音楽ナタリー PowerPush - DIR EN GREY

3年4カ月ぶり新作が示すバンドの“根源”

入り口が広がったけど、実は全然シンプルではない

──「DUM SPIRO SPERO」は1回通して聴いたあと、時間をかけて自分の中で噛みしめてから再度向き合う、そういう作品だったように思います。でも今作はアルバムの長さは前作とさほど変わらないのに、聴き終えたときの爽快感が過去数作以上で、スルッとリピートできたんです。そこは大きな違いだなって。

そうですね。「DUM SPIRO SPERO」は入り口が狭くて、中に入ると奥行きがあって情報量が多いという作品でしたけど、今回は入り口が広がったぶん、実は中身がかなり濃くなってるんじゃないかと。さっき「シンプル」というワードが上がりましたけど、実は全然シンプルではないと思いますよ(笑)。

──一見シンプルに感じられるのに?

Die(G)

はい。スリーコードのロックンロールみたいなものではないですし、シンプルと言いつつもいろんな要素が散りばめられてますしね。でもやりすぎてややこしくなったら結局意味がないので、自分たちが面白いと思うことをサラッと聴かせつつもどうやって聴き手の耳に残せるかっていうのは、絶えず考えてました。

──16曲もあると、曲順を決めるのも大変だったんじゃないかと思うんですが?

そうですね、曲順でアルバムのイメージがだいぶ変わるんで。実はメンバーと話し合ったとき、みんなから挙がった意見の大半が1曲目が「Un deux」、最後が「Revelation of mankind」という構成で、そこが固まってから残りの流れを考えたんです。

──そうなんですね。アッパーな曲で始まって、同じくアップチューンで終わる構成は、ここ数作とはまったく違うものなので、正直驚きました。

それ以外の曲については、どの位置に来るとその曲が一番輝けるのか、そして前にどの曲を置くとお互いに映えるのか、次にどの曲に流れていくと一番カッコいいかっていうことを大前提で考えて、曲順を決めていきました。

──曲を作っているときは、その曲をアルバムのどの位置に置くかなんて考えてないわけですよね?

全然考えてないです。

──その位置が最終的に見えたときに、曲のアレンジが変わることはあるんでしょうか?

早い段階で曲の位置が決まればそうしますけど、ほとんどの曲順はほぼ曲が録り終わりそうな段階で決まるので、曲と曲のつながりでアレンジ的に足せるものがあれば足すぐらいかな。

「輪郭」が入ってなかったらサラッとした印象だったかも

──以前お話を聞いたとき(参照:DIR EN GREY「輪郭」インタビュー)は「現時点では次のアルバムのパーツになるかはわからなくて」と言っていた「輪郭」も、無事今作に入りましたね。

Toshiya(B)

最初は入れないでおこうかなとちょっと思ったんですけど、アルバムに当てはめたときに前後の曲との並びがよかったんで、入れてみようかなと決めたんです。

──どちらかというと、モード的には「DUM SPIRO SPERO」の流れで作った曲でしたよね。

はい。その感じが残っているのでなじまないかなと思ったんですけどね。逆に「輪郭」の前に入れた「濤声」は最近の曲なんですけど、「輪郭」に似た構築感がある曲なんです。そういう曲と並んだときに面白い対比ができるかな、お互いを引き立てるんじゃないかなと思ったので、だったら入れるべきかなと。

──「濤声」も「輪郭」もミディアムでじっくり聴かせるタイプですが、確かにそれぞれ違う色を放ってます。そこからアッパーな「Chain repulsion」に流れる構成も面白いですし、後半に向けてまた盛り上がっていくためのいいアクセントになりますよね。

そうですね。実際「輪郭」はアルバムにおいても、いいアクセントになっていると思うし。だからもし「輪郭」が入ってなかったら、アルバム自体がもっとサラッとした印象になってたかもしれないですね。

──初回生産限定盤の特典CDでは「and Zero」や「てふてふ」といった新曲も聴くことができますが、今回のレコーディングではどれだけの楽曲を用意したんですか?

俺個人で言ったら6、70曲ぐらいは用意して。ほかのメンバーの曲も入れて、バンドで合わせようとしたのは2、30曲だったかな。

──そこから20曲近くをレコーディングしたと。

20曲って昔で言ったら、それこそアルバム2枚分ですからね。だからもうちょっと削ろうかなとも思ってたんですけど、メンバーから「全部やりたい」という声も出たので、じゃあがんばろうかという感じでした。

──アルバムタイトルもですけど、楽曲タイトルはこれまでとちょっと違った印象を受けました。

Shinya(Dr)

確かに。俺、今回はまったく読めないタイトルがいっぱいありましたからね(笑)。見たことない漢字ばかりでしたもん。だからライブのセットリストに記入して足元に貼ると、漢字2文字だと四角が2つあるように見えて読めないんですよ。極端な話、字画が多すぎて文字が潰れちゃう(笑)。

──曲タイトルは全部京さんが決めてるんですよね。それは歌詞と一緒に上がってくるんですか?

バラバラですね。歌詞が届く前にタイトルが決まるものもありますけど、最初にそのタイトルを知らされてもすぐにはその曲と結び付かなくて。で、時間が経つにつれてだんだんとなじんでくるという。

──じゃあアルバムのタイトルはどのタイミングで決まったんですか?

アルバムタイトルはけっこう早いタイミングで、「これはどう?」みたいな感じで京から提案されました。その時点ではまだアルバムがどういう感じになるかわからなかったので、しばらくそのままにしておいて、全体像が見えてから最終的に「じゃあこれでいこう」って決定したんです。

──もしかしたら京さんの中では、早い段階からアルバムの方向性やテーマみたいなものが見えていたんですかね?

うん、かもしれないですね。

ニューアルバム「ARCHE」2014年12月10日発売 / FIREWALL DIV.
完全生産限定盤 Blu-ray [Blu-spec CD+CD+Blu-ray] 9720円 / SFCD-0136~8 / Amazon.co.jp
完全生産限定盤 Blu-ray [Blu-spec CD+CD+Blu-ray] 9720円 / SFCD-0136~8 / Amazon.co.jp
完全生産限定盤 DVD [Blu-spec CD+CD+DVD] 8640円 / SFCD-0139~41 / Amazon.co.jp
初回限定盤 [CD2枚組] 3672円 / SFCD-0142~3 / Amazon.co.jp
通常盤 [CD] 3240円 / SFCD-0144 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. Un deux
  2. 咀嚼
  3. Phenomenon
  4. Cause of fickleness
  5. 濤声
  6. 輪郭
  7. Chain repulsion
  8. Midwife
  9. 禍夜想
  10. 懐春
  11. Behind a vacant image
  12. Sustain the untruth
  13. 空谷の跫音
  14. The inferno
  15. Revelation of mankind
完全生産限定盤 特典CD収録曲
  1. and Zero
  2. てふてふ
  3. Sustain the untruth [REMIX]
  4. Unraveling [REMIX]
  5. 咀嚼(Acoustic Ver.)
  6. 鱗(Crossover Ver.)
  7. Behind a vacant image(Acoustic Ver.)
完全生産限定盤 特典Blu-ray / DVD収録内容
  • Un deux(Shot In One Take)
  • Chain repulsion(Shot In One Take)
  • TOUR14 PSYCHONNECT -mode of “GAUZE”?- 2014.08.30 SHINKIBA STUDIO COAST(「かすみ」「蜜と唾」「激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇」)
  • BEHIND THE SCENES OF ARCHE
初回限定盤 特典CD収録曲
  1. Sustain the untruth [REMIX]
  2. 咀嚼(Acoustic Ver.)
  3. 鱗(Crossover Ver.)
DIR EN GREY(ディルアングレイ)

京(Vo)、薫(G)、Die(G)、Toshiya(B)、Shinya(Dr)からなる5人組バンド。1997年に現メンバーが揃い「人間の弱さ、あさはかさ、エゴが原因で引き起こす現象により、人々が受けるさまざまな心の痛みを世に広める」という意志のもとに結成。ミクスチャー / ヘヴィロック的な要素をゴシック的な様式美の中で表現する世界観が評価され、日本のみならず海外でも大ブレイク。2002年にアジアツアーを成功させたのを機に、アメリカ、ヨーロッパ各国にも進出し、熱狂的なファンを多数獲得する。2000年代後半からは海外でもアルバムを発表しており、2008年のアルバム「UROBOROS」はアメリカのBillboard Top 200で114位にランクインした。2011年には約3年ぶりのアルバム「DUM SPIRO SPERO」をリリース。発売直後からヨーロッパや北米、中南米などで海外ツアーも行った。2012年2月からは京の声帯不調を理由に表立った活動を休止していたが、同年10月よりライブ活動を再開。2013年6月には2年ぶりとなるヨーロッパツアー、10~11月には同じく2年ぶりの北米ツアーも実施した。2014年3月8、9日には4年ぶりとなる日本武道館公演「DUM SPIRO SPERO」を敢行。同年夏には1stアルバム「GAUZE」を携えて1999年に行われたツアーの続編「PSYCHONNECT -mode of "GAUZE"?-」も開催された。そして12月10日、3年4カ月ぶりとなる通算9作目のフルアルバム「ARCHE」をリリース。