音楽ナタリー PowerPush - ディズニーカバーアルバム特集
中塚武が見つけた カラフルな箱庭アルバムの作り方
自分の名前でアルバムを出す意味
──今回ディズニーナンバーのカバーアルバムを作る上で中塚さんはどんなアレンジを心がけたんでしょうか?
「ピアノジャズ」っていう元々の企画テーマを芯にして作り始めました。当初はかなりピアノ寄りのアレンジになってたんですけど、それに対してだんだん僕がやる意味っていうのを考え始めて。
──「ピアノジャズ」って言葉だけで考えると、一般的に中塚さんに抱く作品イメージとは一味違う、しっとりとしてアダルトな雰囲気みたいなのを想像しちゃいますね。
なんかそういうイメージになるじゃないですか。でもそれはすでに星の数ほどあるディズニー曲のカバーの中ですでに誰かがやってるよなって思ったんです。
──確かに、「弾いてみた」みたいなのも含めると世の中にはすごい数のカバーが存在していますもんね。
はい。自分の名前でそういうものを作っても意味がないなと思い、ピアノを軸にはしつつも、自分独自のサウンドを出していきたいなって。確認したら「それは全然OKだよ」って話だったので、いろんな楽器で華やかにしていきました。だからアレンジについては、ジャズの語法で作りつつ自由に遊んでいくっていうのが今回の作り方なんですよね。
コンセプトは箱庭感
──そのアレンジによってすごくにぎやかなアルバムが誕生しました。アルバムコンセプトはどういったものに?
周囲が森で囲まれて、現世とは完全に別次元の世界に誘うディズニーランドのように、作品自体を1つの世界というかテーマパークにしたいって思いました。最初から最後まで同じ世界でずっと遊んでもらえるような感じにしたくて。
──箱庭のような世界観を持った作品にしたいと。
まさにそう、箱庭です。その枠組みの中で楽曲は1つひとつがディズニーランドの「トゥモローランド」とか「アドベンチャーランド」みたいに、場内エリアのイメージ。たとえばアルバム1曲目「小さな世界」のカバーは僕の中ではランドの入り口「ワールドバザール」のイメージ。入ってすぐ広がる、きらびやかに輝くにぎやかなアーケードの光景を想像しています。
──楽曲によってはすごく意外な方向性にアレンジされていたりします。例えば「チム・チム・チェリー」とか。
(笑)。ムチャクチャですよねアレ。すすだらけの、煙突が爆発したみたいなアレンジに。
──ほかにも「くまのプーさん」はライブのMCで「マッチョなプーさん」って説明していましたね(笑)(参照:中塚武、Apple Storeでディズニーの名曲カバー連発)。楽曲を壊さないまでも、チャレンジングなことをされてるなあと。
アルバム収録曲はよく知られた名曲ばかりなので、逆に聴いたことのない感じにしてみたいって思ったんですよ。想像がつくカバーだと面白くないし、ディズニー楽曲だけに地球のどこかで誰かがやってしまってる可能性が大いにある。だからどの曲も、「この曲をこういうアレンジにするのは今まで世界中で誰も思いついたことがないはずだ!」って感覚でワクワクしながら作りました。
──フルートやティンバレスなど、使用した楽器も多彩ですしね。
はい。でも根底にある「ピアノジャズ」の形を崩したくなかったんで、どの曲もたぶんピアノとドラムとベースである程度成り立って聞こえるはずなんです。まずトリオで音を成立させて、そのあとは曲そのものがアレンジを呼びこんでくるというか、曲自体がどういうサウンドを求めているか自然にわかってくるので、求められるがままにその音を与えていくっていう感じでしたね。
──ベーシックな部分にどんどん足していった形になるんですね。
はい。最終的にはピアノも弾き直してるんですよ。アレンジの方向がわかってきて、楽器が全部入った時点で最後に歌録りのような感じで再びピアノを弾く。だから今回はピアノのボーカルアルバムみたいなものになってます。
──そして中塚さんが考えるディズニーの「ピアノジャズ」が作られたと。ちなみにアルバムタイトルの「HAPPINESS」はどこから?
ディズニーの30周年のテーマが「ハピネス・イズ・ヒア」で、マスタリングも「ハピネススタジオ」でやっていて、さらに僕がQYPTHONE(キップソーン)でデビューしたレーベルが「ハピネスレコード」で、しかもそれらの関係者が全員お互い飲み友達なので、「これちょうどいいじゃん」ってことで決めました。
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- 中塚武 カバーアルバム「Disney piano jazz “HAPPINESS” Deluxe Edition」 / 2014年11月12日発売 / 2700円 / Walt Disney Records / AVCW-63044
- 中塚武 カバーアルバム「Disney piano jazz “HAPPINESS” Deluxe Edition」
収録曲
- 小さな世界(ニューヨーク・ワールドフェア)
- 愛を感じて(ライオン・キング)
- 美女と野獣(美女と野獣)
- メインストリート・エレクトリカル・パレード(ディズニーランド)
- パート・オブ・ユア・ワールド(リトル・マーメイド)
- ビビディ・バビディ・ブー(シンデレラ)
- いつか夢で(眠れる森の美女)
- レット・イット・ゴー(アナと雪の女王)
- ホエン・シー・ラヴド・ミー(トイ・ストーリー2)
- 君がいないと(モンスターズ・インク)
- ハイ・ホー(白雪姫)
- 星に願いを(ピノキオ)
- スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス(メリーポピンズ)
- アンダー・ザ・シー(リトル・マーメイド)
- 輝く未来(塔の上のラプンツェル)
- ホール・ニュー・ワールド(アラジン)
- チム・チム・チェリー(メリーポピンズ)
- ふしぎの国のアリス(ふしぎの国のアリス)
- お砂糖ひとさじで(メリーポピンズ)
- くまのプーさん(くまのプーさんとハチミツ)
- レット・イット・ゴー(イン・クリスタル・クリスマス)(アナと雪の女王)
- V.A.「Bossa Disney Best」 / 2014年11月12日発売 / 2700円 / Walt Disney Records / AVCW-63045
- V.A.「Bossa Disney Best」
収録曲
- レット・イット・ゴー(アナと雪の女王) / 小野リサ
- ホール・ニュー・ワールド(アラジン) / イヴァン・リンス
- ハイ・ホー(白雪姫) / ジョイス
- 美女と野獣(美女と野獣) / ミウシャ
- スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス(メリー・ポピンズ) / サニー・アルヴェス
- 輝く未来(塔の上のラプンツェル) / ガブリエラ・アンダース
- パート・オブ・ユア・ワールド(リトル・マーメイド) / クラウデッチ・ソアレス
- メインストリート・エレクトリカルパレード(ディズニーランド) / ジョタ・モラエス・グループ
- 君はともだち(トイ・ストーリー) / べナ・ロボ
- 想いを伝えて(魔法にかけられて) / ケイシー・コスタ
- いつか夢で(眠れる森の美女) / ワンダー・サー&ジョアン・ドナート
- アンダー・ザ・シー(リトル・マーメイド) / べナ・ロボ
- 星に願いを(ピノキオ) / ジョイス
中塚武(ナカツカタケシ)
1998年、自身が主宰するバンドQYPTHONE(キップソーン)でドイツのコンピレーションアルバム「SUSHI4004」に参加。国内外での活動を経て2004年にアルバム「JOY」でソロデビューを果たした。その後はCM音楽やテレビ&映画音楽、アーティストへの楽曲提供など活動の幅を広げ、2010年には自身のレーベル「Delicatessen Recordings」を設立。2011年にはレーベルオフィシャルサイト内にて新曲を定期的に無料配信する「TAKESHI LAB」をスタートさせた。2014年4月にはソロ活動10周年を記念したベストアルバム「Swinger Song Writer -10th Anniversary Best-」をリリース。2014年11月にディズニー楽曲のカバーアルバム「Disney piano jazz “HAPPINESS” Deluxe Edition」をリリースした。