デジナタ連載 悠木碧×大谷智哉(「ソニックフォース」サウンドディレクター)|Technicsアナログ試聴体験から紐解く「ソニック」音楽の魅力

アナログ化へのこだわり

──アナログ盤のサウンドトラックについても話を聞かせてください。CDのサントラと違って、アナログだと曲数が限られてしまうわけですが、どういう基準で収録曲を選びましたか?

大谷 音質を担保するためには片面17分ぐらいに収めたほうがよいので、だいたい片面に4~5曲。CDのサウンドトラックには89曲収録されているのですが、今回はLP2枚組なので、約20曲を目安にしながら「ソニックフォース」の代表曲を中心に、幅広い音楽性を網羅できればと思いながら選んでいきました。

悠木 面ごとにコンセプトも感じます。Side-Cはボス曲が多いですし、Side-Dは物語終盤にかかる曲が多くて。

大谷 収録分数の制約に縛られつつも各面のコンセプトには可能な限り気を使いました。ステージ曲やボス曲に関してはどの曲を入れるべきか悩んだんですが、ちょうど選曲をしているときに、ダウンロード配信のセールス結果を見られる機会があって、皆さんの支持を集めている曲を把握できたんです。一部の選曲はそのデータを参考にさせていただきました。

「SONIC FORCES ORIGINAL SOUNDTRACK THE VINYL CUTZ」

悠木 それと、今日は実物のアナログ盤を実際に触らせてもらったんですけど、このサイズ感はアイテムとしての所有欲をそそられますね。

大谷 けっこうズッシリとしていますよね。近年はスマホから新譜を購入することもけっこうあるんですが、アナログレコードには音楽を所有する喜びがあると思うんです。飾り栄えするように、ジャケットの色をどうするかはけっこう悩みました。「ソニックフォース」のベースカラーは赤、黒、ベージュなんですが、それらの色はCDのほうで使ってしまっていたので、せっかくアナログ盤として出せるなら新しいカラーにしたいな、と思ってソニックのイメージカラーである青いジャケットにしました。星型に抜かれたデザインはCDと統一させているので、並べて飾ってもいい感じですよ。CDを持っている人にも手に取ってほしいですね。

まずは一度、体験としてレコードを聴いてほしい

──大谷さんはご家庭でもTechnics製品を使っているとおっしゃっていましたが、アナログで音楽を楽しむようになったきっかけはなんだったんですか?

大谷 僕はCD世代なので、物心付いた頃はレコードが身近な存在ではなかったんですけど、学生時代にDJをやっている友達ができて、ミックステープを作ってもらったことがあったんです。2台のターンテーブルとDJミキサーを駆使して、1960年代、70年代のソウルやファンク、レアグルーブといったジャンルの曲をノンストップにつないだDJミックスでした。その時代はまだ、DJと言えばアナログレコードでのプレイが基本でした。それがきっかけでDJカルチャーや、レコードでしか聴くことができない時代の音楽に興味を持つようになり、レコード沼にハマっていきました。何よりレコードの音そのものが好きになったんです。暇さえあれば、下北沢、新宿、渋谷など都内のレコードショップをよく回っていましたけど、今は全国各地のレコードショップからネットで購入できるので、歯止めが効かなくなって困っています(笑)。

悠木 そういう体験が「ソニック」の音楽にもつながっているわけですよね。

左から大谷智哉、悠木碧。

大谷 そうですね。まだ聴いたことのない、カッコいい音楽を探すことはライフワークであり、自分の作曲の肥やしにもなっていると思います。

──悠木さんから見て、レコードのイメージってどういうものですか?

悠木 音楽がわかる人じゃないと持っちゃいけない、ってイメージがありますね。そもそも私がレコードプレーヤーを持っていないこともあって、少し距離感があるんですよ。ただそれってレコードに対する評価がまだできていなかっただけで、今日ちゃんとした環境で堪能させてもらって「レコードはいいぞ」ということが理解できました。

大谷 なるべくこちらからうんちくを語らずに、悠木さんにそう感じてもらえたらいいなと思っていたのでよかったです。やはりまずは一度、体験としてレコードを聴いてみてほしいですね。あとは物としての魅力も合わせてレコードを手に取ってもらえれば。

悠木 はい。今日実際に音を聴かせてもらって感動したし、こうやって実際にアイテムを持ってみてすごい所有欲に駆られています(笑)。

アナログで楽しむ選択肢

悠木 「ソニックフォース」の音楽の中で、大谷さんが一番気に入っている曲はどれですか?

大谷 すごく難しい質問ですね(笑)。

悠木 そうですよね! 私も音楽活動をしているので、全部の曲が愛おしい気持ちはよくわかります(笑)。じゃあ、音楽を作る中でこだわったところとか……。

大谷 そういうのはいっぱいありますよ。例えばメインテーマの「Fist Bump」について、「ソニック」は欧米が主戦場なので必然的に英詞の洋楽ということになるのですが、僕ら日本人が世界に向けて作っているものなので、邦楽のおいしいところも詰め込んだ“洋楽×邦楽”みたいな曲にしたいと考えました。具体的には、転調だったり展開の多さだったり音楽の仕掛けが盛りだくさんな感じです。これは裏テーマなんですけど、そうすることで日本のファンがもっと増えてくれたらいいなと密かに思っていたりもします。

悠木 J-POPで育ってる人間なので、その邦楽っぽさに惹かれたのかなって今思いました。

──悠木さんは「ソニック」シリーズの音楽の魅力はどんなところにあると思いますか?

悠木 ゲーム音楽の特徴でもあると思うんですけど、各曲のジャンルがバラエティに富んでいるので、1曲は絶対好きになる曲があると思うんです。それに音楽を聴いたらゲームに興味を持つと思うし、逆にゲームをやれば音楽をちゃんと聴きたくなる。ゲームからでも音楽からでもとにかく触れてもらって気になってほしいんですよね。だからゲームを全然やったことがない人でもサントラを聴いてほしいですし、それがよかったらぜひアナログ盤にも……。

大谷 「入り口としての音楽」という意味では自信がありますし、音楽を楽しみたいと思っている方であれば、聴くための手間や行為そのものを含めて、アナログレコードで楽しむという選択肢があっていいと思います。僕自身、CDやアナログ、配信とさまざまなメディアを利用することで音楽の楽しみ方の幅が広がっていきました。アナログをきっかけに新しい音楽との出会いや、楽しみ方を見つけてもらいたいですし、その最初の一歩として「ソニックフォース」のサウンドトラックを手に取ってもらえたらうれしいですね。

左から悠木碧、大谷智哉。

Technicsリスニングルーム

Technicsリスニングルーム

東京有明にあるパナソニックセンター東京内にあるTechnics(テクニクス)リファレンスシステム、グランドクラス、プレミアムシステムを体験できる予約制のリスニングルーム。Technicsについて豊富な知識を持つ「Technics オーディオアドバイザー」が案内する。Technicsが選曲するハイレゾ音源、そしてダイレクトドライブターンテーブルシステムで持参したレコードを試聴できる。

SL-1200GR

アナログレコード再生の楽しみを音楽ファンに届けることをコンセプトにした、Technicsのダイレクトドライブターンテーブルシステム。世界中のユーザーに愛用されたSL-1200シリーズの新たなスタンダードモデルで、SL-1200Gのよさを継承しつつ、新たに開発された専用のコアレスダイレクトドライブモータを搭載している。