音楽ナタリー Power Push - 映画「インサイド・ヘッド」中村正人(DREAMS COME TRUE)インタビュー

異例の主題歌「愛しのライリー」ができるまで

頭の中にいる感情たちがライリーに向けて歌っている

──その結果生まれたのが、主人公の名前を冠した「愛しのライリー」ですよね。ドリカムはこれまでもいわゆるタイアップ曲をたくさん作っていますが、ここまで作品の中身に寄り添ったものはなかったのでは?

そうですね。ピクサーの方には「親が子供の幸せを願って歌ってるみたい」って表現していただいたんですけど。

──歌詞は「さぁここへ来て 話し聞かせて」「今日はどんな日だった?」といった具合に、ライリーへの呼びかけの形で書かれています。

「インサイド・ヘッド」より。©2015 DISNEY / PIXAR. All rights reserved.

ここでライリーを見守っているのは、ライリーの中にいる“感情”なんです。感情たちがライリーに向けて歌ってる歌なんですね。

──そしてサビでは「ライリーライリー こっち向いて ライリーライリー 涙拭いたら顔上げて」と歌っています。主人公の名前をサビで繰り返す、昔のアニメソングのような手法に驚きました。

「ねえムーミンこっちむいて」とかと、ほとんど一緒です(笑)。日本ではヒット曲と映画をくっつけて、全然関係ない歌が主題歌になるじゃないですか。それを悪いとは言わないけど、この映画でドリカムはそうじゃないものを作りたかった。

──それで作品の世界をこれほどストレートに伝える楽曲ができたんですね。

映画を観るとわかるけど、ライリーってものすごく魅力的な女の子なんですよ。だから僕らが音楽を通してライリーの存在を伝えたかった。そうすることで、僕が最初に言った「すごすぎて、一見難解そうに思われる」っていうのではなく、「ライリーの素敵な物語だよ」っていう一番シンプルなところを伝えたくて。

──でもここまで作品に寄せてしまうとドリカムの曲としてどうなんだろう、といった葛藤はありませんでしたか?

それはどうでもいいんです(笑)。わかりやすくコマーシャルな曲に徹して、この映画の一部になりたかったので。

80'sサウンドの秘密

──それにしてもこの曲は、歌詞もメロディも一度聴いたら忘れられない強さがありますね。

「インサイド・ヘッド」より。©2015 DISNEY / PIXAR. All rights reserved.

うん、AメロもBメロもCメロも耳に残るでしょ? 作曲家としては本当にいい曲が書けたと思う。

──サウンドアレンジで心がけたことはありますか?

サウンドは80年代を意識しました。「フラッシュダンス」とか「ゴーストバスターズ」とかあの頃。音楽と映画が合体してるミュージックビデオ全盛の時代ですね。

──エレクトリックドラムとシンセベースの音色が印象的でした。

そうそう、「フットルース」とかあのへんの感じを出したくて。ちょっとレトロというか、音色はわざとその年代のものを使って。シンセドラムもリンドラム(1980年代に人気を博したドラムマシン)みたいな懐かしい音を使ってみたんです。

──楽しんで制作されたみたいですね。

まあ難しかったですけどね。だから最後は愛情一発で(笑)。

──ドリカムのファンにも新鮮に響くんじゃないでしょうか。

うーん、でもこれはドリカムのファンのための曲ではないんですよ。申し訳ないけどドリカムのファン向けにはまったく書いてない(笑)。

──あくまで映画のために作った曲であると。

はい、ファンを軽視してるとかじゃないですよ。ただ、円で言うとたぶん「インサイド・ヘッド」の円のほうがドリカムのファンの円より大きくなると思うので。できればドリカムのファンの方には、映画音楽として受け止めてもらって、好きになってもらえたらいいなと思っています。

「インサイド・ヘッド」より。©2015 DISNEY / PIXAR. All rights reserved.
映画「インサイド・ヘッド」 / 2015年7月18日公開
インサイド・ヘッド|映画|ディズニー|Disney.jp
ストーリー

「カナシミは、なぜ必要なの?」11才の少女ライリーの幸せを守る、頭の中の“5つの感情たち”──ヨロコビ、イカリ、ムカムカ、ビビリ、そしてカナシミ。突然の引っ越しでライリーの心は不安定になり、頭の中のヨロコビとカナシミが行方不明になってしまう。心を閉ざしたライリーを、感情たちは救えるのか? そして、カナシミに隠された、驚くべき“秘密”とは……? この夏、無限に広がる頭の中を舞台に、感動の冒険ファンタジーが誕生。これは、あなたの物語です。

スタッフ

監督:ピート・ドクター
共同監督:ロニー・デル・カルメン
製作:ジョナス・リヴェラ
日本版主題歌:DREAMS COME TRUE「愛しのライリー」

映画「インサイド・ヘッド」日本版主題歌 DREAMS COME TRUE「愛しのライリー」 / 2015年5月27日配信開始 / Walt Disney Records
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レコチョク
mu-mo
ニューアルバム「作品名」
V.A.「インサイド・ヘッド オリジナル・サウンドトラック」2015年7月15日発売 / Walt Disney Records / 2700円 / AVCW-63091
V.A.「インサイド・ヘッド オリジナル・サウンドトラック」
DREAMS COME TRUE(ドリームズカムトゥルー)

DREAMS COME TRUE

吉田美和(Vo)と中村正人(B, Arrangement, Programming)による2人組バンド。1989年にメジャーデビューし、1992年発売の5thアルバム「The Swinging Star」は当時の日本記録となる300万枚以上のセールスを記録する。その後もシングル、アルバムともにミリオンヒットを連発し、ソウル / R&Bを基軸にしたサウンドが老若男女問わず幅広い層から支持されている。2014年にはデビュー25周年を迎え、同年8月に通算17枚目のオリジナルアルバム「ATTACK25」をリリース。なお1991年より4年に1回のペースで「史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND」と題したイベントを実施しており、2015年11月より7回目の開催を予定。また7月7日には“ファンが聴きたい曲”全50曲を収録したコンプリートベストアルバム「DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム」をリリースする。