音楽ナタリー Power Push - 映画「インサイド・ヘッド」中村正人(DREAMS COME TRUE)インタビュー

異例の主題歌「愛しのライリー」ができるまで

ピクサーの新作アニメ―ション映画「インサイド・ヘッド」が7月18日より公開される。この作品は、11歳の少女・ライリーの“5つの感情” (ヨロコビ、カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリ)が繰り広げる冒険ファンタジー。田舎町で育ったライリーの無限に広がる頭の中で、都会への引っ越しをきっかけにヨロコビとカナシミが大事件を巻き起こすというユニークな物語だ。

このディズニー / ピクサーの20周年記念作に、DREAMS COME TRUEが日本版主題歌「愛しのライリー」を書き下ろした。ドリカムの2人が映画にとことん惚れ込んで制作したという楽曲は、果たしてどのような内容になったのか。映画と楽曲の関係について、中村正人に話を聞いた。

取材・文 / 大山卓也

「インサイド・ヘッド」は全人類が観るべき映画

──まずは映画「インサイド・ヘッド」を観た感想から聞かせてください。

これは僕、公言してはばからないんですけども、全人類が観るべき映画ですね。

──大絶賛ですね!

人類が今まで悩んでいたこと、人間とは何かっていう哲学の答えがここにある。すごい映画ですよ。

──哲学と言われると堅苦しい印象もありますが……。

「インサイド・ヘッド」より。©2015 DISNEY / PIXAR. All rights reserved.

いや、それが哲学でありつつ、ちゃんとエンタテインメントになってるんです。エンタテインメントの中に答えを潜ませて、観た人にインスピレーションを与えるっていうのが映画の大きな仕事だと思うんですけど、「インサイド・ヘッド」はそれができてる。例えば作品を観た人が今までにない視点を見つけたり、悩んでいたことを解決するきっかけになったり。

──映画を通して発見がある?

そうです。それを言葉で説明しても伝わらないかもしれないけど、映画というものに折り込むことによって人々に答えを与えることができる。僕はそういうものが映画だと思っていて、「インサイド・ヘッド」はその最たるものです。ナタリーを読んでる、エンタテインメントに造詣が深い方にはぜひ観てもらいたいし、できれば2回観るとさらに楽しめると思う。

──1回観ただけではわからないですか?

いや、1回目はとにかく映画のすごさに驚いちゃって。俺と吉田(美和)がそうだったんですよ。1回目は「すごい映画だ!」「深すぎる!」って驚いて、2回目からはワハハって笑えるという。

──中村さんは「インサイド・ヘッド」のどういう点に驚いたんでしょうか?

やっぱり取り上げてる題材のユニークさ。そしてピート・ドクター監督が考えた感情の分け方に驚愕しましたね。これは宗教とか国を超えた分け方だと思って。

「インサイド・ヘッド」より。©2015 DISNEY / PIXAR. All rights reserved.

──ヨロコビ、カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリという5つの感情を描いていますね。

そう、よく見るとね、ヨロコビ以外みんなネガティブな感情なんです。

──あ、言われてみれば確かに。

「あれっ?」って思うでしょ? でも実際我々の日々の生活ではヨロコビ以外の、陰と陽でいえば陰のほうの感情たちがどう機能してるかが重要で。人がサバイブするためにはビビリが大切だし、イカリは抑えなきゃって言われるけど、ときには怒らなきゃいけないときもある。そういう意味でこの5つの感情の分け方は深いし、的確だと思いますね。

コマーシャルソングが必要だと思った

──それほど作品を気に入ったのであれば、主題歌の制作はスムーズに進んだのでは?

いや、どういう曲にするかっていうことは、ディズニー側のスタッフとお互い腹を割ってとことん話し合いました。というのも僕は海外の映画に日本語の曲を付けることには根本的に反対で。それにこの映画を観たら「日本語の主題歌は必要ないな」と思ってしまって。

──ではなぜ曲を作ることにしたんですか?

「インサイド・ヘッド」より。©2015 DISNEY / PIXAR. All rights reserved.

主題歌という位置付けのものはいらないけど、逆にこの映画を知ってもらうためのコマーシャル的な曲が絶対必要だって思ったんです。その曲を聴いて「映画を観てみようかな」って思ってもらうための入り口としての楽曲。だから曲自体はヒットしなくてもいいから、わかりやすく直撃するコマーシャルソング的なものを書かせてくださいってお願いしたんです。

──でも結果的に、楽曲は日本版の主題歌となりましたね。オリジナルの書き下ろし楽曲が主題歌となるのは初めてのことだと聞きました。

僕は、主題歌をやりたいというより、お役に立てればいいって思ってましたから。宣伝スタッフの一員になって、この作品が「楽しい映画なんだ」ってことを伝えたい。それだけを考えてました。

映画「インサイド・ヘッド」 / 2015年7月18日公開
インサイド・ヘッド|映画|ディズニー|Disney.jp
ストーリー

「カナシミは、なぜ必要なの?」11才の少女ライリーの幸せを守る、頭の中の“5つの感情たち”──ヨロコビ、イカリ、ムカムカ、ビビリ、そしてカナシミ。突然の引っ越しでライリーの心は不安定になり、頭の中のヨロコビとカナシミが行方不明になってしまう。心を閉ざしたライリーを、感情たちは救えるのか? そして、カナシミに隠された、驚くべき“秘密”とは……? この夏、無限に広がる頭の中を舞台に、感動の冒険ファンタジーが誕生。これは、あなたの物語です。

スタッフ

監督:ピート・ドクター
共同監督:ロニー・デル・カルメン
製作:ジョナス・リヴェラ
日本版主題歌:DREAMS COME TRUE「愛しのライリー」

映画「インサイド・ヘッド」日本版主題歌 DREAMS COME TRUE「愛しのライリー」 / 2015年5月27日配信開始 / Walt Disney Records
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ニューアルバム「作品名」
V.A.「インサイド・ヘッド オリジナル・サウンドトラック」2015年7月15日発売 / Walt Disney Records / 2700円 / AVCW-63091
V.A.「インサイド・ヘッド オリジナル・サウンドトラック」
DREAMS COME TRUE(ドリームズカムトゥルー)

DREAMS COME TRUE

吉田美和(Vo)と中村正人(B, Arrangement, Programming)による2人組バンド。1989年にメジャーデビューし、1992年発売の5thアルバム「The Swinging Star」は当時の日本記録となる300万枚以上のセールスを記録する。その後もシングル、アルバムともにミリオンヒットを連発し、ソウル / R&Bを基軸にしたサウンドが老若男女問わず幅広い層から支持されている。2014年にはデビュー25周年を迎え、同年8月に通算17枚目のオリジナルアルバム「ATTACK25」をリリース。なお1991年より4年に1回のペースで「史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND」と題したイベントを実施しており、2015年11月より7回目の開催を予定。また7月7日には“ファンが聴きたい曲”全50曲を収録したコンプリートベストアルバム「DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム」をリリースする。