音楽ナタリー PowerPush - ディズニーカバーアルバム特集
中塚武が見つけた カラフルな箱庭アルバムの作り方
中塚武がディズニーの名曲たちを演奏したピアノジャズカバーアルバム「Disney piano jazz “HAPPINESS” Deluxe Edition」と、小野リサら多数のアーティストが参加したディズニー楽曲のボサノバカバー集「BOSSA DISNEY BEST」がエイベックスから同時リリースされた。これら2作品では「星に願いを」から「レット・イット・ゴー」まで、幅広い年代のディズニーナンバーをそれぞれのアレンジで楽しむことができる。
両作品のリリースを記念して、今回は「Disney piano jazz “HAPPINESS” Deluxe Edition」を手がけた中塚武にインタビューを実施。熱烈なディズニーファンでもある彼に今作とディズニーの魅力を存分に語ってもらった。
取材・文 / 鵜飼亮次 撮影 / 北村勇祐
中塚武直伝、ディズニーの楽しみ方
──中塚さんが東京ディズニーシーの年間パスポートを持っていると知って驚きました。「そんなにディズニー好きだったんですか!」って。
そうなんです。でもきっかけはキャラクターが好きとかじゃなくて。僕はもともとナムコでアーケードゲームの企画を担当していたんですけど、その頃にテーマパークとしての市場調査目的で行ってたんです。ナムコ退社後にも勉強のためによく1人で行ってパーク内の動線を見たり、どうやってパーク内に海の水が引かれているかを調べたりと足しげく通っているときに「お酒も飲めるんだ? ここ」って気付いて(笑)。そして今はシーにふらっと飲みに行くっていう。
──ディズニーランドのほうでは飲めませんもんね。
そう。シーは海外にいるみたいな感じなんです、手軽に行けるベネチア(笑)。シーの奥のほうにある「ロストリバーデルタ」のほうに船着場があって、そこを眺望できるお店でビールを飲んだり、19:00くらいになればメディテレーニアンハーバーでいろいろイベントが行われるからそれを眺めたり。飲むところは場内に何軒かあるからハシゴもできるし、飲み足りなかったら京葉線で丸の内に出て飲むっていう。超オススメですよ。
──レアな楽しみ方ですね(笑)。
あとディズニーって会場の音響もすごいんです。ディズニーランドのパレードのとき、場内にたくさん配置されてるスピーカーから流れる音楽がフロート(山車)の動きに合わせてどんどんフェードして変わっていくんです。自分がどの場所にいても目の前のフロートの進行と音が同期して聞こえるんですよね。以前冨田勲さんが横浜の花火大会で、いたるところにスピーカーを置いて、場所によって違う音楽を鳴らしていたのと同じ、もしくはそれ以上の衝撃を受けましたね。
──いろんな面で中塚さんを刺激する要素が浦安にあるんですね。
人を楽しませるための仕組みがすごいんですよ。アトラクションなんかもそれがどういう背景で作られたのかを考えていくとすごく楽しめますし。
──場所、装置ときて、今やディズニー作品も好きに?
はい。映画はだいたい全部観ています。中でも僕は「くまのプーさん」が大好きなんですよ。今ディズニージュニアっていうCSチャンネルで「新くまのプーさん」っていう、パッケージではまだ全話リリースされていない作品をやってるんですよ。それをコンプリートするために僕はディズニージュニアのチャンネルに加入しましたし(笑)。
夏の「少しも寒くないわ」
──アルバムのお話が来た経緯も、やっぱり担当の方に“ディズニー愛”が伝わって?
そこは実はディズニーと関係なくて、エイベックス内のディズニーの部署にたまたまディレクターの友人がいて「いつか一緒にやりたいね」って話していたんです。ディズニーはおろか音楽の話もせずに、笑い話ばかりしてる普通の飲み友達で。そしたら昨年「ジャズでアルバムまるまるディズニーって作品、日本のアーティストはまだやったことないんだけど作ってみない?」って誘われて。
──“ジャズ系”アーティストとしての発注だったと。
はい。それで「やるやるー」って言って(笑)、昨年の年末ぐらいから制作を始めて。それで2月にいったん生協とmu-mo限定でリリースしたんです。ありがたいことにそれが好評で完売したということで、デラックス版として今回全国流通で出すことになりました。今回は新たに楽曲を追加しているんですけど、「アナと雪の女王」は今年の定番ということで収録しつつ、「他の楽曲は中塚さんが自由に選んでください」と言われたので、そこは僕の好きなプーさんを(笑)。
──(笑)。「レット・イット・ゴー」はアレンジ違いで2曲入ってますね。これはどういった狙いで?
“夏と冬”です。1曲はクリスマスバージョンにしましょうってことで冬っぽいものに仕立てて。じゃあもう1曲は季節を逆にしようと、夏でも聴ける「レリゴー」を作ったんです。
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- 中塚武 カバーアルバム「Disney piano jazz “HAPPINESS” Deluxe Edition」 / 2014年11月12日発売 / 2700円 / Walt Disney Records / AVCW-63044
- 中塚武 カバーアルバム「Disney piano jazz “HAPPINESS” Deluxe Edition」
収録曲
- 小さな世界(ニューヨーク・ワールドフェア)
- 愛を感じて(ライオン・キング)
- 美女と野獣(美女と野獣)
- メインストリート・エレクトリカル・パレード(ディズニーランド)
- パート・オブ・ユア・ワールド(リトル・マーメイド)
- ビビディ・バビディ・ブー(シンデレラ)
- いつか夢で(眠れる森の美女)
- レット・イット・ゴー(アナと雪の女王)
- ホエン・シー・ラヴド・ミー(トイ・ストーリー2)
- 君がいないと(モンスターズ・インク)
- ハイ・ホー(白雪姫)
- 星に願いを(ピノキオ)
- スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス(メリーポピンズ)
- アンダー・ザ・シー(リトル・マーメイド)
- 輝く未来(塔の上のラプンツェル)
- ホール・ニュー・ワールド(アラジン)
- チム・チム・チェリー(メリーポピンズ)
- ふしぎの国のアリス(ふしぎの国のアリス)
- お砂糖ひとさじで(メリーポピンズ)
- くまのプーさん(くまのプーさんとハチミツ)
- レット・イット・ゴー(イン・クリスタル・クリスマス)(アナと雪の女王)
- V.A.「Bossa Disney Best」 / 2014年11月12日発売 / 2700円 / Walt Disney Records / AVCW-63045
- V.A.「Bossa Disney Best」
収録曲
- レット・イット・ゴー(アナと雪の女王) / 小野リサ
- ホール・ニュー・ワールド(アラジン) / イヴァン・リンス
- ハイ・ホー(白雪姫) / ジョイス
- 美女と野獣(美女と野獣) / ミウシャ
- スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス(メリー・ポピンズ) / サニー・アルヴェス
- 輝く未来(塔の上のラプンツェル) / ガブリエラ・アンダース
- パート・オブ・ユア・ワールド(リトル・マーメイド) / クラウデッチ・ソアレス
- メインストリート・エレクトリカルパレード(ディズニーランド) / ジョタ・モラエス・グループ
- 君はともだち(トイ・ストーリー) / べナ・ロボ
- 想いを伝えて(魔法にかけられて) / ケイシー・コスタ
- いつか夢で(眠れる森の美女) / ワンダー・サー&ジョアン・ドナート
- アンダー・ザ・シー(リトル・マーメイド) / べナ・ロボ
- 星に願いを(ピノキオ) / ジョイス
中塚武(ナカツカタケシ)
1998年、自身が主宰するバンドQYPTHONE(キップソーン)でドイツのコンピレーションアルバム「SUSHI4004」に参加。国内外での活動を経て2004年にアルバム「JOY」でソロデビューを果たした。その後はCM音楽やテレビ&映画音楽、アーティストへの楽曲提供など活動の幅を広げ、2010年には自身のレーベル「Delicatessen Recordings」を設立。2011年にはレーベルオフィシャルサイト内にて新曲を定期的に無料配信する「TAKESHI LAB」をスタートさせた。2014年4月にはソロ活動10周年を記念したベストアルバム「Swinger Song Writer -10th Anniversary Best-」をリリース。2014年11月にディズニー楽曲のカバーアルバム「Disney piano jazz “HAPPINESS” Deluxe Edition」をリリースした。