月刊誌「ディズニーファン」上での投票企画によって選曲されたベストアルバム「ディズニーファン読者が選んだ ディズニー ベスト・オブ・ベスト~創刊30周年記念盤」が7月29日にリリースされた。
映画やミュージカル、テーマパークなどでかかるすべてのディズニー関連楽曲を対象に行われた投票の結果、本作には「映画」「テーマパーク」「ライブエンタテインメント」「あらゆる音楽」の4部門に分けて集計し、上位を獲得した計20曲が収録されている。音楽ナタリーではアルバムの発売を記念して、ディズニー音楽好きを公言しており、ライブで一緒にディズニーの音楽を演奏した経験を持つバイオリニストのNAOTO、ホリエアツシ(ストレイテナー)、majikoの3人にインタビュー。それぞれ思い入れのあるディズニー作品に関するトークなどを交えながら、世代を越えて人々の記憶に残り続けているディズニー音楽の魅力について語り合ってもらった。
取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 後藤壮太郎
譜面に書かれている通りで名曲に
──今日お集まりいただいた皆さんはNAOTOさんがプロデュースするライブイベント「ROCKIN' QUARTET vol.3」(参照:ホリエアツシ、ストレイテナーの楽曲をNAOTOの弦楽四重奏で歌う)で共演し、ディズニーの曲「美女と野獣」を披露しました。この曲を選んだ背景はなんだったんでしょうか?
ホリエアツシ ストレイテナーの曲ではこれまで生のストリングスを入れたことがなかったんです。せっかくNAOTOさんと一緒にやれるなら普段やったことのない曲を歌いたかったし、お客さんが観に来て「え、この曲やるの!?」みたいな意外性も欲しくて。それで提案したのが「美女と野獣」なんです。この曲はデュエットだから誰か歌えそうな女性ボーカルに……と思ってmajikoに声をかけました。
majiko あまりにも意外な曲だったので驚きました(笑)。でもここは腕の見せ所だなと思ったので、すぐ返事をして一生懸命練習しました。
ホリエ 僕が歌いたかったのはアニメーション作品のほうではなくて、実写映画(2017年公開)の主題歌でアリアナ・グランデとジョン・レジェンドが歌っているものだったんですよね。majikoにはその音源を聴き込んでもらいました。NAOTOさんに関しては、どんな曲を提案しても大丈夫だろうと(笑)。
NAOTO バイオリニストとして活動していると「ディズニーの曲を弾いてください」みたいに言われることがよくあるんですよ。だからディズニーの曲は僕の中にもう染み込んでいるようなもので。ディズニーの曲はどれも名曲だから「美女と野獣」をリクエストされて、シンプルに楽しみでした。
majiko 「ディズニーの曲はどれも名曲」というの、すごくわかります。
NAOTO ディズニーの曲ってよくできすぎているんですよ。作曲者と編曲者がメチャクチャ優れてる。例えば「美女と野獣」も「ホール・ニュー・ワールド」も、譜面通りにちゃんと弾くだけでいいんです。フォルテとかピアニッシモとか、テンポの指示とか、そういう細かい指示も全部譜面に書かれていているから、それを再現するだけでみんなが感動する名曲が再現できるんです。だから全世界のどこで奏でられてもディズニーの音楽はクオリティが高い。だって譜面通りに書かれたことをちゃんと演奏できる人さえ集めればいいんだから。
majiko ボーカルでも同じことが言えて、ディズニーの曲はメロディの流れに無理がないんですよね。いきなり高くなったりしないし、流れが自然だから歌っていて気持ちよくて、聴いても気持ちがいい。
ホリエ 今回「美女と野獣」を歌ってみて気付いたんだけど、男女で違うメロディを歌っているのに両方とも主旋律のように聞こえるのが不思議で。ふとしたときに口ずさんでいるのは女性ボーカルのメロディなんですけど、いざ自分が男性ボーカルのパートを歌おうとすると自然とメロディが出てくる。どちらかが対旋律、みたいな感じじゃない。
majiko 確かにそうですね。どちらも主役みたいな感じ。
NAOTO おそらくミックスもすごいんじゃないかな。普通に聴かせたら女性ボーカルのほうがキーが高くて目立ってしまうところを、おそらくミックスの段階でかなり綿密に詰めていると思うんですよね。意識せずに聴いてどちらのメロディも主旋律と判断させるような、絶妙なバランスで組まれているんじゃないかな。
ディズニー音楽には隙がない
──皆さんは「ディズニーの音楽」というものに対してどういうイメージを持っていますか?
ホリエ 僕、けっこうディズニー映画を観ているんですけど、ディズニー映画のいいところと言えばまず音楽だと思うんです。作品によって、ストーリーやキャラクターに感情移入ができたり、できなかったりするんですが、結局いいシーンでいい音楽が鳴ると感動しちゃうんですよ。「音楽にもってかれたな」って思いますから(笑)。
majiko 私はディズニー音楽を聴くと泣いちゃうんですよ。小さい頃からディズニー作品を観て育ってきたのもあって、感動的なシーンにディズニーの音楽が流れると涙腺が緩む、みたいな感覚が刷り込まれているような気がするくらい。なんて美しい音楽なんだっていつも思っています。
ホリエ 素直に泣けるタイプの音楽が多いよね。
majiko そう。あざとくないんですよ。「泣いていいんだよ」と寄り添ってくるタイプの音楽。
NAOTO 作品ごとにカラーがあるのもすごい。王道的なオーケストレーションのアプローチだけじゃなくて、いろんなアプローチでちゃんといい音楽を作ってる。
ホリエ そうなんですよ。例えば「モアナと伝説の海」なら太平洋諸島の音楽文化が取り入れられていたり、舞台となった国や地域のエッセンスが入っているのが面白い。
NAOTO どのジャンルも隙がないんですよ。ミュージカルっぽい曲も、劇伴っぽい曲も、民族音楽も、クラシックも、すべてにおいてクオリティが高い。しかもそこにあぐらをかかないのがディズニーのすごいところで。最近で言うと打ち込み系のダンスビートの曲でクオリティの高いものを作っているし、これまで手を出していなかったジャンルにも手を出して、ちゃんといい音楽を作り上げている。現状に満足せず、常にアップデートされて新しい音楽を生み続けているわけですから、本当にディズニーってすさまじいなと思いました。
投票1位は……
──皆さんには発売に先駆けてアルバム「ディズニーファン読者が選んだ ディズニー ベスト・オブ・ベスト ~創刊30周年記念盤」を聴いていただきました。それぞれ思い入れの強い曲は……?
majiko 「コンパス・オブ・ユア・ハート」です!
NAOTO 食い気味に答えたね(笑)。
majiko 私、東京ディズニーシーが大好きで、遊びに行ったときは必ず最後にシンドバッドのアトラクション「シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ」に乗ることに決めているんです。アトラクションの演出も素晴らしいんですけど、なんと言っても音楽が最高で。今回アルバムの収録曲の中に「コンパス・オブ・ユア・ハート」が入っていて「やっぱりみんな好きなんだ!」って。
ホリエ しかもこの曲は「テーマパーク音楽部門」のファン投票で1位だったみたいだね。
majiko みんなわかってるなあ。
ホリエ 実は僕も「コンパス・オブ・ユア・ハート」が大好きなんですよ。なんならカラオケで歌うくらい(笑)。
NAOTO それはかなり好きだね。
ホリエ アトラクションの全編にわたって並んでるときにずーっとかかっているから覚えちゃうんですよ。僕のおすすめは夕暮れどきのシンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジですね。すごくいい雰囲気になる。
majiko 早く東京ディズニーシーに行って、またシンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジに乗りたいなあ。
NAOTO 僕のお気に入りの1曲は「理想の相棒 -フレンド ライク ミー」ですね。昨年の10月に劇団四季さんの「アラジン」を観に行ったときにすごく感動して。劇団なのでジーニー役の方が何人かいると思うんですけど、僕が観に行った日に歌っていた方のボーカルでアルバムに収録されているんですよ。聴いたときに「わ、あのときの歌だ!」と思って。
majiko 「アラジン」は私も大好きな作品です。
NAOTO 「アラジン」はアニメーションも観たんですけど、やっぱり生身の人間がそのまま演じている劇団四季さんのほうにすごく感動しちゃったんだよね。この曲を聴くと、観に行ったときの感動がよみがえってくる。
ホリエ 僕も思い出とリンクした曲が1つあって。それが「ファンタズミック!」なんです。熊本へ仕事で行った際に地元の高校のブラスバンドが「ファンタズミック!」を演奏していて、それが本当に素晴らしくて。さっきのNAOTOさんの話を聞いたら納得しました。そりゃ素晴らしいよなって(笑)。
NAOTO でもそれはちゃんと譜面通り吹けてることが前提だから、その高校生たちもきっと実力があったんだと思うよ。
ホリエ あとで調べたら由緒ある高校のブラスバンド部だったので、確かだと思います。その経験があってから「ファンタズミック!」という曲への思い入れが強くなっちゃって。「ファンタズミック!」のショーはもう終わってしまったみたいなので、すごく名残惜しいですね。
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「アナ雪2」劇中歌をストレイテナーで