Technics×「RECORD STORE DAY」|満島ひかりの心を惹きつけるアナログレコードの魅力とは? SOIL&"PIMP"SESSIONS・社長と語るコラボ曲「eden」制作秘話も (4/4)

三浦大知とのレコーディング

──三浦さんとの歌録りはどうでしたか?

満島 本当に大知のレコーディングもすごかった。私が「『あれ? なんかそんなつもりはなかったのに、言葉が出てきちゃった』みたいな感じで歌ってほしい」って抽象的なリクエストをしたら、大知は「んー、わかった」と言って、「まさに!」よりも最高の歌で応えてくれるんです(笑)。

──そこにはかつてグループをともにしていたからこその皮膚感覚の共有があったんでしょうか?

満島 それもあるのかな。ただやっぱり、ソイルの皆さんも大知もアーティストとしての想像や理解の力がすごく高いんだと思います。脳みそがシネマティックな感じの私が、自分の中にある画を感覚的な言葉で伝えると、皆さんがそれを形にしてくれる。「想像していた画がこんなにも形になるんだ!」と感動しました。あとは、やっぱりソイルのジャズバンドとしてのすごみも感じましたね。その場でどんどん音楽が生まれていく感じ。

社長 でも、そういうやり取りができる現場も多いわけではないので。

満島 昔、大好きなCharaさんが「音楽の制作を誰かとセッションするときは、気を使っちゃうとダメよねー。思っていることとか、やりたいことは伝え合わないと、気を遣い合った音楽になってしまう」みたいなことを言ってたのが心に残っていて。だから、自分主体で音楽をやるときは、思いきりやって恥ずかしがらないぞって決めていたんです。

社長の「eden」リミックスは火祭りのようなイメージ

満島 あと、社長が作ってくれた「eden」のリミックス音源も素晴らしいんですよ。

社長 ありがとうございます。

──社長のリミックス音源はオリジナルとはまた様相の異なるフロアライクな仕上がりになっていて。冒頭の鼓動を打つようなキックから引き込まれるし、社長のDJマナーでありアシッドジャズマナーが施されたラテン的なエッセンスも絶妙だなと思いました。

満島 オリジナルは、私のイメージでは透明な膜が張っていたり、無重力の世界にいるという画があったんですけど、リミックスはものすごく重心が低くて、巨神兵が出てきそうな、あるいは火祭りみたいなイメージが浮かびました(笑)。

社長 火祭り(笑)。でも、そういうイメージが浮かぶものにしたかったのは確かで。BPMはダンスミュージックとしては少しゆっくりめかもしれないけど、身体がたまらなく動いてしまう感じというか。ダンスになんのルールもなく、みんなが自由に踊っているみたいな。クラブで鳴ってもいいけど、もうちょっと大地が浮かぶようなイメージですね。

──満島さんは先ほどのソロインタビューの中で「低音に耳がいくようなった」という話をしていましたけど、このリミックスはその感覚を刺激するところがありますよね。

満島 まさにそう思います。音像の歪みが最高です。

左から満島ひかり、社長(SOIL&"PIMP"SESSIONS)。

左から満島ひかり、社長(SOIL&"PIMP"SESSIONS)。

左から満島ひかり、社長(SOIL&"PIMP"SESSIONS)。

左から満島ひかり、社長(SOIL&"PIMP"SESSIONS)。

愛を描きたかった

──「eden」のリリックに関しては、ソイルとオケを作る前に書いていたんですか?

満島 オケが先でした。オケを作っていただくときも漠然としたイメージから進めていったんですけど、当初は私が歌詞を書く予定でもなかったんです。でも書いてみることになって、音に気持ちよく言葉を乗せていくのは難しいけど好きな作業でした。

──リリックに触れたときに、森羅万象と交信しながら、楽園へ向かっていくような画が浮かびました。あるいは、今回の「ルーヴル美術展 愛を描く」のポスターに採用されているフランソワ・ジェラール「アモルとプシュケ」、または「アモルの最初のキスを受けるプシュケ」から受ける印象にも呼応する趣があるなと。

満島 絵画の世界はもともと好きでして。この曲の歌詞も、人が生まれ、現世が始まるような画が浮かぶところもありつつ、人と人が愛し合っているその真っ只中を感じられる内容にもしたいと思ったんですね。シンプルに言うと、ラブラブな感じ。でも、抽象性も大事にしたくて、サビでは「la u e wa lu nu na fa」という何語かわからない言葉も書きました。

──サビのフレーズに重なってくるオブリガート的なコーラスやセリフは?

満島 あそこはレコーディングの最中に丈青さんがメロディを作って、その音に合わせて歌詞もその場で作ったりして。

シンガー・満島ひかりの魅力

──社長から見て、シンガーとしての満島さんの魅力や求心力をどんなところに感じてますか?

社長 まずはやっぱりこの存在そのものですよね。表現をすることに命を懸けている方だから、今まで出会ったどんな方とも違う、ひかりちゃんならではの表現に対する情熱、熱量がひしひしと伝わってくる。僕らはボーカルがいないバンドなので、ひかりちゃんの声であり、身体表現も含めて僕らと一緒にどんな音楽を作れるんだろうという期待値がすごく大きかったし、すごく制作を引っ張ってくれた。とても楽しかったし、やりやすかったです。

満島 (しみじみと)ああ、よかった……。

社長 今までにない回路がつながった感じがありました。

満島 私もイメージの共有ができた瞬間に「通じた! 光が見える!」と感動したのを覚えています。私も大知も……大知は特に身体表現をダイナミックにできる人なので、私はずっとこの曲が映像になるときのことも考えていて。それで、歌が存在していないセクションも長くしてほしいとリクエストしたんです。

──インタールードをあえて長くした?

満島 そうです。最終的に私と大知の2人がソイルのサウンドの中で体を解きながら、肉体が踊り続けるというイメージがあって。根が花になっていくのではなくて、花が根に還っていきながら、世界に広がっていく、そういう曲にしたいと思ったし、ソイルと大知のおかげで具現化できたと思います。まだあとソイルとは2曲ありますので(笑)、私はいずれかの曲のMVでソイルの皆さんに踊ってほしいんです。

社長 おおっ(笑)。

満島 メンバーそれぞれのアップとか、ドラマなソイルの顔を引き出したいんですよね。

社長 それをディレクションできるのはひかりちゃんしかいないね(笑)。

満島 やりましょうね! 想像を形にする、そのためにレーベルを持ちましたので。

社長 おおっ! それはもう、残りの曲も形にするしかないですね。

満島 よろしくお願いします。ミックスとマスタリングの違いもちゃんとわからない1年生ですが(笑)、音楽を学んで愛してまいります。

満島ひかり

満島ひかり

Technics「SL-1200MK7」

Technics「SL-1200MK7」

世界中のDJがプレイする現場で使われ続ける「SL-1200」シリーズの最新機種。ダイレクトドライブモーターやプラッター、シャーシなどすべてを一新しながら、トーンアームや各種操作スイッチなどの配置は「SL-1200」シリーズのレイアウトをそのまま踏襲し、これまでと変わらない操作性を実現している。

RECORD STORE DAY JAPAN

RECORD STORE DAY JAPAN

毎年4月の第3土曜日に世界で同時開催されるアナログレコードの祭典。2008年にアメリカでスタートし、現在世界23カ国で数百を数えるレコードショップが参加を表明している。日本での運営は東洋化成が担当。レコードショップで数多くのアーティストのアナログレコードの限定盤やグッズなどが販売される。また世界各地でさまざまなイベントも行われ、毎年大きな盛り上がりを見せている。

プロフィール

満島ひかり(ミツシマヒカリ)

1985年11月30日、鹿児島県生まれ、沖縄県育ち。1997年にダンスボーカルグループ・Folderでデビューし、「モスラ2 海底の大決戦」で映画に初出演。Folder5の活動を経て演技の道へ進み、これまで多くの映画・ドラマ・舞台・コマーシャルに出演。さまざまな賞も受賞している。主な作品として映画「愛のむきだし」「川の底からこんにちは」「悪人」「夏の終り」「駆込み女と駆出し男」「愚行録」「海辺の生と死」や、ドラマ「開拓者たち」「Woman」、「ごめんね青春!」「トットてれび」「カルテット」などがある。最近では、Netflixで配信中の主演ドラマ「First Love 初恋」が好評を博している。また俳優業として並行して音楽活動も展開。2017年にはMONDO GROSSOが「RECORD STORE DAY JAPAN 2017」に合わせてリリースした12inchアナログ「ラビリンス」に、ボーカリストとして参加し話題を集めた。同年8月にはEGO-WRAPPIN'をプロデューサーに迎えた楽曲「群青」をアナログ盤でリリース。そして2023年3月、三浦大知とSOIL&"PIMP"SESSIONSを迎えた音楽プロジェクト「ひかりとだいち love SOIL&"PIMP"SESSIONS」を始動させ、シングル「eden」を配信リリース。本作は4月開催の「RECORD STORE DAY JAPAN 2023」でアナログ化された。

衣装協力
帽子 / momiji

SOIL&"PIMP"SESSIONS(ソイルアンドピンプセッションズ)

2001年、東京のクラブイベントで知り合ったミュージシャンが集まり結成。ライブを中心とした活動を身上とし、確かな演奏力で注目を浴びる。2005年にはイギリス・BBC RADIO1主催の「WORLDWIDE AWARDS 2005」で「John Peel Play More Jazz Award」を受賞した。以降、海外での作品リリースや世界最大級のフェスティバル「Glastonbury Festival」「Montreux Jazz Festival」「North Sea Jazz Festival」などに出演。これまでに31カ国で公演を行うなど、ワールドワイドに活動を続けている。2022年6月に約2年半ぶりとなるオリジナルフルアルバム「LOST IN TOKYO」をリリース。2023年に現体制となってから20周年を迎える。

記事初出時、一部表記に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

2023年3月20日更新