DISH//×はっとり(マカロニえんぴつ)|笑い合ってたいのだ 僕らが今届けたい 共に闘い、歌う歌

YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」で披露した「猫」の再生回数が3600万回を突破、急遽配信リリースされた「猫 ~THE FIRST TAKE ver.~」もヒットを記録しているDISH//が、8月12日に新曲「僕らが強く。」を配信リリースした。

「僕らが強く。」をDISH//に提供したのは、マカロニえんぴつのボーカル&ギターを務めるはっとり。作詞作曲にあたり、はっとりはDISH//の4人が今抱えている等身大の思いを受け取り、楽曲に反映させたという。同じ時代を生きる人々への愛にあふれたメッセージソングである6/8拍子のロックバラード「僕らが強く。」は、どのようにして生まれたのか。音楽ナタリーではDISH//の4人とはっとりにインタビューを行い、5人が曲に込めた思いについて聞いた。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 斎藤大嗣

「猫」は面白いくらい、歌うたびに形を変えている

──まず、「猫」がヒットした感想から聞かせてください。もともと「猫」は、2017年8月にリリースされた10枚目のシングル「僕たちがやりました」のカップリング曲でした。

橘柊生(DJ, Key) そうなんですよね。今回の「猫」のヒットはいろんなタイミングが重なったのもあると思うんですけど、この曲がこうしてたくさんの人に知られるようになって、純粋に僕らだけじゃなく、ほかのバンドやアーティストさんの曲でも世間にまだ見つかってない名曲が山ほどあるんだよなということを感じたんです。まだ聴いてないだけで、埋もれている名曲たちはまだまだあるんだよなって。

矢部昌暉(Cho, G) スラッシャー(DISH//ファンの呼称)やDISH//を知ってくれている周りの方々の中では、「猫」はリリース時から人気のある楽曲だったんです。僕たちも大切に歌ってきた曲なので、たくさんの方に知ってもらえてうれしいです。

泉大智(Dr) 何事にも言えることだと思うんですけど、“続ける”っていうことの大事さを実感しました。ずっと「猫」を歌い続けていなかったらこうやって知ってもらえることもなかったし。歌い続けることは、今後も大事になってくるだろうなと思ってます。

北村匠海(Vo, G) 「猫」は自分が19歳の頃の曲なんですが、当時はこんなにたくさんの人に届くなんて想像していなかったです。ヒットと言われても、正直お客さんを入れた会場でライブができていないので、実感はなくて(笑)。ただ数字に驚くばかりという感じです。でも、なんだか不思議なつながりを感じましたね。映画「君の膵臓をたべたい」に着想を得てあいみょんがDISH//に「猫」を書いてくれて、今回メンバーの演奏で「THE FIRST TAKE」に出て……。

はっとり(マカロニえんぴつ) 僕もチェックしたけど、再生回数の伸び方がすごいよね。

──YouTubeもサブスクも、どちらも再生回数が3000万回を突破しています。

北村 僕らの中ではこの曲ができたときから漠然と「大切な曲になるだろうな」という感覚があったんです。だからライブの大事な場面とか、何か届けたい思いがあるときに必ず「猫」を歌っていたんですね。しかも「猫」は面白いくらい、歌うたびに自分の中で形を変えていて。笑えるときもあれば泣けるときもあるし、悔しいときもあった。それが今……みんながそれぞれに違うフラストレーションを溜めている状況下で、この曲の“いろんな気持ち”に共感してくれたのかなと思っています。あと、「THE FIRST TAKE」を収録したときはまだコロナ禍の中ではなかったんですけど、あの場所って僕1人だけの空間で、メンバーがいないという不安感があって……はっとりくんも経験していると思うんですけど、自分がめちゃくちゃ小さい存在に思えるんですよ。そういう不安感や孤独感って、この自粛期間中にも僕自身感じていたことで、そこもすごくリンクしたのかなって思います。

はっとり 1人だとね、ホントに自分がちっぽけに感じるんだよね。自分も1人で「THE FIRST TAKE」に出たときは、普段とは別物という感覚でした。バンドの中で歌っているほうがやっぱり安心感があるし、メンバーのありがたさを感じた。最初は“マイクVS自分”みたいな意識になってしまっていたんだけど、そのままの感覚で終わったら何も伝わらないなと思って。イントロが始まって「あ、カメラの向こう側で聴いてくれる人がいるんだ」ということを意識したら、すんなり入っていけたというか……いつもより力が入っちゃってた(笑)。自分的には「素人っぽいな」と思ったんですけど、あの力の入り方が逆にエモーショナルだったよという感想をもらえたから、よかったかなって。

北村 役者友達から、「『猫』とはっとりくんの『青春と一瞬』がよかった」とだけ連絡がきましたよ(笑)。僕らのコラボが決まる前に。

はっとり うれしいな、それ。

北村 歌っていて孤独感から抜け出る瞬間は、僕も感じました。僕の場合は2番の頭だったんですけど、メンバーの演奏から、みんなを感じることができて。歌い終わったあとはなんとも言えない、何かが抜けきったような脱力感があった。マイクに自分の中身を全部注ぎ込んでしまったような感覚がありましたね。

ヘマをしてもみんながいるしな

──「猫 ~THE FIRST TAKE ver.~」の大ヒットを受けて、匠海さんは「ミュージックステーション」にも出演しました。

北村 Mステに関しては……記憶がないですね。

メンバー あはははは(笑)。

──(笑)。最後に歌詞を飛ばしてしまった匠海さんを見て、珍しいなと思いました。

北村 緊張してないそぶりをしてたんですけど……放送の仕方が以前とは違っていて。前に(山崎)まさよしさんと一緒に出たときは歌う前に一度楽屋に戻れたんですけど、今回は自分が歌う場所にずっとステイしていないといけなかったんです。それもあってずっと緊張の糸が張ったままで、その糸が最後の最後で切れたんですね。

はっとり そうだったんだ。

北村 自分的には悔しいことだし情けないなと思ったんですけど、終わったあとにメンバーからは「完璧じゃなくていいんだ」という言葉をもらって。人間らしくいられてよかったなって、すごくスッキリしました。僕は昔からどこかで完璧なものを求めがちなんですけど、すごいヘマをしてもみんながいるしな、という気持ちになれたというか。

 いや、匠海ってやっぱすごいなと思いました。これから音楽業界に風穴を開けていける存在なんだなって。それは僕らの自信にもつながりましたね。

 そう。僕自身にはすごく響いたし、めちゃくちゃ感動しました。放送が終わったあとも数時間ずっと匠海や「猫」のことがTwitterトレンドに入っているのを見て、番組を観たたくさんの人たちも僕と同じように感動したんだろうなとも思いました。

矢部 歌詞を飛ばして数秒間は匠海の顔が映るだけになっていましたが、匠海だからこそ伝わるものがあったというか。そのときは内心ドキドキで頭真っ白だっただろうけど、匠海には今までの経験から培った表現力があるから、それすらもこの歌を届けるための表現なんじゃないかと思わせるくらいのパワーを僕は感じました。

はっとり 僕もリアルタイムで観ていたけど、「猫」を好きな人、DISH//を好きな人、北村匠海を好きな人、僕のような友達、みんなが同じような緊張をしながら観てたと思う。だから、歌詞を飛ばしたときに逆に安心したんだよな。匠海くんが緊張してるのが伝わってきて。あれはあれで第2の「THE FIRST TAKE」だと思ったし、よかったなって思いました。