でライブを観てどう思うかも楽しみです。
遠山 収録ライブというのを意識して選曲したの?
谷口 はい。今回はひさしぶりに演奏する曲もセットリストに入れたんですよ。なのでその反応も楽しみです。ちゃんと「レア曲来た!」という反応をしてくれるのか(笑)。
遠山 その反響次第で、今後のライブのセットリストも変わってくるかもしれないもんね(笑)。「意外とこの曲人気なんだ」みたいな。
トークパート作戦会議
──トークパートには、遠山さんがコネクトナビゲーターの“ダイスケ”として声で参加します。KANA-BOONとどういったトークを繰り広げる予定ですか?
遠山 ……ののしり合い?(笑)
谷口 ののしり合いしますか……いや、普段そんなことしてないでしょ(笑)。僕らとしてはライブの振り返りをしつつ、お互いのプレイにツッコミ合いたいなと思っています。
遠山 アジカンの回では、喜多さん(喜多建介 / G)がギターソロのときにドヤ顔みたいなのをしていて、それを観ながら山ちゃん(山田貴洋 / B)と笑ってました。
谷口 僕もアジカンの配信は観たんですけど、終始和やかでしたよね。
遠山 和やかだったね。でもKANA-BOONも振り返るポイントはいっぱいありそう。僕は先にライブを観たんだけど、印象に残ったシーンがあったんですよ。とある曲が始まった瞬間に古賀くん(古賀隼斗 / G)が一気にステージの前のほうに行ったじゃない? お客さんがいないのに。それがすごくカッコいいなと思って。
谷口 あれはね、癖になってるんですよ。
遠山 はははは(笑)。
谷口 ベルが鳴ったらエサがもらえるみたいな感じで(笑)。もうそれが体に染み付いてるので、誰かがいようがいまいが前に行っちゃうんです。あの日古賀は「お客さんが見える」って言っていて、それは大丈夫なのか?と思いましたけど。
遠山 それはいいじゃない(笑)。見えるんだよ、きっと。
谷口 でも確かにメンバーの中で一番ライブに対する思いが強いやつですね。僕はボーカルという立場上、お客さんと言葉でコミュニケーションを取りやすいけど、古賀はなかなかしゃべる機会もないので、その分演奏とかステージ上のパフォーマンスでお客さんとつながろうとしてるんだと思います。だからそのとき実は僕も「お客さんがいるわけじゃないのに前に行ってる。いいやん」と思って見ていました。
──トークパートにはスーパーサポーターも登場します。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの回ではかが屋の賀屋壮也さん、加藤ミリヤさんの回では川口春奈さん、さユりさんの回ではBiSHのセントチヒロ・チッチさんがスーパーサポーターを務めましたが、今回のスーパーサポーターはKANA-BOONのミュージックビデオにも出演している岸井ゆきのさんです。
谷口 岸井さんはツアーに何度か来てくださったこともあるので、また違った形で僕らのライブを観てもらえるのはうれしいですね。
遠山 スーパーサポーターの中には涙される方もいらっしゃいますからね。川口春奈ちゃんもセントチヒロ・チッチちゃんもライブを観ながら感動して涙流しちゃってて。
谷口 そうなんですか。岸井さんに泣いてもらえるようにお願いしておこうかな……(笑)。
遠山 目薬とか用意して。
谷口 ははは(笑)。僕らのライブで泣いてくれるかはわからないですけど、どんな感想を話してくれるのか楽しみですね。個人的には僕らを好きになったきっかけとか聞きたいですけど、もし好きじゃなかったらどうしよう。僕らが泣くかも(笑)。
遠山 そうなったらスピーカーのダイスケは煙が出て何もしゃべらなくなるよ。
谷口 なんで逃げるんですか! 助けてくださいよ。
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いろんなところに連れていってもらってる感覚