ナタリー PowerPush - DIR EN GREY
薫が考える“次の一手”と“ライブのあり方”
武道館は「希望に満ちあふれたライブになれば」
──3月8、9日には日本武道館で「DUM SPIRO SPERO」と題した単独公演が控えています。最新オリジナルアルバムのタイトルを冠したライブになっていますが、これは「DUM SPIRO SPERO」リリース以降の1つの集大成になるんでしょうか?
一応そうですね。「DUM SPIRO SPERO」リリース後にツアーはやったけど、アルバム収録曲を全部披露したライブはまだやってなくて。タイトル(ラテン語で「生きている限り希望を持つ」を意味する)もそうなんですけど……このアルバム制作中に震災が起きて、そういう状況の中で自分たちに何ができるのかを考えたときに、まず新作が発売されますっていうニュースをいち早く発表することかなと思ったんです。その情報が少しでもみんなの希望になってくれたらと、そういう思いを初めて抱いて作ったアルバムだったんで、区切りとか集大成という意味合いもあるけど、それと同時にすごく希望に満ちあふれたライブになればいいなと。
──それは具体的にはどういったことですか?
ステージでは激しさを表現してるんですけど、ライブから帰るときにはみんな笑顔で帰ってほしいというか。ライブってやっぱり日常の中では異空間な場じゃないですか。自分もそうやったんですけど、お客さんはチケットを手にした瞬間からライブという一大イベントに向けて生活していくわけですよ。だからその気持ちを裏切らないようにしっかりと希望を見せていきたいし、感じさせていきたい。そして俺ら5人の気持ちや気を感じ取って、また明日から生活してほしいっていうか。昔から自分たちが掲げてるテーマというのは痛みや怒りや悲しみなんだけど、生活している中でいろんなことが起きても結局人は明日に進まないといけない。そういう中でDIR EN GREYの存在っていうのが1つの希望になるような、そんなライブをしたいと思ってます。あんなに激しいライブをしてるのに、お客さんの顔を見るとみんなニコニコしてるんですよね。そこで自分たちがやってることがちゃんと伝わってるんだと実感できるんです。
──実は近年のDIR EN GREYのライブを観ていて、特にアンコールに入ってからは皆さん笑顔を見せたり本編以上に動き回ったりと、以前とは明らかに変わってきた気がしていて。それによってよりオーディエンスとの距離が縮まっているような印象を受けたんですが。
2012年くらいから、本編では全体の空気感や世界観を大切に表現するライブが多かったんですよ。ただ盛り上がるだけではないライブをやりたくて。でも本編が終わるとパッと空気を変えて、アンコールぐらいはお客さんの声に応えて気持ちよく帰ってもらおうっていう気持ちが出てくるんです。でも次のアルバムの世界観が見えてきたところで、ライブの空気感もまた変わってくるんじゃないかな。
──ライブのスタイルや演出が変わっていく可能性がある?
あると思います。だから制作を進める間にもしライブがあれば、少しずつそういう匂いを出していけるかな。まあそうは言っても、結局はアルバムを出してツアーを何回か重ねなきゃ、本当にアルバムで表現したい世界には行き着かないとは思うんですけどね。なかなか難しいですよ。
ライブをやりやすいのは海外。でも……
──昨年は2年ぶりにヨーロッパツアーやアメリカツアーを行いましたが、海外でのライブと日本でのライブはどちらがやりやすいですか?
やりやすいのは、海外のほうです。あの、きっちりしてないんで。日本だとすべてお膳立てされて、スタッフもたくさんいて、きっちり準備が整ってるわけですよ。でも海外だと、実際に会場に着いてみないとどんな感じかもわかんないし。
──(笑)。
すごいルーズっていうか、リハーサル時間も機材のセッティングが遅くなればどんどん遅れるし。物事があんまりきっちり決まってないんですよね。いや、一応決めてるんですけど、その通りにはならない。本番前も日本だったらステージに向かうときにもスタッフが何人かいて「始めます。じゃあお願いします」って声をかけてくれるけど、海外だと俺らのほうから「じゃあそろそろ行くか」みたいな。で、のそーっと出ていって「始めるよ」みたいな感じですね。
──ははは(笑)。
わりとこうリラックスしていけるというか、あんまり気負いがないというか。だから自分は海外のほうがすごく楽で、自然体でステージに上がれるんです。普通ステージに立つと、どこか演じてる部分っていうのが少しはあるとは思うんですけど、海外だとそれがない。肩の力が入ってない感じが、自分はすごく好きです。
──国内と国外でそういう違いがあるから、バランスが取れてるところもあるんでしょうか。
うん、まあそうかもしれない。でも、そうは言ってもやっぱり海外ツアーはしんどいんで、最終的には日本が最高ってなってしまうかな(笑)。
──ところで、今後行ってみたい国ってありますか?
2月から行くんですけど、オーストラリアはずっと行ってみたくて(参照:DIR EN GREY、2014年2月にオーストラリア初上陸)。あと東南アジアも行ってみたいな。
──そうか、今まで一度もないんですね。ジャカルタとかけっこうロックシーンが盛り上がってるみたいですし。
そうなんですよね、そういう話も聞くし。たまにオファーもあるんですけど、タイミングがなかなか合わなくて。そういう今まで足を踏み入れたことがない場所に行くと、刺激になるんじゃないかなって気がしてるんですよ。その国の街並みだったり文化だったり。ヨーロッパもそうじゃないですか。やっぱり伝統のある国だと昔のものが残っていて、すごく刺激を受けるんで。東南アジアにはまだ自分が触れたことがないようなものがたくさんある気がしていて。楽器とか音楽とか含めて。だから行ってみたい気がします。
- ニューシングル「SUSTAIN THE UNTRUTH」/ 2014年1月22日発売 / FIREWALL DIV.
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1890円 / SFCD-0130~1
- 通常盤 [CD] 1260円 / SFCD-0132
- 完全受注生産限定盤[CD+DVD] 4725円 / SFCD-0128~9完全生産限定盤の予約申し込み受付は終了いたしました。
CD収録曲
- SUSTAIN THE UNTRUTH
- 流転の塔 (Acoustic Ver.)
- 凱歌、沈黙が眠る頃 [LIVE]
*Live Take at YOKOHAMA BLITZ on September 18, 2013
完全受注生産限定盤 DVD収録内容
MINI ALBUM『THE UNRAVELING』【完全受注生産限定盤】購入者限定LIVE
TOUR2013 TABULA RASA -揚羽ノ羽ノ夢ハ蛹- 2013.5.24 渋谷公会堂
- Unknown.Despair.Lost
- 輪郭
- INWARD SCREAM
- mazohyst of decadence
- Deity
- MACABRE
- Unraveling
- 冷血なりせば
- JEALOUS -reverse-
- 羅刹国
<IN-STUDIO FOOTAGE>
SUSTAIN THE UNTRUTH(Scenes From Recording)
初回限定盤 DVD収録内容
<IN-STUDIO FOOTAGE>
SUSTAIN THE UNTRUTH(Scenes From Recording)
DIR EN GREY(でぃるあんぐれい)
京(Vo)、薫(G)、Die(G)、Toshiya(B)、Shinya(Dr)からなる5人組バンド。1997年に現メンバーが揃い「人間の弱さ、あさはかさ、エゴが原因で引き起こす現象により、人々が受けるさまざまな心の痛みを世に広める」という意志の元に結成。ミクスチャー/ヘヴィロック的な要素をゴシック的な様式美の中で表現する世界観が評価され、日本のみならず海外でも大ブレイク。2002年にアジアツアーを成功させたのを機に、アメリカ、ヨーロッパ各国にも進出し、熱狂的なファンを多数獲得する。2000年代後半からは海外でもアルバムを発表しており、2008年のアルバム「UROBOROS」はアメリカのBillboard Top 200で114位にランクインした。2011年には約3年ぶりのアルバム「DUM SPIRO SPERO」をリリース。発売直後からヨーロッパや北米、中南米などで海外ツアーも行った。2012年2月からは京の声帯不調を理由に表立った活動を休止していたが、同年10月よりライブ活動を再開。12月にはニューシングル「輪郭」、翌2013年4月にはミニアルバム「THE UNRAVELING」をリリースした。同年6月には2年ぶりとなるヨーロッパツアー、10~11月には同じく2年ぶりの北米ツアーも実施。2014年1月にニューシングル「SUSTAIN THE UNTRUTH」を発表し、同年3月8、9日には4年ぶりとなる日本武道館公演「DUM SPIRO SPERO」を行う。