ナタリー PowerPush - DIR EN GREY

薫が語る海外ツアーの裏側とバンドの現状

記憶に残る場面を1本のライブでどれだけ残せるか

──通常のツアーの合間にイレギュラーな企画ライブをやるのは、気持ちの切り替えという意味では問題なくできてるんでしょうか?

DIR EN GREY

さっきも言ったけど、ちょっと負荷をかけないと面白いことはできないんじゃないかっていう気持ちもあったりして。でも、そんなにすごく無理をしたわけでもないし、いきなり新曲を作ってそれでライブをするわけでもないし。特殊メイクでライブをしたり、ちょっとアレンジを変えてライブをしたりするくらいなので、全然やれる範囲ですけどね。

──それでいうとDIR EN GREYは、ツアー中も演出がどんどん変わっていきますよね。例えば、国内ツアーでもちょっと大きめの会場に移ってからは、可動式のLEDスクリーンを導入したり、年が明けてから何本かやったライブでは京さん(Vo)が紗幕に囲まれてパフォーマンスをしてました。ああいう演出のように、面白いと思うことはどんどん試している感じなんでしょうか?

そうですね。ライブで記憶に残るところって、音ももちろんだけど画やと思うんですよ。それは「あの人がこういう動きをした」とか「あ、今のギターを弾いてる姿と照明がすごくカッコいい」とか。その人が観てる位置によってもまた全然違うし。そういう場面を1本のライブでどれだけ残せるかだと思うんですよね。

──確かに。DIR EN GREYの国内ツアーを観てると、そういった視覚要素で毎回驚かされます。

大体いつも思いつきなんですけどね。で、そこから具体的にどういうことをするっていうのは、結構ギリギリまで決まらなくて。モードがそこに入らないと詰められないんですよ。例えば、ずっとレコーディングをしていたらそっちに意識が行っちゃって、ツアーの演出の打ち合わせをしても上の空になっちゃうし。で、ツアーが近付くとやっとモードが切り替わって、最終的にスタッフが頑張ってやってくれるから間に合ってるんです。

空白の期間に何を感じるかで今後のライブも変わる

──新曲をツアーで演奏するときって、レコーディングしたスタジオテイクからどのように成長したら完成型、みたいな指標ってあるんですか? というのも、今回の映像作品2タイトルを観たとき、同じ新曲でもツアー序盤とロスのライブ映像とでは全然違って聴こえて、後者の演奏のほうが噛み合っている気がしたもので。

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それって慣れの部分も大きいと思うんですよね。やってる側としては意外と面白くないと感じることもあるんですよ、慣れてくると。だから、どこまで来たらOKラインとかそういうのはないかな。でも、例えば前作「UROBOROS」なんて前に1回終わったものとして一応区切りをつけたんですけど、「何か終わったっけ?」って感覚もあるし。その曲がどこまでいったら自分たちの中で浄化されるかっていうことはあまり考えないし、具体的にはわかりにくいものですからね。だから、観た人たちがそう言ってくれて「ああ、そうなんだ」って思う程度。自分たち的には飽きるのが一番嫌だなとは思うだけで。

──ツアーで演奏を続けながら、その曲のイメージが当初考えていたものと変わってくることはありますか?

それはありますね。この曲をどういうふうにライブで見せるか、聴かせるかって考えるとレコーディング音源からイメージは変わっていくし、そこがライブをやっていて一番面白いところだと思う。で、ファンからのリアクションも「あ、こういう曲でそんな反応があるんや」とか、やっぱりライブでやらなきゃわからないところで。その反応から曲に対する自分たちの考え方がどんどん変わっていくことがあるので、やっぱ面白いですよね。

──最新アルバム「DUM SPIRO SPERO」の楽曲はまだ5カ月くらいしかライブで演奏していませんが、今年1月までの時点でそれらの曲を演奏する際に気持ちの上での変化は感じていましたか?

1月の時点では新曲がだいぶ体に馴染んできた状態でした。で、あのアルバムからはまだ2曲演奏してない曲があるんですけど、今はそれらの曲をどうやってライブの中に取り入れて、また違った感じのライブにしていけるかを考えているところです。その2曲が入ってくることで、ほかの曲の見え方、聴こえ方も変わってくるだろうし。でも実際、活動を止めてから半年以上経ってるし、次はいつやれるかわからないですけど、その空白の期間に俺らが何を感じるかで従来の曲も変わってくるかもしれない。ライブ活動を再開させたら、ライブの感覚を取り戻すのに必死かもしれないですけど、明らかに以前とは変わってると思います。

ライブ活動再開はそう遠くはないと思う

──最後にどうしても訊いておきたいのが京さんについて。今回の映像の中でも京さんの喉の不調について触れられていますし、とても心配しているファンも多いと思うんです。今後についてはまだ明言できないことも多いと思いますが、現状話せるところまで聞かせていただけるとうれしいです。

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まあ1日ぶっ通しで歌うのはまだ無理ですけど、何時間かに限れば京も声は出していて。実際もう歌ってますし、「グオーッ!」みたいな声も出してるので。

──あ、そうなんですね。じゃあ少しずつ活動再開に向けて動き出していると。

はい。まあステージに立って1時間半のライブを今までどおりやるには、まだちょっとかかりそうですけど。医師の判断を聞きつつ、今後の動きを決めていこうかなって感じです。でもまあ、そんな状態なんでライブ活動再開はそう遠くはないと思いますよ。

──その休止期間中に、例えば新曲作りをしたりとか、そういう動きはあったりするんですか?

こういうタイミングなんで、曲は作ってますね。最初の頃はちょっとリフレッシュしようっていう気持ちもあって、2カ月くらいは何もしてなかったんですけど、2カ月過ぎた頃には何もやることがなくて逆に疲れちゃって(笑)。新曲に関しては、プリプロしたりとか一応仕込んでありますよ。

──ここ半年は表だった活動がほぼない状態だったので、今回の映像作品2タイトル発売とか爆音上映会とか、少しずつですがバンドとしての動きが感じられて喜んでいるファンも多いと思います。

そうですね。ついちょっと前までは何もなかったですし(笑)。

DIR EN GREY(でぃるあんぐれい)

DIR EN GREY

京(Vo)、薫(G)、Die(G)、Toshiya(B)、Shinya(Dr)から成る5人組バンド。1997年に現メンバーが揃い「人間の弱さ、あさはかさ、エゴが原因で引き起こす現象により、人々が受けるさまざまな心の痛みを世に広める」という意志の元に結成。ミクスチャー/ヘヴィロック的な要素をゴシック的な様式美の中で表現する世界観が評価され、日本のみならず海外でも大ブレイク。2002年にアジアツアーを成功させたのを機に、アメリカ、ヨーロッパ各国にも進出し、熱狂的なファンを多数獲得する。2008年にアルバム「UROBOROS」を世界16カ国で同時期にリリース。同作はアメリカのBillboard Top 200で114位、インディーズアルバムチャートBillboard "TOP INDEPENDENT ALBUMS"で9位、新人アーティストを対象としたチャートBillboard "Heatseekers Chart"で1位という快挙を達成する。その後、2008年末から2010年にかけて「UROBOROS」を携えたライブツアーを国内外で展開。2010年1月に日本武道館公演を2日間にわたり開催し、ロングツアーを締めくくった。2011年8月には約3年ぶりのアルバム「DUM SPIRO SPERO」をリリース。発売直後からヨーロッパや北米、中南米などで海外ツアーも行った。2012年1月には大阪城ホールで「UROBOROS -that's where the truth is-」と題した一夜限りのライブを敢行。しかし2月からは京の声帯不調を理由に、当面の活動を休止している。